第008回国会 厚生委員会 第4号
昭和二十五年七月二十五日(火曜日)
    午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長 寺島隆太郎君
   理事 青柳 一郎君 理事 大石 武一君
   理事 金子與重郎君 理事 岡  良一君
      中川 俊思君    原田 雪松君
      堀川 恭平君    丸山 直友君
      亘  四郎君    柳原 三郎君
      提 ツルヨ君    福田 昌子君
      松谷天光光君    大石ヨシエ君
 出席政府委員
        厚生政務次官  平澤 長吉君
 委員外の出席者
        厚生事務次官  葛西 嘉資君
        厚生事務官
        (大臣官房総務
        課長)     森本  潔君
        厚生事務官
        (社会局物資課
        長)      熊崎 正夫君
        厚 生 技 官
        (公衆衞生局環
        境衞生部長)  石橋 卯吉君
        專  門  員 川井 章知君
        專  門  員 引地亮太郎君
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七月二十二日
 委員岡崎勝男君及び赤松勇君辞任につき、その
 補欠として原田雪松君及び福田昌子君が議長の
 指名で委員に選任された。
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七月二十二日
 厚生年金保險積立金の運用等に関する請願(佐
 々木更三君紹介)(第一八五号)
 遺族の援護対策確立に関する請願外一件(青柳
 一郎君紹介)(第一八六号)
 私営の社会事業団体に対し公金支出の法律制定
 に関する請願(江崎真澄君紹介)(第二〇四
 号)
 大津援護館改築に関する請願(青柳一郎君紹
 介)(第二三一号)
 遺族年金支給に関する請願(高橋等君紹介)(
 第二七九号)
 薬事法改正に関する請願外二百四十九件(有田
 二郎君外二名紹介)(第二八〇号)
同月二十四日
 木花村から都井岬を経て福島湾に至る海岸地帶
 を国立公園に指定の請願(田中不破三君紹介)
 (第三〇〇号)
 国民健康保險の事務費全額国庫負担並びに社会
 保障制度の全面実施に関する請願(床次徳二君
 紹介)(第四〇〇号)
 薬事法改正に関する請願外四百六十九件(有田
 二郎君外二名紹介)(第四二四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
 災害救助法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第一三号)
 狂犬病予防に関する件
 厚生行政に関する件
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○寺島委員長 これより会議を開きます。
 まず災害救助法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本法案についての質疑は前会において終了いたしておりますので、これより本案の討論に入るのでございますが、本案の討論に関しては別に通告もございませんので、これを省略し、ただちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければ討論を省略し、これより災害救助法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本法案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
○寺島委員長 起立総員。よつて本法案は原案の通り可決いたしました。
 なお議長に提出する報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければさよう決定いたします。
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○寺島委員長 次に狂犬病予防に関する件について、原田雪松君より発言を求められておりますのでこれを許します。原田雪松君。
○原田委員 ただいま議題といたしていただきました狂犬病予防に関する件について近く提案いたしたいと存じますので、その内容を一応御説明申し上げまして御了承を得ておきたいと存じます。
 元来狂犬病予防に関する法律は、大正十一年の一月、法律二十九号で家畜伝染病予防法の一部に規定されておつたのでありますが、近時著しく狂犬病がここ数 年間に非常に激増いたしまして、特に本年のごときは、昨年の三倍を超過しておる状態であります。そういう意味からいたしまして、この予防撲滅の面におきま して、非常に法の上に不備な点がたくさんございますので、この際この法律を改正いたしまして、少くとも社会不安の除去とそれから撲滅の方法を講じたい、こ ういう意味で、実は法を提案いたしたいと存じておるのであります。もちろんこの点はGHQの公衆衞生課の福祉課長のドクター・ビーチユード氏の非常に強い 示唆がございまして、国内といたしましても、ゆるがせにできない一つの恐ろしい伝染病でありますので、これが徹底的に蔓延を防止するために撲滅をやらなけ ればならぬ、こういう趣旨から実は提案をいたしておるのであります。厚生省の七月八日の発表を見ますと、すでに狂犬病の発生頭数は五百五十七頭でございま す。そうしてかまれた人間が千百六十二名になつておりまして、そのうち死亡者がすでに三十名出ております。東京都だけでも相当の数でありますが、現有東京 でかまれた人たちは二百八十七名の多きに達しております。これをこのまま放置いたしますならば、ますます全国にこの病気の蔓延のおそれがあるのでありま す。現存私どもの方で調査をいたしてみますと、全国で畜犬として鑑札を受けておりますものが約百万頭に近いのであります。ところが百万頭の上に、現在野犬 としておりますものが、少くとも百五十万が頭おる見当でございます。そういたしますと、現在日本に二百五十万頭の、のら犬を入れましての犬がいるわけであ りますが、もし一朝にしてこの被害をこうむることになりますと、ゆゆしき問題を惹起するであろうことを痛切に感じておる次第であります。そういう意味か ら、大体の発生地は関東地区でございますが、すでに大阪に一人発病いたしまして、二十八名の咬傷患者を出しておる次第であります。本病にかかりますと、御 承知の通りまことにみじめな症状になりますので、私ども事実自分の知合いの子供がなつたのを見たのでありますが、見るに見かねるような惨状を呈するのであ ります。しかもこの病気は多く子供に発生しやすく、何となれば子供は犬を友だちとして、好伴侶として遊んでおります関係上、そのためにこれがじやれて子供 をかむというような実例がたくさん残されておるのであります。そういう意味から私どもは、この公衆衞生の見地からいたしましても、一日も早く法の完璧を期 していただきまして、予防接種の励行並びにこの蔓延の防止とともに、病毒の撲滅を期したい、こういう意味から提案をいたしておる次第であります。
 構想の趣旨につきましては、今ちようど印刷中でありますので、あとでお手元に差上げたいと思いますが、簡單に申し上げますと、そういう理由からこの伝染予防法案というものを提案いたしまして、すみやかに御審査くださらんことを切に希望いたす次第であります。
 一言概略を申し上げまして、御了承を得たいと存ずる次第であります。
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○寺島委員長 次に医療制度に関する件を議題とし、本件に関連し医薬分業問題についての発言を求められておりますので、これを許します。葛西厚生次官。
○葛西説明員 いわゆる医薬分業の問題について、今日までのいきさつをごく簡單に御説明を申し上げさせていただきます。
 御承知のように、この問題は長い間の問題でありますが、これが問題になりましたのは、昨年の七月、例のアメリカの薬剤師協会使節団の勧告に始まつており ます。御承知のようにその中には、医薬分業の目的を達することというような一項があります。これはこの勧告案を私ども政府が司令部からいただきましたとき は、一項々々についてよく研究をしてもらいたい。この使節団の勧告というものは、專門家が專門の立場から研究をしたものであるから、日本においても研究の 価値のあるものであります。だから研究してもらいたい。従来司令部から日本政府にやつた勧告案が三つある。今まで二つ、その一つは、社会保障制度の勧告 案、もう一つは、アメリカ医師会の使節団の勧告、それからこの勧告、この三つを読むと、それぞれその專門家のやつたものであるから若干の矛盾があるものも ある。そういうところをそれぞれ医師会なら医師会、薬剤師会なら薬剤師会がやつたというのを見れば、実に興味深いことであつて、しかしこれは專門家の勧告 であるから、十分尊重して日本側でも研究をされる価値のある問題だと思うから、研究をしてもらいたいというようなことを言われて受取つたものであります。 その一節の中に、医薬分業の目的を達することという一項目、これが今日医薬分業の問題がやかましくなりました最近における口火だ、かように了解できると思 います。ちようど昨年の秋ごろでありますが、役所の方でもこの医薬分業の問題を特に研究してみないかというようなことを司令部のサムス准将からお話があり ました。それが第七国会になりますと、御承知のように国会におきましても、いろいろこの問題の御議論であつたのは、御承知の通りでございます。本年一月九 日だと思いますが、サムス准将が、例の医師会、歯科医師会、薬剤師会の代表を呼びまして、そうしてこの問題をひとつ真劍に検討してみないかというような話 合いがありまして、そうしてそれはこの医薬分業というものを一体賛成なのか不賛成なのか、それを各団体でひとつきめたらいいじやないか。実施の方法などに ついても、いろいろ希望があるとか、あるいは意見があれば、それも申してみたらいいじやないかというようなことで、役所の方には昨年秋ありますと同時に、 今年初め一月九日には三志会に対してお話があつた。そうしてちようどそのころサムス准将はアメリカの方にちよつと用事があつて帰るから、その留守中に話を ひとつ適当にまとめておいて、おれが帰つたらば、三者の意見を聞きたいというようなお話であつたのでございます。そして二月七日の日に、サムス准将はアメ リカから日本に帰任をして参りまして、そうして三志会で話し合つたけれども、どうも結論がつかぬ、まとまりませんということを聞いて、今度は二月二十七日 でございますが、日本医師会の役員に直接話をされたようであります。そうして日本医師会が代議員会において医薬分業の根本の問題について態度を決定すると いうようなことがありまして、四月三日になりましてから、代議員会の意見をさらにサムス准将に説明をするというようないきさつがありました。四月四日に厚 生大臣がサムス准将に呼ばれまして――当時の厚生大臣は林大臣でありますが、どうも医薬分業の問題を三志会で相談をさせて案をまとめようと思つたけれど も、それがまとまらないから、ひとつ政府に頼むよりほかはない、政府の方でこの医薬分業の問題を研究するための委員会を厚生省の中でつくつてくれないかと いうような話合いがあつたのでございます。この点は、日本医師会におきましても、当時はそういうふうに役所で話合いをしてもらう、あつせんをしてもらうと いうことについては、同意をされたそうであります。大臣には、医師会においても同意したから、こういうような話合いの協議会をひとつ役所の中につくつて問 題を進めた方がいいじやないかというような話合いがありました。大臣の命を受けまして私どもがさつそくその線に沿つて医薬分業の問題を検討するために―― 医薬分業の問題を検討いたしますためには、どうしても従来拂われておりますいわゆる薬価といいますか、お医者さんに拂つている診療費とほんとうの薬代と、 それから技術料というふうなものにわける必要がありますので、そんなようなことを考え合せまして、臨時診療報酬協議会規程の案を私どもつくりまして、これ を医師会、歯科医師会並びに薬剤師会にお示しをして、これでどうだという相談をしたわけでございます。これはちようど私が三志会の当局に来てもらいまし て、こういう案でひとつやつてくれぬか、どうだという意見を尋ねたわけでございます。ところが、四月十八日になりまして、日本医師会がそれに対する意見を すぐ持つて来られました。その意見の内容は、第一條に書いてある診療協議会をつくる目的を私どもの方は、こまかくなりますが、慣行診療報酬の構成につい て、厚生大臣の諮問に応じて答申をするためにつくるのだ、こういう書き方をしてあつたのですが、医師会の方は、医療の向上のために適正診療報酬の標準につ き云々というふうに改めてもらいたいということで、会をつくる目的について若干の表現が違うという点が第一。それから第二の医師会の方の意見としては、全 部で三十人の委員ですが、全委員の半分十五人以上を医師と歯科医師にしてくれ、それからそのほかにも若干のことがありますが、要するにそういうふうな希望 が達せられないときには、自分らはこの診療報酬協議会には協力はできないというような意味の手紙があつたのでございます。そして医師の当局は、四月二十四 日にサムス准将に、その厚生省に出した手紙の意味を説明すべく会見を求めたのであります。この四月二十四日のサムス会談というのが、実は非常に重要な会談 になつてしまつて、以後非常に医師会との間にもめたことになるわけですが、少し詳しく申し上げますと、サムス准将がどの会談で、医師会が言う第一條の会を つくる目的について、一体厚生省側が慣行診療報酬の構成について厚生大臣の諮問に応じて答申をすると、こういうふうに言うてあるのと、医師会の言う医療の 向上のために適正診療報酬の構成について大臣に答申をするというのは、表現は違うけれども同じことじやないかというようなことを、サムス准将は言われたの であります。多少ニユアンスは違いますけれども、ねらう意味は大体同じことだと言つても言えぬこともないと思う、大体そういうようなことをサムス准将は言 つた。それから第二の医師会側の言つております全委員の半数は医師、歯科医師で占めてくれというようなことを医師会の方から厚生省の方に言つて来たわけで すが、これもサムス准将は、自分はそれに反対だ、医薬分業というものをもしやらせるならば、議論する場合には、医師、歯科医師、薬剤師というこの三人が医 療関係者なんだから、それが半分、あと経済学者だとか、あるいは医療を受ける立場にある者というふうなものが半分と、薬剤師を込めて半分という出張であれ ば自分も同意ができるけれども、医師と歯医者だけで半分というのは同意ができない、こういうことを言うたのであります。この点は私どもはそういうふうな意 見を持つておりまして、医師、歯科医師、薬剤師で半分くらいを占めたらいいじやないか、あとは一般の受ける方の立場でやるべきだという同様な意見であつた わけであります。それから第三点は、委員の割振りや何かについての医師会の希望でありますが、こんなものは、どうこうかたくならぬでも、お互い三志会同士 で話合いをしたらいいじやないかというようなことで、私どもの方は、医師、歯科医師、薬剤師の方は相談がまとまれば、三志会でまとめた数でけつこうだ、も しまとまらなかつたならば医師側四、薬剤師側四、歯科医師側二というようなことで十人を選んだらいいじやないかというふうな意見を参考に申し述べておいた のですが、これがけしからぬというような医師会側の意見であります。これは何も双方できめてもらえばいいのだというふうなことが、当時話合いがあつたらし いのでございます。そんなふうな事実があつて、二十四日にサムス准将とそういうふうになつた。
 そこで私ども厚生省の立場といたしましては、二十四日のこの会談というものは、第一條の文句は別といたしまして、あるいは委員の数をどうするか、あるい は全部の医師、歯科医師、薬剤師をこめて半数でなければならぬというような点については、まつたく厚生省と同じ意見をサムス氏が言われたんだから、医師会 はもう一ぺん三志会で適当な数をきめ、そうしてこの会に参加をしてもらいたいというふうなわけで、爾後ずつと督促をして参加方を慫慂して参つておつたので あります。ところが、その後皆さん方御承知のように、医師会側におきましては、日本医師会雑誌の臨時第一号というふうなものが特に出まして、日本医師会医 薬分業問題の経過と日医の基本的態度について、というふうな日本医師会側の意見が発表されるというふうなことがあつたりなどいたしまして、大分混乱をして 参つたのでございます。そこで厚生省といたしましては、できるだけこの会に加わつていただきたいという態度をずつと持続いたしまして、ちようど大臣はお留 守でありましたが、私五月の二十三日でありますが、田宮会長ともお会いして、そうして打開をしたいというようなわけで会談をいたしましたが、なかなか結論 を得ないというようなことであつたのでございます。ちようどそんなことをしております最中に、実は今だから申し上げてよいと思うのでありますが、五月二十 六日にサムス准将から厚生大臣あてに、例のいわゆる公開状と申すものが参つたのであります。これは要するにどういうことが書いてあつたかと申しますと、今 までの日本医師会の現役員会がとつておる行動を見ますと、どうも自分の方は現役員を信頼できない、事実を会員に告げておらぬ。それでもし日本医師会のごと く民主的団体であります以上は、会の幹部というものはありのままに事実を会員に伝え、そうして会員の総意をもつて行動すべきものである、それにもかかわら ず今までのやり方を見ておると、かようなふうには想えないので、今日となつては、日本医師会の首脳部に対しては、自分は信頼ができないという意味の公開状 が大臣あてに来たのであります。これはきわめて重大なことでありますので、この公開状を私どもは出したくないということに意思をきめまして、そうしてちよ うど兵庫県においでになりました林厚生大臣のところには使を派して、そういうふうな方針でやる、それだから大臣になるべく早く帰つていただいてこの問題を 收拾したいというようなことの連絡をいたしました。そうしてこの公開状を実は握りまして、早く医師会と話をまとめようじやないかというふうにいたしたわけ でございます。しかしなかなかうまく行かぬ。そのうちに厚生大臣がお帰りになるというようなことで、今度はまた医師会の前医師会長あるいは医師会のいわゆ る長老というような方々にもお集まりを願いまして、ある程度事実を述べて、何とか打開の道はないものだろうか、実はこういうふうないやな公開状も来ておる のだがということで話をいたしました。若干長老の方々も、この間にあつせんをされるというようなことで、やつたのですが、なかなか解決の見込みが立たぬ、 まあしかししようがないからというので、厚生大臣がその後二回ばかり医師会の幹部と話しますうちに、大体医師会の意向もわかりますし、なるべくならばでき るだけ円満にやつて参りたいというようなつもりでいろいろ考えまして、四月の十七日に厚生省から示しました臨時診療報酬協議会規程案を一応撤回をいたしま して、新しくこういうふうにしてやつたらどうだという案を、六月二十四日に医師会、歯科医師会、薬剤師会三者に出したわけでございます。その案というの は、二つの調査会をつくつて、一つは臨時診療報酬のやり方についてやるというものそれからもう一つはそれが診療報酬、具体的に申しますればお医者さん、歯 医者、薬剤師の技術に対する報酬額を、技術料と薬価にわけて行く、どうわけたらいいかというふうなこと。わけるとすればそのわけたものが医療関係者の生活 を脅かすものであつてはいけない。それからなおこのことによつて医療が向上するものでなければならぬ。それからそれをさらに国民経済が受け得る、患者が受 け得るものでなければならぬというようないろいろなそういうフアクターから考えて、技術料と薬価とをわけてやるという一つの臨時診療報酬調査会。そうして 一応わけたものが出たら、その結果医薬分業をやることがいいか悪いかということを議論するための会を医薬制度調査会というふうなかつこうでつくる。それか らもし分業を実施することがよいということになつたならば、その具体的方法をどういうふうにやるか、法律の改正を要するか、あるいはまた地域などをどうい うふうにやるか、それから準備もいるだろうから、いつやるかというようなこと、それから最後に法律の改正を要すれば、そういうような点にも触れるというよ うなことを審議するための臨時医薬制度調査会というふうなものと二つにわけてやることにいたしまして、むずかしかつた例の委員の割振り等につきましても、 これは三志会で御相談を願いたい。三志会でまとまらないということであるならば、厚生省といたしましては、臨時診療報酬調査会の方は医師、歯科医師、薬剤 師を七、五、三の割合でやつたらどうか、それから臨時医薬制度調査会の方は医師、歯科医師、薬剤師側から出るものは、やはり四、二四の割合でどうだという ようなことで話を出したわけであります。そうしたら、この点につきましては、若干の経緯はありますが、結論を申し上げますと、三志会等の大体の線は賛成だ つた。これで行こうじやないか、スタートしようじやないかということになつたわけでございます。ただ一番問題になりましたのが、臨時診療報酬調査会の七、 五、三の割合であつたのでございます。歯科医師側がこの点については非常に不満でありまして、厚生大臣のところへも抗議を申し込みに参つたりなんかいたし たのですが三志会で相談の結果七、五、三というのを医師会側も一人讓る、薬剤師側でも一人讓るというわけで、六・五・四、医師が六、歯科医師が五、薬剤師 が四ということで話がついて、そうして各医師会、歯科医師会、薬剤師会から、それぞれ臨時診療報酬調査会並びに臨時医薬制度調査会の委員の推薦も、その線 に沿うて四・二・四は異議がありませんで出て来たわけです。それで厚生省の方でも残つた各三志会から推薦した以外の、あるいは経済関係の人あるいはまた国 民の代表というような、受ける立場を代表する人を選びまして、大体委員が本日内定をいたす予定でございます。そうしておそらく明日くらいにはこの委員会、 並びに委員の構成について、関係方面の了解を得て発表し得る段どりになつたわけであります。そうして来月早々この両方の委員会が開かれることになるつもり でございます。
 現在の段階はそういうことでございますが、その途中で実に困つたことが出て参りましたのは、サムス准将の方におきまして、私どもせつかくかかえておりま した例のいわゆる公開状をぱつと各府県の医師会長に送つてしまわれたことでございます。そのサムス准将の手紙によりますと、厚生省の報告によると、この二 つの委員会ができて、近く発足を見るということを聞いておる。ちようどこの機会に自分は厚生省にあてて、過日公開状を出しておいたが、それを皆さんに送る というような前書をつけて、五月二十六日付でありましたか、その公開状をサムス准将から各府県の医師会に送つたというようなことで、医師会の田宮会長、並 びに武見副会長は、どうしてもおれないというふうなわけで、過般辞意を表明されるというふうなことに現在なつておるわけであります。厚生省といたしまして は、かようなことでございますので、医薬分業の問題はこの二つの委員会で広く意見を開き、そうして今申し上げますように、いわゆる医療費というものが、技 術料と薬価との二つにわけて計算することができるかどうか。わけたとした場合に、そのわけることが医療の向上に役立ち、しかも医師、歯科医師、薬剤師の生 活を脅かすようなものでなく、また国民が受け得る程度のものでなければならぬというような点から考えまして、適正なものがきまればこれを取上げる。そうし てまたさらにその上に臨時医薬制度調査会において、医薬分業を行うことの可否、それがいいか悪いか、行うとすれば具体的な方法はどうするか、いついかなる 地域に、いかなる方法をもつて行うのが一番いいかということを検討してもらい、その結果、もしこれが法律の改正を要するというふうなことになれば、改正案 をつくつて国会の審議を経るというふうな段取りになるものだと、かように考えております。
 はなはだ雑駁な申し上げようでありましたが、一応今までのごく大ざつぱな経過を申し上げた次第であります。なお御質問に応じましてお答え申し上げます。
○寺島委員長 本件に対し発言の通告がございますので、これを許します。岡君。
○岡(良)委員 ただいま御説明があり、また昨日の参議院の本会議で、堂森芳夫君からこの問題について質疑があり、これに対する御答弁があつたのでありますが、これらを総合いたしまして、二、三点お尋ねいたしたいと思います。
 これは私ども、その間の事情はよく熟知しておりませんが、ただいま次官の御説明にありましたところの、昨年七月に来朝いたしましたアメリカ薬剤師協会の 総司令部へのレポートは、これは総司令部へのレポートであつて、ただちに日本政府への勧告であるかどうかという点について、ただいまの御説明では、日本政 府への勧告であるというような御説明でありましたが、そのような慣例で取扱われるものでありましようか。まずその点をお伺いいたします。
○葛西説明員 お答えいたします。薬剤師協会の使節団の報告は、御説の通りマツカーサー元帥に対する報告でありますが、これはマツカーサー 元帥の方から日本政府の方にさらに渡されまして、そうしてこれは日本で研究をされる価値あるものであると思うから、この勧告を日本政府に渡すから、日本政 府でも研究するようにということで、先ほど申し上げましたような社会保障制度調査団、医師会の調査団並びに薬剤師の調査団の勧告は日本政府に公に司令部か ら手交されておるものであります。
○岡(良)委員 ではその次に御説明になりましたところの、四月四日に厚生大臣とサムス准将が面会をされたという点でありますが、私どもが 聞いておるところでは、別にそのことのために出頭をされたのではなく、他の用件で総司令部へたまたま行つたところが、当時問題になつておつた医薬分業のこ とに触れて、サムス准将から林厚生大臣に対して、省内に委員会設置等の提案がきわめて非公式になされたということを聞き及んでおるのでありますが、これは 公式に面会を求められ、公式に指示があつたのでありますか。それとも私どもが聞いておるような、非公式な話題として出ておるのでありますか、その辺の事情 をお伺いいたします。
○葛西説明員 今のお話でありますが、当時私はアメリカの方に行つておりまして、四月四日は実は日本におりませんでしたことと、もう一つ は、これは林大臣が向うへおいでになりましたので、正確にお伝えすることはできないかと思いますが、私の聞いておることを一言申し上げさせていただきたい と思います。これは先ほども申し上げましたように、サムス准将が医師会の幹部とお会いになりましたときに、ひとつ役所の方でそういうふうな委員会をつくる ことにしようじやないかというようなことで、医師会もこれに同意をされて、そうしてサムスさんの方から大臣においでを願つてお話があつた。こういうふうに 了解をいたしております。ついでに話したかどうかというふうな点は、あまり詳しくは存じませんが、従来そういうものをつくりますときには、デイレクテイヴ とかメモランダムというものはないのであります。事情のいきさつを話されて、政府から一つあつせんしてもらいたいというようなお話があつた。その際林大臣 から、今の診療報酬については保險にも委員会がある、その保險の委員会との関係はどうするかというようなことのお話もあつたように聞いております。しかし これはそういうふうなことをきめるのに、ごくプライベイトに、ごく内々に政府の意見を聞き、参考にするためのものだから、政府だけでつくる委員会でけつこ うじやないか、国会の審議を経た正式の協議会とか委員会ということでなくてもいいじやないか、そういうわけで、ただ人が集まつて相談をするというか、あつ せんをしてもらいたいというような御依頼があつたように聞いております。
○岡(良)委員 しかし先ほど来の次官のお話を承つておると、やはり臨時診療報酬協議会をつくられ、また一応これが御破算となつて、医療報 酬に関する委員会や、あるいはまた医薬制度に関する臨時の委員会ができる――これはなるほどお話によつては、それによつて医薬分業の可否が十分協議される ということになつておりますけれども、しかし実際問題といたしまして、当局の取扱い上からは、これからはやはり医薬分業を実現するという前提の上に立つて この委員会がつくられ、また従つてその結論もその方向に当然出されて行くのじやないかと思う。特に日本医師会の会長、副会長が辞任されたというようないき さつ等を考えましても、実際問題としては、それは当然医薬分業が実現されるという方向に持つて行かれると思う。それに対して厚生省として、委員会の結論が これを否認するというようなことでは、非常に重大な問題が起つて来るように思いますが、その辺の見通しと、またそういう場合に立ち至つた場合における厚生 省としての覚悟のほどと申しましようか、御決意の一端を伺いたいと思います。
○葛西説明員 この委員会をつくつてかようになりましたのは、一体医薬分業を前提としてやつておるのかどうかという点でありますが、これは あくまでも結論を先に出しておいて、ただかつこうだけ委員会をつくるという性質のものではないように了解いたしております。今度できます臨時診療報酬調査 会、それにおきまして、先ほども申し上げましたように、技術料、薬価等をわけて、さらにそういうふうな結論が出たならば、それをもとにしてやることがいい か悪いか。やるとすれば一体どういう方法でやるか、いかなる時期にどうやるかというようなことで審議をされて、ことに法律改正を要するかどうかというふう なところまで審議をされて、そうして答申があるはずであります。その答申に基いて、さらに検討した上で、やるかやらないかということをきめる。従いまし て、医薬分業を前提のもとに審議を進めて行くというようなことは、今のところ考えておりません。
 それから会長、副会長等が辞任された経緯ということを今お話がございましたが、会長、副会長辞任の経緯は、先ほども申し上げましたように、私どもとして は、公開状というようなものが出ることを極端におそれまして、これは林大臣の御方針でもございまして、ぜひこれを出さずに済ましたいというわけで、司令部 側にもそのことはよくお話をして、こつちでまとめるから待つてもらいたいという態度をとつておつたわけでありますが、指令がつい出てしまつた。その内容も 医薬分業をやるかやらないかという問題よりは、むしろ真実を会員に伝えなかつた。たとえば四月二十四日のサムス会談の結果というようなものは、医師会の雑 誌によつて御承知だと思いますが、非常に違う。その違うことをほとんど下に伝えずに、自分たちだけが了解をして勝手に行動しておつた。これは民主的に運営 さるべき医師会としてはけしからぬことである、こういうふうに御承知のように書いてある。その点が非常にぐあいが悪くなつて、辞任をせられたものだ、かよ うに私ども了解をしているわけでございます。このことがただちにとつてもつて医薬分業の前提となる、しかるがゆえに両氏が辞任をされたというふうには、私 は解釈をいたしておりません。
○岡(良)委員 その点なんですが、たとえば四月四日の委員会云々の提案があつたということにつきましても、御存じの通り、先ほどおつしや るように、一月七日、三志会の役員の人に対し意見の開陳あり、あるいは二月二十七日に、さらに強硬な意見の開陳等があつて、その後幾多の経緯を経て、結局 医師会はこの問題に対して不誠意である、実現をするということについても、誠意を欠いておる。であるから、これまでは医師会や歯科医師会や薬剤師会等の合 議の上に、適当な案をつくるべきであるという態度を一擲して、政府の方でこれに対する善処をしろということになつたと考えられます。そういう筋道であると 思います。やはりこれはサムス准将としては、医薬分業は強制的に実施すべきものであるという大きな意図のもとに、この委員会あるいは協議会の運営を決定さ れたものだと考えておりますので、しかもそれでない、反対の結論を出す、そしてまた反対の結論をそのまま、たとえば現在の任意分業のままにこれを押し切つ て行くことが、はたして可能なのでしようか。その辺のことをもう一ぺん承りたいと思います。
○葛西説明員 私どもといたしましては、先ほど申し上げました通りに、今でも思つておるのでございますが、向うのサムス准将が、一体どう考 えておるかということになりますと、これは想像にわたることでございますのでどうかと思いますが、もちろん御承知だと思いますが、サムス准将が折に触れて 言われた三志会における話等から考えますると、ある程度の地域等の制限がある。あるいはまた国民自身に、ある程度教育するというか、納得が必要であるとい うふうなことは申しておりまするが、とにかく医者が薬を売つているというようなこと、あるいはまた歯医者が金歯を入れるというふうなことでなしに行くとい うことが、結局は医療の向上に役立つのではないかというようなことは、三志会の会談でも申しておるのであります。そういうことは考えておられ、述べられた ことはございますが、しかしそれならば、すみやかにやれというのかといえば、そうではないのでありまして、やはり委員会をもつて合理的に検討をし、そして いろいろ医師会、歯科医師会、薬剤師会という專門の者のほかに、それを受ける立場にある者、あるいはまた国民が受け得るかどうかという経済的な方面からも ものを見る、非常に広い立場から見て、そうして日本に最も合う妥当な結論を導き出すものだという点は、これもまた申しておられるわけであります。私どもは この問題をただちにそういう前提をもつてやつて行くのだというふうには、やはり考えておりません。
○岡(良)委員 しかしサムス准将の談話を総合しますと、今もおつしやつたように、医者が薬を売つておる、歯医者が金を売つておる、そうで はなく、彼らの技術に対する正当な報酬が支拂われねばならないということは、もちろんであるということを言つておられますし、また別個の談話では、現存す でに薬学、医学というものは高度に発展しておるのであつて、同一人がその両方の知識を兼ね備えるということは困難であるということを言つておられる。従つ てサムス准将の考えとしては、医薬は分業すべきものであるという結論に立つていると、私は思うのであります。それはそうといたしまして、それではたとえば 社会保障制度の勧告につきましては、政府の方でも社会保障制度審議会というものが、法律にのつとつてできまして、これが現在試案要綱を発表する段階になつ ているというふうな運びになつておるようでありますが、われわれはこの医薬分業という問題について、現在の任意分業を強制分業にするしないということは、 やはり医師法やあるいは薬事法やあるいは医療法等の、きわめて根本的な改正に触れる問題でありまするので、もしそういう問題を大きく、一齊に解決点を見出 そうとするならば、そうしたにわかづくりの委員会や協議会をつくるのではなく、むしろやはり法律に準拠して、この問題に対しての適当な結論を出し得るよう な審議会等を設けて、そして医療を受ける者や、医療担当者や、あるいは調剤担当者、その他学識経験者なり、官庁の諸君なり、適当な人物を網羅して、国民の 納得の行く姿において、これが医療費の軽減にもなり、あるいは医療の向上にもなり、あるいは医師の報酬に対する、また薬剤士に対する、社会的な処遇におい ても妥当である、こういう三つの観点から、最も適当な結論は、やはり法律に準拠した審議会あるいは委員会等によつて出すべきものであつて、厚生省がにわか づくりに委員会をつくつたり、あるいは協議会をつくつてみたり、そういうふうなことで――その苦慮せられておるお気持は十分われわれもわかるのであります が、取扱い方の立場といたしまして、何かそういう点、いわば自主性がないという感じがしてならないのであります。そういう点について厚生省当局としての御 見解を承りたいと思います。
○葛西説明員 ただいまのお話は、法律に準拠した公式の委員会というふうなもので、堂々と審議すべきものであるということでございます。ま ことにその通りかとも思うのでございますが、ただ保險の場合でございますと、例の保險の方の診療報酬の協議会があつたりなどいたしまして、その保險あるい はその保險以外の医療をどうするかというふうなことになつて参りますと、非常に問題がございます。それともう一つは、実は当時林大臣とお話があつたときに は、できるだけひとつ急いで委員会をつくりたい、そういうことになると、国会の開会を持つて、委員会をどうこうするというふうなことも、ちよつとできぬの じやないかというふうなことで、四月でありましたが、当時参議院も選挙があるという情勢の前であつたりなどいたしまして、なかなかこういうものを招集する ということができないというふうな事情もあつたのではないかと、これは想像されるのでございます。そこでとりあえず急いで準備するためには、法律に基礎を 置かぬでも、やり方は法律と同じように、公正にやれば問題はないではないかというようなことで、任意の委員会というふうなもので御審議願うというふうなこ とになつたのだ、かように了解いたしております。別に法律による委員会がいけないというふうな積極的な意味があつたわけではない。むしろ非常に急いでいた というふうなことで、かようになつたものと思つております。従いまして、この委員会の法律上の拘束力というものになりますれば、むしろ限界があるわけでご ざいまして、政府といたしましては、一般の声をその委員会によつて聞くというくらいな程度でございます。従いまして、委員会である程度結論が出るというふ うなことになつて参りますれば、また保險の場合につきましては、保險診療報酬協議会というようなものに、さらに法律上は付議する必要がある。かような性質 のものだと考えております。
○岡(良)委員 厚生省のいろいろな御苦労のほどは、私は十分お察し申し上げておるのでありますが、こういうふうなことをあまりしつこく申 し上げるのは、やはり国会の審議権なり、また政府としての自主性というようなものは、われわれの常識的な考え方では、公式な申出があつて、それを受入れ て、そうしてまた公式なガラス箱の中の一つの機関をつくつて、それで公正な結論を出すというふうな運びが、やはり占領下にあつても、民主主義の線に沿う正 しいやり方だと思いまするので、実はこういうことをいろいろお尋ね申し上げたのですが、さらに次の問題といたしまして、先ほど次官の御説明によりまする と、診療報酬に関する委員会がつくられまして、そのあとでまた医療制度に関する委員会がその結論をもととしてつくられる、こういうような御意見であつたよ うであります。大体申し上げるまでもなく、医薬分業が強制分業か、任意分業かという問題は、すでに三十年以上論争されておる問題であり、いわばとうの立つ た問題でありますが、これが現在先ほど来のような過程で再び問題となつて来ました。ところが、これまでの論議におきましても、厚生省の当局がお考えになつ ておられるような、あるいは医療費の軽減とか、あるいは医療内容の向上というような、そういう公衆の福祉の面から問題が取上げられるというよりも、どちら かといえば、患者の佛うところの医療に関する一切の報酬を薬剤師と医師がどのように配分するかという、いわば利益の分配というような、医療担当者である薬 剤師やあるいはまた医師の取り前の問題として、特にこれが論議されておつたような印象を與えておることは、いなめないと思うのであります。しかし、この問 題はそういう観点からではなく、あくまでもまず第一には医療内容が向上するかどうか、第二点としては、これによつて現在の苦しい国民生活において、医療費 が国民に対しても過重になるということがないかどうかという点、むしろ進んでそれを合理的に軽減するという点、しかも第三点として、むしろ薬剤師あるいは 医師等の收入や所得の調整ということが問題となる、こういうふうな観点から当然問題が進めらるべきものとわれわれは考えておるわけです。
    〔委員長退席、青柳委員長代理着席〕
ところで、今の御説明によりますと、やはり厚生省の方では医療報酬を薬剤師と医師がどのようにわけ合うことが最も合理的であるかという、いわばそうした薬 剤師やあるいは医師団体の利益あるいは取り前の高の問題として、あるいは直接関係団体の利害の問題として取上げられておる。その解決がついたあとで、これ を制度化するかどうかということが次に問題となるということは、この問題が取上げられる場合の角度といたしまして、われわれは医療内容の向上とか、あるい はその負担の軽減ということではなく、やはり依然としてこういう利益の分配という観点から問題が取上げられておるような感じがするのでありますが、もしそ うであるとするならば、われわれはきわめて当局の御処置には不満であります。そういう点につきまして、もつとつつ込んで何らか御見解があるならば、承りた いと思います。
○葛西説明員 ただいまの点につきましては、あるいは私の申し上げ方がつたなかつたために、そういうふうな御印象をお與えしたということで ありますれば、これは訂正をしなければならぬことだと思います。今、岡委員が仰せられた通り、医療の内容とそれから医療費をできるだけ軽減をして、国民の 負担を増加しないというふうな点を考え、そしてなお医療関係者の生活の安定を維持しなければならぬというふうな点から考えまして、現行の診療報酬の構成を どうやつて行くべきかというようなことを考えているわけでありまして、言葉はたいへん悪うございますが、医者と薬剤師が米びつを二つにぱつとわけるという ふうなことから考えておるのではございません点を、御了解願いたいと思います。ただ受ける側から、医療の向上、あるいは医療費を安くせなければならぬこと は当然のことでありますが、さればといつて、それじや医師あるいは薬剤師に極端な犠牲をしいて、やつて行けないというふうなことになつては、これまたいけ ません。そうすれば、ひいては医療の向上ということも期せられなくなるわけでありますので、やはりこの三つの、医療の向上、それから医療費の負担軽減、そ れから医療関係者の生活の安定維持というふうなものは、これはどれをどうこうということではなしに、考えて行かなければならぬものだというふうに考えてお ります。
○岡(良)委員 たとえば、具体的な問題に多少入つて行きますと、これは率直なお考えを承りたいのですが、ごく下世話な話ですけれども、一 着の古着をそのままそつくり一軒の古着屋へ持つて行くよりも、別々の古着屋へ持つて行つた方が、得るところが多いということが言われておるのですが、特に 医療報酬を分業にするかしないか。現在の医療報酬には、調剤手数料というものは全然含められていないというようなかつこうになつておりますが、これは当然 健康保險の場合、被保險者の負担になるか、あるいは保險者の負担になるかという形になる、あるいはまただれかマイナスになるという形になつておるのであり ますが、一体医療報酬の内容を適正化するという名のもとに、いろいろな形に分離をするということは、当然常識から見て医療費の負担の増嵩になるということ に私ども考えざるを得ないのです。そういう点について、厚生省は多少の資料等で御調査もあろうと思いますが、そういう御結論が出ておりましたら承りたいと 思います。
○葛西説明員 だんだんむずかしいお尋ねになりまして、私のようなしろうとでは、あるいはちよつと間違つたことを申し上げたりなんかして、たいへん恐れ入るかと思いますので、ばつとした常識的なことでお聞きをいただきたいと思うのでございます。
 今お話のように、現行の診療報酬にいたしましても、あるものによりましては、薬価あるいは技術料をわけますと、高くなるものもあるかもしれません。しか しまた、いろいろな関係から安くなるものもあると思います。そんなようなことで、全体的に達観してみて、やはり国民の経済的負担を増すか増さぬかというこ とを考えて判断を下すべきものであるように考えております。具体的にどうか、基礎的な資料があるかというふうな点につきましては、若干のものは用意できて いると思いますが、私つまびらかにいたしませんので、ごく大ざつぱなことでお許しをいただきたいと思います。
○岡(良)委員 具体的な問題は別といたしまして、なおこれに関連して厚生省のお考え方を承つておきたいと思うのです。御存じのように、現 在医師に対する行政と申しますか、医政は非常に社会化しつつあると思つております。現実に国立の療養施設や病院施設等ができたり、あるいは社会医療保險が できたり、保健所網がどんどん発展して、医療の日本の現勢は、先進国にも、内容は別といたしまして、形の上では劣らないくらいな発展をいたしていると私ど も思つているのであります。そういうような形で医療が社会化しつつある。ところが、御存じのように、現在のいわゆる薬事行政と申しましようか、これがまつ たく手放しの放任主義と申しましようか、製薬メーカーの利益追求のまにまになされているというかつこうでありまして、せんだつての委員会でも私ども申しま したが、たとえば健康保險の一点單価は、医師の場合十円ないし十一円であつて、戰前の六十五倍そこそこである、ところが、どうしても医者が使わねばならな い重曹やクミチンキ、アルコールが五百倍、七百倍という形になつている。でありますから、国立病院の経理から見ても、あるいは個人の開業医師の状況から見 ても、医師、薬剤師の支出は非常に大幅にふえているのであります。そういうようなことであつても、医師はそれに耐えて、医療の社会化のために協力しておる のであります。ところが一方薬剤の価格が上つておるばかりでなく、たとえば医者は社会化の線に沿うて、広告なんかは嚴重な制限を受けておる。ところが薬の 広告なんかは、新聞の広告收入の大宗になつておる。七月十三日に私が偶然に都の薬の広告料を調べましたら、毎日新聞、朝日新聞、読売新聞の全国紙の広告料 がニツパス、オリザニン・レツドとかいうもので三百六十万円になる。中央紙をひつくるめ、あるいは地方紙をひつくるめるならば、新聞紙の広告だけでも、私 は年間十億をはるかに突破するものと思う。そのほか雑誌の広告や、あるいはアドバルーンにまで広告をやつておりますし、それからまたサンプルといつて病院 や医院に無料でつくつた新薬を配給しておる。こういうものが、結局全部病院の負担となり、ひいては患者の負担となる。いわば製薬に関する限りは、まつたく 自由放任で、野放しの利益追求を認めておる。こういうような形であるのに、一方では医政の方は日に日に社会化しつつある。こういう段階において、いわば社 会化に逆行するように薬事行政は自由放任主義がとられつつある。こういう相反する形において医薬分業が行われるということは、結局は製薬メーカーによつ て、医師なり病院の経済なり、ひいては患者、ひいては国民一般がいわば搾取されるという結果になることは当然です。そういう意味合いからも、われわれ従来 もしばしば当局にお尋ねをしておるのでありますが、現在こういうふうなきわめて野放しの自由放任主義で、利益追求の自由競争を認めておるというような形に おけるこの薬事行政をそのままにしておいては、とうてい医薬分業も、あるいは医療費の軽減も、またあるいは医療内容の向上も望めないと思うのですが、そう いう点について厚生省は何らかお考えがあるならば、この機会に承つておきたいと思うのであります。
○葛西説明員 薬事方面のことについての厚生省の監督なり、あるいは指導というものが手ぬるいという今のお話、ことに医療の社会化というふ うなものと比較してのお話でございましたが、薬の方でも、御承知のように薬事法等によりまして、誇大の広告を禁止するとかなんとかというような、公衆衞生 上必要な規則というものは、やつておるつもりでございます。ただこれがどの方面をもう少しやらなければならぬかということになると、おのずから御議論もあ ると思いますし、また私どもの方でもやつて参らなければならぬことのように思うのでございます。ただ薬にいたしましても、私しろうとでありますので、あま り実際のことを知らないので、的確に申し上げかねるかもしれませんが、一例をペニシリンみたいなものにとりますと、広告をいたしますようなことで、国民に 高いものを與えておるというように考えられますが、過去数年間のペニシリンの生産なり、あるいは販売の価格というものに比べてみますと、必ずしも今のペニ シリンは高いものを国民に強制しておるというふうにはなつておらぬのではないかと思います。一例をペニシリンにとりますと、そう考えておりますが、現に公 定よりずつと下になつておるというようなことで、一時非常に高かつたペニシリンなんかも、国民が利用できるようになつて来ております。ストレプトマイシン なんかも、だんだん企業が進んで参れば、そういうふうになるのであります。なお具体的に、そうでなくて値段が高過ぎるというふうなものがありますれば、何 とかせねばならないと思いますが、ごく大ざつぱに申しますれば、だんだんああいうふうにペニシリン等ができて参りますれば、必ずしも高いものを使わなくて もいいように思います。しろうとでありますから、とんでもないことを申し上げて失礼ですが、一応そんな感じを持つております。
○岡(良)委員 ペニシリンのお話が出ましたが、ペニシリンも、御存じのように当初は千数百円したものが、最近は二十万單位で百数十円とい うふうになつております。しかしわれわれが調べたところでも、それすらも原価の数倍であると承知しておる。そういうことは、專門的な観点からいろいろ意見 もありますので、私は自説を主張しようと思いませんが、とにかく現在のようなこの製薬業者の野放しの自由競争を放任しておきましては、これは医師あるいは 患者は、薬を買つておるのか、広告代を拂つておるのかわからぬという実情を、十分御認識いただきまして、やはり薬剤も第二次生活必需品というようなものに 類似したものでありますから、厚生省としても薬事審議会等が製薬メーカーの出店にならぬで、真に国民の医療そのものの立場から公正な運用がなされるよう に、われわれとしてはこの機会に特に希望にたえないのであります。そのほか強制分業の場合に対症無診投薬が普及化するとか、あるいは注射が非常にふえてお りますが、今でも注射に対する制限がいろいろ指示されておりますので、これが非常な影響をもたらすとかいう面について具体的に申し上げたいのであります が、また別の機会に譲ります。私の質疑はこの程度で打切りたいと思います。
○青柳委員長代理 それでは次に丸山委員。
○丸山委員 医薬分業の本質的の問題でありますとか、あるいは利害の問題は、将来幾らでも機会があることでありますから、それは申し上げま せんが、ただ先ほど来経過の御報告のありました中に、私の承つておるところと多少相違しておるのではないかというような感じを受けたことがございますの で、それをもう一度あらためてお答えを願いたいと思います。それは四月十八日、日本医師会から臨時診療報酬協議会規程の修正に対する申入れがございまし た。その申入れの内容が、私の承知しておるのと多少違つたのではないかと思いますので、もう一度その点を伺います。
○葛西説明員 医師会から厚生省の案に対する申入れの点は、厚生省の臨時診療報酬協議会規程の第一のところの修正で、医療の向上のために適 正診療報酬の標準につき厚生大臣の諮問に応じ云々、こういうふうにしてもらいたいというのが第一でございます。第二の点は、全委員数の半数は医師、歯科医 師にしてもらいたいという点。それから第三は、これは詳しく申し上げませんでしたが、全委員の数の他の半数は経済学者その他とし、特に国家財政、国民経済 に通曉する者をもつてこれに充てるようにしてもらいたいという点。なお続けて申しますと、薬剤師、官庁関係委員、保險団体委員等も残りの十五名の中に入れ てくれ、あとの十五人は医師と歯科医師にしてもらいたい。第四は、第三項の委員には、従来の厚生省の委員会に、医師以外の者で当時学識経験者として採用さ れた者は、加えないようにしてもらいたい。以上の各條件が十分勘案せられないときには、日本医師会は本協議会と協力することはできない、こういうふうな五 箇條を書いて四月十八日に厚生大臣に出しております。
○丸山委員 ただいま正式にお読みになりましたのは、先ほどの御報告と少し違つておる点がはつきりしました。さつきはこういうふうな日本医 師会の修正の意見に厚生省が賛成しなければ、この協議会に協力しない、こう御報告になつたのであります。ただいまは勘案と御報告になつた。その点違つてお ります。賛成しないということは、日本医師会の修正意見を厚生省に押しつけて、その通りに厚生省がしないときには協力できないという意味になりますし、こ ういう精神を勘案して再びお考えおきを願わなければならないというのと、たいへんその間に差があるのであります。それで、厚生省が何らの御相談なく、かつ てにおつくりになつて、委員会の規定に全然反対のものを出して、それで非協力であるというふうにとられたことが、相当委員会の経過に障害になつておると私 は考えております。
 もう一つ伺いたいのは、そのとき慣行診療報酬という言葉を使われておるが、どういう意味で使われておるか。厚生省において、慣行診療報酬というのは、通常の場合何をさして言うておるか、この際明瞭にしておいていただきたいと思います。
○森本説明員 従来厚生省で慣行診療報酬という言葉を使つておりますが、これは一般の自由診療報酬と申しますか、社会保險以外の診療報酬、 こういう意味に使つております。慣行料金というのも同じでございます。それでこの際慣行診療報酬という言葉を使いましたが、今申しましたような慣例がござ いますので、非常にややこしくて、間違いを来してはいかぬというので、次官が関係の団体のお集まりを願いました際に、特にこの点につきましては御説明をい たしまして、この規程で使うところの慣行診療報酬というのは、現に行われているところの診療報酬、すなわち現行診療報酬と同じ意味である。従つて社会保險 の診療と、それから一般の自由診療、この両者を含んで、現に行われている診療報酬という意味で、慣行診療報酬という言葉を使いました、かような説明を特に 申し上げておるわけであります。この点従来の用語例と違つておりますので、特別の注釈を加えて、この用語を用いたわけであります。
○丸山委員 大体私はその当事者なので、あまり詳しいことを申し上げてはいかがかと思いますので、詳しく申し上げませんが、実はこういうふ うな原案を厚生省でおつくりなさいます場合に、最初サムス准将から、この問題は三志会において解決しろというような示唆があつたのでございます。その三志 会だけで結論を出すということは困難であるから、ひとつ厚生省に委員会をつくつたらどうかというところへ参つたのであります。従つて委員会の規定等をつく る場合には、やはり三志会等と御相談があつて、おつくりになればよろしいのでございますが、従来の用語とまつたく違つた意味の、慣例を破つたような用語の ものをつくつて、それを押しつけて参りまして、それに対して異議を申立てた者を、協力せざる者というようにお取扱いになつたということが、こういう非常に むずかしい事態を引起した。これは医薬分業のよしあしということではありません、こういう問題を取扱う上においても、厚生省の御態度というものが、こうい うようなトラブルを起した原因だと、私は実は考えておるのでありますが、将来こういうことのないように希望するのであります。ただこの中でも、ただいま岡 委員から申されたことでありますが、医者と薬剤師との間で診療費をただ二つにわける、利益をわけ合うというのでなくて、医療の向上というような意味、ある いは国民の福利というような意味、そういうような意味から、医薬分業というものをよく検討しろということは、最初からサムス准将も言うておられることだと 私は承知しておるのであります。しかるに厚生省が最初に示されました原案には、そういうことはちつとも盛られておらなかつたがゆえに、医師会からこれに対 して、医療の向上というような文句で訂正を申し出たのでありますが、今の御答弁で、厚生省もただ二つにわけるのではない、そういうふうな医療の向上という ようなことも考える、国民の福利も考えるのだというような御意見だということが、初めて明瞭になつたわけであります。こういうようなことは、質問としては はなはだおかしゆうございますけれども、これから委員会を進行することでございますから、厚生省は、この問題に対しては常に頭を置かれて、もう少し円滑 に、あたかも敵対するような形で物事を進められたのでは、決してうまく参らぬと思いますので、それらの点をよく御勘案くださることを、特にこの際お願いし ておきます。
○青柳委員長代理 福田委員。
○福田(昌)委員 いろいろと御説明いただきましたので、これまでの厚生省の態度と申しますか、そういうことはよく了解できたような気がす るのでございますが、しかしこの医薬分業の問題と申しますのは、次官の御説明を承りますと、臨時診療報酬調査会と、また医薬制度調査会の結論を待つて、そ れから先にやるかやらないかをきめる問題であるべきだというような御答弁がありましたので、その御答弁からいたしますと、御態度きわめてごりつぱである し、そうでなければならないと思いますが、しかし現実の問題というものを考えてみると、どうもその御態度とは違つて、腑に落ちない点が多々あるように思わ れのでございます。昨年から今年にかけまして、三志会の中でもいろいろなごたごたがありましたが、それに対する御当局のおとりいただきました処置というも のも、私どもとしては、非常に了解しがたい点が多々あるのでございます。具体的なことは丸山、岡委員から御質問があつたと思いますから、避けさしていただ きますが、ことに対外的な問題におきましても、薬剤師側の方のおとりになつておる態度というものは、たとえば去年から再三にわたりまして、厚生省から医薬 分業の法律案が出るというような新聞記事が出ておるのであります。これが一、二回であれば、そういうことも間々世間にあることでございますから、別にとが め立てする気もないのでありますが、薬剤師側の業界の新聞にも、あるいは大衆の読む新聞にも、再三再四にわたつて医薬分業が取上げられ、今にもそういう法 律が出るのだというふうな記事が載せられておるのであります。こういうようなことが、大衆にどういう影響を與えておるか存じませんが、ただいままでの次官 の御答弁から見ますと、そういう問題は、まあ考えることはいいことでありますが、その前提として医業制度調査会、あるいはまた臨時診療報酬調査会の結論を 待つてきめるべき問題であるというようなお考えであれば、こういうことに対しても、一応三志会なり、あるいはまた医師会なり、あるいは薬剤師会あたりなど に対する態度というものも、何らかの御処置をおとりになるのが当然じやないかというような気がするのでございますけれども、そういうことに対しては、まる きり野放しである。しかも私どもといたしましては、次官の言葉を返すようで恐縮でありますが、何か医薬分業に対して結論を先にお出しになつて、その結論に 合わないような態度をとる者に対しては、非常な重圧が加えられて来ておるような感じを受けるような御処置をとつておられるのであります。しかしこれは今日 までのことでありますから、おとりいただいたこれまでの処置を、いまさらどうしろという気はございませんが、今後はどういう態度をおとりくださるか。それ ぞれ業界の新聞にもいろいろな記事が載りますが、そういうものに対して、一体厚生省はどういう態度をおとりになるか、聞かせていただきたいと思います。
○葛西説明員 今後この問題が進むにつれまして、医師会の側あるいは薬剤師の側から起きまする、いろいろなこの問題を推進するために、熱心 の余りやります行き過ぎた運動についての態度をどうするかというようなお尋ねのように拜聽いたしましたが、これは日本医師会にいたしましても、日本薬剤師 協会にいたしましても、まつたく独立の大きな団体でありますので、私どもがそう一々各団体のすることを干渉がましくしたり、あるいはまた今お話の中にもあ りましたように、ある種の圧迫を加えるということは、最も好ましからざることのように思つておりまして、私ども今後といえども、さようなことはやらない方 針でございます。ただ私どもといたしましては、事柄がきわめてデリケートなことでもありますので、不必要にお互いの感情を刺激し合うというふうなことは、 好ましいことではないということで、これも役所としてどうこうということはいかがと思いますが、私どもが気のついたときには、関係の人たちには座談的に、 ごくプライベートにお話をするようなことはございました。
    〔青柳委員長代理退席、委員長着席〕
最近大分そういう点も自粛されて来ているのじやないかというふうに思いますが、その辺、福田さんなんかいかにお考えでございましようか、私どもとしましては、それ以上かれこれ干渉がましいことを言うことは、嚴に愼んで参りたいと依然思つております。
○福田(昌)委員 ただいま次官の御答弁をいただきまして、まつたくそのお考えに対しまして御同感でございます。ただ私がお願い申し上げた いと思いますのは、ただいまの御答弁から推察いたして参りますと、たとえば薬剤師協会の方あたりが医薬分業は近日中になるのだ、あるいは厚生省あたりで法 律案がちやんとできておるのだというようなことを、今後ともどんどん発表なさるという場合があつても、厚生当局として、そういう大きな団体に対しては野放 しにしておく、何ら干渉しない態度であるというふうに解釈してよろしゆうございますか。
○葛西説明員 将来医薬分業になるということが、薬剤師協会側から新聞にでも出るというふうなときはどうするかということでありますが、委 員会もできておるわけでございますし、第一回の委員会が来月早々開かれますれば、役所としての態度も公にその席でも申しますし、関係団体も代表を送つてお るわけでございますから、今後はかような間違つた報道が三志会方面から出るということは、私どもほとんど想像できないわけであります。先ほども岡委員ある いは丸山委員からお話がありましたように、法律に基かない委員会ではありますけれども、堂々とその委員会で検討し合い、お互いに議論し合つて、ガラスの中 でやるような気持でやりたいと思つておりますので、かような間違いの記事が少くとも三志会の方面から出るということは、想像もつかぬことのように思つてお ります。
○福田(昌)委員 次官の御説明まことにごもつともでございますし、この問題はサムス准将の御勧告にもありますように、三志会でこの問題を きめるべきであろうと思います。従つて厚生省がこれに対して直接どうこうというようなことは、ただいま次官の御説の通りであろうかと思いますが、しかし広 告とか、あるいは啓蒙宣伝と申しますか、そういつた面においても、次官の御想像のつかないことがこれまでも多分に起つて参つたのじやないかと思います。医 薬分業などの宣伝にいたしましてもそうでありますし、また最近では輿論調査というものに名をかりまして、薬剤師の方あたりが御調査いただきますと、九十何 パーセントかにわたつて大衆は強制分業を支持しておるというような御報告が出ておるそうであります。ところが、同じ輿論調査でありましても、医師会側では 八十何パーセントかは現行のままを支持する調査が出るのだそうでございます。同じ輿論調査というものにおいて、結果がそのように違うということは、私ども 了解しがたいのでありまして、どちらをとつていいか、私どもとしてはわかりません。大衆はなおわからないだろうと思います。こういうことかいろいろな記事 にどんどん野放しに出るということになりますと、三志会で、本来ならひざを突き合せて仲よく協議しなければならないことが、世間的にもいかにもけんか腰で 争つておるようになつて参り、そういうふうな懸隔がだんだんひどくなるということは、三志会をつくりましたもともとの趣旨にももとると思います。そういう ことに対しての、厚生当局のお取締りといいます場と語弊があるかもしれませんが、今後の御態度を聞かせていただきたい。
○葛西説明員 かような大きな、しかも名誉を持つた医師会あるいは歯科医師会あるいは薬剤師会というような団体が、それぞれ極端な、非常に 間違つた宣伝をしたりなどするというふうな場合で、もし政府の方がかようなことはいかぬというようなことで、監督上何とか処置をしなければならぬことがあ れば、望ましいことではありませんが、注意を喚起するというふうな措置は、して参りたいと思つております。しかしそれはあくまでも極端な場合でございまし て、私どもとしましては、かような名誉ある団体が行動します場合には、相当思慮深い判断のもとに行動するものと考えまして、できるだけかようなことは避け て参りたいというような心持ちは持つておるわけでございます。
○福田(昌)委員 私ども厚生当局に御希望申し上げますことは、実はそのことにあるのでありまして、医師会といい、薬剤師会また歯科医師会 といい、いわば非常に紳士的な団体の方々であります。こういつた団体の方がこの医薬分業の問題をめぐつて、いかにもけんかをしておるように世間一般大衆か らとられるということは、心外にたえないところであります。これはどうか厚生当局のお肝いりで仲よくこういうことを協議できるような態勢になるべく打つて 行つていただく、そうして三志会で早く結論が出るような方向に誘導していただくような御態度をお願い申し上げたいと思うのでございます。もう一つ、ついで にお聞き申し上げたいのでございますが、厚生当局御自体は、医薬分業に対してどういうお考えを持つておられるのでございましようか。たとえば厚生当局御自 体の独自のお考えは、強制分業をやつた方がいいというふうなお考えを持つておられるのでしようか、どうでしようか、率直に伺わせていただきたいと思いま す。
○葛西説明員 たいへんむずかしい御質問でございまして、今審議会の開かれようとしておりますときに、厚生省がどう思つておるかというふう なことを、公の席上で述べることはどうかと思いますので、差控えさせていただく方がいいのじやないかと思いますが、ただ私どもとしましては、先刻も申しま したように、昨年の秋以来、事務的にいろいろ調査をした方がいいというふうな司令部からの勧告もありまして、若干のデータ等を出して調べてはおりますが、 問題は非常にデリケートでもありますので、実を申しますと、厚生省の中におきましても、医務局、あるいは公衆衞生局方面と薬務局方面とでは、しぜん意見も 違うというふうなこともございますので、今にわかにどうこう結論をきめるというふうなことでなしに、もつぱら委員会の結論をまち、広く申せば輿論のおもむ くところを見ながら最後の態度をきめたいというのが、率直に申し上げました厚生省の態度である、かように考えております。
○福田(昌)委員 医療の面に関する大衆の負担とか、あるいは福祉というような面から、今日の医薬分業に関係ある調査事項としまして、厚生省がこの二、三年の機会において、御調査いただきました事項があるのでございましようか。
○葛西説明員 分業の問題というのが、御承知のように、昨年の秋から大体始められました関係上、特に分業の問題をとらえてどうこうというよ うな資料は、実は珍しいくらい厚生省にはございません。ただ御承知のように、医療の実態調査を先年からやつておりまするし、あるいは保險の診療報酬を協議 いたします場合等の、若干の事務でやつております資料はございますが、まだ特にこれというようなものは、率直に申し上げますと、ないというのが実情であり ます。
○福田(昌)委員 サムス准将の御勧告によりますと、日本の医者は薬を売つて暮しを立てておる、歯科医師は金を売つて暮しを立てておるとい うふうに見えるという御注意があつたようでございますが、そういうような御注意を厚生当局はお読みくださいまして、なるほどそうだというようにそのときに お考えになつたのでございましようか。それともその前から、どうも日本の医者は薬を売つて生計を立てているような気がするというように、サムス准将の御勧 告通りの状態であるように、厚生当局は今日の医者の状況を考えておられたのでございましようか、どうでありましようか。
○葛西説明員 たいへんむずかしいお尋ねでありまして、お医者さんと申しましても、――お医者さんを前においてたいへん恐れ入りますが、ピ ンからキリまでありまして、人が言う場合にもずいぶん極端なことを言う。一番いい方の右の方のことを言つているのもあれば、極端なことを言うのは一番左の 方を言つているというわけで、議論が右をとるか左をとるかで、大分極端になつてしまう場合が多い。ことにお医者さんなり薬屋さんの場合には、それが多い。 サムス准将がはたしてどういうデータによつてああいうことを言われたか、あるいはサムス准将が分業の問題を三志会等にお話になつた場合のいろいろな基礎的 な数字等にわたつてのデータ等のあるのも御承知の通りでありますが、どの資料から准将はそういうことを言われたのかは、私どもはまだ聞いてもおりません。 要するに准将の意見としてさようなことが伝えられ、それがすべて今度設けられます二つの調査会において審議せられるということになつております。率直に申 しまして、実はむずかしい御質問で、ちよつとお答えできないようなことで、申訳ないと思います。
○福田(昌)委員 たいへんごむりな御質問を申し上げたわけでございますが――、それでございましたら、あのお言葉を厚生当局は、なるほど日本の医者は薬を売つておるというように御解釈くださいましたでしようか、どうでしようか。
○葛西説明員 これは私事を申し上げると、たいへんあれですけれども、実は先般、東一の坂口院長さんにお目にかかりましたときに、坂口さん は、そういうお医者さんもあると言つておられました。坂口さんが言われるのだから、私もあるのだろうと是認せざるを得ない。しかしそれはいかぬので、やは り自分らは処方を書いて渡している、この方がいいのだ、少くとも日本の医者でも、薬と技術料というものをわける習慣だけはぜひつけたい、かりに百円なら百 円といつても、この中に技術料が八十円入つている、薬代は二十円だというような、技術料に対する信頼を得させるということは、ぜひ急務のように思う、そう なると、薬を売る医者なんかはとんでもないことだというような話を、実は坂口さんが話されたことを思い出しましたので、先生から言われればさようなものか なあと、私どものようなしろうとは思わざるを得ないので、率直に申し上げるわけであります。
○福田(昌)委員 たいへんこまかい御質問を申し上げまして、恐縮でございますけれども、そういうサムス准将のお話は、一応そういう例もあ り得るのだというようにお認めになつたと了解してよろしゆうございますね。私も医者の端くれでありますけれども、あまり薬を扱いませんので、お医者の現実 はどうかということは、詳しく存じませんが、そういう人もあるかとは存じます。では、そういう方が今日の医者の中にあるようになつた原因は、一体どこにあ るかということにつきまして、お考えいただきましたことがありますか。
○葛西説明員 私はまつたくしろうとでありますので、かようなことをお答え申し上げる能力もないのでありますが、しいて想像いたしますれ ば、日本でさようなことになつたのは、従来の慣行というようなものが、大きな力があるのではないだろうか。これは今場当りに浮んだ感じでございますが、な おそういう点につきまして必要がありますれば、調べますなり、あるいは專門の政府委員なりから、別の機会にお答えさせていただくようにお願いしたいと思い ます。
○福田(昌)委員 そういたしますと、一昨年でございましたか、大体におきましてここ二、三年来の医師の診療報酬とか、医師会の態度とかい うものに対しましては、サムス推奨の御勧告がなかつた場合におきましては、医師会、厚生省御自体としては、それほど今の医療面に対して、特別二、三年前と はかわつた事態を認めていなかつたというように解釈してよろしゆうございますか。
○葛西説明員 御質問の趣旨が、よく私には了解できないのでございますが、この問題はいろいろな角度から、非常に広い立場からものを考えな ければならぬことだと思います。たとえば医療の内容を向上さすという、先ほど丸山委員がおつしやいましたような点、それから社会保障制度とかいうようなも のが出て参りますれば――もう勧告も出ようとしておるわけでありますが、ああいうような立場からものを考えてみたり、そんなようないろいろな立場からもの を考えます場合に、いろいろな結論が出て来ると思います。私どもといたしましては、やはり先ほども申しましたように、その問題のきつかけは、やはり昨年七 月アメリカ薬剤師協会の視節団の勧告がきつかけになり、その後ずつと続いていろいろ検討が加えられておるということだと思います。従いましてあの四月四日 の林大臣に対するサムス准将の話というようなものが、臨時診療報酬協議会やなんかの具体的なことは、あそこで始まりますけれども、私どもなり、医師会、歯 科医師会、薬剤師会というようなものが問題を取上げたのは、やはり昨年七月の薬剤師協会の使節団の勧告というようなことではないかと思います。当つておる かどうかわかりません。
○福田(昌)委員 漠然とした御質問で、非常に御迷惑だと思いますが、限局してお尋ねさせていただきますと、国民が今日の医療の負担の場合 におきまして、今日医薬分業の問題を引起さなければならない、医薬分業の問題が起らなければならないような事態が、二、三年前と違つて、今日起つて参つて おるかどうかということを、厚生当局はお考えになられますかということをお聞きしたい。はなはだまわりくどく申し上げたのですが、結論はこうです。二、三 年前と今日の状態とを比べてみまして、非常に国民の医療の負担ぐあいにおいて、今日医薬分業をやらなければならないような状態になつておると厚生省はお考 えになりますか。
○葛西説明員 これも私しろうとでありますので、專門的なことになりますから、よくわかりません、釈迦に説法になりますが、最近御承知のよ うに医術というものも大分進んでも来ておりますし、治療の方法にいたしましてもいろいろな新しい方法ができて来ている。結核等の治療にしても何にしても、 御承知のようなことでございます。従いまして、医療内容の向上、医師がその技術を向上させるという必要性は、今日非常にあるのじやないか、日進月歩、医療 のやり方なり何なりの方法は、ずいぶん進んで来ております。従いまして、医療担当者が相当勉強をして、これらの進んだ技術を国民の医療の上に與えて行くた めの努力をしてもらわなければならぬ事態が、終戰後、ずいぶん長く外国からとざされておりました関係もあると思いますが、出ているのじやないか、かように 思います。そんな意味で、やはり医療を向上させるというふうな面から、こういうものも取上ぐべき時期じやないか。漠とした考えですが、そういうところでご ざいます。
○福田(昌)委員 簡單にひとつお尋ねいたします。いろいろ御説明を伺わせていただいたのでございますが、結論的に申し上げますと、二、三 年前と今日の状態を比べてみました場合に、今日医薬分業の問題が、世間ではやかましく言われておりますが、国民生活の現実という問題を考えてみれば、二、 三年前と比べて、国民の医療の福祉の面においては、国民の負担の面においては、さほどひどくかわつた事態にはなつていないように拜承できると思います。一 昨年厚生当局が薬事法の改正におきまして、二十二條において医師は自分の見た場合におきましては、患者の求めに応じて調剤することができることにいたし、 従来附則でありましたものが、本則に入つて参りました。ああいうような態度を考えて参りますと、二、三年前、少くとも二十三年の第二国会までの厚生省の御 態度は、医薬分業は大衆の便宜からいつて非常に不都合な状態であるから、むしろ薬というものは当然の仕事として診察したお医者さんが調剤した方がいいのだ というお考えに立つて、ああいう法律案が出されたのだと思います。ところが二十三年にはそういう法律案を出しておりながら、二年後の今日は、いきなり医薬 分業をやつた方がいいというような厚生省の御態度のように聞えるのでございます。どうも国民大衆の生活の不便とか、福祉とかいうものとはかけ離れて、厚生 省がちよつとしたことによつて、厚生省御自体のお考えにおいてかつてに法律をおつくりになる、大衆と離れたものをお考えになつていらつしやるような気がす るのでございますが、その間の御見解を承りたいと思います。
○葛西説明員 お尋ねの趣旨が、ややわかつて来たような気がするのですが、私どもも、医薬分業というものを前提にして議論をしているのでな いことは、御了解いただいたことだと思います。ただ先年薬事法の改正等が出た場合と、今日の状態はどうかという点でございますが、これらの点は、先ほども ちよつと触れましたように、日進月歩の医術の進歩というようなものに、お医者さんが追いついて行つてもらうためには、やはり相当制度の上にも考慮して行か なければならぬということ、ことにいろいろな医療の制度あるいは医学教育というようなものも御承知のようにかわりつつございます。そういうふうになつて参 りますれば、その結果どういうふうにやるべきかという点は、おのずから出て来ると思うのでありまして、福田さんは先ほど、私とのやりとりをしておると、状 態の変化はなきものと認める、よつてというようなお話でしたが、もう少しゆとりをとつて御了解を願いたいと思います。
○福田(昌)委員 私が申し上げたいことは、二十三年の第二回国会におきましての薬事法の改正から見ると、厚生省のお考えが、今日言われて いる医薬分業と多少逆行しておるような御態度をおとりになつておつたということは、いなめない事実だと思うのでございます。ところが今日の場合は、その態 度と全然あべこべな方向を、今日の医療の向上、医学の向上のためにお考えになつておられるように考えられるのでございます。医学の向上その他医療の社会化 という点から、いろいろな制度をお考えいただくのは、非常にありがたいことでありますし、私どもも同感でございますが、その場合に、もう少し国民大衆の生 活の実態と絶えず関連性のある御態度をとつていただきたいということを、お願い申し上げたいのでございます。
○提委員 今まで御質問なさつた委員の方が、偶然にも三人ながらお医者さまばかりでございました。お医者さまと厚生省の次官とのいろいろな 問答を、私たち拜聽したようなかつこうになつたわけでありますが、この厚生委員会においでになるお医者さんが、片寄つた考えで日本医師会だけの肩を持つて いらつしやるというようなことは、決して考えておりませんので、誤解のないように聞いていただきたいと思います。
 大体この医薬分業の問題は、厚生省自体がサムス准将の命令通りに動いて、非常に自主性がないではないか。しかも医師会、薬剤師会においては、おのおの自 分の利益を中心として動きつつあるではないかというような見方をされて来たということは、いなめないと思うのであります。私は先ほどからわが党の岡委員も 御発言になりましたように、あくまでも医薬の分業というものは、業者の方々の、たとえば利益の配分のためであるとか、また官僚的な立場からの厚生省自体の 考えによつて、これに生殺與奪の権を與えるというようなものではなくして、あくまでも一般大衆、診療を受けるところの患者を中心としたものでなければなら ないと思うのでございます。こういう観点から、非常に外部で論議されておりながら、衆議院の厚生委員会の中に、医薬分業の問題に関して何ら機関的なものを 持たず、ただ外部で論議されるにまかせておつたという事態について、私は委員会にも責任があると思うのであります。今までの経過を見ておりますと、医者と 薬剤師に厚生省が振りまわされて、しかもお互いに相当損をしていらつしやると思うのであります。いわゆる官僚政治というもの、またその利益を中心とした人 たちだけの検討によつて、これが進められるというような弊害が、ずいぶん今までの日本の政治の中にはありましたが、立法府であるところのこの国会の審議権 というものが、中心にならなければならないと私は思います。委員長におかせられましては、自主性を持つたところの、しかも輿論に支えられたところのこの衆 議院の厚生委員会において、医薬分業についての国民の啓蒙運動は厚生省に御依頼して、私たちは正しい見地からこれを審議して行くというように持つて行つて いただくのが、衆議院の厚生委員会としてのあり方ではないかと私は考えております。今日まで何ら検討されずに来たこの委員会に、そういうくさびを打つてい ただいて、新しい出方をしていただいてはいかがかと思いますので、一応理事会にはかられるなり何なりしていただいたら、けつこうだと存じます。
○寺島委員長 善処いたしたいと存じます。
 本日はこの程度にて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
    午後零時三十一分散会
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