第008回国会 厚生委員会 第7号
昭和二十五年七月二十九日(土曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 寺島隆太郎君
理事 大石 武一君 理事 原田 雪松君
理事 松永 佛骨君 理事 金子與重郎君
青柳 一郎君 高橋 等君
田中 六君 中川 俊思君
堀川 恭平君 松井 豊吉君
丸山 直友君 亘 四郎君
柳原 三郎君 堤 ツルヨ君
苅田アサノ君
出席政府委員
厚生政務次官 平澤 長吉君
厚生事務官
(社会局保護課
長) 小山進次郎君
厚生事務官
(兒童局長) 高田 正巳君
委員外の出席者
議 員 有田 二郎君
議 員 倉石 忠雄君
大蔵事務官
(主計局共済課
長) 磯田 好祐君
厚生事務官
(官房総務課
長) 森本 潔君
厚生事務官
(官房国立公園
部管理課長) 森 直一君
厚生事務官
(兒童局企画課
長) 川島 三郎君
厚生事務官
(保險局国民健
康保險課長) 山本 正淑君
厚生事務官
(保險局厚生年
金保險課長) 和泉 武夫君
厚生事務官 安福 信雄君
厚 生 技 官
(公衆衞生局検
疫課長) 館林 宣夫君
厚 生 技 官
(公衆衞生局環
境衞生部長) 石橋 卯吉君
厚 生 技 官
(医務局歯科衞
生課長) 大西 榮藏君
厚 生 技 官
(医務局国立療
養所課長) 尾村 偉久君
参 考 人
(蓮見がん研究
所長) 蓮見喜一郎君
專 門 員 川井 章知君
專 門 員 引地亮太郎君
七月二十九日
委員大石武一君、大西禎夫君及び大石ヨシエ君
辞任につき、その補欠として高木章君、堀川恭
平君及び松本六太郎君が議長の指名で委員に選
任された。
同日
理事青柳一郎君の補欠として原田雪松君が理事
に当選した。
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七月二十九日
狂犬病予防法案(原田雪松君外六名提出、衆法
第一一号)
歯科医師国家試験予備試験の受験資格の特例に
関する法律案(大石武一君提出、衆法第一三
号)
医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関す
る法律の一部を改正する法律案(大石武一君提
出、衆法第一四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
理事の互選
狂犬病予防法案(原田雪松君外六名提出、衆法
第一一号)
歯科医師国家試験予備試験の受験資格の特例に
関する法律案(大石武一君提出、衆法第一三
号)
医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関す
る法律の一部を改正する法律案(大石武一君提
出、衆法第一四号)
社会保險に関する件
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請願
一 佐世保九十九島等を国立公園に指定促進の
請願(川野芳滿君紹介)(第九九号)
二 木花村から都井岬を経て福島湾に至る海岸
地帶を国立公園に指定の請願(田中不破三
君紹介)(第三〇〇号)
三 岩手六幡平周辺の山岳高原地帶を国立公
園に指定の請願(山本猛夫君紹介)(第六
一八号)
四 三陸海岸を国立公園に指定の請願(山本猛
夫君紹介)(第六一九号)
五 舞鶴港に検疫所設置促進並びにその暫定措
置に関する請願(大石ヨシエ君紹介)(第
六五九号)
六 温泉法の一部改正に関する請願(中村又一
君紹介)(第七七四号)
七 外地引揚歯科医師免許に関する請願(池見
茂隆君紹介)(第六六号)
八 同(田渕光一君紹介)(第四七〇号)
九 同(淵上房太郎君紹介)(第七二五号)
一〇 引揚医師の国家試験受験回数制限緩和に関
する請願(玉置實君紹介)(第六五二号)
一一 らい患者の療養生活改善に関する請願(苅
田アサノ君紹介)(第六〇三号)
一二 日本医療団清算剩余金を都道府県営移管病
院整備費に配分交付並びに国庫補助の請願
(山本猛夫君紹介)(第六二六号)
一三 国立栃木病院敷地買上げに関する請願(佐
藤親弘君紹介)(第六四〇号)
一四 がんの治療法研究費国庫補助に関する請願
(倉石忠雄君外五名紹介)(第七六二号)
一五 大津援護館改築に関する請願(吉武惠市君
紹介)(第六七号)
一六 同(青柳一郎君紹介)(第二三一号)
一七 私営の社会事業団体に対し公金支出の法律
制定に関する請願(江崎真澄君紹介)(第
二〇四号)
一八 厚生年金保險積立金の運用等に関する請願
(佐々木更三君紹介)(第一八五号)
一九 国民健康保險の事務費全額国庫負担並びに
社全保障制度の全面実施に関する請願(床
次徳二君紹介)(第四〇〇号)
二〇 国民健康保險の運営に関する請願(山本猛
夫君紹介)(第六二八号)
二一 引提無縁故者住宅建設促進に関する請願(
苅田アサノ君紹介)(第六〇四号)
二二 未帰還者家族の援護に関する請願(坂田英
一君外五名紹介)(第六五〇号)
二三 薬事法改正に関する請願(池田正之輔君外
二名紹介)(第一〇〇号)
二四 同外二百四十九件(有田二郎君外二名紹
介)(第二八〇号)
二五 同外四百六十九件(有田二郎君外二名紹
介)(第四二四号)
二六 同外五百六十三件(有田二郎君外二名紹
介)(第八五七号)
二七 同外二百六十六件(山口喜久一郎君外二名
紹介)(第八五八号)
二八 同(池田正之輔君外二名紹介)(第八五九
号)
二九 同(有田二郎君外二名紹介)(第八六〇
号)
三〇 同(山口喜久一郎君外二名紹介)(第八六
一号)
三一 同(池田正之輔君外二名紹介)(第八六二
号)三二 同(有田二郎君外二名紹介)(第八六三
号)
三三 遺族の援護対策確立に関する請願外一件(
青柳一郎君紹介)(第一八六号)
三四 遺族年金支給に関する請願(高橋等君紹
介)(第二七九号)
陳情書
一 国民健康保險国庫補助の陳情書(浦和市埼
玉県議会議長染谷清四郎)(第六号)
二 生活保護事務職員費全額国庫負担の陳情書
(大津市近畿各市協議会長大津市長佐治誠
吉)(第二一号)
三 覚せい剤の製造並びに販売禁止に関する陳
情書(松山市愛媛県兒童福祉審議会委員長
多田不二)(第二九号)
四 戰沒者の遺族援護に関する陳情書(京都市
上京区智惠光院通り財団法人京都府遺族会
長中川源一郎)(第五九号)
五 災害救助法による救助費全額国庫負担の陳
情書(奈良市奈良県議会議長辻本政律)(
第七二号)
六 優生保護法の一部改正に関する陳情書(神
戸市兵庫区荒田町三丁目三十一番地ノ一瀬
戸ミエ)(第八一号)
七 国民健康保險の国庫負担増額の陳情書(山
形市山形県町村会長松本長兵衞)(第一一
〇号)
八 災害救助法による経費全額国庫負担の陳情
書(福井市東海北陸七県議会議長会長勝見
厚)(第一二〇号)
九 医療国営に関する陳情書(群馬県群馬郡滝
川村八幡原四百二十二番地松本芳作)(第
一三二号)
一〇 らい患者の生活改善に関する陳情書(国立
療養所長崎愛生園入園者敬和会常務委員長
田中文雄)(第一四〇号)
一一 国立阿久根療養所の病床増設に関する陳情
書(鹿兒島市鹿兒島県議会議長増田靜)(
第一四四号)
一二 国民健康保險制度の強化対策に関する陳情
書(中国各県議会議長代表山口県議会議長
清水為吉)(第一六一号)
一三 結核患者の待遇改善に関する陳情書(京都
府綴喜郡青谷村国立京都療養所日本患者同
盟京都支部長十田島良造)(第一八二号)
一四 外地引揚歯科医師の免許に関する陳情書外
十四件(長崎市十人町六番地天本敬七郎外
三十五名)(第一八三号)
一五 国民健康保險法の一部改正に関する陳情書
(神戸市生田区下山手通五丁目兵庫県国民
健康保險団体連合会理事長友井茂次)(第
一八四号)
一六 社会福祉主事設置費全額国庫負担に関する
陳情書(岐阜市司町十二番地岐阜県町村会
長菱田尚一)(第一八五号)
一七 医薬分業制度確立に関する陳情書(大津市
石川町三十九番地滋賀県薬剤師協会長西谷
平一)(第二三六号)
一八 らい療養所の医師看護婦の増員に関する陳
情書(鹿屋市星塚町四千五百二十二番地国
立療養所星塚敬愛園内大海洋)(第二七〇
号)
一九 衛生教育に関する陳情書(山口市山口県議
会議長清水為吉)(第二七一号)
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○寺島委員長 これより会議を開きます。
社会保險に関する件を議題とします。本件に関連し国家公務員共済組合の問題について発言を求められておりますので、これを許します。丸山委員。
○丸山委員 国家公務員共済組合の療養費支拂いの規定に関することについて、お伺いしたいと思います。実は保險局長あるいは医務局長の御出席を願いたいと思つておつたのでありますが、あいにく来ないので、やむを得ません。
健康保險の経済が赤字で危機に陷つているというようなことが、この前の社会保障制度審議会の席上で言われておつたことは、御承知の通りであります。赤字
の原因には、いろいろございますが、その中に保險金の未收が非常に多いということがあつた。その後原因を調べましたところ、国家公務員共済組合の療養費の
支拂いが非常に遅れておるという事実を、私は見出したのであります。その事実を数字をもつて申し上げます。今年五月の末に、二十七の組合が支拂い基金に納
入しておる状況を調査したものであります。五月は三月分が出て参るわけでありますが、三月中の請求が三億三千六百九十五万二千円余りとなつておりますのに
対して、納めました金は二億三千六百五十五万九千円となつておりまして、この未納は二億九千三百八十八万五千円にもなつておる次第であります。さらに前
月、その前に拂わなければならぬもの及び前々々月に拂わなければならぬものを全部通計いたしますと、七億七千七百五十万円を超過しておる状況なのでありま
す。ことに納入の不良なものは経済関係省の組合であることがわかるのであります。たとえてみますと、大蔵省の組合のごときは累計一億四百三十一万四千円あ
まりの未納がたまつておるわけであります。ことに前々々月までに拂わなければならぬもので、まだ拂つてない分が六千九百六十九万八千円を超過しておる、こ
ういう状況であります。そのまた次の月までには一億四千四百七十八万四千円が未納になつております。これは大蔵省の組合だけであります。保險局を持つてい
る厚生省の組合はどういう状況にあるかというと、累計一千八百八十五万三千四百円余りという大きな未納を出しており、前々々月までに納めなければならぬも
のが千四百万円以上という状況であります。国家公務員共済組合の保險金は、当然俸給の中から差引いて納入されておるわけでありまして、保險金の未納という
ことはあり得ないわけであります。それがこういう状況なんです。また直営の診療所を持つておる組合、政府側の今までの話合いによりまして、医療費の高騰を
防ぐには、直営の診療所を持なければならぬというようなことがときどき言われ、かつて大蔵省の主計局であろうと思いますが、この赤字の状態を直すために、
五千万円かの予算をもつて、十箇所に直営の小さな診療所をつくろうと考えられたそうでありますが、東京都基金事務所の実績を見ますと、六月の末におきまし
て、非常に完備したものを持つている郵政省、電気通信省――昔の逓信病院でありますが、これが郵政省関係におきまして四百五十四万一千円余り、電気通信省
関係におきまして二百四十万円余りの未納であります。警察病院は六百万円以上の未納を出しております。一方そういうような診療所を持つておらない印刷庁と
いうようなものは、わずかに十九万幾らしかの未納金である。あるいは営林局のごときものは約九万二千円しか未納金がないという状態になつておる。直営のり
つぱな病院を持つておる共済組合が、はるかに大きな未納金を出しておる。厚生省の組合のごときは、六月末におきましての当月の支拂分に対して一厘も拂つて
おりません。当然拂うべきものを拂わない。またこういうことを監督する会計検査院の組合がどうであるかと申し上げますると、これはさすがに全然前月分まで
に拂わなければならぬような非常に古い未納はゼロである、たいへんみごとであると考えますが、しかし前月中に拂わなければならないものが八万九千円、当月
において拂わなければならぬものが十万円余り、合せて十九万二千六百円の未納金がある、こういう状態であります。今度の社会保障制度審議会におきまして社
会保險というものがいろいろ検討せられておりまするが、これに対しては、旧制度を温存しようという考え方が非常に強いのでありまして、各々自分のセクショ
ンを守り、自分の言い分を通そうというような意向が非常に強いのでありますが、大体保險局としまして、国家公務員共済組合がこういうような未納を出してお
る、つまり不良組合――民間の不良組合が保險金を納入しない、あるいは診療費を納入しない場合は、これはどんどん解散を命じて、政府組合にこれを吸收する
という方針をとつておられ、現にどんどん実行せられておる。しかるに国家公務員共済組合が、一方において公務員から保險金をどんどんとつていながら、未納
金が七億に達しておるという状態になつておる。保險局としてはこれをどういうように取扱うか、解散を命ぜられる意向はないのか、こういうものを温存しよう
と考えられるのか、これに対してどういう督促をし、どういう改善をされるおつもりであるか、保險局側にお伺いしたい。
大蔵省側に対しましては、保險経済の窮乏を補うために、直営の診療所をつくつてこれをやろうかと言われておつたにかかわらず、こういうようにかえつて診療所を持たない組合よりも、経済状態の悪い状況にある。これに対してどういうお考えを持つておるか、御答弁を願いたい。
○山本説明員 保險局長不在でございますので、私かわつてお答え申し上げます。
ただいまお話がございました共済組合の未拂いの問題は、実は非常に大きな問題でありまして、お話の通り、共済組合の分が二箇月ほど一般のものより遅れて
おりまして、従いましてそれが一般の支拂いの資金を食つておるというような形にもなつております。この問題につきましては、大蔵省ともその都度その共済組
合のそれぞれの所管の省と、この共済組合の未拂い問題をすみやかに解決するというような問題につきましては、いろいろ協議いたしておる次第でありまして、
ただいまもお話がございましたが、保險局を持つております厚生省におきましても、非常に遺憾ながら未拂いがたくさんございます。この問題につきましては、
後ほど大蔵省からお話があるはずでございますが、料率改訂によりまして、将来につきましては、相当すみやかに納められるという見通しになつておる次第でご
ざいまして、保險局といたしましては、現在共済組合の解散権はないわけでございますが、あまりにひどい未拂いの組合に対しましては、その分だけは切り離し
て、別途にプールして支拂いしない、そうしてその分については支拂いを差しとめまして、そうして保險料の納入を促進する、こういうような方法も考えておる
ような次第でございます。
○磯田説明員 ただいま御指摘の通り、現在共済組合におきまして、相当の未拂金が出ておるということは、まことに遺憾に思つておる次第でご
ざいまして、監督官庁としての大蔵省といたしましても、この各共済組合の未拂いを、一日も早く解消いたしたいという建前からいたしまして、各省の共済組合
とも協議いたしまして、ほとんどその財源率の引上げを見る段階に至つております。すなわち御承知のように共済組合は現在三十あるのででございまするが、そ
のうちの二十五まではすでに財源率の引上げを決定いたしまして、その財源率を徴收いたしますならば、今後未拂いを累積しないというところまでこぎつけてお
るのでございます。あと残ります五つの組合につきましても、現在大蔵省とその関係の各省の共済組合と協議中でございまして、この分につきましても、近く話
合いがつく段階に至つてつております。従いましてただいまお話のように、今まで赤字が出ましたことに対しまして、非常に遺憾に思うのでございまするが、今
後はさようなことはないというふうに確信しておるのでございます。
なお、先ほど直接の診療施設を持つておる共済組合において、赤字の累積が非常に多いというお話でございましたが、本来ならば、かかる組合におきまして
は、いわゆる診療單価も安く上るわけでございまして、従いましてその未拂いあるいは赤字ということも、少なかるべきはずのものでございますか、かかる直接
の診療施設のありますものについては、これは一般の共済組合の未拂いの原因とも、ほぼ同様の問題でございまするが、最近におきまして非常に濫僚濫診が行わ
れておるということの事実を、ある程度嚴にしなければいけないのじやないかと思うのでございます。すなわち組合員等におきまして、最近ややもすれば、この
医療施設を濫用するというような弊がないでもないのでありまして、この点につきましては、私どもといたしましては、各共済組合員の十分の反省を促したい、
よつてもつて社会保障制度の一環としてのこの医療給付施設というものが、十分健全に発達して行くことを期待いたしておるわけでございます。また一方におき
ましては、健康保險医におかれましても中には濫診をされる話を聞くのでありまして、たとえばこれはじようだん話かとも思うのでございますが、私どもの耳に
入りましたところによりますと、にきびを治すのにぺニシリンを打つておるというような話も聞くのでございます。こういうことでは、組合の経済もなかなか持
つていけない。これにつきましては、いわゆる本来の財源率の不足いたしておりまする分につきましては、ただいま申し上げましたように、各省の共済組合の協
力を得まして、その財源率の引上げをするという段階に至つたわけでございまするが、それとともに各共済組合並びに健康保險医の、この共済組合の健全な発達
をはかるという趣旨におきまする協力を、期待しておるのでございます。
○丸山委員 ただいま大蔵省側の御答弁でかなり重要な御発言があつたわけです。直営の診療施設を持つておつて、その診療施設が濫診濫療をや
つておるということを、はつきりおつしやつたのです。また一般の医者にも濫診濫療があるとおつしやつた、それがこの赤字の原因であるということをはつきり
御言明になつたのです。今まで政府側あるいは組合側において言われましたことは、一般医師に濫診濫療が多いから、それをなくするために直営の診療所が必要
であるということを、しばしば言われたように私どもは聞いておる。しかるに、ただいまの御発言の中で、直営診療施設においても濫診濫療が行われておるとい
うことを、はつきりおつしやつたわけです。しかも私が先ほど指摘しましたように、直営診療所のりつぱなものを持つておる逓信あるいは警察等において、赤字
が最も多いということは、換言すれば直営診療所を持つておるものにおいて、最も濫診濫療が行われておるということを、反面から立証しているものといわざる
を得ないのであります。その面から申しますと、直営診療所を持たない、たとえば先ほど申しました営林局でありますとか、印刷庁でありますとかいうものは、
一般の診療施設にかかつておるものであつて、これは非常に経営がよくて、わずかに九万円程度の赤字しか出しておらない。こういうことは、直営診療所におい
て濫診濫療が高度に行われておることを立証しておるものと考えますか、さよう了承してよろしゆうございますか。
○磯田説明員 お答え申し上げます。ただいまお話のありました印刷庁でございますが、これは直営診療施設がございます。それからまた逓信の
方が非常に赤字が多いという話でございます、これは直営診療施設もあるのでございますが、地方の組合員におきましては、その直営診療施設を利用できない、
さような事情によるものであると思います。それから先ほど濫診濫療が行われておるというふうに申し上げたという話でございますが、それが全体の原因になつ
たということを申し上げたわけではございませんので、先ほども話しましたように、原因はいろいろございます。すなわち根本の原因は財源率が低かつた、いわ
ゆる医療給付の非常な普及に伴いまして、非常に利用率がふえて参りました。それに伴いまして、従来御承知のように共済組合の掛金率は千分の二十五、国庫負
担千分の二十五ということに相なつていたのでございますが、これでは足りないということを発見いたしましたので、先ほども話しましたように、この財源率に
つきまして十分の引上げをするということに相なつておるのでございまして、従いましてこの財源率の引上げができますならば、今後の未拂い金は増加いたさな
い、さように考えておるわけであります。
○丸山委員 印刷庁が直営の診療所を持つておるそうでありますが、私は存じませんで申し上げて恐縮でございます。営林局は持つておりますか。
○磯田説明員 営林局は持つておりません。
○丸山委員 その持つておらない営林局が九万円くらいで少いのでありまして、先ほど私が申したことは誤りでないのです。また逓信は地方にお
いて完全な施設を持つておらない、普通の一般の医師の施設を使つておるのが多い、こう申されましたが、それは全然御見解の誤りであります。逓信ほど地方に
多くの診療所を持つておるものはないのであります。各郵便局ごとに逓信診療所というものを持つておりまして、それによつて非常に多数の者が扱われておりま
す。これは非常に御見解が違つておるということを私は特に申し上げておきます。
○寺島委員長 次に旧海軍共済組合の問題について、青柳一郎君に発言を許します。青柳一郎君。
○青柳委員 私はただいまの問題につきまして、大蔵御当局に質問いたしたいと思うのであります。一般の営業共済組合の年金受給者は、現在相
当多額の国庫の負担によりまして、三千七百円べースに相当する給付を受けておるのでございます。しかして旧海軍共済組合は、終戰の当時に、その実体を厚生
省所管の公益法人として、はつきりその地位を獲得いたしまして、現在も残つております。しかして国家公務員共済組合法を制定施行の際に、現に存しておる、
いわゆる従前の法令に基いて組織せられた共済組合と、海軍共済組合などのいわゆる廃止組合とを比較いたします際に、その双方の組合において働いておりまし
た人々は、双方ともに国家公務員であります点、また双方とも国の福祉機関として共済組合が存在しておりました点、ともに同じであります、まつたく同一事情
にあるものと存ぜられるのであります。また海軍の事業主体はなくなつてしまいましても、同じ工廠に働いておりました判任文官などは、恩給法によつて現在も
恩給を受けております。その金額も増額せられておりまして、国庫の負担を相当受けておる仕合せな身分であるのでありますが、一方その工廠で働いておりまし
た職工、用員、そういうもののうちの現在年金を受けております者は、現在もなお年額たつた三百六十円をもらつておるのにすぎないであります。国家といたし
まして、この点の均衡をはかりまして、旧工廠の用員、職工等にも、その当時一緒に働いた判任文官と同様の、しかして一般国家公務員並の年金を、この際国庫
の負担におきまして支給すべきであると存ぜられるのであります。この問題に関しましては、去る前国会におきまして請願がございまして、強く大蔵御当局にお
願いをいたしたのであります。その際に当局よりも、非常に同情のある御答弁を受けておるのであります。私どもといたしましては、来るべき一番最初の国会に
おきまして、この気の毒な海軍工廠の共済組合員の年金が、国庫の負担におきまして増額せられることを、大いに期待いたしておるのであります。その当時の大
蔵省御当局の御答弁もあり、その後いかにこのことが進展しておりますか、その可能性などについても、承りたいと存ずる次第であります。
○磯田説明員 ただいま御指摘になりました旧海軍共済組合の年金と、他の一般官吏の恩給並びに共済組合に対する年金と権衡を失しておる。従
つてこれにつきまして、一般の官吏並びに他の共済組合と同様の取扱いをしたらどうかという御質問だつたと思うのでありますが、この点につきましては、この
前の国会におきまして、すでに答弁いたしました通り、政府といたしましても、十分権衡をはかる必要のあることを認めまして、できることならば、今度の国会
にでも法律案を提出いたしたいということで、私どもといたしましても、鋭意立案をしたのでありますが、いろいろな事情から、今度の国会には提出する運びに
至らなかつたのであります。しかしながら、その必要性は十分認めますので、できることならば次の国会でも、もし次の国会でできないならばその次でもという
ふうに、最近の機会におきまして、機会があつたならば、開会に法律案を出しまして、御審議を仰ぎたいと思つております。
○青柳委員 ただいま御当局より、非常に近い機会にこの問題が、われわれの考えておりますように実現をするということをお知らせいただきまして、まことにうれしいことと存ずるのでございます。どうぞできるだけ早い機会にその実現方につきまして御努力をお願いいたします。
なおこの際関連して承つておきたいのは、工廠の共済組合ばかりでなく、その他の外地関係の共済組合に関しての同じような問題、並びに八幡製鉄所の共済組合につきましての同じような問題につきまして、その後の経緯を承りたいと存じます。
○磯田説明員 外地の共済組合につきましては、ただいまのところ、政府といたしましては、海軍共済組合、陸軍共済組合と同じような方向にお
いて考えております。ただ八幡共済組合につきましては、いささか事情が違いますが、十分その事情を検討いたしまして、できるだけ善処いたしたいという方向
において、目下研究を進めております。
―――――――――――――
○寺島委員長 次に狂犬病予防法案を議題とし、審議に入ります。まず提案理由の説明を聽取することにいたします。原田雪松君。
―――――――――――――
―――――――――――――
○原田委員 ただいま御審議を願います狂犬病予防法案の提案理由を御説明いたします。
国民の福祉を増進し、社会の安寧をはかるにあたりまして、公衆衞生の向上が重要な役割を演ずることは、多言を要しません。そのため公衆衛生に脅威を與え
る疾病予防のため、現在種々の施策が進められておりますが、人に感染する家畜の疾病につきましては、飲食用に供せられるものは、屠場法(明治三十九年法律
第三十二号)、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)によりこれを防止し、人に直接危害を與える家畜の疾病につきましては、家畜伝染病予防法(大
正十一年法律第二十九号)により、予防撲滅の対策が講ぜられる等、種々の対策が講ぜられて着々その効果を上げておりますことは、一般に認められておるとこ
ろであります。
犬の狂犬病は、元来犬の疾病であるにかかわらず、人及び他のすべての家畜はもちろん、種々の動物にも感染する疾病でありまして、従来家畜伝染病予防法に
よつて予防撲滅がはかられて参つたのでありますが、最近犬の飼養頭数及び野犬数が急増するに従つて、かつてほとんど根絶された狂犬病が、関東地方を中心と
して猖獗をきわめ、社会の不安をかもしておりますことは、各位の御承知の通りであります。狂犬病は現在までのところ、一たび発病すればまつたく不治の伝染
病であり、症状悲惨をきわめ、目をおおわしめるものであり、すみやかに本病を一掃して、全国民の安全を期する必要切なるものがありと存じます。このときに
あたり、狂犬病は他の家畜伝染病と性格を相違し、防疫措置もまつたく趣を異にいたす点が多いので、その万全を期するため、特に家畜伝染病予防法と別個な法
律によつて、適切な防疫措置をなし得るよう規定し、一刻もすみやかに本病を絶滅いたしたいと存ずるものであります。
以下、本法案の主要な内容について、その概要を御説明いたしたいと思います。
第一に、予防についてでありますが、国民を狂犬病の脅威から守るためには、まず犬の狂犬病の発生を防がなければなりません。その最も有効な方法として、
現在予防注射が実施されているのでありますが、これを徹底するため、すべての犬の登録を行い、定期的な予防注射の義務を課した点であります。またこれと関
連して浮浪犬の抑留を行いまして、根本的に発生防止の措置ができるようにいたした点であります。
第二に、狂犬病が犬の間に発生した場合、この初発の時期に絶滅しなければなりませんので、罹患した犬が早期に発見、報告され、それに対する処置が完全に
行われるよう届出、隔離の義務を課することにいたしたのであります。しかし本病に罹患した犬は、御承知のごとく、狂暴性となり、勢いのおもむくまま人を咬
傷してまわるものでありますから、人畜がこの罹患(りかん)犬と接触することを防ぐため、より徹底した浮浪犬の捕獲をなし、また緊急予防注射を実施し、運
動の禁止、移動の制限、さらに交通遮断等を必要といたしますので、これに関する規定を設けたのであります。
第三に、本病の診断には、まず症状の観察が必要で、さらに脳の病理組織学的検査等が必要となる場合もありますので、罹患犬及びそれを疑われる犬の殺処分
を禁止して、予防員をして検査をさせ、診断を確実にして、爾後の対策を立てる措置が必要であり、また必要に応じて病性鑑定をしなければならない場合も考え
られますので、これのできるような規定を設けたのであります。
第四は、厚生大臣に緊急防疫措置として、都道府県知事に必要な防疫手段の実施を命じ得るよう規定した点であります。
第五は、公衆衞生または治安維持の職務に携わる公務員及び獣医師に対して、予防員から協力を求められたとき、拒んではならない規定を設けた点であります。
第六は、抑留した犬を收容するための抑留所の設置を都道府県知事に命ずる規定を設けたのでありますが、この措置は、狂犬病発生上最も危險と考えられる未登録犬、未注射犬、浮浪犬等を抑留した場合、これを收容せんとするものであります。
第七は、家畜伝染病予防法から犬の狂犬病を分離いたしましたので、これに伴つて家畜伝染病予防法中必要な改正をいたした点であります。
以上が本法案の大要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いして説明を終ります。
○寺島委員長 本件について質疑の通告がありますのでこれを許します。苅田アサノ君。
○苅田委員 狂犬病に対するワクチンの効果につきまして、現在伝研あたりでも、これが確実性につきましては、非常に議論の余地があるという
ようなことを聞いておるのであります。その点につきまして、監督当局の方面におきまして、これがどういう状態になつておるかということの御説明を、ひとつ
聞きたいと思います。
○石橋説明員 狂犬病の予防注射の効果についての御質問でありますが、従来実施しております実施の成績から申しますれば、確かにきくという
観点で、私どもは申し上げられるのでありますけれども、学術的には、今とかくの議論があるのであります。それが証拠には、狂犬病の予防注射のいわゆる基準
を定めようと、予防衞生研究所で研究中でありますけれども、やはりそこに一定の基準がいまだ制定せられないところに、多少学会的に争論が残つておる。しか
し私どもは行政的に実施しました場合に、確かに予防注射によつて効果を現わす、また人のかまれた場合に、その発病を防止するという点において、統計的また
実際の経験から、その効果を認めて、行政的にはそれを実施しておる、そういう状況でございます。
○原田委員 私みずからやつておるのでありますが、今やつておりますのは、パスツール・ワクチンを主として使つております。しかしこれには
ソーゾニン・ワクチンを併用しますことによつて、完全に予防治療ができる。いま一つこれに難点がありますのは、従来試験動物は、野犬をもつてこれに充てて
おつた、ところが、野犬はいろいろな関係から不完全である。だからこのごろは、やぎなり、うさぎによつて狂犬病予防液をつくる、こういうふうになつており
ますので、現在のものは非常に優秀なように考えます。これによつて私どもは撲滅ができる。現在私がやつております二つのワクチンを混合しまして注射しまし
た結果は、非常に成績がよいのであります。これを一言申し添えておきます。
○苅田委員 ただいま当局の説明を伺いましても、学術的に申しまして、現在行われておるワクチンが必ず正確なものであるということには、ま
だ一致点が出ていないということがうかがわれるのでありまして、これは非常に緊急を要する問題でありますので、一応このような措置をするということには、
私ども反対ではございませんけれども、なおこの点については、関係当局方面におきまして、製造及び監督その他につきまして、十分な御注意を拂われまして、
完全にこの目的を達成せられるような御注意をお願いしたいということを希望いたす次第であります。
次に、現在輸出入いたしております犬の数量、それからこの増減の傾向、あるいはこれに要しております金額等について、大要をお知らせ願いたいと思うのであります。
○石橋説明員 動物の輸出入は、実は農林省所管になつておりますので、私ども手元に正確な数字はないのでありますけれども、現在のところは、犬の輸出入は非常に少い、月報等ではゼロを報告されておるように承知をしております。
○苅田委員 提案者の方に、以上のことにつきまして、御答弁が願えるような資料はございませんでしようか。
○原田委員 正確な数字は持合がございませんが、日本犬の輸出ということは、相当に注文があるようであります。ただこちらの方に入りますも
のは、セパードの純粹であるとか、その他のものも入つておるのでありますが、出入の問題は、向うから入るよりも、日本から出る方が多い。ことに柴犬のごと
き、土佐犬のごときというものは、相当に輸出せられておるという情勢でありますが、数字のことは、はつきりわかりません。あとでこれは畜犬協会の方を調べ
ますればわかりますので、データをもつてお知せいたすことにいたしたいと思います。
○苅田委員 そうしますと、これは大体特殊の目的を持つております民間業者が、輸出入をやつておるというように大体理解されるのですが、それで間違いございませんでしようか。
○原田委員 輸出、輸入ということは、民間ではできぬのであります。おそらく農林省の方にそういう注文が参りまして、それを集纒して輸出します場合には、その機関を通じて選択して、健康診断血統登録等をいたして出しておるようであります。
○苅田委員 機関はいずれ政府機関だろうと思うのでありますけれども、それをこちらで引受けてやつておる人たちがあるわけですね。そういう
のはやはり何らかそういうような組合をつくつて、たとえば向うからは警察犬であるとか、あるいは軍用犬であるとかいうような、品種の珍しい犬の輸出入とい
うことになつておると思うのです。私その間の事情はよくわからないのですが、やはりそれにはそういつた民間の業者団体があつて、農林省を通じてやつておる
のではないかと思うのですが、その点はどうですか。
○原田委員 それは今お話の通り、そういうふうな経路をたどつておるようであります。
○苅田委員 私がこれをお聞きいたしましたのは、やはり費用の分担の点に関係があるからお聞きしたわけなんで、やはり犬のワクチンの注射に
対する費用は、浮浪犬の場合は、私は国家負担――国庫あるいは市町村の負担でも同様でありますが、そういう負担でやるのが当然と思うのでありますけれど
も、そうでなくて、特殊の人の持つておる犬に対しましては、私はあくまで犬を持ち得るような環境にある人々自身が、その負担はまかなうべきであるというふ
うに考えますので、もしそういうようなことでございましたならば、この負担の分担のところにございます国の負担する費用の中で、第七條の規定による輸出入
検疫に要する費用というものも、私はそのような、直接利害関係を持つておるところの人たちの負担になるべきじやないかというふうに考えるのでございますけ
れども、その点に対しましては、いかがでしようか。
○原田委員 国で輸出入の問題に対しましての予算は持つておるようであります。だから国が代表となつてやりますので、その他のものは全部所
有者の負担になつておりますが、輸出入のいろいろな経費は国が持つことに、大体予算措置ができておるようであります。しかし検査手数料であるとか、そうい
うものは所有者の負担に、ここにはなつておるのであります。その点は国がやる点と、民間でやる点とはつきりいたしておると思います。
○苅田委員 輸出入の場合は、資料をいただきませんと、いましばらくはつきり申し上げられませんので、大体ただいまの御説明の程度で了承いたしておきます。さらに詳しい資料をいただきましたならば、御質問申し上げたいと思います。
○青柳委員 この法案につきまして、二、三承つておきたい点があるのでございます。この法案によりますと、いわゆる予防員というものを置か
れます。この予防員は非常に大きな権限を持つておる。犬を抑留する権限、あるいはそれを処分する権限、いろいろたくさんあるのでありまするが、ことに二十
條を拝見いたしますると、この予防員は公衆衛生または治安維持の職務に携わる公務員及び、獸医師に対して協力を求める権限を持つておる。この協力を警察官
あるいは獸医師は拒んではならない、しかし拒みますると罰則があるのであります。非常に大きな権限を持つております。しかるにこの予防員につきましては、
法案を見ますると、獸医師であれば足るというふうなことでありまするが、いかなる程度の資格をもつておるものを予防員とされるおつもりであるか。しかもそ
の任命に際しまして、どの程度の数を考えておられるか、その点について承りたいと思います。
○原田委員 ごもつともな御質問と思いますが、この点は食品衞生、乳肉衞生というようなものについて、県の方でも本部の方に十二、三名おり
ます。地方を通じて、一県で大体三十人から三十五人おるようであります。その人たちは公務員の資格を持つた人で、各地に分布的に散在した警察單位におりま
す。だから、これをただちにその方に振り向けることは、何ら支障はない。それから獸医師の問題でありますが、獸医師の無医村はほとんどございません。多い
ところは一箇村に三人も開業いたしておりますので、ただちに協力態勢が整えられる、事実上また自分の本職の上からいいましても、すぐ進んで参るような傾向
にありますので、御懸念はごもつともだと存じますが、実際面には、何ら支障がないということを御了承願います。
○青柳委員 そういたしますと、予防員に任命する人は、県におる一県平均三十名程度の人、その人を予防員に任命せられる御所存である、そういうふうに考えてよろしゆうございますか。
○原田委員 さようでございます。
○青柳委員 わかりました。
次にもう一点、第十六條「都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において緊急の必要があると認めるときは、厚生省令の定めるところにより、期間を定めて
狂犬病にかかつた犬の所在の場所及びその附近の交通をしや断し、又は制限することができる。但し、その期間は、七十二時間をこえることができない。」これ
に関しまして、狂犬病が発生したということで、人間の交通を遮断しまたは制限するという規定であります。これは法律的に見ますると、非常に大きい問題であ
ると思うのであります。提案者はそういうことをよく御存じの上で、かかる法案をつくられたことと思うのでありますが、いかなる理由によりまして、かかる非
常に強力な規定を設けられたか、それについて承りたいと存じます。
○原田委員 この点は非常に議論の焦点になるのではないかと思います。人でさえ特殊な伝染病以外は交通遮断をやつていない。この狂犬病並び
に動物に対してのみ、なぜこんなことをやるのだ、こういうことが一応言えると思うのでありますが、これは人でないがゆえに、この必要があるのであります。
たとえて申しますと、狂犬病が発生しました地域は、きまつておるのでありますが、しかも狂犬病の罹病犬というものは、畜犬よりも野犬の方が非常に数が多い
のであります。ですから、いつ何時その区域内に野犬が徘徊して参らぬとも限りません。特に私どもが実験をした例から申しますと、犬の発情期に、もしめすの
犬がおりますと、野犬が何十匹もそこに押しかけて来る。しかもそれが病毒を持つておるという例がないとも限りません。そういう意味から、これは人が移すの
ではなく、その野犬がもし咬傷いたしますると、ただちに悲惨な病状を呈しますので、この点は伝染病予防法からいいまして、狂犬病に限つては、それを設けな
ければ意味をなさない、こういうような考え方から、ここに社会的には少少無理のようにも考えられますが、この野犬からの危險防止ということをねらいといた
しまして、こういうことをやらなければ徹底したことはできない。しかもこの問題は、地方長官の権限によつて禁止もできれば制限もできますので、おそらく実
際上禁止ということはあり得ないと思いますが、これは非常の場合をさしておりますので、ある程度は制限の程度でとどまると思います。しかし万一そこにもこ
こにも狂犬病が出て、きのうも三人かまれた、きようは十人かまれたというような場合は、一応遮断しなければならぬという最悪の場合まで考えておりますの
で、どうかひとつ御了承願いたいと思います
○青柳委員 この十六條の問題は、政府御当局におきまして、この法律が公布施行ということに相なります際には、厚生省令をつくられるという
ことに相なつております。従いまして、今の提案者の趣旨を生かすようにと申しまするか、都道府県知事の認定権によるものでありまするから、都道府県知事が
かかる処置を行いまする際には、十全の注意を拂つて、弊害のないように仕向けるような省令を、ひとつお考えおきを願わなければ相ならぬと考えるのでありま
す。これで私の質問を終ります。
○丸山委員 大体私が質問したいと考えておりましたことは、青柳委員からほとんど御質問になりましたので、一点だけお伺いしたいと思いま
す。やはりこの十六條でございますが、十六條が一番問題になると考えております。この條文の中に、「都道府県知事は、狂犬病が発生した場合」という文句が
あります。この狂犬病とは、もちろん犬の狂犬病だと考えておりますが、犬が狂犬病を発したということの認定は、どういうことで発生したと確定するのであり
ますか。その辺の取扱い方で、かなりいろいろなむずかしい問題が起ると思いますのでお尋ねいたします。
○原田委員 診断をやりますのは、前の條項にこれも掲げてありますが、もちろん獸医師あるいに予防員か、防疫員が狂犬病あるいは狂犬病の疑
似症ということを認定しなければ、この処置はとらないのでありまして、これはそういう時期において、係員の諸君が嚴格なる検診を行いまして、そうしてこの
処置に出る、こういうことになりますので、その獸医師並びに防疫員の諸君は、手前の條項にございます通り、これを発見するまでに相当な努力と注意を拂いま
して、これを認めるのであります。この獸医師並びに予防員が認めた場合の適用でありますので、その点はそういうことでいいのではなかろうかと思います。
○丸山委員 実は私この條項を非常に心配いたしておりますのは、ただいまのような御説明でございますと、予防員でございますとか、獸医師が
診断を確定したときに、初めて県知事が緊急の必要があると認めてやるということになりますと、場合によりますと、実際交通を遮断したり、いろいろなことを
やらなければならぬ、制限をしなければならぬ必要があるときにはこれが行われなくて、非常に手遅れになつて、おそくなつてからそういうことが行われるよう
な危險があつて、緊急の事態に対処するにかえつてこの條項は困るのではないかと考えるのであります。実は私は狂犬病が発生した場合でなくても、狂犬病に疑
わしいものが発生した場合にも、緊急の必要がある場合にはやつてもいいのではないか。また狂犬病が発生したということを確定されて、その犬がつかまえられ
てしまつた後において交通を遮断する必要はないと考えられまするので、何かその辺に対して御考慮があるかどうかということを承りたい。
○原田委員 狂犬病が発生した場合ということのみに、お考えを持つていただいておると思いますが、これは疑似症の場合も含んでおるわけであ
ります。第十條に、疑似症の項目が入つております。そういう場合も、やはり緊急必要というようなことにとつてよろしいと思いますので、さよう御了承願いま
す。
○苅田委員 もう一点関連して……。
○寺島委員長 あなたに対する質疑は先刻終了したのですが、特にもう一点だけ許します。
○苅田委員 提案理由に、近来特に飼育犬、野犬の増加が著しいということか書いてあるのであります。この状態はおわかりになると思いますが、その原因、どういう原因でこういうふうになつたかということがおわかりでございましたら、御説明願いたいと思うのであります。
○原田委員 現在今年まで厚生省の方で予防注射をやられたものは、約百万近いものをやつておられるようであります。八十何万――数字は別に
持つておりますが、それだけの犬が予防注射をやつた。ところが現在の私どもの見通しでは、野犬として取扱うべき性質のものが、少くも百五十万おる見当であ
ります。だからこれを合計しますと、二百五十万の犬が日本におるということになる。しかも畜犬でない野犬が百五十万もおるということは、これはゆゆしい問
題を惹起しないとも限りません。そういう意味から特に大阪では、一頭発生して、かまれたものが九人でありますけれども、東京附近には日々に蔓延の徴候かあ
りますので、時節柄最も必要なりという意味で、野犬の方面の整理をやる。そしてすでに所有者がないものは撲滅的に殺処分をやるということもあり得ると思い
ます。もちろん厚生省でも相当の額を費して、一年に何回か野犬撲殺をやつておるわけであります。そういうふうな段階でございますし、これは今年は昨年に比
較しまして、三倍強の発生を見ております。しかも昨年のごときは、罹病者の七割が死んでおります。実にこれは悲惨な死にようをするのであります。そういう
ところから私ども考えまして、ぜひこれを緊急に御承認を得たい、こういうので提案をいたした次第であります。
○寺島委員長 他に本案についての御質疑はございませんか。――なければこの際おはかりいたします。本案についての質疑はすでに終了いたしておりますので、この際質疑を打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければ、質疑を打切ることに決しました。
次に本案についての討論に入ります。苅田アサノ君。
○苅田委員 共産党といたしまして、狂犬病の予防注射を行うことにつきまして、そのこと自体には少しも反対はございません。ただ問題は、こ
うした法律に制定しまして、国の仕事としてこの事業を行うからには、現在まだ狂犬病のワクチン等についての疑義が、学術的にも残つておりますので、この点
につきまして、国の方では十分なる研究費をさいて、そして至急にこれの完全なる対策をはかられたいということが一点と、それからこの注射を行います費用の
負担は、浮浪犬の場合には、これは国庫負担であるということは当然でありますけれども、しかしながら、これが個人の飼育犬の場合には、全部これは各個人の
負担にするという建前を明瞭にやつていただきたい。そして非常に生活不安のために多くの生活倒壞者が出ておる今日において、そういう特殊な人たちの飼育犬
のための費用まで、一般大衆にかけられないような措置を十分に講じていただきたいということを特に、要求いたしまして、この法案に賛成いたします。
○寺島委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより狂犬病予防法案の採決をいたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕
○寺島委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り決しました。
なお議長に提出する報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければさように決します。
―――――――――――――
○寺島委員長 次に本日の請願の日程に入ります。らい患者の療養生活改善に関する請願、苅田アサノ君。
○苅田委員 本請願書は、瀬戸内海にあるところの大島青松園、邑久光明園及び長嶋愛生園の三つの療養所から提出されております請願書であります。
この請願の内容は、前国会のとき以来、たとえば村山の全生病院等から出ております癩療養所の請願の趣旨と、ほとんど同一でありますので、私は本日この機
会をもちまして、関係当局が、前国会以来出ております療養所のあまたの改善要求の問題を、採択後どのように処置されておるかということについての御説明を
伺いたいと思うのであります。本請願書に出ております要求事項のみを簡單に申し上げますと、第一は、文化教養費の増額、入院患者一人当り年額二千円を計上
してもらいたいという要求が一つと、それから食糧費の増額の件であります。これは一人当り現行六十三円のところを、八十円に増額願いたいという件でありま
す。それから慰安金の増額でありまして、これは現行一人当り月額二百円を三百円に増額願いたいという意見であります。それから癩療養所内の職員の増員の件
でありまして、これは医官は患者八十名に対して一人の割に増員を願いたいという請願であります。看護婦は患者十名に対して一人の割合、次に修繕及び営繕費
の増額の件、なお附属建物増築請願の件、癩療養に対する治療研究費の増額の件、癩中央研究所を設置していただきたいという件並びに夫婦舎の整備の件、被服
費増額の件等であります。これらの大半は前国会に出ました村山全生園の患者代表から出ております請願の趣旨とも大体同一であります。これが採択の上どのよ
うに審査されているかということをお聞かせ願いたいと思うのであります。
○寺島委員長 苅田委員に申し上げます。苅田委員の御紹介に関連する質疑については、医務当局が参りました適当の際、すみやかに御答弁願うことにいたしまして、次に移りたいと思います。
―――――――――――――
○寺島委員長 次にがんの治療法研究費国庫補助に関する請願を議題といたし、倉石忠雄氏の御紹介を願います。
○倉石忠雄君 現代医術の進歩はまことに驚異的なものがありますが、ただがんだけは、全く不治の病として、医師もさじを投げ、患者も宿命と
あきらめておる状態であります。中には医師も患者も、ともにがんであることを知らずに死亡する者も少くはないのであります。世界中で最も医術の進んでおる
といわれておるアメリカでも、この病気の治療については、いまだ未開の野であつて、医師の研究も盛んであり、社会の関心も強く、街頭はがんの広告で一ぱい
だとのことであります。かような不治の病から人類を救いたいとの念頭から、つとに固い決心のもとに、がんの研究に渾身の努力をささげられた、蓮見医学博士
は、私費を投じてがん研究所を設立し、電子顕微鏡の力により、近ごろようやくがんの病原体ワイラスを発見し、その治療法についても、早期の診断とともに、
初期がんの治療に成功し、日々実績をあげている実情であります。今日までの研究の過程と成績は、本年四、五、六、七、八月発行の雑誌「自然」に発表され、
がん患者にとつて、救世主の出現のように喜ばれておる次第であります。博士は今や第三期がんの治療法研究に没頭し、晝夜兼行、心根と私財の限りを盡してこ
れが研究の歩を進めております。しかしながら、このような研究は難事中の難事でありまして、一私人の力のみにまかせることは惜しむべきことであるのみなら
ず、その研究の成果の遷延は国家民人の不幸と申さねばなりません。
国家はかくのごとき国民保健上の重要な事業に対し、応分の補助金を交付し、国民の不幸たる不治のがん病を一掃し、一日も早くふびんなるこれらの患者を絶
望のどん底から救い出すと同時に、早期診断によつて未然にこの悪病を予防すべきであると存じまして、ここに本請願をなす次第でございます。
私どもは熱心にこれを支持いたしまして私のほかに山村新治郎君、廣川弘禪君。堤ツルヨ君、寺島隆太郎君、大石武一君が紹介議員になつております。ことに
私どもは、この博士の治療によつて、非常な恩惠を受けている一人といたしまして、熱心に皆様の御採択をお願いする次第であります。
○石橋説明員 がんの原因並びに治療に関しての研究は、わが国においても相当に行われているのでありますけれども、いまだその真の原因を追
究もできないし、また特殊の治療法も発見せられないのでありますが、実際にこの方面についての新しい治療方法などについての、特殊な優秀なものがあります
れば、これは当然国庫からも補助してさしつかえないものだと思うのであります。それならば現在どういう道があるかと申しますと、ただいまがんについて研究
費を政府から支出してもらつておりますのは、がん研究所と名古屋医科大学の特殊の研究者が、文部省所管の科学研究費から研究費を補助されていると思うので
あります。来年度の研究費については、各省からやはりがん研究費を大蔵省に請求することになつています、私どもで取扱つております研究費については、ただ
いまの蓮見先生の研究費は取扱つておりませんが、私どもの大体予算省議は一応済んでしまいましたので、あとで何か考慮ができるかどうかということは、これ
から帰つて相談しないとはつきりいたしません。しかしまだ文部省等においても、同様に従来通り取扱つておりますので、また別途文部省あたりから、そういう
補助をする道があるかどうか、私どもからお願いもしてみたいと思います。またその研究方法が、現在のがん学会でどういうふうに取扱われているかということ
についても、私どもは実はよく承知しておりませんので、その点についてもよく取調べた上、できるだけ御援助ができますれば、やりたいというお約束を、この
際しておきたいと思います。
○堤委員 私も蓮見博士の患者の一人でございますが、本請願は特別な請願でございますので、本請願の審議のため参考人として医学博士の蓮見喜一郎氏をここにお呼び願つてはいかがかと思うのでございます。動議を提出いたします。
○寺島委員長 ただいま堤委員より、本請願審査のため医学博士蓮見喜一郎氏をお呼びの上参考意見を聽取いたしたいという動議が出ましたが、右動議に対して御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければさよう決し、所要の手続をとることとし、蓮見博士がお見えになつておりますので、ただちに参考意見を聽取したいと思います。医学博士蓮見喜一郎君。
○蓮見参考人 ただいま御紹介をいただきました蓮見でございます。本日は貴重なお時間をさいて、つまらない研究の一端をお聞きくださること
は、まことに光栄と存じまして、厚く御礼申し上げます。ほんの短時間の説明にとどめまして、がん細胞の中に、現実にがんの病源体をごらんに入れたいと思い
まして、午後自由党の政務調査会において、位相差顕微鏡を使つて、子宮がん患者のがん細胞の実際をお目にかけたいと思いますので、もし御希望の方がありま
したら、そちらヘお出向きくださればありがたいと思います。
がんの病源につきましては、世界中がいろいろ研究を重ねておりますが、杳としてその根源をつくことができませんでした。しかるに一九一〇年、ドイツのラ
ウス博士が鶏の肉腫について、それをすりつぶして、瀬戸物の素焼を通しますと普通のバクテリアは通過しませんが、病毒は通過して、次の鶏にがんを発生させ
るという実験をいたしまして、それに刺激されて、英国の帝室がん研究所の所長をやつておりますジヤイ博士が、同じくラウスのこの病毒学説を取上げまして、
いろいろの実験を推進いたしまして、がんのイギリス学説を確立いたしましたのが、一九一九年のころでございます。
私は、一九三二年、千葉の瀬尾外科におりましたときに、瀬尾教授が日本で初めて食道がんの宿題報告を担当されましたときに、私は教室員として参画いたし
まして、しかも手術と同時に、全世界の文献の担当を命ぜられました。私一人が世界の五万幾つの文献を渉猟いたしておりますときに、たまたまジヤイ博士のワ
イラスについて注目をいたしました。それ以後、その病毒の探究に私も及ばずながら努力しておりますが、何らそれを見きわめるところの手だてがありませんで
したが、終戰直後わが国においても、初めて電子顕微鏡の実用化ができましたので、千葉県の茂原原子科学研究所に出向いて、そこで製作しました電子顕微鏡を
使つて、一昨年の二月、初めてがんの病源体を突きとめた次第であります。その後いろいろと基礎的研究と臨床的研究を並行いたしまして、昨年十月五日、京都
帝大において初めて発表いたしました。その席は電子顕微鏡学会の総会でありまして、理科系統の物理科学から医学、全部門の教授が集まつて、その席上で発表
することができました。その後「自然」の社の要求によりまして、今年の四月から八月まで、そのアウト・ラインだけを発表することができた次第であります。
今まで各学会へ参りますと、お前の発見したのは、ごみではないかとか、あるいは細胞核の破壞物をとらえて、病源体と称しているのではないかとか、いろいろ
な質問や抗議が出て参りましたが、その後昨年の秋に至りまして、位相差顕微鏡で、染色しないで、なまのままで写しますと、プリズムの関係で色がついて、効
いたままの観察ができるようになりました。それを使いまして、がん細胞の写真をとることに成功しまして、現実にその病源体ががん細胞の中に存在すること
と、周囲のメジウムの中にも、遊離した病源体が分子運動を行つているのが見られるようになりました。しかもこのものが單純な核の破壞物とか、單純なごみで
したならば、免疫血清とか、患者自身の血清で、凝集反応を起したり、また白血球がこれを貪食したりする現象が毛頭起らぬことは、科学的に明白なことであり
ます。しかも血清学的な研究と、臨床的な診断法、並びに早期の治療法を通覧いたしますと、このものはがんの病源体と称して、いささかも過言でないというこ
とを、うぬぼれながら自信を持つた次第であります。
昨年二月「電気日本」に私が初めて発表したのに続いて、四月十九日ニューヨーク、コロンビヤ大学のサミエル博士が、同じくねずみの乳がんについてワイラ
スを発見いたしました。続いて四月二十五日、ニュース・ウイーク紙上に、ニューヨーク、マンハッタンにあるがん記念研究所のヴイットナー博士が、同じく乳
がんの中から一種のワイラスを分離しまして、がんの病源体たることを発表いたしました。そのような次第で、世界の情勢は、逐次がんのワイラス学説に傾きつ
つあるのが現状ではないかと思います。
ただここに困つたことは、日本の学界はいつも外国のあとを追うて、十年ないし二十年の遅れをとつておりますし、あるいはほかの原因かわかりませんが、ま
だ私らの学説を正面から受入れようとはいたしておりません。さりながら昨年七月、アメリカの軍情報部から、第一回のリポートの提出を求められ、今年また第
二回の提出をいたしました。昨年の十月、GHQのある軍医の方から、もし徴用がある場合には、いつでも行けるような態勢をとつておけという注意までいただ
きましたが、ただ私考えますのに、日本人であります以上、やはり日本人を救いたいというのが、私の考えであります。
どうか私の最後の研究のゴール・インに対して、皆さんの御同情と御援助をいただきましたならば、欣快にたえないと存じます。本日の御清聽を感謝いたします。(拍手)
―――――――――――――
○寺島委員長 薬事法改正に関する請願、同外二百四十九件、有田二郎君外二名紹介を一括議題といたします。紹介者有田二郎君の紹介を願います。
○有田二郎君 今委員長から二百幾らとありましたが、医薬分業実施を目的とする薬事法改正に関する請願の件は、千五百五十六件でありまして、これを代表して御紹介申し上げたいと思います。まず請願書の趣旨を朗読いたしたいと思います。
終戰後、社会各般の法律制度に幾多重要なる進歩的改革が行われましたが、七十年来いまだに旧態依然として、最も不合理な状態に放任されてあるものは、医
療制度であります。医学の專門家ではあつても、何ら薬学の專門的学識技能を修得していない医師に、従来調剤、投薬の行為を認めたゆえんのものは、薬剤師の
普及しない時代の便法として、暫定的に許可したものであり、大正十四年第五十議会において、議員大口喜六氏の、医師に調剤を許した薬剤師法の附則を除い
て、医薬分業をなすの意思ありやいなやとの質問に対し、時の若槻内相が、法律の規定で原則を設けられておつて、附則において経過法としてこうしてもよいと
いう規定のあることは、いつもそれは例外法であり、それはいつかは原則にもどるのが当然であるから、早晩いつの時にか本則の通りにせなければならぬと言明
されていることでも、立証せられるのであります。しかるに、この便法が永久的措置であるかのごとき実情に相なりましたことは、まことに遺憾にたえません。
私どもは医と薬との業務を分離することにより、お互いに責任を尊重分担して誤りなきを期し、医療の科学化をはかると同時に、国民が年々負担しつつある総額
八百六十億円に達する医療費の軽減、合理化を企図したい次第であります。
右の趣旨に基き、薬事法のすみやかなる改正を行い、医薬分業が実施できますように、御審議のほどここに請願申し上げます。
医薬分業につきましては、すでに古い歴史もあり、同時に新聞紙上あるいはラジオにおいても、皆様御存じの通りであります。いささか医師と薬剤師のどろ試
合の感を、われわれは受けるのでありますけれども、私は原則として、医薬分業は行われるべきものである、かような観点に立つものであります。かりに一例を
とりますると、同じく小学、中学、高等学校を経て、医科大学、薬科大学に行つているが、卒業した片一方の医科大学では、薬科大学の権限と同じく、薬剤師の
持つところの権限を持つということは、私は非常に不合理であると思う。医科大学は医師として、薬科大学は薬剤師として、それぞれの本分につくべきものと私
は考えるのであります。しかしながら、この請願書にもありまする通りに、非常に薬剤師の数が少かつた当時においては別でありますが、今日は相当の薬剤師の
数になつておりまする現段階において、一日もすみやかに医薬分業は行われるべきものである、かような観点に立つものであります。しかしながら、何と申しま
しても、これは国民大衆が一番大切なのであります。地方農村にありましては、薬局の数も非常に限定されておるのであります。これらの方面におきましては、
もちろん医師が便宜上薬剤師、いわゆる調剤の仕事に携わつていただくことは、もちろんでありますけれども、しかし原則としては、やはり医薬分業でなければ
ならない。かような考えを持つておるのであります。しかも今日におきましては、先般厚生省があつせんされました医療制度の委員会、あるいは医薬分業の委員
会に、医師会の方も同調されまして、そして真劍にこの問題が取上げられることになりましたことは、厚生省の御努力もさることながら、医師会各位のこれに対
する御理解を、われわれは深く了とするものであります。どうか一日もすみやかに医薬分業が行われますと同時に、一番大切なことは、もちろん国民大衆であり
ますから、国民大衆に利便をもたらせるように、そういうような方向において、本委員会において薬事法の改正をしていただきたいと私は思うのであります。ど
うかかような意味合いにおきまして、本請願を本委員会において御採択あらんことを切にお願いする次第であります。
○寺島委員長 政府の御意見を求めます。
○平澤政府委員 御答弁申し上げます。厚生省では、ただいまこの七日に発足することになつておりまするが、医薬分業の問題につきましては、
臨時医薬制度調査会並びに臨時診療報酬調査会、この二つの調査会を設けまして、この両調査会から出て参ります答申を参考といたしまして、多年にわたる問題
を解決いたしたい、かように考えまして、それぞれ專門の委員並びに一般治療を受けまする面の人々をも委員に加えまして、調査をいたすことになつておるので
あります。おおむね来るべき通常国会までには答申を得まして、その答申を参考といたしまして、厚生省では結論を見出したい次第であります。厚生省といたし
ましては、最善の努力をいたしまして、多年にわたるこれらの問題を解決いたしたい、かように存じている次第でございます。
○堤委員 ただいま紹介議員の説明がございまして、紹介議員自体も、あくまでも大衆を対象としてということを御力説になつておりまするの
で、政務次官の方も、よくわかられたと思うのでございますが、すでにこの委員会におきましても、この国会中医薬分業については、政府との質疑応答をいたし
まして、わが党からもしばしば主張いたしておりますように、あくまでも患者から上つた收益を、医者と薬剤師が分配するという建前に立つて、これを論じてい
ただくというようなことは、徹底的にこれを避けていただかなければならない、あくまでもこれを受けるところの患者大衆の立場から、これが討議されなければ
ならないのであります。今日、私たちの常識で申しましても、たとえば医療制度というものを社会化いたしておりながら、薬というものを手放しにやつておる、
岡委員から前に指摘いたしましたような大きな欠陷もございます。そういう点をいかに調整して行くか。ここには薬事法のみならず、医師法、あらゆる医療制度
の改革というものに検討を加えて、しかる後にいわゆる強制分業に持つて行く技術的なものを、私は必要といたすと思うのでございます。この間、新聞を拜見い
たしますと、大臣のだれでありましたか、政務次官のだれでありましたか、忘れたのでございますが、この両調査会が七日に発足いたしますのは、すでに強制分
業を決定的なものとして、この調査会に入るというような御発言をなさつていたように思うのでございます。これは新聞の記事がいかようにも取扱いますので、
大臣並びに政務次官に直接聞きただしたいと思いながら、時間がなかつたので、あるいは新聞記事の誤りでございましたら幸いでありますが、ただいまとつてお
りますところの任意分業の形から強制分業の形に移行する間、いかにあるべきかということの、愼重な態度が必要なのでございます。まことに多年にわたるとこ
ろの請願でございまして、薬剤師の方々の請願といたしましては、私はごもつともと存じ、またこれに必ずしも反対いたすものではございませんが、どうかそう
いう点をよく勘案されまして、厚生省では愼重を期されたいと思うのでございます。今までのこの医薬分業に関するところのサムス准将の指令と申しますか、勧
告というものに対しましての厚生省のあり方自体は、非常に私は自主性を失つておつたと思いますので、ここに政務次官がおいでになりますから、その点を私は
力説して、希望を申し添えておきたいと思います。
―――――――――――――
○寺島委員長 次に、遺族の援護対策確立に関する請願外一件、青柳一郎君紹介。遺族年金支給に関する請願、高橋等君紹介を一括議題とし、青柳一郎君の説明を求めます。
○青柳委員 三件一括してお願いいたそうと思います。
遺族援護につきましては、もう第五国会以来数度にわたりまして、御当局に請願をしております。現に第七国会などにおきましては、約六十万人に及ぶ遺族の
方々からの請願であります。しかるに御当局のその後の御処置を見ておりますのに、何ら進展を見ておらないのであります。これはまことに遺憾千万なことでご
ざいます。今回の国会におきましても、短期である関係から、あまりたくさんのものは出ておりませんが、同じような請願が出ている次第でございます。
まず第一は、遺族年金または弔慰金を支給すること。この問題に関しては関係当局においても、従前よりもある程度緩和したお話を、私自身は承りつつあるの
でございます。客観情勢が好転した場合には、それを出すのに考えられないでもないというふうなお考えでございます。この問題につきましては、昨日も、阿波
丸事件につきましての遺族の方に国から金が出る、これを聞いた遺族はどう思うか。これをきつかけに御当局におきまして、この際緊褌一番していただきたい、
こう存ずる次第であります。
この三件の請願の中に、同じ年金弔慰令につきまして、目新しいと思われるものが一つございます。それは山口から出ておる分につきまして、遺族補償金の支
給というお願いがあるのでございます。第五国会におきまして、戰死者は公務による死亡者であるということを、厚生大臣から本会議におきまして御確認を得た
のであります。公務による死亡者である以上、国はこれに対して補償する責任があるのでございます。そういう意味から、遺族補償金の支給の要望が新しくここ
に加わつておるということにお気をとめを願いたいと思います。第二番目の点は、戰没者に対する葬儀その他の慰霊行事に対する一般文民と同様処遇をせられた
い。第三は完全なる社会保障制度を、この際これらの遺族のためにも確立していただきたい。第四番目は、遺族の就職あつせんを組織的に行われたい。第五番目
は、国または地方団体において、保育所、母子寮、授産所を増設すること。保育所、授産所、母子寮につきましては、国の御努力によりまして、今年は相当多額
の経費が計上せられました。来年度におきましても、今までの金で満足されることなく、なおこの増額をはかられたいのであります。第六番目は遺族の子女の教
育については、義務教育については、国と地方団体で全額その費用を負担し、さらに高等教育に対しても、育英資金を拡充して広く遺兒に及ばすこと。第七、生
業資金制度を拡充して、遺族の立直りを容易ならしむること。第八、課税の減免、弁地の解放、作物の供出等の問題に関しても、遺族の特殊事情を十分しんしや
くして、適切な施策を行うこと。これらの点につきましては、別に新しくこの際説明を加えることは必要ないのでございますが、課税の問題につきましては、今
回の国会に提案されております地方税法案におきまして、寡婦につきましては、非常に好遇を得ておるのでありますが、ひとり寡婦についてのみならず、さらに
年とつた老人が、か弱い女子供のみをかかえておるような人もございます。これらの点につきまして、なお今後とも十分な御努力をお願いしておる次第でござい
ます。と同時に、もう一つ新しい問題といたしましては、忠魂碑につきまして、いろいろな制限があるのでございます。この際この忠魂碑の制限につきましても
手配をされたいというのが、請願の趣旨であります。
なお昨日阿波丸事件に関連して遺族の問題を私が政務次官に申し上げました際に、お願いいたしておきましたが、遺族援護の問題につきましては、私は戰争犠
牲者のうちで、最も気の毒な人であると思う。それだけ政府におきましても、この弱い人に対して、はつきりした、あたたかい手を延ばしていただきたい。その
ためにお役所で、やられる一つの方法として、通牒を新たに出していただきたい。この通牒につきましては、従前から戰争犠牲者につきましての通牒には、引揚
者あるいは留守家族というような表題はあるのでありますが、遺族はいつも「等」という中で、一括してこと済まされておるのでありまして、遺族から見ます
と、そういうような取扱いを受けたくない、やはりはつきりと遺族と書いていただきたい。「等」という中に入れまして、従前やつておられますのは、関係当局
に対する政府当局の御顧慮が、第五国会まではあつたことによると思うのでありますが、そういう顧慮は、現在はなくなつておるのであります。必ず戰争犠牲者
に対しての通牒には、遺族もはつきりとうたい込んでいただくことを重ねて要望いたします。
以上請願の趣旨を弁明するとともに、私のお願いを申し上げた次第であります。
○堤委員 ただいま遺族に関する請願について、青柳委員の紹介説明があつたのでございますが、幾たびかこの遺族に関する請願が取上げられて
おりながら、一向に政府はそれに対して具体的な政策を示しておらないのでございます。はなはだ遺憾に存じます。幾件これが取上げられましても、一つとして
実現したことがないといつてもいいのではないかと思うのでございます。わずかに厚生省の方から指令を出されたくらいのことでございまして、これも都道府県
によりましては、非常に薄弱なものになつておる府県が多いのでございます。さらに今、教育の問題も具体的に取上げられました。社会保障制度の試案が今でき
つつあるそうでございますが、この試案を見ましても、その答申の中に、教育制度の確立すらしていないということは、私は戰争孤兒とか遺兒のために、非常に
悲しく思うのでございます。特にこの点は社会保障制度が確立されますまでには相当の期日がございますので、厚生省といたしましては、この暫定的な処置につ
いても、十分お考え願わないと、健全な国民を育てることはできないと思うのでございます。この点特に留意していただきたい。
それからもう一つ、所得税について申入れをしていただきたいのは、遺兒であるとか、戰災孤兒であるとかいうのが、里親制度によりまして、里親に養われて
おります場合、普通の子供でございましたならば、一万二千円の扶養控除額を設けられておるのでございますが、里子の場合には、今度の法律の改正によりまし
ては、控除されないことになつておるのでございます。これはまことに私たちといたしましても、うかつでございましたが、大きな法の欠陷だと思いますので、
どうか兒童局から、何とか手を打つていただきたいということを、この委員会で、遺族の援護の請願に加えて発言しておきます。
○高田政府委員 遺族の方々のお立場、ことに小さい子供をおかかえになつた未亡人の方々、あるいは身寄りのない御老人の方々、かような方々
のお立場につきましては、非常にお気の毒なことは申し上げるまでもないのであります。お話の通りに、第五国会にも両院一致で御決議になりました。政府にお
きましても、従来とも努力いたして来ているわけでありますが、今後とも、なお十分なる格段の努力をいたしたいと存じております。
なお二、三御指摘のありました補償金と申しますか、年金と申しますか、かような問題につきましては、御承知のように、社会保障制度審議会の研究試案の中
にも取上げておりますので、私どもといたしましても、大体この線に沿つて事務的には研究いたしております。ただ御承知のように、理論的な問題といたしまし
ても、あるいは財政的な問題といたしましても、相当いろいろ問題のある事柄でございます。これらのことが実現いたしまするように、私どもも努力をいたしま
すことはもちろんでございますので、どうぞ皆さん方の御援助をいただきたいと存ずる次第であります。
なお通牒のお話がございましたが、これは先般来主管部長、主管課長会議等がたびたび開催いたされましたので、私どもの方から、十分にお話をいたしたつも
りでございますが、ただいまのお話等もございますので、ひとつ具体的に出すように研究いたしたい、かように考えております。
なお里子の免税の問題でありますが、これは御承知のように、所得税法に準ずるということになつておりますので、これが養子縁組をいたしますれば問題はな
いが、ただそこに至りません里子の問題になりますと、今日の税法では、扶養控除はないことに相なつておりますので、これは私どもの立場といたしまして、今
後関係方面と折衝し、努力いたしたいと存じます。
○青柳委員 今当局の御意見の開陳があつたのでありますが、その中で、この遺族年金、弔慰金の問題を、社会保障における遺族年金の面でこと
済ませようというお考えは、実は間違つているのであります。生活面について、社会保障制度におきまして、遺族の方々に対して援護の手を延ばすということ
は、けつこうなことでありまするし、われわれも十全なる努力を沸いたいと思つておるのでありまするが、この遺族の年金の問題は、それだけで済むのではな
い。戰争でもつて公務によつて死んだ、それに対して特別に国において見てくれということに、重点があるのであります。金額は問わない、とにかく国でもつて
幾らでもいいから出してもらつて、お気の毒であつたという弔意を表してもらいたいという気持が、あの遺族の運動の一番中心の点であります。社会保障制度の
年金だけで片づけられる問題でなく、特別なそういう精神的な問題であるということを、御当局においては、はつきりと認識していただいて、この問題について
の御努力を重ねていただきたいこう存じます。
○高田政府委員 ただいま御指摘の点、実は十分承知をいたしておるのでございます。青柳委員よく御承知のように、いろいろとその点につきま
しては、問題の多いところでございますので、申し上げませんでしたけれども、私どもといたしましては、十分承知をいたしておりますので、御発言の通り、そ
の点も十分考えて、最善の努力をいたしたい、かように考えております。
―――――――――――――
○寺島委員長 次に先ほど苅田委員より御紹介になりました文書表第六〇三号、らい患者の療養生活改善に関する請願に関し、国立療養所課長尾村説明員より説明を求められておりますので、これを許します。
○尾村説明員 苅田委員からお話がございました癩患者の生活改善に関する各種の種類でございますが、それにつきまして、現在われわれの方で計画しており、あるいは実施いたしております点につきまして、御説明申し上げます。
癩患者の文化費の計上の問題でございますが、これもああいうふうに非常に長年月治療と同時に、そこを生活の本拠といたしておる患者でございますので、そ
の必要をわれわれも痛感しておりまして、今年度予算にも計上しております。財政等の都合でこれが通過いたしませんでしたので、さらに来年度は内容を一層検
討いたしまして、計上要求するように、今努力中でございます。それから食費の値上げでございますが、これは二十四年度に比しまして二十五年度は約二割強増
額になりまして、相当改善を見たのでありまするが、最近科学療法の進歩によりまして、特にプロトミンの注射療法をやつております。これによりまして、若干
貧血等の副作用が起りますので、これを補給いたしませんと、見るべき効果が相当制限されますので、主としてそういう造血等の不足を補うために、来年度は、
本年度よりさらに生活費のうちの重要な部面を占める食費の内容につきまして、内容を計算いたしまして、計上要求するつもりでおります。それから慰安金の増
額でございますが、これも二十四年度に比しまて、二十五年度は若干増額になりまして、まだ現在療養所の中のいろいろな昨業体系が、理想通り行つておりませ
んので、これの増額もある程度必要と認めまして、われわれもそういう建前から、来年度は増額要求いたすことにしております。それから修繕費、部屋等の補修
関係でございますが、これも新しい療養所は別といたしまして、相当長年月を経ました療養所、特にその中で一番古い病棟等は、破損しておりますので、それを
昨年よりは本年度、二十五年度は相当補修費も増額になつたほかに、本年度の増床計画にあわせまして、現在修築をできるだけやつておりますが、それではなお
補いきれぬ部面も若干ございますので、来年は本来の補修費自身も増額いたすつもりでおります。そのほかになお来年度増床がありますので、この増床に際しま
して、それと関連のある部面の補修は、もちろん増床計画が来年通りますければ、相当できる予定であります。これは本年の経験から見まして、かなり改善が見
られるのではないか、こう思つております。それから治療研究費の増額でございますが、これは年々非常な進歩をしておりますので、一層この向上のために研究
費が必要でございまして、二十四年度に比しまして、幸いに二十五年度は相当程度増額が、ほかの費用以上に見られたので、現在研究を始めましたところ、ます
ます治療の光明が大きくなつて参りましたので、短期間によい治療効果をあげるために、来年も大きな額を要求中でございます。あわせてこれは文部省の科学行
政の方の部面にも、要望課題として入れて折衝中でございます。それから職員の増加は、これはすべての面で必要を認めておりまして、患者方のみならず、われ
われも非常にいろいろ運営上困つておりますので、これも必要な率を上げるように要求中でございます。
それから病床の増床は、来年度一応千床をさらに追加することにいたしております。これは経済安定本部の方に近く要求を出す予定であります。それから夫婦
舎の増築でありますが、これは人権問題にも非常に触れますので、本年度中にもこの二千床の増床の中に相当入れまして、夫婦舎の増築を重点的に取上げており
ますが、もちろん来年度にも、この不足分は建てる予定であります。それからストマイの配給は、現在一部多摩の全生園で試験的にやつておりますが、これは癩
と両方合併しまして、結核の経験だけでやつて、間違つてはいけませんので、その結果に基いて、来年度は相当程度考慮するつもりであります。
○苅田委員 ただいまの御説明で、大体事態は明らかになつているわけでありますけれども、これらのことは、この前の第七国会の請願のときの
御返答の内容とも、差異はないと思うのです。問題は、当局の方で現在必要を感じておられるが、そういうふうな不備の点をどれくらいの熱意を持つて、来年度
において実現されるかということにかかつているわけなんです。私どもは、それ以上具体的な御説明は聞かなくてもよいのでありまして、実際実現するための御
決意なり、具体的な方針なり、やられることについてだけ、問題はかかつていると思うのです。こういう点を矯正しなければならぬという点は、わかつているの
ですから、その点につきまして、ほんとうにそれだけ予算をとつて、どうしても不備の点を来年度に直される御決意があるかないかということを、もう一言お聞
きしたいと思うのであります。
○尾村説明員 先般の国会でも、同様な項目がほかの委員から出まして、確かに御答弁いたしたのであります。このうち文化費と職員の比率増
加、この二点が全然実現できませんでした。ただいま御説明いたしました通り、ほかの点は不足ながらある程度の改善を見ましたが、一挙には全部通らなかつた
のであります。この点はやはり現実の資料に基きまして、それぞれの関係方面と折衝いたしましたが、こちらと見解を異にいたしまして、ゼロになつたものはご
ざいませんが、額の問題がございます。これはわれわれといたしましては、癩についてはぜひ重点的にまた継続するつもりでございまして、結局一般の患者の困
難な現状等の資料を極力集めております。これが一番熱意を示す点であろうと思います。それに基いてぜひ通したい、こういう決心でございます。ただ職員増加
の問題は、全般的な公務員の増加に、いつも非常にひつかかる問題でございます。しかしやはり癩の特殊性に基きまして、われわれとしては切り離して、相当努
力しておる、今度もこれは特にいずれも切り離したくらい重点的にやつております。
―――――――――――――
○寺島委員長 日程第二一、文書表番号第六〇四号、引揚無縁故者住宅建設促進に関する請願を議題といたし、紹介議員苅田アサノ君の紹介説明を求めます。
○苅田委員 この請願は、岐阜市長森野一色にあるところの引揚無縁故者住宅建設促進会から出された請願でありまして、請願の趣旨を朗読いた
しますと、現在われわれ外地引揚無縁故者の住む華陽莊とは、元兵営をそのまま板で間仕切りをしたのみで、衞生施設も、災害予防施設もない洞窟に似たもの
で、このままでは全居住者百三十世帶、六百の生命の危險を伴うので、無縁故者住宅建設促進を、岐阜県、市議会に請願し、かつ知事、市長にもそれぞれ陳情書
を提出し、おのおの採択されたのであるが、遺憾ながら遅々として具体的な決意の表明も、これが実現の誠意も認められぬ冷淡さに、これ以上放置することは居
住者の生命にもかかわる問題なので、国務多端の折柄、はなはだ恐縮でありますが、一応実態調査員派遣の上、至急善処賜わりたく右請願いたします。
こういうような請願の趣旨でありまして、引揚者の住んでおる住宅の非常な悪い環境に対しましても、当局側からの御視察をお願いしたいという請願なのであります。
私はこの際一言当局におわせてお願いいたしたいことは、現在衆参両院には、引揚対策の委員会などありまして、促進に対しましては、これが政争の具に供せ
られるとしか思えぬほど猛烈な運動が行われているに反しまして、引揚げた人たちの住宅につきましては、非常に冷淡なまま放置されておる実情を、たくさん見
ておるのであります。たとえば、せんだつて私が澁谷の職業安定所に参りましたときにも、澁谷にも現在二千人の大勢の人を收容するところの、主として引揚者
をもつて構成されておる大きな住宅があるのでありますが、それがなお現在も兵舎のままで、非常に不衞生な不完全な状態で、皆さんが住んでおられるというこ
ともわかつております。こういうような状態は、一、二の例でないと思いますので、どうぞ引揚げの促進ばかりでなく、引揚げた人たちの生活を守るために、ど
うぞ御当局が親切な処置をおとりくださいますように、請願にあわせまして、そうした一般的な引揚者の生活の、特に住宅の不完全なことに対しまして、至急当
局として、あるいは視察員を派遣するなりしてその後の処置につきまして、適当な対策を講ぜられたいということをお願いいたしまして、この請願の趣旨の説明
を終ります。
○安福説明員 岐阜県の華陽莊についてでありますが、御承知の通り、本寮は引揚者が大分住んでおりまして、設備も非常にいたんでおること
は、事実でございます。視察員を派遣して再調査せよというお申出でございますが、引揚援護庁といたしましては、單に岐阜県の華陽莊のみならず、各都道府県
と協力いたしまして、引揚者寮の全国的な調査を、ただいま進めております。中には衛生上、あるいは保安上、非常に有害なものもありますから、これに対しま
しては、関係方面と折衝いたしまして、それぞれ適当な措置を講じたいという強い決意をもつて、交渉はいたしておる次第でございます。ただ内閣に設置されて
おります引揚同胞対策審議会におきましても、本問題の重要性を御認識くださいまして、今月の十日に、この集団住宅に対する決議等もされております。その要
点は、引揚者の集団住宅は、特に昭和二十一年、二年に設置されたものでございまして、非常に悪いから、その実情を調査いたしまして住宅としての適格性のな
いものはこの際疎開をし、適格性のあるものは徹底的な補修をしろという御趣意でありましたので、その決議の趣旨に基きまして、援護庁といたしましては、せ
つかく対策を検討中であります。
○苅田委員 大体御趣旨は了解したのでありますが、それではこの請願になつておりますところの華陽莊に対しましては、特にどういうふうな処置が講ぜられておりますか、その点に関してだけの御処置について一応お聞かせ願いたいのであります。
○安福説明員 華陽莊につきましては、すでに昨年度においても、相当の補修をやつたのであります。この華陽莊が他の引揚者の集団住宅と比較
して、特に悪いという実情にはないという報告も来ております。大体それは相対的な問題でありまして、住宅としては不適格なものであるということは、私ども
認識をいたしております。それで本年度におきましても、さらに補修の追加ができましたらという考えで、予算的措置も関係方面と交渉をいたしておりますが、
これは将来の問題でありますので、確実な御答弁はいたしかねます。
―――――――――――――
○寺島委員長 次に日程第一五、大津援護館改築に関する請願、吉武恵一君紹介、文書表番号第六七号。日程第一六、同青柳一郎君紹介、文表第二三一号を一括議題といたし、紹介者青柳一郎君の説明を求めます。
○青柳委員 この請願の趣旨は、山口県の日本海面にありまする仙崎という小さい港に、現在ある大津援護館の改築についての請願であります。
この仙崎という町は、小さい漁村で、半島の上に所在するものでございますが、ちようど終戰後、この港が引揚港に指定せられまして、引揚援護局がここに設け
られまして、一年二、三箇月のうちに、六十万人もの引揚者の引揚げを、ここでやつたのであります。ところが、ここは非常に風景もいいし、人情も非常にいい
所でありまして、引揚げて来ると行き先がないので、ここに滯留して住む人が非常に多いのであります。ちようどこの引揚援護局が二十一年末に終りましたの
で、その当時住宅のない附近に住んでおる人々が、この中に平穏に住まうようなことになりました。現地の占領軍からも、そういうことはいけない、早く県でも
つて收容施設をしろ、こういう話もありましたので、一時県費をもつてこの改造工事を施しまして、一時相当数ここに收容いたしました。その後二十二年度にな
りまして、全額国庫補助金三百数十万円をもつて、その建物を改築いたしまして、その後に及んでおるのであります。ただ日本海に面して非常に風も荒く、デラ
台風、キテイ台風によつて、相当やられてしまつております。現在五百三十名も住んでおりますが、今や倒壞の一歩手前にあるのであります。従つてこれにつき
まして、現在の施設を放棄して、別に適当な土地を求めて、住宅を分散設置して、環境の転換によつて心気一転、自力更生の意気をよみがえらせるの必要がある
と思われるのであります。なお住宅分散設置が不可能の場合には、現在位置の敷地を根本的に改善して、二戸建ての住宅として建設がえしていただきたい、こう
思います。
○小山政府委員 ただいまお話のありました大津援護館の問題につきましては、ただいまお話の通りの実情でございます。厚生省側といたしまし
ても、常にこの根本的な対策に苦心をしている問題の一つでございます。お話にもありましたように、この援護館は、当時やむを得ない事情がありまして、非常
に準備不十分でつくりましたために、たんぼの整地も十分にせず、その上にとりあえず応急的に收容施設をつくるというやり方で、当時の、不関引揚援護局の仙
崎出張所をつくつたわけでありますが、当時の見込みといたしましては、せいぜいのところ三年か五年ぐらい持てばよかろうということでつくりましたので、條
件が悪い上に、構造自体が非常に脆弱な建物でございます。こういつた建物に、ただいまもお話がありましたように、百三十世帶が入りまして、今日まで生活を
しておるわけでありますが、このうち現在でも生活保護法によつて保護をしなければならない状態にあります人々が、なお三十世帶ぐらい残つております。こう
いう事情でありまするのに、この建物はただいまのお話にもありましたように、毎年破損または腐朽して参りまして、その都度相当大規模な修理を加えておつた
のであります。これは県側も同じお考えのようでありますが、厚生省側としましても、もうこの建物に、これ以上金を投ずることは、いささか無益に近いのでは
なかろうかというような感じを持つております。それでこの建物の今後の処理方針といたしましては、もともと條件のあまりよくないところでもありますし、建
物自体が非常に脆弱でもありますので、この際逐次これを分散させたいというような考えをもつて相談に乘つておるわけであります。今年度はいろいろ予算の関
係がありまして、そういつた線に沿つての県側の御希望に応じかねたわけでありますが、明年度以降におきまして、予算の余裕がつきましたならば、ぜひともそ
ういう線に沿うて逐次解決をして行きたい、かように考えております。
―――――――――――――
○寺島委員長 次にお諮りいたします。ただいままで紹介議員の見えられる請願の審査をいたして参りましたが、その他紹介議員の見えられぬ残
余の請願の審査方法に関しましては、各委員に文書表によつて御了解願うことといたしまして、政府の各当局より御意見を聽取することによつて、審査を終えた
いと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければさよう決し、これより政府の意見をお聞きいたすことといたします。尾村説明員。
○尾村説明員 六二六号にございます日本医療団清算剰余金を都道府県営移管病院の整備費に配分交付並びに国庫補助をするようにという請願でございますが、これについて医務局といたしまして御説明いたします。
日本医療団の清算は、現在進行中でございまして、何ほどの最後の剰余が出るか、まだ未定でございますので、もしこれが相当程度剩余が出ますれば、できる
だけ医療機関の整備に使つて行きたいと計画中でございまして、具体的にどういう施設にだけやるとか、こういう施設にやらぬとかいう点までは、まだ未決定で
あります。
次に六四〇号の、国立栃木病院敷地買上げに関する請願でございます。これは現在一万数千数坪が民有になつておりまして、借地でございますが、これにつきましては、できるだけ地元の方方の利益になるように処理いたす方針で現在検討中であります。
○寺島委員長 次は大西説明員。
○大西説明員 引揚医師の国家試験受験回数制限緩和に関する請願でございますが、これは現在国民医療法特例四十二号によりまして、選考また
は試験を行いまして、それに合格した者に免許を與えておるのでありますけれども、その受験を許します期間は、この法律を施行しましてから五年間で、同一人
に対しては、二回の受験資格を與えておるのであります。従つてそれに関する緩和の請願であろうと考えるのでありますけれども、この問題は、この特例をつく
りますときに、日本の医療、歯科医療の向上確保の面から、その筋で相当強い制限の意向がございまして、当時一回限り受験を許すというようなことであつたの
でありますけれども、厚生当局では、引揚者の立場もありますので、非常な努力をいたしまして、この二回の受験資格と定めたのであります。従いまして、当時
のこの関係者におきましては、その二回の制限は満足をいたしまして、非常に喜んだような状況であつたのでありますけれども、現在受けております人は、そう
いう事情もわかりませんし、そういう希望があることは存じておりますけれども、そういうふうな事情で、今日この回数の制限をさらにゆるめるということは、
困難であろうと考えられます。
それから、その次の問題でありますが、外地引揚歯科医師免許に関する請願、これは引揚げ歯科医師中、領事館の許可を得て医療、歯科医療に従事しておりま
する者、それから中華民国等におきまして、――先ほど申しましたのは従来の特例によりまする機関の、領事館の許可でありますが、さらにまたこれを拡げまし
て、中華民国または蒙疆における領事館の免許を有する者、その他マレーあるいはビルマ、インド等におきまする歯科医師に比較的簡單な方法で日本の医師歯科
医師免許を與えよ、こういう請願であろうと思うのでありまするが、このマレー、ビルマ、インド等の免許を持つております者は、現在におきまする医師法、歯
科医師法によりまして、医師国家試験予備試験あるいは歯科医師国家試験予備試験の受験資格を與えられておるのであります。領事館の許可を持つておる者に対
しては、現在その方法がないのでありますけれども、現在国民医療法特例四十二号の適用者でありまするそれぞれの国の免許を持つて限度の医療、歯科医療に従
事し得うる者と、それから現地開業者である者とが、現在やつておりまする特例の適用範囲でありますが、この領事館の許可いたしました者と、現在やつており
まする現地開業医の訂正を得ておりまする者との実質は、相当隔たりがあると思われますので、領事館等によりまする許可を得ておりまする者は、現在特例の適
用をいたしておりませんわけであります。これらに対しまして、相当同情する余地もあることと存じますけれども、国民医療、歯科医療の確保の上から言いまし
ても、十分愼重に考慮をして、これらに免許を與えるかどうかということの制度を考えなければならぬと存じますので、現状におきましては、いまだこれらの者
に対しては、何ら制度的処置が行われておりません次第であります。
○寺島委員長 次は森説明員。
○森説明員 請願の九九号は、佐世保九十九島、平戸一帶の海岸地帶、それから請願三〇〇号は、木花村から都井岬を経て福島湾に至る海岸地
帶、これは西海岸でございますが、この海岸地帶一帶、それから請願の六一九号は、三陸海岸の一帶、これはいずれも海岸風景を国立公園に指定してもらいたい
という趣旨の請願であります。御承知のように日本の国立公園の中には、いまだ、海岸風景等が取入れられておりませんので、いずれも実際に調査をしたしまし
て、取上げらられるものならば検討してみたい、かように考えておる次第であります。
それから請願の六一八号でありますが、岩手六幡平一帶を国立公園に指定してもらいたいという請願であります。これはわが国に残されました、原始景観とし
ては非常に珍しいところだというふうな話を聞いておりますので、近く実際に調査をいたしまして結論を出したい、かように考えておる次第であります。
それから七七四号の温泉法の一部改正に関する請願でございますが、佐賀県の武雄温泉で、泉源から半径約一キロの間に鉱区の設定が許可になり、その鉱区を
掘られることによつて泉源が枯渇するということのために、温泉法の中に泉源については特に半径四キロ以内の掘鑿制限をしてほしいというような請願でござい
ます。これは実際の現場を調査いたしまして、なお温泉法の改正等の問題につきましては、專門者の意見も実は聞いておることで、さらに将来考えたいというふ
うな意向で研究中でございます。佐賀の武雄の方は、実際の状況を調査しようというようなことで、御了承を願いたいと思います。
○寺島委員長 他に政府側の発言はございませんか。――館林説明員。
○館林説明員 五番の舞鶴港に検疫所設置し、もし不可能ならば、暫定的な措置を考えてもらいたいという請願に対しましてお答え申し上げます。
現在舞鶴は、引揚げ関係の検疫所がございまして、一般の外航船に対する検疫所はないのでございます。従いまして、一般の外航船の出入に対して多大の不便
があるということについて地元からかねがね陳情がございましたし、私どもも調査しました結果、やはり引揚げ以外に一般の外航船の出入に対する検疫を行う必
要があると感じまして、近い将来におきまして、引揚げ関係の検疫所の職員を兼務させるというような措置をとりまして、これによつて出入一般船舶の検疫に支
障のないようにいたしたいと目下手続を進めておる次第でございます。
○寺島委員長 次に川島説明員。
○川島説明員 請願の第二〇四号につきましてお答えいたしたいと思います。私営の社会事業団体に対しまして、公金支出の法律を制定してもら
いたいという請願でございます。現在は兒童福祉施設につきましては、兒童福祉法によりまして、兒童を送致いたして入所させた場合に、委託費として支拂われ
ることになりました。そのほかには共同募金の金が配付されるというような道だけであります。そこで請願の趣旨は、もつと積極的に、兒童福祉施設に対しまし
て国の助成をするようにということであろうと思うのであります。この問題につきましては、憲法あるいは地方自治法との関係もございまするが、兒童局といた
しまして、いろいろ研究いたしました結果としては、私的の兒童福祉施設をもつと振興させることが、兒童福祉事業を全般的に進展させるゆえんである。かよう
な結論に到達しておりまして兒童局といたしましては、この請願の趣旨に沿いまして、できれば兒童福祉法の改正によりまして、その道をつくりたい、かように
考えております。
○寺島委員長 次に山本説明員。
○山本説明員 横瀬第四〇〇号でございまするが、国民健康保險の事務費全額国庫負担並びに社会保障制度の全面実施の問題であります。事務費の全額国庫負担の要請に対しましては、現在、来年度の予算におきまして、この御希望を実現する方向に努力いたしております。
第二の診療一点單価の引下げ実施の問題でありますが、本問題に関しましては、健康保險その他関連の社会保險ともに、非常に重要な問題でありまして、現在
厚生省といたしましては、これが内容を諸般の調査によりまして研究中であります。社会保障制度の全面的実施に関しましては、社会保障制度審議会の勧告をま
ちまして、政府として対処することになつております。
○和泉説明員 請願第一八五号、厚生年金保險積立金の運用等に関する請願について申し上げます。厚生年金保險の積立金を、被保險者の福祉施
設に融通いたしまする問題につきましては、各方町から同様の趣旨の熱心なる要望もありまして、急速にこれが融資の再開を実現いたしまするために、従来も関
係方面に対しまして、いろいろ懇請しておるのでございますが、その実現の可能性及び時期等につきましては、いまだ見通しがつかない状態であります。関係者
の要望と本積立金の特殊性にかんがみまして、今後も引続き努力いたしたいと存ずる次第であります。
次に厚生年金保險の保險料の負担区分の問題でありますが、本保險は、いわゆる相互扶助の精神によりまして被保險者の生活の不安を除こうとするものであり
ますので、現行の制度におきましては、保險料の労働者負担分を、国及び事業主の負担とする考えは、ただいま持つておりません。
次にシヤウプ勧告によります社会保險税に関連いたしまして、現在の標準報酬の最高限八千円を二万四千円に引上げることについての反対に関してであります
が、本件につきましては、社会保障制度審議会の御意見等もございまして、その線に沿いまして、関係方面と折衝の上、善処いたしたいと考えておる次第であり
ます。また保險料率の引下げにつきましては、国家財政を十分検討いたしまして、可能でありますれば、その引下げを行いまして、被保險者並びに事業主の負担
の軽減をはかりたいと存ずる次第でございます。
○寺島委員長 これより本日審査をいたしました請願中、日程一ないし二二、三三及び三四の各請願の採決をいたしたいと存じます。
これらの請願は、いずれも適切妥当なる請願と存じますので、議院の会議に付するを要するものとし、採択の上内閣に送付すべきものと議決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。
なお議長に提出いたします報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますから、さよう御了承を願います。
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○寺島委員長 次に本日の陳情書日程全部を一括議題とし、審査に入ります。
これらの陳情書は、いずれも本日審査いたしました請願の内容と、おおむね同一要旨でありますので、これらの審査は、委員諸君に文書表によつて見ていただ
くこととし、委員会においては、日程一七を除き、その他はいずれも了承することにいたしたいと思いますから御了承願います。
―――――――――――――
○寺島委員長 次に理事補欠選任の件についてお諮りいたします。本日、理事の青柳一郎君が理事の辞任を申し出られましたので、この際補欠選任を行いたいと思いますが、青柳一郎君の辞任を許可し、この補欠選任に際しましては、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議なければ、原田雪松君を理事に指名いたします。
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○寺島委員長 次に、医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び歯科医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律案を一括議題といたします。まず提案者より、両案の説明を聽取することにいたします。提案者大石武一君。
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○大石委員 医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び歯科医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
終戰という破天荒の事実によりまして、わが国内においては、わが同胞の間にいろいろな矛盾あるいは不幸な事実がたくさん起つておるのでございます。ただ
いまここに議題になつておりますところのこの問題も、終戰という事実による一つの最も大きな不幸な事実であると思うのであります。元来わが国の医師法によ
りまして、医者になるには、やはり正規の学校を卒業しておらなければ、医師となることができないのであります。しかるに満洲、朝鮮あるいは中国その他にお
きましては、日本の正規の医学校を卒業しなくても、ある特殊な向うの法律によつて、現地において医師を開業しておる者が相当ありまして、これが海外のわが
国の領土において、わが同胞の医療に非常に従事しておつたのでありますが、終戰と同時に、これらの医師の方々は内地に引揚げて来られたわけであります。し
かるに内地に帰りましても、日本の法律によりまして、そのままでは日本において医業を行うことができないわけでありまして、ここにおいて何とかしてこれら
の人たちにも、正しく医業を行つて生活の道を立てさせるために、政府におきましては、さきに特例を設けまして、ある特例試験――予備試験委員の行う試験に
よりまして、それに合格した者は、内地において医業を行うことができることになつたわけであります。しかるにそれにもかかわらず、なおいわゆる蒙古その他
の領事館地区の限地開業医、あるいは朝鮮におきまする医師、一部試験の合格者に対しましては、何らの法律的な保護が與えられずに、彼らは相当の医者として
の腕を持ちながら、しかもそれによつて生計を立てなければならぬという事態におきましても、なお医師たることができずに生活に苦しんでおつた者が相当ある
わけであります。従いまして私どもは、このたびこの法律によりまして、これらの医師たり得べくして医師たり得ない人に、医師となることのできる試験を受け
ることができるような機会を與えまして、これに合格することによつて、日本国内において医業に従事することができるようにという考えのもとに、この法律案
をつくつて参つた次第であります。
何とぞ十分御審議の上、しかるべく御支持いただきたいと念願する次第であります。
○寺島委員長 本案についての御質疑はございませんか。――なければこの際お諮りいたします。両案についての御質疑は、いずれも終了いたしておりまするので、この際質疑を打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議がなければ、質疑を打切ることに決しました。
次に両案についての討論に入るのでございますが、両案の討論については、別に通告もございませんので、この際討論を省略し、ただちに採決をいたしたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕
○寺島委員長 御異議がなければ、これより両案の採決をいたします。
両案を原案通り可決することに賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕
○寺島委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決することに決しました。
なお議長に提出する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○寺島委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後一時二十二分散会