第008回国会 本会議 第10号
昭和二十五年七月二十九日(土曜日)
 議事日程 第九号
    午後一時開議
 第一 横浜国際港都建設法案(三浦寅之助君外百二名提出)
 第二 神戸国際港都建設法案(松澤兼人君外百二名提出)
 第三 競馬法の一部を改正する法律案(千賀康治君外二十一名提出)
 第四 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の設置に関し承認を求めるの件
 第五 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の支署及び出張所の設置に関し承認を求めるの件
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●本日の会議に付した事件
 全国選挙管理委員会委員の指名
 北海道開発審議会委員の指名
 文化財保護委員会委員任命につき同意の件
 更生保護事業審議会委員に本院議員庄司一郎君、参議院議員宮城タマヨ君を、中央災害救助対策協議会委員に参議院議員高橋龍太郎君、同山縣勝見君を充てる件
 憲法の運営に関する緊急質問(佐瀬昌三君提出)
 憲法擁護に関する緊急質問(鈴木義男君提出)
 義勇軍に関する緊急質問(小川半次君提出)
 日程第一 横浜国際港都建設法案(三浦寅之助君外百二名提出)
 日程第二 神戸国際港都建設法案(松澤兼人君外百二名提出)
 日程第三 競馬法の一部を改正する法律案(千賀康治君外二十一名提出)
 日程第四 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の設置に関し承認を求めるの件
 日程第五 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の支署及び出張所の設置に関し承認を求めるの件
 阿波丸事件の見舞金に関する法律案(内閣提出、参議院送付)
 狂犬病予防法案(原田雪松君外六名提出)
 国有財産法第十三條の規定に基き、国会の議決を求めるの件
 歯科師医国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律案(大石武一君提出)
 医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案(大石武一君提出)
    午後二時十七分開議
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○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
○議長(幣原喜重郎君) 全国選挙管理委員会委員に一名の欠員がありますので、これを補充しなければなりません。よつてこの際全国選挙管理委員会委員の指名を行います。
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○今村忠助君 全国選挙管理委員会委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて議長は全国選挙管理委員会委員に白石古京君を指名いたします。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(幣原喜重郎君) 次に、北海道開発審議会委員篠田弘作君が辞任されました結果、委員に一名の欠員を生じましたので、この際北海道開発審議会委員の指名を行います。
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○今村忠助君 北海道開発審議会委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて議長は北海道開発審議会委員に苫米地英俊君を指名いたします。(拍手)
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○議長(幣原喜重郎君) お諮りいたします。内閣から、文化財保護委員会委員に高橋誠一郎君、細川護立君、矢代幸雄君、一萬田尚登君、有光次郎君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意を與えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数よつて同意を與えるに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(幣原喜重郎君) なおお諮りいたします。内閣から、更生保護事業審議会委員に衆議院議員庄司一郎君、参議院議員宮城タマヨ君を、中 央災害救助対策協議会委員に参議院議員高橋龍太郎君、同山縣勝見君を任命するため議決を得たいとの申出がありました。右申出の通り決するに賛成の諸君の起 立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつてその通り決しました。
     ――――◇―――――
 憲法の運営に関する緊急質問(佐
 瀬昌三君提出)
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、佐瀬昌三君提出、憲法の運営に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 憲法の運営に関する緊急質問を許可いたします。佐瀬昌三君。
    〔佐瀬昌三君登壇〕
○佐瀬昌三君 私は、自由党を代表いたし、政府に対して、憲法の運営に関し、もつぱら警察予備隊問題を中心に緊急質問をいたさんとするものであります。
 いうまでもなく、わが憲法は、国際的には戰争権を放棄し、戰力は一切これを保持せざることを明定し、また国内的には、祖国再建の第一歩は政治の民主化に あることを標榜いたし、すべては国会中心主義となり、国政に対する国会の審議権は強化され、いやしくも国民に重大なる利害関係ある事項は一切法律をもつて 制定し、また国家財政はすべて予算をもつて措置することを一大原則とされるに至つたのであります。もちろん、いまだ講和なく、占領治下にある以上、連合国 最高司令官の超憲法的支配を受け、占領政策上必要なればポツダム政令によらねばならぬことが当然であります。ただ、いわゆる内政不干渉が認められる限り、 かかる異例は最小限度にとどめられることが、われわれの国民的熱望であるのであります。しかるに歴代内閣の施政のうちには、往々この立憲の大原則の一角が 無視され、民主主義憲法の精神が蹂躪されんとした事例なしとしないのであります。たとえば、昭和二十二年七月、新憲法実施後、第一国会の開会中にもかかわ らず、あえてポ勅をもつて飲食営業緊急措置令が、かつて社会党内閣において突如制定されたごときは、党派を離れて、憲法の擁護上最も遺憾とするところであ ります。(拍手)
 さて、今や現内閣のもとに警察予備隊の編成が行われんとするのでありますが、その目的、性格、設置手続、方法のいかんによりましては、民主憲法の運営上 種々の疑問を提起する余地なしとしないのであります。従つて政府は、みずから進んで憲法上の疑義を氷解すべく、進んで立憲的態度をとられることが最も妥当 であると確信する次第であります。よつて私は、若干の具体的な問題について御質問申し上げ、本議場を通じて政府の憲法運営に対する見解をただすとともに、 これに対する国民の正しき理解を深めたいと存ずる次第であります。
 まず吉田総理大臣に対してお伺いいたしたいのでありまするが、その第一点は、警察予備隊の設置の動機並びにその経緯の問題であります。そもそも政府とし ては、この予備隊の必要性をいかに御認識なされておるかという点であります。先般マツカーサー元帥の総理大臣あて書簡において、七万五千人の警察予備隊を 置くことを認められたということがございまするが、これは特に最近基礎産業や交通権関の破壞その他集団的凶悪犯罪の激増、謀略宣伝等の跋扈等、従来の警察 力をもつてしたのでは不十分なるがため、その強化策として日本政府は本予備隊の創設の必要を認むるものであるかどうか、この点をまずお伺いいたしたいので あります。
 第二点は、この予備隊の設置や使用の目的並びにその性格に関する問題でございます。わが国は、憲法第九條に基き戰争権を放棄し、戰力保持を否定したので ありまする以上、本予備隊の目的、性格はおのずから定まるところがなければならないのであります。しかしてまた他方において、わが憲法は日本の生存権を放 棄せず、従つて戰力の行使以外の方法による自衛権を認めるものである以上、本予備隊の任務、活動に期待すべきことまことに大なるものがあるのであります。 特にこの際朝鮮問題等に関連して明らかにしておきたい点は、本予備隊を国際警察軍ないし義勇軍として海外に派遣するがごとき事態の発生が将来予想せられる ものかどうかという点でございます。さらにまた、将来わが国が国際連合による集団的安全保障を求める場合、わが国の国連への参加、協力義務の遂行には、か かる予備隊を必要とし、かつこれをもつて足るものとお考えになられるかどうかという点でございます。また最近、再軍備問題に関し内外で論争されるものよう やく多く、われわれの注目を引くところでございますが、わが国においては、これがためには憲法の改正を必要とすること申すまでもないのであります。しかし て政府は、その必要性を認められるのであるかどうか。わが平和憲法を堅持し、国民の不安を除去するためには、以上の点につきまして総理大臣の御見解を承り たいのであります。
 次に岡崎官房長官に御質問いたしたいのでありますが、いうまでもなく、新たな官庁の設置は法律によることが民主憲法運営上の原則であります。ことに、わ が吉田自由党内閣が行政整理の断行を重大政策とする以上、今回のごとき大部隊の警察予備隊を編成し、警察行政組織の拡大化をはかるには、よろしく国会の審 議に付して、設置法をもつてすべしとする国民的要望、まことに切なるものがあるのであります。元来ポ勅は、昭和二十年勅令第五四二号に明らかなるがごと く、連合国最高司令官の要求事項実施のため特に必要なる場合に発せらるべきものであります。もし政府において、マツカーサー元帥より予備隊設置をオーソラ イズされたとするならば、それは従来の一般警察十二万五千の制限を解除し、その上の増加を認めたる趣旨であつて、それを国内的にいかなる方法で受入れ、か つこれをいかなる方法において実現するかは、政府の自由と責任とにおいて決定すべき問題であり、そこに憲法上は当然法律によるべきが妥当であると一応推測 さるべきものであります。しかるに、本国会の会期まさに終らんとする今日、いまだ政府より関係法律案の御提出がないのは、いかなる事情に基くか。あるいは 政府としては当初よりポ政令をもつて規定する方針を持たれておるのであるかどうか。もしさように相なつておるならば、それはいかなる経緯に基くか、関係方 面との折衝の経過をあわせて明らかにしていただきたいのであります。思うに、このことは、警察予備隊に対する責任が一切をあげてわが政府にあるかいなか、 その帰属を決定する上においてきわめて重大なる問題であると思惟する次第であります。
 さらに大橋法務総裁に対してお尋ねいたしたいのであります。その第一点は、本警察予備隊は、その体系上、またその職分上、一般警察とはいかなる関係にあ るかという点であります。警察に関するマツカーサー元帥の覚書によるまでもなく、わが新憲法の運営上、日本の民主化は基本的に警察の民主化をも不可欠とす るところでありまするが、本予備隊の設置がこれに逆行するがごとき事態を招来するおそれなしとしない場合、嚴にこれは避けなければならぬのであります。こ こに予備隊と一般警察との機能調整に重大なる関心が拂われなければならぬのであります。
 また第二点は、本予備隊員の採用條件に関する問題であります。特に旧軍人の優先的採用に関する問題は、いかように取扱われるのであるか。もしまた旧軍人 採用の場合のごときは、追放解除の問題はどう処理されるのか、政府の慎重な態度を望んでやまない次第であります。ことに現在のわが国は、米ソの急迫した国 際環境下に置かれ、重大なる危機にさらされておるのであります。私は、この国難突破のため、わが民族一人の手といえどもこれを必要とするときに、政府は追 放解除についていかなる御見解を持たれるか、この際明らかにしていただきたいのであります。
 第三点は、本予備隊があくまで警察である限り、その軍隊化は阻止されねばなりません。またわが国が近世の法治国であり、文化国家たらんとする以上は、本 予備隊をもつて軍国主義的国家に移行するがごときことを阻止するはもちろん、警察国家に転化するがごときことは、絶対にこれを阻止すべきが当然でありま す。そこで、これら阻止の具体的対策をいかに考慮されておるか、その構想を承りたいのであります。
 最後に池田大蔵大臣に御質問いたしたいのであります。本警察予備隊の人件費、物件費等、その所要経費はどの程度になるか。おそらく相当数額に上り、しか も将来増加することも予想されるのでありますが、政府は今回及び将来、これが予算的措置をいかなる方法をもつてなされんとするか、お伺いいたしたいのであ ります。憲法第八十三條によれば、およそ国家の財政を処理する権限は国会の議決に基いて行使されなければならないとされ、政府はこれが予算上の責任を負わ されておるのは御承知の通りであります。また財政法第三十三條の上において、国会の議決を得ない限り金額の移用、流用は許されないのであります。従つて、 警察予備隊の経費は今国会に補正予算をもつて提出されるものと期待されたにもかかわらず、いまだその措置なきはいかなる事情に基くか。もし新聞報道のごと く、ポツダム政令により本予備隊を設けるとともに、債務償還費等から流用支出することとせば、ポツダム政令が超憲法的なオールマイテイなものと言わぬ限 り、憲法に違背するとの非難もまた免れないのであります。ことにポツダム政令で法律を改廃し得るとするも、予算そのものは法律ではなく、昭和二十五年度予 算総則第十條は国会の議決による一つの処分であるがゆえに、ポツダム政令をもつてするも、これを変更し、費目移用を認むるがごときは許されないとの解釈も あるのであります。しかしながら、なお本質的な問題としては、かく財政処分をもポツダム政令に依存せしめんとする場合、将来に悪例を残すとの非難があるば かりでなく、わが国財政上の自主性をみずから放棄するものではないかというような憂いを持たれる向きもまた存するのであります。
 要するに私は、ひとり財政上の問題に限らず、政治はよろしく憲法に恪尊して運営され、法律の予算に対する国会の審議権を尊重することがやがて内閣に責任 政治を確立するゆえんであると信じ、以上総理大臣以下にお伺いをいたし、もし今回に限りかようなる措置が不可能であるとするならば、その理由を御解明賜わ り、広く国民の知らんとするところにこたえるとともに、その疑念を一掃したいと存じましてあえてこの質疑をいたす次第であります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 このたびの警察予備隊の設置の必要になつたことは、ただいまお話の通りであります。ことに昨年以来、治安については政府としてはなはだ懸念にたえない事 態がしばしば起つたのであります。これは諸君もすでに御承知であろうと思いますが、平の事件とか、あるいは広島等における共産党の指示による事件等は、は なはだ治安の上から申して懸念にたえないところであります。またそれに対して、現在の警察組織がはたして十分治安の維持の目的を達し得るかどうかというこ とは、われわれ政府としては非常に懸念になりまして、爾来警察をどう再組織するかということは、われわが絶えず心配をし、深甚なる注意をもつて考えておつ たところであります。時たまたま、去る六月二十五日でありますか、朝鮮において突然北鮮軍が三十八度線を侵入して治安を乱した。こういう事態を考えてみま すると、日本においても、かくのごとき事態がいつ生じないともわからないのであります。ゆえに、さらに警察を強化する必要を感じたのであります。また爾来 鉄道その他において不祥なる事件が頻出しておるのであります、ますます警察強化の必要を感ずるのであります。
 しからば、その目的は何か、これは全然治安維持であります。秩序を維持するためであります。その目的以外には何ら出ないのであります。これが、あるいは 国連加入の條件であるとか、用意であるとか、あるいは再軍備の目的であるとかいうようなことは、全然含んでおらないのであります。現在の状態において、い かにして現在の日本の治安を維持するかというところに、全然その主要な目的があるのであります。従つて、その性格は軍隊ではないのであります。また軍隊に よつていわゆる国際紛争を解決するというのは軍隊の目的としての一つでありますが、この警察予備隊によつて国際紛争を解決する手段とは全然いたさない考で あります。
 その他については主管大臣からお答えいたします。(拍手)
    〔政府委員岡崎勝男君登壇〕
○政府委員(岡崎勝男君) 佐瀬議員にお答えいたします。
 ただいまの御質問の第一点は、国家警察予備隊は法律によらず、ポツダム政令に基いて組織することに政府は方針を決定したのであるかどうか、もし決定した ら、その理由はいかんということでありまするが、政府としては、これはポツダム政令で組織しようと考えておる次第であります。その理由といたしましては、 先般御承知のマツカーサー元帥の書簡が総理大臣のもとに参つたのでありまして、政府は、このマツカーサー元帥の書簡に基いてこの警察を組織せんとするもの であります。
 なお第二問といたしまして、国家警察予備隊の設立に関し司令部との折衝経過はどうか、こういうことでありまするが、この警察の設置に関しましては、司令 部といわば共同作業をいたしまして、政府と司令部の間に密接なる協議の上にこれをやつております。なおつけ加えますると、この書簡の中に、最後の点にあり ますように、司令部側は本警察につきましてはあらゆる援助を與えると書いてあります。このあらゆる援助を與えるという点は事実でありまして、政府としては 各種の援助を司令部側から得ておりまして、ただいま、せつかく準備中でございます。(拍手)
    〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊と一般警察との関係についてお答えを申し上げます。警察予備隊の創設は、現在の警察制度でありまする 国家地方警察及び自治体警察等のこの制度の根幹を動かすものではなく、單にこれらの警察力の欠陷を補う目的をもつて設置せられるものであります。従いまし て、この予備隊は、その目的の範囲におきまして広く自由なる活動範囲を留保いたしますることが適当であるのでありますが、その実際の運用におきましては、 国家地方警察及び自治体警察と緊密なる協力を保ちますると同時に、その間無用なる重複的な活動を避けるために注意が拂われなければならない、かように考え ておるのであります。
 次に、警察予備隊に採用せられまする者の採用條件といたしまして旧軍人を優先的に使用するかどうか、またこれがために追放の解除等の措置が考えられるか どうかという御質問でございましたが、旧軍人といえども、追放者にあらざる限りは、この警察予備隊の隊員として採用せられまするには他の者と同様の機会を 與えらるべきであると思います。しかしながら、特にこれに対して優先的な取扱いをなすというがごときことは、ただいま全然考えておりません。またこれに関 連いたしまして追放解除の措置のごときは別に考慮いたしておらないところであります。
 最後に、軍隊化及び警察国家等の出現に対する予防措置としての具体的方策についてはいかなる考慮が拂われておるかという御質問でございます。まず予備隊 の設置の目的及び民主主義国家におきまする警察たるところの性格というものを明らかにいたしまして一般国民諸君並びに将来の隊員がこの予備隊について誤解 を生ずることの余地なからしむるということが、まず第一に考えるべき点であろうと存ずるのであります。
 次に幹部及び隊員の選考にあたりましては、民主主義国家における警察に真にふさわしい人物を選択してこれを採用し、かつこの趣旨に基いて訓練を行つて行く、これによつて私どもは十分に御心配のごとき事項を避け得るものと考えておる次第でございます。(拍手)
○議長(幣原喜重郎君) なお池田大蔵大臣に対する質問に対しては適当なる機会に御答弁を願うことにいたします。
     ――――◇―――――
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、鈴木義男君提出、憲法擁護に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 憲法擁護に関する緊急質問を許可いたします。鈴木義男君。
    〔鈴木義男君登壇〕
○鈴木義男君 近時政府の言動のうちには、憲法を無視し、あるいは憲法の精神をまつこうから蹂躪するかのごとき態度が少くないのでありまして、この際私は、この憲法制定に親しく当られましたる総理大臣に若干所見をただしたいのであります。
 その第一は朝鮮事変に関連してであります。吉田総理は、過般来たびたび、朝鮮事変の勃発に際して、これは日本に好影響を與えるものだと言い、国会内の答 弁におきましても、しばしば韓国ないし国際連合軍の活動に敬意を表し、その活躍を精神的に支持する旨を表明しておるのであります。日本国民の一人々々が今 回の事件に対してある種の感想を持つておることは当然であります。おそらく共産党の諸君を除いては、歴史あつて以来初めての、ある国に対する侵略に対し て、直接これと関係のない第三国の連合軍が国際法擁護のために血を流すという聖なる活動に対しては、深い感激を覚えておることと信ずるのであります。(拍 手)ことに、やがては自分たちの運命ではないかと危惧されますときに、その関心が一層深いことは当然のことであります。
    〔発言する者多し〕
○議長(幣原喜重郎君) 靜粛に願います。
○鈴木義男君(続) しかし総理大臣は、ある意味において日本国を代表しておるものであります。その意思の表明は、日本国の公式の意思表示 ととられるものといわなければならない。その言動の慎重を要することはもちろんであります。しかるときは、現行憲法の存する限り、世界のどこにどういう紛 争が起りましても、われわれは中立的立場をとることを誓つたものでありまして、軽々にどちらか一方の味方になるというような印象を與える表明を公式にすべ きものではないと存ずるのであります。(拍手)いわんや、われわれは今占領治下にあるのでありまして、占領軍連合諸国の命に服さなければならない立場にあ る。命令に従つてやることは、自主的にやることとは全然別個であります。いわば親がかりの分際をもつて、独立人であるかのごとく、協力を惜しまないとか、 できるだけの便宜を提供することを辞せないとか言うのは、おこがましいことでありまして、連合国の識者もひそかに笑つておるであろうと思うのであります。 (拍手)命令によつて、一定の対価を得て労力、資材などを提供することは現にやつておることでありまするが、これは何ら自主的に応援することを意味しない ことはもちろんであります。総理大臣が言う精神的支持とか、好意を示すとかいうことはこういう物資などの提供の意味でなくして、冷たい戰争または熱い戰争 の一方の味方であるということを示すことであろうと思うのであります。精神的ということは、そのことをおいてほかに考えることができないのであります。
 われわれ国民の一人々々としては、現に進行中の冷たい戰争並びに熱い戰争について、どちらに好意を持つかということは、その人の人生観、世界観に応じて それぞれきまつておることであります。(「君はどつちだ」と呼ぶ者あり)私はいつでも聞かれれば答える用意はあります。遺憾ながら、わが国にも截然区別さ れる二つの流れが存在することは、否定することができないのであります。しかし、それは個人の問題である。いやしくも国家を代表して、日本国としてどちら の味方であるかということを表明するのは、無軍備、無防備、絶対中立を建前とする憲法の根本精神を沒却するものでありまして、わが国の総理大臣としてなす べからざることと信ずるのであります。(拍手)しかるに首相は、昂然として一方の味方であることを宣言しておるばかりでなく、中立ないし非戰主義を希望し 表明する者を空理空論の徒と罵倒するのであります。軽率、不謹慎これよりはなはだしきはないといわなければならぬ。(拍手)総理は一体、日本国憲法におい て定められた日本の立場を何と考えておるのであるか。
 憲法制定に際して深い関心を示され、その成立するや、世界に例を見ない画期的な法として、世界がこの法に学ばんことを求められたマツカーサー元帥は、こ れから行くべき日本の立場を、本年五月、マツキヴオイ氏との会見において、日本は極東のスイスとなり、将来いかなる戰争があろうとも中立を保たねばならな い、事実日本はどちらの側についても、中立を放棄するならば結局破滅することになろう、と語つておるのであります。(拍手)日本を滅ぼすことを欲しないな らば、マツカーサー元帥のこの言葉はかたく守られなければならないと思うのであります。マツカーサー元帥は、同じころ、オーストラリア新聞記者団に対して 連合国は日本が中立を維持することを希望する、連合国は日本を同盟国として使用し、どこかの国に対抗させる意図で日本を再武装させるつもりはない、また第 三国が日本を連合国の敵として利用することも欲しない、と明言しておるのであります。日本の立場というものを実によく理解し指示しておる言葉であります
 しかるに吉田総理は、中立などという、から念仏をとなえる者とか、中立などという議論があるが、まつたく現実から遊離した言論であるのみならず、共産党 の謀略に陷らんとする危險千万な思想であるなどと、マツカーサー元帥の思想をまつこうから罵倒しておるのであります。これで憲法の精神の理解者ないし擁護 者と言うことができるでありましようか、そこで私は、総理は責任ある地位にある者としていち早く一方の味方であることを宣言したのは軽率であつたと思わな いか、ということをお尋ねするのであります。
 すでにその影響と見るべきでありまするか、日本の再武装論というものが外国で盛んになつておる。はなはだしきは、義勇軍の編成を許して、これを朝鮮事件 処理のために利用せよという議論までも起つておる。さらに遺憾なことには、日本を軍事的に利用するために講和を一日も早くしなければならないという声さえ 外国に起つておるのであります。こういう議論は、みな日本が世界歴史にいまだかつて見ざる平和主義の憲法を持つていることを知らない者のなす言でありま す。日本憲法を正当に理解する限り、かかる言動は絶対いれる余地はないのであります。中立という言葉はしばしば誤解を生ずる。日本憲法は絶対非戰主義の憲 法なのであります。紛争解決に武力を使うことは、みずから絶対にやらないことはもちろん、他の一国または数箇国が武力解決をするときでも、これに支持を與 えたり賛成したりすることのないことを、世界におけるただ一つの例外の国として誓つたものであります。それが空想的理想主義であるというなら、その非難は 甘受するという覚悟でできたものであります。これが立案に關與した総理が、いまだ数年ならざるに、率先してこれを嘲笑するということは何事であるか。
 朝鮮事件の意義は、もしこれが單に北鮮と南鮮との争いというだけならば比較的單純であります。その背後には二つの世界の流れがあることに、容易ならざる 危機がひそむのであります。一触即発、何時世界を二分して二つの国家群の大決戰にならないとも保証できないのであります。有史以来かつてない憂うべき状態 であります。新憲法を立案制定するとき、近い将来にこういう大規模な熾烈な世界戰争が起ることを予想したかどうかは疑問でありましよう。しかしわれわれ は、戰争の種類によつてこれに賛成するかもしれない、賛成しないかもしれないというような約束はしなかつたのであります。あらゆる場合に非戰主義で行くと いうことを巖粛に誓つたのであります。この苛烈なる世界情勢下にあつて憲法の精神を守ることは、ほとんど不可能に近いかに見えるのであります。まだ軍国主 義の残滓を多分に有し、平和主義に徹しておらないわが国民の輿論の中には、新聞、雑誌等の論調の中におきましても、いち早く非戰主義をかなぐり捨てて、法 衣の下によろいの見えるような議論が多いのであります。(拍手)遺憾千万である。われわれは、これがいかに困難であつても、いな困難であればあるほど、死 力を盡して最後の瞬間までこれを守らなければならないと信ずるのであります。(拍手)一国の代表者が率先してこれを放棄するかのごとき言論をなすのは、さ たの限りであります。世界のあらゆる国々が二つの陣営にわかれて前古未曽有の戰いを営むことになりましたるとき、わが国もとうてい非戰主義や中立を維持す みことができないと決しましたならば、国民投票に訴えて、憲法を改正して、しかる後われわれの態度を明かにするほかないのであります。(拍手)そういう場 面に遭遇せざることがわれわれの悲願でありまするが、まだそこまでも来ておりませんのに、一国の代表者が先走つて、この一方の味方であるがごときことを中 外に宣明するがごときは、憲法無視のはなはだしきものと思うのでありまするが、いかがでありましようか。その点に関する総理の所見を承りたいのでありま す。
 その第二は、内閣改造の方式についてであります。吉田さんの内閣組織の態度には実に驚くべきものがあります。一昨年、いわゆる第二次吉田内閣を組織して 以来、昨年と本年と次々に、世上いうところの第三次、第四次吉田内閣を組織したわけであります。その都度、全員に近い大臣の更迭が行われておるのでありま す。現行憲法第六十八條は、内閣総理大臣は各国務大臣を任命する、また任意に国務大臣を罷免することができるとしておるのでありまするから、この條文だけ にかんがみるときは、いくらでも首のすげかえを行うことができる。極端に申しますると、一箇月ごとに全員を更迭して、一、二年のうちに全自由党議員を大臣 前歴者にすることもできるわけであります。しかし、それは六十八條の形式的解釈だけの話でありまして、第六十六條を見れば、内閣は国会に対し連帶して責任 を負うことを明記しておるのであります。ゆえに、内閣並びに各国務大臣の進退は、常に国会の意思に対応しなければならぬのであります。この責任を明らかに する道として、国会には大臣弾劾の制度と内閣不信任の決議権とが存するのであります。大臣の進退は公人としてのそれでありまして、決して総理の雇い人とし てのそれではないのであります。(拍手)みずからその任にたえずとして辞職するならば、その理由を国会に向つて明らかにしなければならない。また総理がこ れを罷免するならば、辞職でなくて罷免であることを明らかにしなければならない。そのどちらでもない自然退職というようなものは憲法の予想せざるところで あります。(「ヒヤヒヤ」拍手)吉田さんになつてから、その進退の責任を明らかにせずして、総理大臣だけを残して、ほとんど全員に近い大臣の更迭が頻繁に 行われるのでありまするが、政治道徳上これをいかように解釈しておられるのでありましようか。それは辞職でありまするか罷免でありまするか。辞職でありま するならば、その理由を国会に向つて明らかにすべきであります。病気等でありまするならば、いたし方ありませんが、無能、過失その任にたえないために、か く大量一時に辞職するのでありまするならば、連帯責任の建前上、何人にもまさつて総理その人が第一に辞職しなければならないと思うのであります。(拍手) いわゆる総辞職でなければならない。国会においてその責任を解除し、再び吉田氏を総理に指名するときに初めて新しい内閣を組織し得べきものであります。
 伝え聞くところによりますれば、今回の改造にあたつては、総理一人を除いて全閣僚一齊に辞表を提出したということである。連帯責任の大原則上、全閣僚に 辞表を出さして、総理一人その任にとどまるということは、憲法上、政治道徳上はたして許されることでありましようか。辞して行く大臣の責任、てんとしてそ のいすにとどまる総理の責任、すべて晦冥でありまして、憲法の要求する責任政治の帰趨が蹂躪せられること、これよりはなはだしきはないというように思うの であります。国会を蔑視し無視すること、これよりはなはだしきはないわけであります。
 大臣というものは、一旦その任についた以上は、病気の場合、長期旅行の場合等を除いて、みだりに一身上の理由で辞任し得べきものではないのであります。 政治上の功罪によつて進退するものであります。政策に変化があつたわけではない。してみれば、無能であるか、政治上の過誤を犯したのであるかの場合と見る ほかはないのであります。伝うるところによれば、ある大臣のごときは、首相の目から見てある過誤を犯したというので、閣議への出席を停止したということで ある。その大臣は憤然として辞表を提出したというのでありまするが、首相はその辞表をどうしたのでありまするか。総理の私的雇い人ではないのでありまする から、二人の間だけの話合いで、やみからやみに葬り去るべきものではないのであります。およそ立憲政治の本旨を了解せざること吉田首相のごときは、いまだ かつてないと存ずるのであります。
 世上、吉田総理を称してワン・マンといい、清盛入道というのであります。
    〔発言する者多し〕
○議長(幣原喜重郎君) 大石君、静粛に願います。
○鈴木義男君(続) けだしそれ以上である。大臣を任用すること番頭、手代を雇うがごとく、これを首切ること大根を切るがごとしでありま す。大臣の価値の下落したこと今日のごときは前古未曽有であります。大臣のいすを中元、歳暮の贈りものと間違えておるのではないか。断じて殿様の好悪によ つて、総花的に、庭の盆栽のように扱うべきものではないと存ずるのであります。吉田式改造方式を黙視することは、大臣のいすをもてあそぶことを黙視するこ とでありまして、責任内閣制の根本を否認するものであると思うのでありますが、この点に対する総理の所見を承わりたいのであります。(拍手)
 私のお伺いいたしたい第三は、権力分立の精神に関してであります。今回の内閣改造に際して、総理は、検察権の最高長官たる大橋法務総裁に警察の主管大臣 たることを兼任せしめたのであります。これは、はたして適当なことであるか。できるだけ権力の分立をはかり、兼併の弊ある権力はこれを別個の人に帰属せし めて権力の濫用を防ぐのが、近代立憲政治の大原則なのであります。(拍手)古くは、独裁専制のもとに、軍権も検察権も警察権も、はなはだしきは裁判権まで も一身に兼併して、思うように暴威を振つて、至るところ人権を蹂躪したものであります。その弊にかんがみまして、三権分立はもちろんとして、同じ行政権の 中でも、警察と検察のように、兼併の弊の最も恐るべきものは、いずれの国家においても、その長官は別人として互いに協力せしめるとともに、互いに牽制させ て、その濫用に陥る弊を防ぐのを恒例といたしておるのであります。
 新刑事訴訟法並びに新警察法を制定いたしまするとき、検察に当つては警察力を敏活に行使する必要がありますので、法務総裁並びに検事総長にある程度警察 使用の権限を認めよという論も有力に主張されたのでありますが、犯罪を検挙する功績よりも、権力の強大化、人権を蹂躪する弊害の方が大きいということでこ れをやめ、それぞれ別個の系統に管掌せしめて、互いに協力せしめる体制としたことは、御承知の通りであります。このことは、人権擁護の新憲法の精神にのつ とつて、嚴として守られなければならないことであります。
 国家警察は会議体たる公安委員会が管掌するところであつて、政府の直接関係するところではないと言われるかもしれませんが、終局において内閣総理大臣の 監督に服しておるのでありまして、事実上警察権の行使に影響を與えることができることは否定できないところであります。現に共産党の弾圧にからんで、政府 の方針が警察使用の上に顯著に現われて来ておることは、公知の事実であります。その中には、実に驚くべき行き過ぎがある。一、二の赤いものを印刷したとい うので営利的印刷屋の印刷機を差押えたがごとき、また新聞報道陣の進歩的、自由的分子を、みそもくそもごつちやにして報道陣から追放しつつあるがごときで あります。これが公安委員会のやつていることではないことは明々白々であります。こういう前例をつくることは、まことに好ましからざるところであります。 現に英米仏その他のあらゆる国々においても、この原則は守られておるのであります私は、この点でも総理大臣の民主的感覚を疑うものでありまするが、これに 対する所見を承りたいのであります(拍手)
 第四は、ただいま政府が企図しつつある七万五千の警察予備隊の編成に関してであります。これは終戰後未曽有の大変革でありまして、そり構想のいかんによ りては、わが国家の性格をかえるような重大な意義を有するものと信ずるのであります。(拍手)もと今次の朝鮮紛争に端を発し、マツカーサー元帥の勧告によ つて政府が画策しておるようでありますが、本来警察権のあり方は、国政のうちでも最も根本的問題に属するのでありますから、たといそれがどういう形式で実 施されるにせよ、国政の最高機関に座しておる国会として、ただ手をこまぬいて、つんぼさじきにすわつているわけに行かないのであります。
 一体現内閣は、問題が少しくめんどうになると、一にも二にも関係方面の命令であるといつて責任を回避するくせがある。かつて閥族政府が袞龍の袖に隠れた 兵法に似ておる。はなはだしきに至つては、常に関係方面と折衝して、許されることか許されないことか、ちやんと見当がついているにもかかわらず、投票を獲 得するために、できもしない甘いことを公約して国民をつり、選挙が終ると、関係方面のお許しが出ないからできないといつて、弊履のごとくこれを捨て去ると いう、驚くべき破廉恥なくせがあるのであります。唾棄すべき立権政治家の態度であります。
 警察力増強の問題でありますが、その数量や内容については大いに意見があります。増強そのことについては、われわれも反対するものではないのでありま す。片山内閣の当時、マツカーサー元帥の勧告に基いて、中央集権的警察を解体して、自治体警察と国家警察、これは最初村落警察――ヴイレツジ・ポリスとい う警察であつたのでありますが、地方分権化したときに、われわれは、ああいう分権化した組織だけをもつてしては大規模な暴動、内乱等に対して治安の責任を 持つことはできないしいう抗議を提出したのである。またわが国民主化の現段階においては、自治体警察がよくその地域の封建的ボスの圧力を排除して公正なる 警察権の行使に耐え得るかどうかということも疑つたのである。この点は、遺憾ながらその後保守反動の勢力が優勢となるに従つて、自治体警察がその機能を麻 陣せしめられつつある実例を、いやというほど聞かされておるのである。
 暴動については、その後浜松乱闘事件、神戸事件等が起りまして、国内警察だけの力では及ばず、遂に進駐軍の出動によつて鎮圧されたという苦い経験を持つ ておることは、御承知の通りであります。こういうことは解体のときから予想されなかつたことではない。しかし関係方面の意向としては、進駐軍のおる限り国 内治安についての責任は持つ、講和條約ができるとき、引続いて占領軍が安全保障のために駐屯するか、または警察力を増強し装備を改善して、日本警察をして 治安維持の任に当らせるかは決定せられるであろう、ともかく今日の急務は、政府の手兵たり得る、人権蹂躪の権化たる特高的警察の解体、民主化の訓練をする ことであるということであつたのであります。これは警察法審議の際のわれわれの答弁に明らかなところであります。ところで、今般講和條約を待たずして、急 にマツカーサー元帥から警察力増強の指令がありましたのは、朝鮮事件の勃発に伴いまして占領軍の大部分が朝鮮に移動し、わが国には一種の真空状態を現出し た、そこで暴動や内乱等に対して万一に備える必要があるという緊急状態の発生に基くものと信ずるのであります。
 そこで総理大臣に第一にお伺いしたいことは、今度新設する警察を首相はどういう性格のものと理解されておるかということであります。先ほど佐瀬君とのや おちよう問答において、軍隊をつくるつもりではないということを仰せられたのでありまするが、参議院における答弁のうちに、それは共産軍を撃退するためだ というようなことを言われた。これは容易ならぬ言葉である。また伝えられるところの装備――われわれが当然期待する通信機関、無電装置あるいは拳銃、ジー プ等の装備のほかに、機関銃や戰闘器具まで装備するとも伝えておるのである。それは事実であるか、お伺いしたいのであります。
 日本共産党の影響下にあるものが近来相当あばれることは御承知の通りでありますが、首相は、まさか国内の共産主義者が武装蜂起の段階にあるものとは思つ ておらないでありましよう。してみれば、北鮮軍や中共軍のような国外の共産軍の進攻に備えるという意味にしかとることができない。それでは、純然たる軍隊 代用である。そういう警察を持つことは、新憲法の期待するところではないと思う。われわれは一切の軍備と武器を捨てたのである。われわれの安全は、占領下 においては占領軍にゆだね、古領終了のときは、講和條約において規定せられる世界の多数国の公正と信義にゆだねることになつておるのである。自衛権は観念 上あるが、実際上これを実現する手段を持たないわれわれである。将来、世界の公正と信義とが日本の安全を保障してくれないということが明らかになつたとき には、憲法を改正し、再び武装国家となつて、みずから守るほかはないのであります。われわれは、そういうときの永久に来ないことを祈るものであるが、現憲 法のもとにおいて首相のような考え方を表白するのは、憲法の精神を蹂躪する、不謹慎なることではないかと存ずるのであります。(拍手)この点について世上 種々の流説が行われておりまするから、この際首相の確固たる信念を承りたいのであります。
 次に承りたいことは、政府はすみやかに案を具して、これを国会の議に付せられる用意がないかということであります。先ほど佐瀬君に対するお答えによる と、ないようである。しかし、マツカーサー元帥の勧告のどこにポツダム政令でやらなければならないということが示されておるか。かりに警察隊設置そのこと はマツカーサ上元帥の命令だとしましても、これに要する費用、すなわち国民の税金を使用する場合は、従来常に日本国会の審議に待つてやつておつたことは、 諸君御承知の通りであります。今回に限りこれを排除するというならば、その法律上の根拠をお示し願いたいのであります。また政府は、七万五千という、平時 七箇師団の軍隊にも匹敵すべき厖大なる警察隊を一気呵成に編成するつもりでありますか。神速果敢という賞辞は受けるかもしれませんが、粗製濫造のそしりを どうして防ぐのでありましようか。
 警察予備隊の編成が、單に朝鮮事変中というような限時的性質のものでありますならば、われわれもしばらくポツダム政令によることを許容してもよろしいの であります。しかし、七万五千という厖大な人員であることと、その設置が二年も三年も続く、都合によつては永久に継続する場合には、国会は決して飾り物で はないのであります。国会が開かれていなければ、わざわざ召集してでもその議に付すべきであり、いわんやまさに開会中でありますので、現下の情勢にかんが みて七万五千を必要とするか、一気に建設すべきか、分割して段階的に建設すべきか、その財源は何に求むべきか、流用すべき金があるとしても、明らかに違法 と目される財政法の曲解によらずに正式に予算を提出する等々、十分われわれの意見を徴して決すべきものと思うのであります。(拍手)これは将来の国民に軍 隊の維持にもひとしい重い継続的な負担をかけるものでありまして、軽率に扱うべきものでないと信ずるのであります。もし今年だけは政令で予算の流用という 乱暴なことをいたすといたしましても、明年もそれをやるつもりでありまするか、明後年もその伝でやるつもりでありまするか、お尋ねいたしたいのでありま す。かりにポツダム政令でやるといたしましても、時あたかも国会開会中なのでありますから、たとえば内閣委員会のごとき所管の委員会に政府がその構想を進 んで明らかにし、各党代表……。
○議長(幣原喜重郎君) 鈴木君へ申合せの時間がありまするから簡單に願います。
○鈴木義男君(続) 私に與えられた時間が経過しつつありまするから、簡單に項目だけを指摘しておくことにとどめます。――内閣委員会のよ うな委員会に構想を示して、その批判と希望とを参考とすべきではないかと思うのであります。それなら少しも非民主的というそしりを受けることはないのであ ります。また総理大臣直属とすれば、元の中央集権的、特高的警察となる危險が多分にあるのであります。トルストイを崇拝しただけで終生尾行づきとなり、キ リストを信仰しただけで懲役五年、十年になつた者が少くなかつたことは御承知の通りであります。今また再び似寄つたことが現われつつあるのでありまして、 警察隊を設けざるうちにその弊があるのでありますから、さらに憂うべきものがあると思うのであります。マツカーサー元帥が二十二年九月十六日われわれに與 えたところの覚書は、日本の警察を民主化せよ、国民の警察とせよ、官僚の警察から国民の警察とせよということであつたのでありますが、この原則は今なお完 全に生きておると信ずるのでありまして、しからば、むしろ公安委員会のごとき会議体を強力化して、これに管掌せしむる意思はないかということをお尋ねいた したいのであります。(拍手)
 また旧軍人あるいは旧警察官等を採用するということでありまするが、これについては、よほど愼重の用意を必要とすると思うのであります。
 さらに旧幼年学校の生徒あるいは農家の次男、三男等を多く用いるということが伝えられているのでありまするが、これいずれも青年時代に空白なる時代を送 りまして、思想的にすこぶる危險なる人々であるといわなければならぬのであります。農家の次男、三男は、その置かれた境遇上、共産主義の扇動に乗りやすい 傾向にあるというようなことも憂えられるのでありまして、これらの者を用いるということが事実でありますならば、十分に政府は警察民主化についての御用意 があるかどうかということを承りたいのであります。
 さらに、健全なる政治運動や労働運動を弾圧することがないという保障を、どういうふうにしてお立てになるか。将来継続的に支出しなければならない厖大な る不生産的支出であり、これについてはわれわれは国債のごとき生産に用うべきものを流用することは反対である。今年かりにやむを得ないとしても、明年以後 いかなる財源を政府は考えておられるのであるか。この点、生産を阻害することなくして十分に財源を捻出し得る自信があるかということをお尋ねいたしたいの であります。
 政府は、法律上も事実上も国会に諮らず、独断専行するといたしますれば、とうてい国民の協力を期待できないであろうということを警告いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 私が国連のこのたびの朝鮮事件に対する行動に対して協力するということは、はなはだ不謹愼なりというお話でありますが、私はそう信じないのであります。 憲法にもある通り、日本国民は平和を念願する、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわが安全と生存とを保持するということが憲法に明記してあるので あります。すなわち、日本はあくまでも世界の平和に協力する、貢献するという考えをもつて終始すべきであり、またこれが国民の念願である、こう私は信ずる のでありますから、このたび国連のとつた行動、これは平和を擁護し、平和を増進する行動であるのであります。ゆえに私は、憲法に明記してある通り、その精 神に従つて国連に対しては協力すると申すのである。(拍手)
 中立云々ということでありますが、おかしい話で、憲法のどこに中立ということが書いてありますか。またマツカーサー元帥が中立云々と言われたことは、こ れは日本が戰争に巻き込まれないようにしたいという親切な考えから言われたのであつて、その言われた当時においては、今日北韓軍がいたしたがごとくに、突 然として、何らの理由なくして南朝鮮を侵害する、いわゆる挑発せられざる侵略をいたすというようなことは、元帥の考えとしてはあるべきことでないと考えて おつたのであります。ゆえに中立を言われて、日本をして戰争に巻き込まれないようにしてやりたいという考えから申したのであります。私は元帥の考えをよく 知つております。日々接触しておりますから、私が一番よくわかつておるのであります。諸君のごとき見たこともない連中が(笑声、拍手)どうして元帥の心が わかるかと思います。(発言する者多し)
 さらに改組の問題でありますが、吉田内閣が改組いたしました当時の考えは、この際改組いたすことが国家のためである、人心を一新することが国家のためで あると考えて改組に決定し、また閣僚諸君は進んで辞職せられたのであります。かつて一度も不信任決議なり何なりが議会において提出せられたのではないので あります。国民の信望はなお吉田内閣にありと確信するものであります。(拍手)ここにおいて改組をいたしましたが、これは憲法違反でも何でもない。ただ総 辞職を希望せられる諸君においては、はなはだ遺憾であるであろうが、われわれとしては憲法に従い、法律を守つて改組をいたしたのである。この点については 何らの欠点も私は考えないのであります。
 次に検察と警察を一緒にしたのはおかしいじやないかということであります。ただいま鈴木君のお話によると、現在の警察組織は社会党内閣でできた警察組織 であるそうであります。現在の警察組織がはなはだ遺憾千万であると政府は考えて、これが改善に年来留意いたしておつたのであります。(拍手)かくのごとき 不用意な、粗製濫造の警察組織をつくつたことは社会党内閣の責任であると私は思う。(拍手)ゆえに、この際粗製濫造ならざる完全なる組織を整備いたす考え で政府は着着準備を進めております。従つて、この成案を得るまでには相当の時をかけることが必要であり、十分研究いたしまして、不完全ならざる警察組織を 準備いたす考えであります。このたび設けんとする予備隊なるものは、今日の治安の現状にかんがみまして必要欠くべからざるものと考えて立案いたしておるの であります。
 しかるに、ただいまお話によると、わが内閣は一に関係方面の力のみを借りて云々と言われておりますが、私は、それならば何がゆえに全面講和を主張せられ て早期講和に反対せられるか、社会党の諸君の気持がわからないのであります。(拍手)なるべく早く自主権を回復し、独立を回復して、いわゆる関係方面のお さしずによらず、自主的政治をいたしたい考えから、私は早期講和を主張するのであります。
 またお話によると、現在の警察組織は社会党内閣のときにいろいろ提案したにもかかわらず、いれられなくてここに至つた。私は、なぜその必要を徹底せしめ られなかつたかと思うのであります。今日まで私の経験によれば、筋の立つた話を持つて行つて、いわゆる関係方面がいれられなかつたことは、ほとんどなかつ たのであります。にもかかわらず、提案はしたが、あるいは改正を希望したがいれられなかつた。しかして現在の組織である。現在の組織のために――私どもは この粗製濫造の組織のために苦しんでおるのであります。(拍手)
 この組織は、しばしば申すのでありますが、決して再軍備をいたす考えはないのであります。またこれによつて抑圧をするというようなことは考えておらない のであります。あくまでも民主警察を樹立する考えでありますが、ただ治安の維持、秩序の維持はあくまでも政府としてはいたさなければならないのであります から、そこで予備隊なるものを今日研究いたしておるのであります。これをいかなる形で、いかなる組織で、いかなる範囲で、またいかなる構成をもつてする か、この予算等はどうするかということは、これは粗製濫造をいたさないために、とくと研究いたしておりますから、成案を得て諸君にお諮りいたします。(拍 手)
     ――――◇―――――
  義勇軍に関する緊急質問(小川半次君提出)
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、小川半次君提出、義勇軍に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 義勇軍に関する緊急質問を許可いたします。小川半次君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔小川半次君登壇〕
○小川半次君 私は、義勇軍の問題について、ごく簡單に要点だけを申し上げまして、政府の御答弁を求めるものであります。
 朝鮮に動乱が勃発して以来、わが国においては急に義勇軍に関する意見が台頭していることは、御承知のところであります。これによつて国民の間には、わが 国の憲法それ自体に疑心暗鬼を持ち、かつまた国家の将来についても大いなる不安を抱くような空気が流れておるのであります。新憲法の示すごとく、わが国は 軍備を持たず、かつ戰争を放棄し、その目標は平和国家以外の何ものでもないことは明らかであります。吉田総理は、この義勇軍の問題については、わが国は憲 法の示す通りに一切の軍備は持たない、従つて義勇軍は認めないとしばしば発言されたのであつて、われわれも当然のことと、この問題を了承しておつたのであ ります。
 しかるに、過日、田中最高裁判所長官が、大阪における記者会見の席上、日本人は自衛のため。国際連合義勇軍に加入することは法律上可能であるという重大 な見解を発表され、過日外務委員会における大橋法務総裁もまたこれと同様の御答弁をされたのでありますが、さらに本日もまた外務委員会の席上で、義勇軍の 解釈は、兵器を持つ場合は憲法上許されないが、兵器を持たない義勇軍は認めてもよいというような意味の御答弁をされて、ますます義勇軍についての考え方を 複雑にして来たのであります。軍の定義というものは、兵器を持つ持たないによつて定められるものではなく、たとえば一個の人間が鉄砲や機関銃を持つていた ところで、それは軍ではなく、むしろ兵器を持つていなくとも、何方、何十万という人の組織とその性格によつて軍であるかいなかが解釈されるものと思うので あります。
 最近朝鮮の戰局が拡大するにつれて、国民の間には揣摩臆測がはなはだしくなり、すでに計画されている警察予備隊は日本の軍隊化であるといううわささえ飛 んでおり、一部新聞などは、その警察予備隊員には士官学校、兵学校、幼年学校出身の人たちが優先的に採用されるらしきことすら報道しておるのであつて、今 や日本の軍隊化は必至であるかのごとき情勢が察せられるのであります。こういうことになれば、世界の民族に先んじて制定した日本国憲法もまつたく死文とな り、その精神は蹂躪されるばかりでなく、信を世界に失うものと言わなければならぬのであります。この点について政府の立場を明らかにしていただきたいので あります。
 自衛権の問題については、吉田総理が、かつて憲法制定の国会でしばしば、自衛権は必ずしも放棄するものではないが、自衛権の名によつて戰争を行つたり侵 略したりする場合があるからこれを認めないと申されたのであります。しかしながら、当時のわが国内情勢と現在の国内情勢には大きな変化があると思うのであ つて、政府は、この情勢の変化によつて憲法の解釈もまた変更せざるを得ないというがごとき解釈をなしておるようでありますが、自衛権の発動となる国対国の 不法行為、不正侵略の判定については、現下の国際社会においては、国際連合の判定にまつほかはないと思うのでありまするが、政府の考え方は、多少この考え 方とは違つておるようであります。日本の場合、情勢の変化に名をかりて所期の方針を変更すべきものではないと思うのであります。以上の考えから、自衛権の 場合でも義勇軍が認められないと思うのでありまするが、この点重大でありまするから、政府の見解を承りたいのであります。
 以上日本国憲法の立場から、義勇軍についての政府の立場を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。義勇軍に関していろいろな説がある、それは説があるかもしれませんが、現在政府に対して義勇軍 を組織いたしたいからという申出は、何らないのであります。ただこれを法律的に考えてみて、あるいは政治的に考えてみていかんという議論はあるでありまし よう。そこで法務総裁及び田中最高裁判所長官の見解は、思うに法律的の見解であろうと思いますが、私は政治的に考えてみて義勇軍は許したくないと考えるの であります。何となれば、今日まで日本に対するかなり深い猜疑心というが誤解は、日本が再軍備をしはしないか、日本は従来平和を破つた好戰的国民であると いうような誤解から、日本に対していろいろな見解を持つ人があるのであります。このために講和條約も、あるいは早期講和のできにくいという事情も考えられ ますし、またかりに講和條約ができても、その中には、日本を好戰国と見ていろいろなむずかしい條件等が挿入せられるがごとき憂いのないことでもないと私は 思いますから、国際的に考えてみて、日本に対する従来の誤解を解消するためにも、軽々しく義勇軍の編成のごときは許すべきものでないと考えるのでありま す。ゆえに私は、常に義勇軍については、政府としてはこれを許可いたしたくないと繰返して申すゆえんであります。これは政治的に考えてみて、あるいは国際 的に考えてみて、好ましからざる問題であると考えまするから、ただいま申すように、かりに提案せられても、その希望があつても、政府といたしては、これを 許可しない方がいいと考えるのであります。
 また憲法に関する、自衛権に関する政府の所見と申すか、少くとも私の所見は、決して毛頭かわつておりません。すなわち、武力による自衛権は放棄したので あるから、あくまでも放棄すべきであるという見解は、今なお私は堅持して捨てないのであります。お答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 小川君にお答えいたします。法務委員会において私よりお答えいたしましたるところは、日本国憲法第九條の解釈と いたしまして「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」、こうあります。従いまして、いわゆる義勇軍というものが、かかる戰力を保持すると認められ る程度に達するものは、これは憲法上許すべきものではない、こういうことを申し上げたのであります。その反面におきまして、その程度に達しない場合におき ましては憲法上許されるという解釈が起るのは当然でございまするが、この点は、ただいま総理大臣から申し上げましたる通り、あくまでも憲法上、法律上の論 議でございまして、この点について、政府が憲法上の論議は別個にいたしまして、政策的に見ましてこれは好ましからざるものである、こう考えておることも、 ただいま内閣総理大臣から申し上げた通りであります。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 日程第一、横浜国際港都建設法案、日程第二、神戸国際港都建設法案、右両案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員会理事鈴木仙八君。
○鈴木仙八君 ただいま議題となりました、三浦寅之助君外百二名提案の横浜国際港都建設法案並びに松澤兼人君外百二名提案の神戸国際港都建設法案に関しまして、建設委員会における審査の経過並びに結果について御報告を申し上げます。
 両法案は、七月二十四日同時に付託され、しかもその内容においてまつたく同一のもでありますので、本委員会におきましては、両法案を一括して審査いたした次第であります。
 最初に横浜国際港都建設法案でありますが、本法案の要旨といたしますところは、横浜市がわが国の代表的国際港都であるのにかんがみ、その機能を十分に発 揮し得るようにこれを建設整備し、もつて国際貿易を振興し、あるいは外客を誘致して、わが国の経済復興に寄與せしめんとするものであります。しかして、本 建設事業の執行は横浜市長がこれに当り、計画及び事業に関しては特別都市計画法及び都市計画法を適用するものでありまして、さらにこの建設事業に対する特 別の助成として普通財産を譲與できるように規定してあります。なお本法案は、憲法第九十五條により横浜市の住民の投票に付するものと規定してあります。
 本委員会におきましては、七月二十七日、提案者より提案の理由の説明を聴取し、引続き二日間にわたつて熱心なる質疑応答を行つたのであります。
 次に質疑応答の主要なるものについて申し上げますと、第一に、都市計画事業として当面緊急の課題は一般戰災都市の復興であり、かかる特別法による都市建 設事業は時期尚早ではないかという質疑に対しては、横浜市も戰災復興に懸命の努力をしているが、一方積極的復興対策としての本市の使命たる国際港都建設も 現下の急務と考え、かたがた他の特別都市建設法の前例にもならつたのであるという答弁でありました。
 第二に、事業執行者を市長に限定して、他の関係行政庁あるいは特許による都市計画事業を排除した理由いかんという質問に対しては、地方自治の精神に基いて市長が全責任をもつて事業を執行したいという答弁でありました。
 第三に、第五條において建設事業費について国と横浜市との負担割合の特例を設けることができるとしているが、政府当局においてはその意思があるかという質問に対しては、建設省当局より、現在のところ特例を設けることは考えていない旨の答弁でありました。
 次に、この種特別都市建設に関しては、なるべく一般法によつてこれを統一し、單独法の数をなるべく減少したいという意向は、本法案審議中における本委員会全員の強い強い要望でありましたことを、あわせてこの機会に御報告申し上げます。
 次に、神戸国際港都建設法案について引続き御報告申し上げたいと思います。
 本法律案は、ただいま御説明いたしました横浜国際港都建設法案と内容においてまつたく同一でありますので、重複を避けるため、法案の要旨並びに質疑応答に関しましてはこれを省略いたします。
 かくて審査の進行に伴い、昨二十八日、本両法律案に対し、自由党、国民民主党、社会党の三派共同提案で次の修正案が提出されるに至つたのであります。
 すなわち第五條中、事業の助成のため事業費について国と公共団体との負担割合の特例を設けるという規定については、目下のところ建設省も特例を設ける意 思もないから、他の特別都市建設法と同様に條文を統一するよう、第五條を次のように改めたい。すなわち「第五條 国は、横浜国際港都建設事業の用に供する ため、必要があると認める場合においては、国有財産法(昭和二十三年法律第七十二号)第二十八條の規定にかかわらず、その事業の執行に要する費用を負担す る公共団体に対し、普通財産を譲與することができる。」と修正するというのであります。神戸国際港都建設法案についても同様の修正案でありますので、詳細 は省略いたします。
 かくて二十八日質疑を終了いたしまして、両法律案に対する修正案並びに修正部分を除く両原案について一括して討論に入りましたところ、自由党、国民民主 党、社会党を代表して前田榮之助君より賛成の意見が開陳されました。次に共産党を代表して砂間一良君より、国全体の産業経済を復興することが先決であり、 時期尚早であるとして反対の意見が述べられました。次いで採決に入りまして、まず両修正案について採決いたしましたところ多数をもつて可決、失いで修正部 分を除く両原案についても多数をもつて可決をいたしました。すなわち両法律案は修正議決すべきものと決した次第でございます。
  右報告申し上げます。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。砂間一良君。
    〔砂間一良君登壇〕
○砂間一良君 私は、ただいま上程されております二つの法案に対しまして、日本共産党を代表して反対の意見を述べるものであります。
 こういう法案が横浜や神戸の市民諸君の間から盛り上つて来るという事情につきましては、一応了とするものであります。と申しますのは、これらの都市にお きましては、戰災復興も、ボスや官僚のいろいろな策動やサボタージユによつて、遅々として進んでおらない。また失業者や、あるいは生活苦にあえぐ勤労大衆 がたくさんある。それから重税や金詰まり、不景気で、まつたく生活が立つて行かないのであります。それで、こういう港湾都市建設事業でも起れば何か仕事に もありつけるし、あるいは市の繁栄ももたらされるのではないか、そういう幻想を持つておるのであります。しかし、これはあくまで幻想でありまして、国全体 の政治経済政策と切り離して、ただこの横浜と神戸だけがよくなろうというふうなことを考えても、これはもともとできない相談であります。今の自由党の吉田 内閣のあの不景気政策、あの亡国政策が続く限り、決してこれら港都のほんとうの繁栄ということも期待できないのであります。
 たとえば貿易の発展にしましても、あるいは海運の振興にしましても、あるいはまた外客の誘致にしましても、今のような政策を続けておる限り、ただこの横 浜、神戸の若干の施設をよくして、あるいはホテルをつくつたり、あるいは外人の住宅を建てたり、あるいは道路を少し直したりしましても、それだけで、ほん とうの港都の発展ということを期待することはできないのであります。この根本の政策を建て直すということが先決問題でなければならぬ。すなわち国内的に見 ますならば、今のあの自由党の政策をやめまして、ほんとうに日本の国が復興し、発展し、産業も繁栄して行くという、そういう政策を立てなければならぬ。
 また対外的に申しますならば、一日も早く全面講和を締結いたしまして、そうして隣国であるところの中国や朝鮮あるいはソビエトとも自主性ある貿易ができ るようにする。この中国との貿易ということなしには、関西の実業界、特に神戸や大阪の港都の発展というふうなこともできないと思うのです。ところが吉田内 閣は、單独講和あるいは多数講和ということを唱えておりまして、そうして特定の国とだけ講和を結んで、中国やソビエトとの関係の調節ということについては ほとんど考えておらないようであります。こういう政策を続けておりまして、そうして貿易の振興をはかるとか、あるいは海運や外客の誘致をはかるということ を言いましても、これは結局所期の目的を果すことはできないのであります。
 さらに港都の建設の計画を進めるにいたしましても、現在では神戸にしろ横浜にしろ、まだ日本の完全なる自主権というものはないのであります。港湾の運営 等につきましても、進駐軍がこれを管理しておるのであります。そういう状態のもとで、ほんとうに自主的な、りつぱな港都建設をやろうとしましても、これは どうしてもできません。また港湾都市の建設の計画の内容等をいろいろ具体的にお尋ねしてみますと、ただ外人の宿泊するホテルをつくるとか、あるいは外人の 住宅をつくるとか、あるいはダンス・ホールやキヤバレー、あるいは接待婦や娯楽場、歓楽街、そういうようなものをつくることが主たる目的のようでありま す。これはただ外人にこびを売るところの、いわば日本の重要な港湾都市を外人の享楽的な植民地都市に陷れるようなものでありまして、私どもは、こういうや り方には絶対に賛成することができないのであります。
 あるいはまた、この港湾都市の建設計画の中には自由港区の問題も含まれておるようでありますが、この自由港区の問題にしましても、いろいろ問題があるの であります。その港都建設のために莫大な費用がかかります。たとえば横浜におきましては六百三十八億、神戸におきましては四百二十六億というふうな莫大な 費用が予定されておるのでありますが、これが国あるいはその地方の勤労大衆の税金からみなまかなわれる。いろいろホテルや何かりつぱなものができまして も、それはただ一部のお金のある外人あるいは日本の特権階級が利用するだけでありまして、その負担を全部勤労大衆が背負わなければならぬ、こういうことに なるのであります。もしこれだけの費用をかけるとするならば、よろしく失業対策であるとか、あるいは災害復旧であるとか、あるいは勤労者の住宅を建設する とか、あるいは結核の療養所をつくるとか、あるいは社会保障の完全なものをつくるとか、こういう方面に使うべきだと思うのであります。
 いろいろな観点からいたしまして、今日こういう港都の復興計画をやるということは、決してその時機ではありません。また立法技術の点からいたしまして も、こういう特別法を幾つかつくるということは、決してやり方がうまくないと思う。去年の長崎、広島のあの都市建設を先頭といたしまして、あるいは別府の 国際観光温泉都市であるとか、それに引続いて熱海、伊東あるいは横須賀、呉、佐世保、あるいは東京の首都建設法とか、あるいは最近では京都、奈良というふ うに、たくさんの特別法をつくつて行つておるのでありますが、これはまつたく国会議員として不見識な話だと思う。こういう法律をつくるたびごとに一々住民 投票をやつて行かなければならぬ。その住民投票をやるたびに数千万円の費用がかかるのであります。
 提案者であるところの社会党の松澤君の説明を聞いておりましても、ほかの都市でどんどんやつて行くものだから自分たちも早くやらなければ損だというふう な意味にとられる御説明があつたのでありますが、こういう発言をされるということは、私は国会議員としての見識を疑うのであります。地元の市会議員とか県 会議員であれば、我田引水的に自分のところだけよくなればいいというので、一銭でもよけい国から補助でもとろうという、がりがり的な考えを持つ方があるか もしれませんけれども、しかし、いやしくも国政全体を切り盛りする国会議員の立場からすれば、そういうセクト的な偏狭な考え方というものは、これはとるべ きじやないと思う。いろいろな観点からいたしまして、日本共産党といたしましては本法案に反対であります。(拍手)
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
 両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り決しました。
     ――――◇―――――
○副議長(岩本信行君) 日程第三、競馬法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員会理事野原正勝君。
    〔野原正勝君登壇〕
○野原正勝君 ただいま議題と相なりました、千賀康治君外二十一名提出にかかる競馬法の一部を改正する法律案に関しまして、農林委員会における審議の経過並びに経果の大要を御報告いたします。
 現行競馬法によつて認められておりまする国営競馬場は、札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、横浜、京都、阪神、小倉、宮崎の十一箇所でございますが、さらに一箇所を追加して、中京地区に設置したというのが本提案の内容であります。
 その理由の第一点は、国営競馬場の全国的分布状態から見た中継地的な意義であります。すなわち、東京から京都に至る中間地点に一箇所の国営競馬場もない ことは、その地理的配置から見てきわめて不自然であつて、競馬関係者にとつて不便この上もなく、また経費もかさむことでありますので、中京地区に競馬場を 創設して、むだと不便を省きたいというのであります。
 理由の第二点は、財政上の理由であります。最近競馬は、競走馬の状態、他の競技よりの圧迫等によりまして、いささか不振を示しているのでありますが、こ の際熱心な愛好者多数をかかえている中京地区に模範的な競馬場を設置することとなれば、投票券の売上金額は増大し、財政收入の増加に役立つであろうという のであります。
 さて、この法律案とまつたく同一の内容の法律案が第五国会と第七国会に提出されたのでありますが、当時における諸般の事情よりして両院を通過しなかつた ことは、御存じの通りであります。今回三たび提案されたにつきましては、さきの委員会における論議の中心点であつた候補地の件については、法律の執行者た る政府にその選定を一任し、関係者間における無用の競争を行わせないという言明が提案者より述べられ、委員会はこれを了承することにいたしたのでありま す。
 かくて二十八日、提案者を代表して遠藤三郎君より提案理由の説明があり、共産党より若干の質問が行われましたが、自由党野原委員の質疑打切り動議に従つ て、ただちに討論採決に移り、共産党の反対討論の後採決を行いましたところ、多数をもつて本法律案は原案のまま可決することに決した次第であります。これ をもちまして御報告を終ります。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
○副議長(岩本信行君) 日程第四、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員長寺島隆太郎君。
    〔寺島隆太郎君登壇〕
○寺島隆太郎君 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の設置に関し承認を求めるの件に対し、厚生委員会における審議の経過並びに結果について御報告を申し上げます。
 従来東京港に出入いたしております外航船舶に対しましては横浜港にこれを寄港せしめ、羽田空港に出入りいたしておりまする航空機に対しましては横浜より 検疫官が出張いたしまして、それぞれ検疫事務を行つて参つたのでありまするが、最近出入りする船舶並びに航空機の数がきわめておびただしく増加いたしてお りまするの現状にかんがみ、伝染病予防に万全を期しますために新たに東京に検疫所を設置いたしたいというのが、すなわち本承認案の骨子といたすところであ ります。これに対しましては、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き国会の承認を求めなければならないのでございます。
 すなわち本件は、去る二十五日、本委員会に付託せられまして、二十七日の委員会において政府の説明を求め、これに対し質疑を行い、質疑を打切りましたる 後、二十八日の委員会におきまして、討論を省略し、採決を行いました結果、大多数をもつて本案に承認を與うべきものという結論に到達いたした次第でありま す。
 右、簡單ながら御報告いたす次第であります。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて承認するに決しました。
     ――――◇―――――
○副議長(岩本信行君) 日程第五、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の支署及び出張所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事奧村又十郎君。
    〔奧村又十郎君登壇〕
○奧村又十郎君 ただいま議題となりました地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の支署及び出張所の設置に関し国会の承認を求めるの件につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本件は、最近における外国貿易の趨勢に対応し税関行政の円滑な遂行を期するために提出されたものでありまして、東京税関支署羽田飛行場出張所及び門司税 関高島埠頭出張所外四十張所を設置することに関しまして、地方自治法の規定に基き国会の承認を求めているものであります。
 本件は、七月二十五日、本委員会に付託されまして、翌二十六日、政府委員より提案理由の説明を聴取し、同二十八日、各委員より質疑が行われ、政府委員よりそれぞれ答弁がありましたが、質疑応答の詳細につきましては速記録に譲りたいと存じます。
 次いで討論を省略し採決いたしましたところ、起立総員をもつて本件は承認を與うべきものであると議決いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて承認するに決しました。
     ――――◇―――――
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、阿波丸事件の見舞金に関する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 阿波丸事件の見舞金に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員会理事北澤直吉君。
    〔北澤直吉君登壇〕
○北澤直吉君 ただいま議題となりました法案について、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法案は、七月十二日内閣から国会に提出され、本委員会に付託されました。よつて七月二十六日及び二十九日の二回にわたりまして委員会を開き、審議をい たしました。政府側の説明によりますれば、昭和二十四年四月六日衆議院及び参議院において可決されました阿波丸事件に基く日本国の請求権放棄に関する決議 に基きまして、国内措置として本事件の犠牲者を慰藉するため、同船に乗つておつたため死亡した者の遺族及び同船の所有者に対し見舞金を支給することが適当 であると考え、所要の経費を昭和二十五年度予算に計上いたしたのでありますが、これが実施にあたり遺族の範囲及び順位、見舞金の額、見舞金の支給を受ける 手続、船主に対する見舞金の支給を規定するため本案を提出いたしたとのことでありました。
 また政府側から法案の逐條的説明がありましたが、そのおもなる諸点をあげますれば、一、見舞金の支給を受ける遺族の範囲及び順位については、災害補償に 関する諸立法において一般的に採用されている支給順序によつた。すなわち見舞金は、事件の発生した当日における死亡者の配偶者その他の遺族に支給される。 二、見舞金の額は、死亡者が一人の場合には七万円、二人の場合には十二万円、三人以上の場合は十五万円とする。三、阿波丸の所有者、日本郵船会社に対して 千七百八十四万三千円の見舞金を支給すること等でありました。
 次いで質疑、討論を行いましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 次いで採決の結果、本法案は全会一致をもつて原案通り可決せられました。
 右御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 狂犬病予防法案(原田雪松君外六名提出)
○福永健司君 日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、原田雪松君外六名提出、狂犬病予防法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 狂犬病予防法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員会理事原田雪松君
    〔原田雪松君登壇〕
○原田雪松君 ただいま議題となりました狂犬病予防法案について、厚生委員会における審議の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
 従来犬の狂犬病については、家畜伝染病予防法によつて予防撲滅がはかられて来たのでありますが、近時著しく猖獗の度を加えて参つておるのであります。他 の家畜伝染病とは著しく性格が相違し、防疫措置もまつたく趣を異にする点が多いので、家畜伝染病予防法とは別個な法律により狂犬病を撲滅せんとするのが本 法案の目的であります。
 次に本法案の内容のおもなる点について申し上げますれば、第一は、すべての犬の登録を行い、定期的な予防注射の義務を課したことであります。
 第二は、狂犬病が発生した場合に、罹患した犬が早期に発見、報告され、それに対する処置が完全に行われるよう届出、隔離の義務を課したことであります。
 第三は、浮浪犬の捕獲をなし、また緊急予防注射を実施し、運動の禁止、移動の制限、さらに交通遮断等に関する必要な規定を設けたことであります。
 第四は、罹患犬及びそれと疑われる犬の殺処分の禁止及び病性鑑定のため解剖ができるように定めたことであります。
 第五は、厚生大臣に、緊急防疫措置として都道府県知事に必要な防疫手段の実施を命じ、また抑留した犬の抑留所の設置を命じ得るような規定を設けたことであります。
 本法案は、本日、本委員会に付託せられ、提案者より提案理由の説明を聴取した後、ただちに質疑に入り、きわめて熱心な質疑応答が行われたのであります。
 次いで質疑を打切り、討論を経て採決に入りましたるところ、本法案は全員一致をもつて可決すべきものと決した次第でございます。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○福永健司君 日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、国有財産法第十三條の規定に基き、国会の議決を求めるの件を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 国有財産法第十三條の規定に基き、国会の議決を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事奧村又十郎君。
    〔奧村又十郎君登壇)
○奧村又十郎君 ただいま議題となりました国有財産法第十三條の規定に基き、国会の議決を求めるの件につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本件提案の理由は、これまで皇室用財産となつておりました葉山御用邸附属地は、天皇、皇后、皇太后三陛下及び皇太子殿下葉山御用邸御滞在時におきまして 馬匹の繋養、馬車の格納等の目的に使用せられていたのでありますが、今回この必要がなくなりましたので、右用途廃止をしようとするものであります。なおこ れに伴いまして、その所管は総理府から大蔵省へ引継がれ、同省所管の普通財産となるものであります。
 本件は、昨二十八日、本委員会に付託され、本二十九日、政府委員より提案理由の説明を聴取し、各委員より質疑が行われましたが、質疑応答の詳細については速記録に譲りたいと存じます。
 次いで討論を省略し採決いたしましたところ、起立総員をもつて本件は議院において可決すべきものと議決しました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○福永健司君 日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち大石武一君提出、歯科医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律案及 び医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望 みます。
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なしと呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 歯科医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律案、医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員会理事大石武一君。
    〔大石武一君登壇〕
○大石武一君 ただいま議題となりました歯科医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律案並びに医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 現在の日本におきましては、医師が医業を行います場合には、しかるべき学校を卒業した者であつて、しかも国家試験に合格した者でなければできないという のが、現在の日本の法律であります。しかるに、終戰後に多数の歯科医師、医師が外地より内地に引揚げて参つたのでありますが、これらの歯科医師、医師のう ちの相当な者は、いわゆるしかるべき学校を卒業せずして、現地において免許を受けて医業を営んでおつたのでありまして、これらの人々は、現在の日本の法律 においては、日本の国内において医業を営むことができないわけであります。従つて、これらの多数の優秀な医師たるべき人に医術を行わしめないで、しかも彼 らの生活の道をふさぐということは残酷なことであります。昭和二十一年勅令第四百二号国民医療法施行令の特例というものをつくりまして、特例試験を受ける ことによりまして、ぞれに合格した者は日本国内においても医業を行うことができるということになつた次第であります。しかしながら、なお蒙疆地区あるいは マライ、シンガポール方面、あるいは朝鮮の医師あるいは歯科医師試験の一部合格者等の人々は、なおその特例に漏れております。これらの人々は、終戰後五年 間の今日においても、何ら医術に貢献し、医業に従事することができない状態でありまして、これらの資格あるべき人々にも当然受験資格を與えまして、医者た らしめるのがわれわれの要務であると信じまして、この法律案をつくつた次第であります。なお先はど申しました特例試験は二度しか受けられませんで、二度落 第した人は、永久に今まで試験を受けることができなかつた次第であります。しかるに、この法律案によりまして、これらの人々をも、さらに受験することがで きるように包含いたした次第であります。
 この法律案は、七月二十九日厚生委員会に付託せられ、提案者より提案趣旨の説明がございまして、審議の結果、討論を省略いたしまして、起立総員をもつて可決いたした次第でございます。
 簡單でありますが、以上御報告を終ります。
○副議長(岩本信行君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長の報告の通り可決いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時二十四分散会