告発状

2008年8月28日

宮 崎 北 警 察 署 長 殿

告発人ら代理人弁護士


告 発 人  野 中 公 彦


告 発 人  X

〒880-2323 宮崎市大字大瀬町字大師方4654番地
宮崎県中央動物保護管理所内

被 告 発 人 氏 名 不 詳

※ 但し、2008年5月29日に上記肩書地施設
内に所在した財団法人公衆衛生センター職員のい
ずれか、あるいはその複数名である。


第1 告発の趣旨

被告発人の下記行為は、動物の愛護及び管理に関する法律第44条第1項違反の犯罪行為に該当すると思料するので、被告発人の厳重な処罰を求めてこれを告発する。

第2 告発事実

被告発人は、2008年5月29日午前中、動物の愛護及び管理に関する法律第2条所定の愛護動物たる生後約1ヶ月の子犬4匹をみだりに殺したものである。

第3 告発の理由

1.事実経過

(1) 2008年5月29日午後1時58分、当時「宮崎動物のいのちを守る会」 (以下「守る会」という)の構成員であった A 氏の携帯電話に、国富町在住の市民から

「近所で犬が6匹生まれ2匹はもらわれたが、4匹(以下「本件子犬たち」という)はもらい手がないので飼主が保健所に持って行った(別紙添付資料3-3-3)。何とかならないか?」

との通報・相談の電話が入った。上記通報者は、宮崎日日新聞の有料広告「アドパーク」に「守る会」が掲載した広告記載の A 氏の携帯電話番号を見て、架電して来たものである。 A 氏は上記通報者に対し、

「すぐに保健所に電話をして引き出して下さい。 子犬なら、6月1日開催の「守る会」主催の譲渡会でほとんどもらわれますから」

と依頼した。

(2) 同日午後1時59分、A 氏は、上記に重ねて自らも宮崎市保健所に架電し本件子犬たちの情報を得ようとしたが得られず、次に中央動物保護管理所(以下「管理所」という)に架電した。 宮崎県衛生管理課の委託を受けて管理所を運営している財団法人公衆衛生センター(以下「センター」という)の職員がこれに対応し、

「既に同日午前中に本件子犬たちを殺処分(以下「本件殺処分」という)した」

と答えた。

(3) 同日、告発人 X(以下「告発人 X」という)と野中公彦(以下「告発人公彦」という)が、センターに動物の引取を委託している宮崎県衛生管理課に出向き、本件殺処分の理由を問い質したところ、応対した瀬ノ口職員は、

「所有権放棄に伴う殺処分である」

と答えるのみで、上記告発人らの「それは合理的理由ではない」との指摘に答えることはできなかった。

(4) 翌30日、告発人公彦と告発人 X が宮崎北警察署の生活安全課に赴き、応対した B 警察官からの伝聞として、

「県衛生管理課に事情を聞いたところ、 『①当日は檻がいっぱいだったので収容できる場所がなかったこと、②当日が決められた処分日だったこと、及び③飼い主から殺処分の依頼を受けたこと、に基づいて本件殺処分をした』との説明を受けた」

と聞いた。 上記告発人らは同警察官に対し、「それらは本件殺処分の合理的必要性、 必然性、不可避性の根拠事由にはならない」と指摘し、更なる調査を要請した。

(5) 同年6月3日、告発人公彦と告発人 X は県衛生管理課に対し、本件殺処分について、「犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領」(1975年4月5日内閣総理大臣決定。別紙添付資料1)「第3 保管」 -2 「都道府県知事等は、施設に保管する犬、ねこ等の動物について、・・・・・飼養することを希望する者の発見に努めること」に適合した殺処分だ ったのか否かを問い質した。 応対した下村職員は、

「今回は努めていない。その理由は、①管理動物に 適性がなかったからである。即ち、環境省の基準に、離乳後社会化が図られ た後に譲渡するよう定めてあるところ、本件子犬たちが子犬であったため、 譲渡した場合に育つかどうか判断できなかったからである。併せて、②遺失 物法が改正されて抑留期間が1週間になり、抑留犬が3日で殺処分できなく なったために檻が満杯で、入れる檻がないために本件殺処分をした」

と回答した。

2.関係法令の確認

(1) 動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)第2条(基本原則)
動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
(2) 同法第44条第1項
愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(3) 犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領(昭和50年4月5日内閣総理大臣決定)第3(保管)-1(1975年4月5日内閣総理大臣決定。別紙添付資料1)
都道府県知事等は、犬若しくはねこを引き取り、又は疾病にかかり、若しくは負傷した犬、ねこ等の動物を収容したときは、適当と認められる施設(以下「施設」という。)に保管すること。
(4) 同第3-2 (同上)
都道府県知事等は、施設に保管する犬、ねこ等の動物(以下「保管動物」という。)について、標識番号の明らかなものは登録団体へ照会する等当該保管動物の所有者の発見又は飼養することを希望する者の発見に努めること。
(5) 同第3-3 (同上)
保管動物は、適正に飼養及び保管し、できるだけ生存の機会を与えるように努めること。ただし、治療を加えても生存することができず、又は治療することがかえって苦痛を与える結果になる場合等死期を早めることが適当であると獣医師又は都道府県知事等が判断した場合は、この限りでない。
(6) 同第4(処分) (同上)
保管動物の処分は、所有者への返還、飼養することを希望する者又は動物を教育、試験研究若しくは生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する者への譲渡及び殺処分とする。
(7) 家庭動物等の飼養及び保管に関する基準第4(犬の飼養及び保管に関する基準)-8(別紙添付資料2)
犬の所有者は、子犬の譲渡に当たっては、特別の場合を除き、離乳前に譲渡しないように努めるとともに、その社会化が十分に図られた後に譲渡するよう努めること。また、譲渡を受ける者に対し、社会化に関する情報を提供するよう努めること。
(8) 同第8(準用)
家庭動物等に該当しない犬又はねこについては、当該動物の飼養及び保管 の目的に反しない限り、本基準を準用する。

3.評価

(1) 宮崎県(衛生管理課)の従前の主張内容は、次のように整理できる。
① 2008年5月29日の瀬ノ口職員の「所有権放棄に伴う殺処分である」との説明(前記1(3))
② 翌30日の B 警察官からの伝聞としての、「当日は檻がいっぱいだったので収容できる場所がなかった」との説明(前記1(4))
③ 同じ機会の B 警察官からの伝聞としての、「当日が決められた処分日だった」との説明(前記1(4))
④ 同じ機会の B 警察官からの伝聞としての、「飼い主から殺処分の依頼を受けた」との説明(前記1(4))
⑤ 同年6月3日の下村職員の、「環境省の基準に、離乳後、社会化が図られた後に譲渡するよう定めてあるところ、本件子犬たちにはその適性がなかったから」との旨の説明(前記1(5))
⑥ 同じ機会の下村職員の、「遺失物法が改正されて抑留期間が1週間になり、抑留犬が3日で殺処分できなくなったために檻が満杯で、入れる檻がないために本件殺処分をした」との説明(前記1(5))
(2) 上記は全て次の理由により全く不合理である(上記①~⑥に対応して論じる)。
① 「犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領」第3(保管)-3の本文に「保管動物は、適正に飼養及び保管し、できるだけ生存の機会を与えるように努めること」と明記してある以上(前記2(5))、所有権放棄と殺処分とを漫然同一視ないし短絡させたかかる主張は明らかに違法である。 更に言えば、同第4(処分)が「保管動物の処分は、所有者への返還、飼養することを希望する者又は動物を教育、試験研究若しくは生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する者への譲渡及び殺処分とする」と全くの並列記載をしている以上、「殺処分」を「飼養することを希望する者・・・・・への譲渡」に優先適用する根拠は皆無である。 よって、「所有権放棄に伴う殺処分である」との説明を容認する余地はない。
② 2008年5月29日当日に管理所に収容されていた犬に係る記録書類(別紙添付資料3-3-1~13の合計)によれば、成犬10頭、子犬14頭(1ヶ月4頭、1ヶ月半6頭、6ヶ月4頭)が当日収容されており、そのうち1頭について当日「処分」の記載がある(別紙添付資料3-3-4)。管理所の施設概要では犬の収容能力は500頭となっており(別紙添付資料4)、当日の収容数はその5%以下、その半数が小さな子犬である。 よって、「当日は檻がいっぱいだったので収容できる場所がなかった」との説明は、明らかな虚偽である。
③ 上記①と同様、「犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領」第3(保管)-3の本文に「保管動物は、適正に飼養及び保管し、できるだけ生存の機会を与えるように努めること」と明記してある以上(前記2(5))、「当日が決められた処分日だった」との説明内容が仮に事実であったとしても、これを容認する余地はない。
④ 上記①③と同理
⑤ ここで下村職員が援用する「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」第4-8(前記2(7))は、表題のとおり家庭動物の飼養の基準であり、本件子犬たちの殺害の正当化理由にはなり得ないのみならず、同基準の第8(前記2(8))に全く逆行する明らかに不当な見解である。実際には、殺害された本件子犬たち4頭は、1ヶ月間母犬の母乳で育っており、健康状態にも全く問題がなかった。 よって、「環境省の基準に、離乳後、社会化が図られた後に譲渡するよう定めてあるところ、本件子犬たちにはその適性がなかったから」との旨の説明は全く不合理であり、容認する余地はない。
⑥ 上記①③と同一の理由により、「遺失物法が改正されて抑留期間が1週間になり、抑留犬が3日で殺処分できなくなったために檻が満杯で、入れる檻がないために本件殺処分をした」との説明を容認する余地はない。
(3) 小括
上記のとおり、従前の宮崎県(衛生管理課)の主張内容は全て全く不合理であり、本件子犬たち4頭に対する本件殺処分の正当化理由は皆無であるから、本件殺処分が動物愛護管理法第44条第1項の「愛護動物をみだりに殺し」に該当することは自明であって、明らかに同法条項違反の犯罪行為を構成する。

4.本件告発事件は氷山の一角に過ぎず、以下の根深い背景事情が存する。

(1) 捕獲された犬の飼い主が判明していたにも関わらず、管理所職員がかかる事実関係を無視して敢えてこれを殺処分しようと企んだ事案
2007年9月4~5日にかけての夜間に、C 氏の飼い犬が同氏宅から失踪したため、同氏は、翌5日(水)午前10時頃に宮崎市保健所(以下「保健所」という)に架電して、自宅の場所、当該飼い犬の特徴(白)、首輪の迷彩柄等、必要事項を伝えた。 実は、同日昼頃、C 氏宅近辺のファーストフード店前に当該飼い犬が所在していたところ、同店店員が保健所に通報したため、当該飼い犬は捕獲されていたものである。 にもかかわらず、C 氏が翌6日(木)午前に保健所に再び架電した際、「見つかったら連絡する」との回答だけだった。 C 氏から人を介して管理所への同道を求められた A 氏が、事前確認の趣旨で翌7日(金)午前8時30分に保健所に架電した際も、「見つかっていない」との回答だけだった。 同日午後12時30分、A 氏が再び管理所に架電したところ、「該当する犬はいない」との回答だったが、以前に知人の飼い犬が管理所に抑留中に管理所職員から同様の回答を受け、実際に管理所に赴くと抑留されていた事実を聞き知っていた C 氏が、念のために同日午後2時頃 A 氏を同道して管理所に赴くと、果たして当該飼い犬が抑留されていた。 同月5日午前10時頃に C 氏が保健所に通報した際に伝えた迷彩柄の首輪も、着用していた。 管理所職員は、犬の抑留(即ち保健所職員からの受取)時に、保健所職員から捕獲場所や犬の特徴が記入された抑留通知書を必ず交付されるところ、当該飼い犬の抑留通知書には捕獲場所と首輪の特徴(迷彩柄)が記載されていた(別紙添付資料5-1)。 C 氏の抗議に対して、管理所職員は「抑留中の白い2頭の犬のうち、どちらが当該飼い犬か判断できなかったために、連絡できなかった」と弁解した。 迷彩柄の首輪を等閑視して、真に「どちらが当該飼い犬か判断できなかった」 ということであったとしても、同日午後12時30分に A 氏が管理所に架電した際に「抑留中の白い犬が2頭いるが、どちらが当該飼い犬か判断できない」と答えれば良かったのであり、「該当する犬はいない」との実際の回答は、故意に当該飼い犬の存在を隠蔽してその殺処分を企んだものとしか解されない。 別紙添付資料5-2は、かかる顛末に立腹した A 氏が宮崎市保健所衛生管理課に架電して激しく抗議した状況の記録である。 なお、翌8日(土)、保健所から C 氏に対して、「当該飼い犬に鑑札が付いていなかったので、登録番号が分からなかった」との弁解の電話が入った。 しかし、この事情にしても、上記の「抑留中の白い犬が2頭いるが、どちらが当該飼い犬か判断できない」との答を妨げるものでは何らないので、弁解になっていない。
(2) 同じく、捕獲された犬の飼い主が判明していたにも関わらず、管理所職員がかかる事実関係を無視して敢えてこれを殺処分しようと企んだもう1つの事案
同年10月○日付の宮崎日日新聞のアドパーク(広告)欄に行方不明の犬(寅次郎《仮名》)を「さがしています」との広告(別紙添付資料6-1)を出していた D 氏は、上記広告を見た者から「当該犬がいないと言われても、必ず動物保護管理所に行って確認するように」とのアドバイスの電話を受け、同日、管理所に赴いてみると、電話上管理所職員から「該当する犬はいない」とされていた当該飼い犬がいたため、返還を受けることができた(別紙添付資料6-2、3)。 当該飼い犬は同年9月○日に A 町で捕獲されており、捕獲された当該飼い犬と共に管理所職員に渡された抑留通知書(別紙添付資料6-4)にも、捕獲場所、特徴が記載されていた。 但し、失踪時に着けていた青の首輪が黒に変わっていたので、D 氏が管理所職員に説明を求めると「個人情報だから説明できない」、「説明するには上の者の決済が必要だ」と説明を拒否した。 故に真相は不明であるが、首輪の色違いを等閑視しても、管理所職員は D 氏に対し、抑留通知書の他の記載に基づいて「該当する特徴を備えた犬がいる」と答えれば良かったのであり、「該当する犬はいない」との実際の回答は、故意に当該飼い犬の存在を隠蔽してその殺処分を企んだ(そして、隠蔽工作として青の首輪を黒にすり替えた)ものとの疑念を抱かせるに十分である。 なお、告発人 X は、上記2件の事実に基づき、同月18日付宮崎日日新聞のアドパーク(広告)に「飼い犬の行方が分からなくなった場合には警察、保健所への問い合わせだけではなく、各動物管理所へ必ず行って探して下さい。電話確認ではいないとされていた犬が実際は収容されていた例が複数件報告されています。ご注意下さい宮崎一県民」と広告を出した(別紙添付資料7)。
(3) 犬の譲渡拒否
従前、県衛生管理課は、次のようなことを縷々述べて来た。
① 1999年3月8日付県衛生管理課文書「いわゆる『不用犬ポスト』の今後の取扱について」(別紙添付資料8)においては、「新たに『里親希望者登録制度』を設けるとともに、子犬の抑留期間を3日から7日に延長し、譲渡の機会を増やすよう努める」とされている。
② 同年12月20日付県衛生管理課文書「『不用犬ポスト』撤去に係る経緯」(別紙添付資料9)「3 これまでの対策」においては、「子犬の里親登録制度の新設、動物適正飼養、愛護思想の普及啓発を推進し、当該施設の撤去が出来るよう努めてきた」とされている。
③ 成犬の譲渡拒否についての告発人 X からの照会に対する2003年8月18日付宮崎県福祉保健部管理課長からの回答(別紙添付資料10)においては、「抑留期限を経過した犬及び(元の飼い主が所有権を放棄した)引取犬については平成14年に131頭の譲渡を行っております。しかし、病気の犬や攻撃性のある犬については譲渡を断っております」とされている。
これは、捕獲犬、元の飼い主の所有権放棄で持ち込まれた犬(一説によると約半数を占める)を問わず、管理所所在中の犬の譲渡を可とする意味内容である。
④ 同年7月29日付「本市の動物管理行政について(回答)」(別紙添付資料11)においても、「抑留された犬については公示期間満了後に飼育希望者が責任を持ち終生飼育する意思があれば譲渡しています」とされている。
⑤ 2008年4月に県衛生管理課が発表した「宮崎県動物愛護管理推進計画」中の「犬及び猫の引取業務の改善」(別紙添付資料12)においては、「(前略)この引取措置については、動物保護管理法が制定された昭和48年当時、犬や猫の安易な遺棄の横行と、それに伴う野良犬や野良ねこの増加と咬傷事故などの人への危害の増加が社会問題となったため、飼養者の終生飼養の責務に反することとなるものの、やむを得ない事態としての緊急措置として位置づけられたものであると言われています。(中略) 平成18年度の実績では犬及び猫の引取り頭数は5,826頭となっています。次の飼養者が見つからず、やむを得ず致死処分する犬・ねこについては、国の定めた『動物の処分方法に関する指針』に従い、炭酸ガスを用いて安楽殺処分することを原則としていますが、これに要する費用については、現在、犬では全て行政の負担となっており、この費用についても大きな課題となっています。 一方、市町村単位で引取り場所を指定して巡回している『定時定点引取』については、引取りを申し出る飼い主に対し、飼い主責任の再教育が行われず、動物の命を軽んじる風潮を助長するだけであるという意見もあります」(同P18)とされており、あたかも宮崎県が殺処分を回避すべく努力しているかのような内容となっている。 なお、「炭酸ガスを用いて安楽殺処分」は要するに酸欠による窒息死であるから、当然に甚大な苦痛を伴うものであり、「安楽」は明らかな不当評価である。
⑥ 2007年9月7日に宮崎県のホームページに掲載された、県民からの提言に対する県衛生管理課の回答(別紙添付資料13)では、「御提言のありました動物愛護センターにつきましては、当県においては現在のところございませんが、従来から保護犬等の譲渡を行っており、まだまだ数は決して多いとは言えないものの、平成18年度には183頭の成犬や子犬を譲渡しております。動物保護管理所に収容された保護犬につきましても、飼い主の元に帰れる機会をできるだけ増やすため、犬舎の空き状況等を勘案しながら抑留期間を長くしており、平成18年度には最長9日間の抑留後に飼い主の元に返還された事例をはじめ、171頭の犬が飼い主の元に返還されております。(中略) 当県といたしましては、先進事例も参考にさせていただきながら、既存の機関やシステムをより一層活用し、動物愛護思想の普及啓発を図るとともに、大切な命を少しでも救うことができるよう今後とも最大限の努力をしてまいることとしております」とされている。 しかし、「里親希望者登録制度」の実態はなく、管理所に現れた譲受希望者に対しては、管理所職員が「成犬は渡さない」「飼主から引き取った犬は渡さない」等の不合理な“理由”を付けて譲渡を拒否しているのが現実である。前記2( 5)のとおり、「犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領」第3(保管)-3の本文に「保管動物は、適正に飼養及び保管し、できるだけ生存の機会を与えるように努めること」と明記してある以上、かかる対応は明らかに違法である。
(4) 猫の譲渡拒否
2003年7月29日付「本市の動物管理行政について(回答)」(別紙 添付資料14)においては、「猫については飼育者からの引取りのみ行っており、譲渡はしていません」とされている。 県衛生管理課が毎年報告する「ねこ引き取り状況」(別紙添付資料15)においても、引取件数と(殺)処分頭数(但し、水増しの疑いあり)の項目があるだけで、譲渡の項目はない。 管理所に現れた譲受希望者に対しては、管理所職員が「猫は処分手数料を飼主からもらっているので渡さない」「行政の裁量権である」等の不合理な“理由”を付けて譲渡を拒否している。 上記のとおり、猫については犬と少々状況が異なるが、前記2(5)のとおり、「犬及びねこの引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領」第3(保 管)-3の本文に「保管動物は、適正に飼養及び保管し、できるだけ生存の機会を与えるように努めること」と明記してある以上、かかる対応は同じく明らかに違法である。
(5) 小括
上記各事案に一貫して現れている県衛生管理課ないし管理所の姿勢は、「関係法令を無視しようが、何が何でも殺処分にしたい」というものとしか評価できない。 本件告発事件も、県衛生管理課ないし管理所の関係法令を無視したかかる違法不当な態度の一環として発現したものに他ならない。

5.本件告発事件の本質

本件告発事件の本質は、適法な動物の殺処分を偽装した動物虐殺事件である。 本件告発事件は、昨2007年、宮崎市保健所衛生環境課長(宮崎県中央保健所からの出向者で獣医師)ら4名が子猫4匹を大瀬町(管理所から100m南の場所)に遺棄した事実に基づいて、同年9月26日に動物愛護管理法違反の罪名で書類送検され、つい先日起訴猶予となった事案と、その本質において全く同一である。その際、遺棄を指示した同課長が「愛護団体(「守る会」を指示する)に殺処分を目的とした引き取りはしないと約束したため、殺処分できないから放した」と発言していると聞く。このように、管理所職員及び県衛生管理課は本件告発事件以前から「守る会」の連絡先を知っており、「守る会」に電話連絡するだけで容易に本件殺処分を回避できることを十二分に知っていたのである。 このように、容易に殺処分を回避できる状況が客観的に存在したにもかかわらず、かつ、上記の子猫4匹の遺棄事件が社会的な大問題となっていたにもかかわらず、関係法令を無視してまで本件殺処分に拘った本件被告発人たる管理所職員の意図は、殺処分の“実績”数を稼ぐことで、これをセンターの存在価値を根拠付ける“実績”とし、爾後の県からの事務委託を確保しようと企んだ、不当な経済利益を追求する動機・目的に基づくものとしか解されない。

6.総括

上記のとおり、本件被告発人による本件子犬たち4頭に対する本件殺処分は、動物愛護管理法第44条第1項の「愛護動物をみだりに殺し」に該当し明らかに同法条項違反を構成するのみならず、根深い背景事情を抱え、不当な経済的利益を追求する動機・目的の下、関係法令を悉く無視して敢行された悪質な犯罪行為であると思料するので、被告発人の厳重な処罰を求めるものである。

第4 立証方法

第5 添付書類

上記立証方法各1通
以上


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