第019回国会 厚生委員会 第6号
昭和二十九年二月十六日(火曜日)
    午前十一時開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川 俊思君
   理事 中川源一郎君 理事 長谷川 保君
   理事 岡  良一君
      越智  茂君    高橋  等君
      寺島隆太郎君    山下 春江君
      滝井 義高君    萩元たけ子君
      杉山元治郎君
 出席政府委員
        厚 生 技 官
        (公衆衛生局環
        境衛生部長)  楠本 正康君
 委員外の出席者
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
    ―――――――――――――
二月十三日
 委員亘四郎君辞任につき、その補欠として植木
 庚子郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
二月三日
 戦没者遺族援護強化に関する請願(青柳一郎君
 紹介)(第五一五号)
 同(中村幸八君紹介)(第五三九号)
 戦傷病者の援護強化に関する請願(加藤鐐五郎
 君紹介)(第五一八号)
 星塚敬愛園の病床増設等に関する請願(山中貞
 則君紹介)(第五三四号)
 国立弘前病院改築に関する請願(楠美省吾君外
 一名紹介)(第五三五号)
 鈴木医院災害復旧建設費補助に関する請願(原
 茂君紹介)(第五三六号)
 保健婦助産婦看護婦法存続に関する請願(中川
 源一郎君紹介)(第五三七号)
 結核予防法の一部改正に関する請願(三宅正一
 君紹介)(第五三八号)
 御岳山地区の国立公園施設計画に関する請願(
 並木芳雄君紹介)(第五六〇号)
同月四日
 国立療養所の給食費増額に関する請願(内藤友
 明君紹介)(第六二八号)
 戦傷病者の援護強化に関する請願(田渕光一君
 紹介)(第六二九号)
 養護施設等に対する収容措置費増額に関す請願
 (杉山元治郎君紹介)(第六五六号)
 ねずみ、こん虫駆除事業費国庫補助に関する請
 願(羽田武嗣郎君紹介)(第六九七号)
 大麻取締廃止に関する請願(高橋禎一君紹介)
 (第六九九号)
同月八日
 戦傷病者の援護強化に関する請願(安藤覺君紹介)
 (第八五六号)
 保育所措置費国庫補助増額に関する請願(關内
 正一君紹介)(第九一〇号)
 保育事業費国庫補助増額に関する請願(淺香忠
 雄君紹介)(第一〇〇五号)
 社会保障費減額反対に関する請願(寺島隆太郎
 君紹介)(第一〇〇六号)
同月十一日
 旧豊川海軍工廠における戦没動員学徒等の遺家
 族援護に関する請願外一件(八木一郎君紹介)
 (第一〇八九号)
 保育所措置費国庫補助増額に関する請願(助川
 良平君紹介)(第一〇九〇号)
 同(粟山博君紹介)(第一〇九一号)
 保健婦助産婦看護婦法存続に関する請願外一件
 (杉山元治郎君紹介)(第一一二四号)
同月十二日
 クリーニング業法存続に関する請願(迫水久常
 君紹介)(第九八四号)
 戦傷病者の援護強化に関する請願(青柳一郎君
 紹介)(第一一八〇号)
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の公務死適用範囲
 拡大に関する請願外十件(中村幸八君紹介)(
 第一一八一号)
 し尿消化槽建設費国庫補助に関する請願(椎熊
 三郎君紹介)(第一一八二号)
 保育所措置費国庫補助増額に関する請願外一
 件)(山下春江君紹介)(第一一八三号)
 同(山下春江君紹介)(第一二六五号)
 同(加藤勘十君紹介)(第一三〇九号)
 同外一件(中村時雄君紹介)(第一三一〇号)
 民生事業費国庫補助に関する請願(福井勇君紹
 介)(第一一八四号)
 国民健康保険事業振興に関する請願(青柳一郎
 君紹介)(第一一八五号)
 社会保障費減額反対に関する請願(田中織之進
 君紹介)(第一二六四号)
同月十三日
 大麻取締法の一部改正に関する請願(船越弘君
 紹介)(第一四〇六号)
 大麻取締法廃止に関する請願(船越弘君紹介)
 (第一四〇七号)
 クリーニング業法存続に関する請願(長野長廣
 君紹介)(第一四三八号)
 同(水谷長三郎君紹介)(第一四三九号)
 国立浜村療養所移転に関する請願(徳安實藏君
 紹介)(第一五〇六号)
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の公務死適用範囲
 拡大に関する請願(中村幸八君紹介)(第一五
 〇七号)
同月十五日
 二等症の未復員者給与法適用患者に生活費支給
 に関する請願)(内藤友明君紹介)(第一六二一号)
 母子福祉資金貸付に関する請願(大石ヨシエ君
 紹介)(第一六二二号)
 生活保護予算増額に関する請願(竹山祐太郎君
 紹介)(第一六二三号)
 未復員者給与法による入院患者に生活費支給等
 に関する請願(岡村利右衞門君紹介)(第一六
 二四号)
 社会保障費減額反対に関する請願(鈴木茂三郎
 君紹介)(第一六二五号)
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の公務死適用範囲
 拡大に関する請願(西村直已君紹介)(第一七
 六六号)
 国民健康保健団体所属保険婦の設置費国庫補助
 に関する請願(山口六郎次君紹介)(第一七六八号)
 無名戦死の墓献納に関する請願(山口六郎次君
 外一名紹介)(第一七六九号)
の審査を本委員会に付託された。
同月六日
 国民健康保険の国庫助成増額に関する陳情書(
 東京都議会議長佐々木恒司)(第三九五号)
 国民健康保険に関する陳情書(栃木県国民健康
 保健団体連合会副理事長高崎秀雄)(第三九六
 号)
 国民健康保険所所属保健婦の給与全額国庫負担
 に関する陳情書(京都府南桑田郡亀岡町保険婦
 浅田とよ外五十八名)(第三九七号)
 結核公費負担の国庫補助率の引上げの陳情書(
 東京都議会議長佐々木恒司)(第三九八号)
 母子福祉法制定に関する陳情書(秋田市秋田県
 未亡人会連合会長渡辺節子)(第三九九号)
 母子福祉総合法の制定等に関する陳情書(長野
 県未亡人連盟会長宮下みどり)(第四〇〇号)
 熊本県に国立らい研究所建設に関する陳情書)
 (熊本大学長鰐渕健之)(第四〇一号)
 内地発病死軍人軍属の遺族補償に関する陳情書
 (岡山県議会議長蜂谷初四郎)(第四〇二号)
 環境衛生施設事業費の財政措置並びに助成金増
 額の陳情書)(広島県町村会長荒川竜雄)(第
 四〇三号)
 同(広島県町村議会議長会長井上元夫)(第四
 〇四号)
 清掃事業に対する国庫補助並びに起債のわくの
 拡大及び清掃法制定促進等に関する陳情書(岡
 山県都市衛生協議会会長宮崎義則)(第四〇五
 号)
 水道並びに簡易水道建設事業に対する国庫補助
 の陳情書(東京都議会議長佐々木恒司)(第四
 〇六号)
 上下水道事業の国庫補助並びに起債のわく拡大
 に関する陳情書(東京都議会副議長清水長雄)
 (第四〇七号)
 児童会館、遊園地等の設置費に対する国庫補助
 に関する陳情書(東京都議会議長佐々木恒司)
 (第四〇八号)
 戦争犠牲者に対する国家補償の徹底強化に関す
 る陳情書(静岡県議会議長吉野倫将)(第四一
 〇号)
 中京地区帰還者の特還法適用範囲拡大の陳情書
 (海外抑留同胞救済国民運動宮崎本部会長日高
 弥一外一名)(第四一一号)
 引揚者集団収容施設の疎開住宅に対する新国庫
 補助の復活に関する陳情書(北海道議会議長蒔
 田余吉)(第四一二号)
 同月十三日社会保障制度確立に関する陳情書(
 京都府会議長北村平三郎)(第五九五号)
 社会保険入院料是正に関する陳情書(東京都日
 本病院協会会長上条秀介外十一名)(第五九六
 号)
 保雄所支所の創設費等国庫負担金交付に関する
 陳情書)(北海道市長会会長高田富与)(第五
 九七号)
 生活保護法の改正に関する陳情書(山口県議会
 議長二木謙吾)(第五九八号)
 生活保護行政事務費の国庫補助率の引上げに関
 する陳情書(山口県議会議長二木謙吾)(第五
 九九号)
 母子寮増設促進に関する陳情書(山口県議会議
 長二木謙吾)(第六〇〇号)
 児童福祉施設等に関する陳情書(岩手県社会福
 祉協諸会会長南部利英)(第六〇一号)
 災害救助法施行に関する厚生省内規事項一部改
 正の陳情書(石川県議会議長宮永盛雄)(第六〇二号)
 傷い軍人の援護拡充強化に関する陳情書(福井
 市福井県傷い軍人会真田清一郎)(第六〇三号)
 傷い軍人に関する単独立法制定の陳情書(東京
 都日本傷い軍人会会長蒲穆)(第六〇四号)
 満洲開拓犠牲者に対する国家補償に関する陳情
 書(東京都開拓自興会吉崎千秋)(第六〇五号)
 国立公園の施設整備に関する陳情書(国立公園
 議員懇話会常任世話人参議院議員一松定吉)(
 第四〇七号)
 国立公園施設整備費補助金増額に関する陳情書
 (山口県議会議長二木謙吾)(第六〇八号)
 剣山の国立公園指定促進に関する陳情書(徳島
 県町村会長朝桐猪平)(第六〇九号)
 災害救助法適用範囲の拡大等に関する陳情書(
 岐阜県町村議会議長会会長杉山金次郎)(第六
 九〇号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 小委員の補欠選任
 狂犬病予防法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第六号)
    ―――――――――――――
○小島委員長 これより会議を開きます。
 まず小委員の補欠選任についてお諮りいたします。清掃事業に関する小委員の亘四郎君が委員を辞任されたに伴い、現在同小委員が一名欠員となつておりますので、その補欠選任を行いたいと存じますが、選任の手続に関しましては、委員長より指名するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小島委員長 御異議もないようですかち、助川良平君を清掃事業に関する小委員に指名いたします。
    ―――――――――――――
○小島委員長 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。高橋等君。
○高橋(等)委員 狂犬病に対しまする大衆の協力が少いために、野犬の捕獲その他について不便なことがたくさんあるというようことを伺うのでありますが、狂犬病の周知と大衆の協力を求めることに対していかなる方策を従来講じておられますか、まずそれから伺いたいと思います。
○楠本政府委員 お答えを申し上げます。ただいま御指摘のように狂犬対策、なかんずく野犬の捕獲に関しまましては、なかなか国民の協力を得 がたい現状にありますので、従来ラヂオ放送等を行う一方、絶えず電車その他にもポスター等を展示いたしまして、与論の喚起に努めております。一方、お手元 に差上げましたようなパンフレット等も厚生省においてしばしば作成いたしまして、これを配布して協力を求める方法に努力いたしておる次第であります。
○高橋(等)委員 次に犬の捕獲人といいますのはどういうような性格を持つたものでありますか。犬の捕獲を業としておる者であるか。あるいはまた犬の捕獲は副業であつて、いろいろなことをなしておるのか。捕獲人の性格といいますか、そういうことについてお答え願いたい。
○楠本政府委員 現在の捕獲人は、都が専任の職員として雇上げておる職員でございます。従つて他に何ら職業を持つでおるものではございません。
○高橋(等)委員 東京都の話をお伺いしているのではないので、全国にわたつてのお話を私は伺つているのであります。
○楠本政府委員 現在法律規定いなしております通り、各府県を通じて、これは府県が責任を持つて雇い上げました職員を使つておるけであります。
○高橋(等)委員 そうするとこれは職員なんですか。犬を捕獲することを専業としてしる者なんですか、どうなんですか。
○楠本政府委員 専業にいたしておりますが、これらは府県知事から任命されまして用人ではありますが、府県の職員と働いておるわけであります。
○高橋(等)委員 そうしますと、この捕獲人に対する報酬はどうなつておりますか。またその月当りの収入、東京地方その他にわけて、月当りの収入をお示し願いたいと思います。
○楠本政府委員 お答えを申し上げます。月額で俸給を出しますほかに、大体において各府県とも一頭幾らといつて、報奨的に若干の割増しを加えておる実情ございます。
○高橋(等)委員 その金額をお知らせ願いたい。
○楠本政府委員 一万五千円内外の俸給でございます。
○高橋(等)委員 捕獲人の数は一体全国でどれくらいでありますか。あるいはもつと言えば、東京あるいは普通の府で何人くらいおりますか。及び一保健所当りをどれくらいになりますか。それだけの予算がはたしてあるのかないのか。
○楠本政府委員 全国で捕獲人の数は、専任として常時これに従事いたしておりますものが五百七十名で、次に臨時に雇い入れます、たとえば期間を定めて一箇月あるいは二箇月特にその作業を実施いたしますときに臨時に職員といたすものが約一千名程度ございます。
○高橋(等)委員 これは全国ですか。
○楠本政府委員 さようでございます。全国の集計でございます。
○高橋(等)委員 この程度の捕獲人では――たくさんおる野犬は、東京だけでも五百人や七百人の人間では私はできないと思う。これでは結局 狂犬予防法というものをつくつて捕獲人があつても、実際は犬はほとんどとれぬと思います。この数字から見ればとれぬのがあたりまえじやないかと思います が、どうお考えですか。
○楠本政府委員 この犬の捕獲作業は捕獲人だけで実施するわけでございませんで、捕獲人のほかに、同時に運転手あるいは公務員たる予防員あ るいは補佐、かようなものがつきまして、一つの班をつくて捕獲作業に従事するわであります。従つて、現実に現場で働きます職員の数かなりの数に上つている ものと考えられます。
○高橋(等)委員 少し話がが飛びます。が、予防員は全国でどれくらいいるのでございますか。
○楠本政府委員 予防員は全国で、専人にその仕事だけをいたしております者が百名程度で、その他獣医師であつて、府県の公務員でありますた めに、若干他の仕事も責任を持つて実施しておるような職員で、同時に予防員を兼ねております老が、約千四百名おります。なお若い獣医師等で、その補佐とし て働いております者が約百五十名おります。
○高橋(等)委員 ちよつとうかつですが、全国に保健所の数はどれくらいありますか。
○楠本政府委員 現在七百七十箇所あります。
○高橋(等)委員 そうしますと、ただいまあげられた数字を見ますと、一保健所管内に一体何人おるか。何か数字の間違いではないかと私は思 うのです。その点はあまりつつ込んで伺つてもどうかと思いますが、もし間違いならば間違いとおつしやつていただきたい。どうもふに落ちない。こんなことで はやれるはずがないのです。
 それから次に捕獲した犬の処置ですが、これはどうなさつておりますか。犬をとらまえて来る。それから殺害までの間にはどういう手続をとりますか。
○楠本政府委員 捕獲いたしました犬は、一応犬の抑留所に抑留いたしておきます。その間にこれを公報でもつて公示いたしまして、もし万一飼犬がとられたような場合には引取りに来ることができるようになつております。なおこの抑留期間は従来は五日間抑留しておいたわけでございます。
○高橋(等)委員 抑留所といふのは一体保健所の中にあるのですか、どこにあるのですか。またそれの監督はどうなさておるのですか。
○楠本政府委員 抑留所は府県によつて大分所在の場所は違います。保健所に付置してあるところもございますが、多くは保健所付外の場所にございます。と申しますのは、たくさんの犬がきやんきやん鳴いたりしてじやまになりますので、得て比較的さわりのない場所に抑留をしております。
○高橋(等)委員 この抑留所は政府が家賃を払つておるとか、何か政府が直接管理いたしておるのですか。
○楠本政府委員 各府県が抑留所を設置いたしまして、府県がこれを責任を、もつて管理いたしておるわけであります。
○高橋(等)委員 それで殺害後の肉とか皮とかの処置はどういうふうにやつているのですか。
○楠本政府委員 大体引取手がなくて処分いたしました犬は、きわめて安く払い下げるのが例となつております。払い下げられました結果は、肉は主として肥料、皮革等は他に利用いたしております。
○高橋(等)委員 長々といろいろこまかいことをお聞きいたしましたのは、結局捕獲人自体について、政府として十分な関心をもつてお取締り をいただかなければならない点がたくさんあると考えておるものですからお伺いいたしたのであります。それで例をあげてみますれば、抑留所と申しますのは、 あなたがおつしやる形の上はどうなつておるかしらぬが、捕獲人の住宅の近所とか、あるいは住宅内とか、地方としてはそういうところにあるのが例でありま す。そうして犬が捕獲されると飼主がもらい下げに行く。そうすると飼育料と称してべらぼうな金をとりまして犬を返しておるのであります。また捕獲人は路上 の野犬に興味を持つよりも、むしろ飼犬に興味を持ち、種類のいい犬をとりたがつて、野犬の方はおついでである。こういう傾向が非常に頻繁にわれわれの目に 立つのであります。そこで先ほど捕獲人の収入なんかを伺いましたが、専任であろうと思うのですが、一万五千円内外で、いろいろな点から見て非常にむずかし いと思ふのですが、捕獲人自体については十分な取締りをやつていただかなければならぬ点が多いと考えるのです。それでそれらについてどういうような処置を おとりになつておるか、またその実績がどういうふうになつておるか、こういうことも一応伺つておきたいと思います。
○楠本政府委員 御指摘の点、さような事実も確かに私は卒直に認めざるを得ない状況でございまして、まことに恐縮をいたしてをりますが、現 在飼主が引取る際に、飼育料として公然ととります金額は一日当り三十円ないし五十円でございます。これが得てして高くとられるというようなことがございま すならば、今後大いにこの辺の監督を厳重にいたしまして、さようなことのないような処置をとりたいと存じます。なお野犬の捕獲は、御指摘のように、路上等 に徘徊している犬を捕獲すべきものでありまして、庭先あるいは玄関先等に休んでいる犬はとるべきものではないのであります。しかしかような点につきまして も、従来比較的さような犬は捕獲が容易なために、得て実績をかせぎたくてかようなことをした例も聞いております。今後は必ず現在法律に規定してありますよ うに、公務員たる予防員の指揮監督を受けて、捕獲人夫が実際の作業をするというふうに厳格に指導いたしたいと考えております。なおその他いろいろ行き過ぎ の点もあるかに思われますが、今後は注射済みの犬あるいは登録犬をとるということはなるべく慎む方針でありまして、そのために現在考えておりますことは、 首輪につけております注射済証あるいは登録済証見やすい色刷り等にいたしまして、一見この犬は注射が済んでおる、この犬は登録が済んでおるということを明 らかにして、間違いの起きないように実行いたしたいと考えております。
○高橋(等)委員 今の点は大衆が非常に迷惑をいたす問題も起つて来るわけでありますから、十分御留意を願いますとともに、皮とかその他の売却にあたりましても、十分なる監督を保健所がやるようにお勘めをいたします。それから予防員というのはこれは主として獣医でありますか。
○楠本政府委員 すべてこれは獣医であります。
○高橋(等)委員 そうしますと、大体獣医は一保健所当り一人くらいは常時専任がおるのでありますか。
○楠本政府委員 現在獣医は公衆衛生関係の技術者で最も数が多く、現在全国で大体四千数百名が勤務をいたしております。従つて保健所等におきましても技術者としては最も多く配置してある種類に属するわけでございます。
○高橋(等)委員 「土地、建物又は船車内に入つた場合において、これを捕捜するためやむを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において、」と書いてありますが、これは文句はよいのですが、どういう意味ですか。
○楠本政府委員 やむを得ないという意味は他に方法がないという意味でありまして、たとへば外に出ない場合でも棒をもつて追い出すとか、あ るいは石を投げて追い出すとか、または家人に頼んで追い出してもらえるというようなときには、これは方法がありますから立入りができないわけであります。 なお「合理的に必要」という合理的という意味でありますが、これは必要最小限度の範囲においてのみ立ち入ることができるという意味でありまして、単に庭先 だけに入るという意味でございまして、家屋敷中を追いまはすということはこの最小限度の範囲を越えるものと考えておるわけでございます。
○高橋(等)委員 それで逃げた犬をつかまえますために人家に立ち入ることを従来認めた例がありますか。たとえば犬が人をかんだ、これはも う狂犬だと思えるような、あるいは狂犬と思えないでも人をかむ危険がある犬がおる、これをつかまえる、あるいは目の前で人をかんだが逃げた、これを追つか けて行つてかまえる、こういうことを認めた例がありますか。またこれが認められておるのですか、認められておらないのですか。
○楠本政府委員 従来は逃げ込みました場合には、家人の承諾を求みて入ることにいたしておつたわけでありますが、ただこの場合、従来の例から見ますると、決して承諾をしてくれない。むしろ積極的に犬をかばう、隠すというような事態が普通であつたように思われます。
○高橋(等)委員 諸外国の立法例はどうなつておりますか。
○楠本政府委員 諸外国におきましては……。
○高橋(等)委員 諸外国はどこかひとつ話してください。諸外国ではわかりません。
○楠本政府委員 イギリスとかオーストラリアとかいう大体文明国におきましては、すでに狂犬病は根絶されておりますので、その必要がござい ませんで、現在狂犬が多いところはアメリカ合衆国等でございますが、アメリカ合衆国におきましては、かような立入権あるいは野犬の捕獲等は実施をいたして おりません。しかしながらこれは日本と事情が違うのでありまして、外国におきましては、犬を放し飼いにするというような習慣もございません。また犬の数も 日本比べて非常に少い現状であります。ただアメリカにおきましては野獣、きつねとかたぬきとかおおかみとか、かようなものに狂犬病が流行いたしております のが、一番困つておる現状だそうでありまして、従つて日本と事情も違いますが、かような日本のような法律はないように聞いております。
○高橋(等)委員 住居に侵入権は認めておらぬわけですね。
○楠本政府委員 ええ。
○高橋(等)委員 それで予防員が人家に立ち入ることができるということになつておるのだが、立ち入つて何をするのですか。犬をつかまえるのですか。どうするのですか。
○楠本政府委員 予防員は役人でありまして、犬をつかまえることもできないわけではございませんが、主として立ち入つて、捕獲人夫のいる道路の方に追い出すというのが、主たる仕事になるわけでございます。
○高橋(等)委員 捕獲の際に家に立ち入る場合は、家人の承諾を得るのですが、黙つて入つて行つて、入つちやいかぬと言つた場合に断るので すか。法文を見ると、入つ行つて拒まなければ、知らぬ顔をして入つて行つていいということになつておるのですが、それはどうなんですか。前からの御説明と 少し違うものですからお伺いします。
○楠本政府委員 入るに先だつて承諾を求めて入ることになつております。ただ正当な理由がなくて拒んではならぬというだけでありまして、理由さえあれば断ることができるわけであります。
○高橋(等)委員 断る正当な理由とは何ですか。
○楠本政府委員 たとえば来客中であるとか、あるいは庭に種をまいたばかりで家庭菜園が荒されるとか、あるいはきれいな花、ばらでもつくつてありまして、そんなところで犬を追いまわしては困る、というようなときには、これは正当な理由と解釈されるのです。
○高橋(等)委員 捕獲の際に、人家等に逃げ込む犬ですが、大体とろうと思つたら上手にとつておるようにわれわれは見ておるのですが、これはパーセテージからいつたらどれくらいになるのですか。非常にむずかしいこまかいことをお聞きするようですが…。
○楠本政府委員 これは従来の例から見ますと、逃げ込まれてとれないものが二割程度少くも考えられるそうであります。
○高橋(等)委員 ただいまのお答えによりますと、二割程度の犬を追い出すために、予防員が人の家に入つて承諾を得て、犬を追い出す。この 立入権の問題のためにこの法律が必要になつて来る。しかしこの住居権の問題は私は非常に大切な問題だと思うのです。そこでこれを侵害する場合に、その目的 とその実効ということについてはよほど慎重に考えていただかなければならぬ問題だと考えます。それで今お伺いしますと、家人の承諾を得て入る。承諾を得る までに犬は実際逃げてしまう。追跡中の逃げている犬だから、承諾を得る前に、追い出してくれというわけで、家人を教育した方がいいわけです。最初にお伺い した問題はそれだつたのです。協力を求める方向に持つて来ねばうそだ。それでどうも住居権の侵害をするとしても、予防員の数も非常に少いのだし、それから 逃げる犬は二〇%だという、またその必要から考えましても、住居権を侵害することと比較すると、私はどうも問題であるように思うのです。住居権の問題から 行きまして、まあ犬が人の家に逃げたらもう没法子にしてやれというようなことをわれわれは考えたいと思うくらいです。そうしてもう一つ恐ろしいことは、逃 げた犬を追うて行くのですから、取り巻いてる連中は夢中になつて、飛びまわる。入つてはいいとなると、自然に捕獲人がかつてに人の家に入る習慣と口実を与 えるおそれがあると私は考えます。これは必ず起ると考える。そうゆうようなことについて、いはゆる住居権を侵害するにしては少し実効が少いのじやないか。 もしやるとすれば、きはめて特殊な場合にしぼつて考える必要があるのじやないだろうかということ、あるいはまた今いう捕獲人がかつてに入つて来るようなこ とになつたらたいへんですから、それらについて、何かその後ここでいろいろ質疑をしているうちこお考えがかわつているような点はありませんか。それをちつ よとお伺いしたい。それで私は質問を終ります。
○楠本政府委員 従来は、先ほど申上げましたように、繋留命令が出ております間は、たとい飼犬ということが明らかであつてもこれを捕獲する というようなことをいたしたわけでありますが、これはやはり予防注射も済んでいるりつぱな飼犬であれば、必ずしもこれを捕獲するというようなことは少し無 理じやないかと考えまして、今後は実際の運用上におきましては、繋留命令が出ておるときでも、重点的に真の野犬を捕獲するというふうに考えたいと存じま す。なお従来も捕獲人夫の行き過ぎというようなものがありますので、注意をして参りましたが、今後は絶対に捕獲人だけで作業をすることをやめさせまして、 必ず予防員が責任を持つて監督して作業をするというふうに、厳格に実行いたしたいと考えております。
○小島委員長 委員長からちよつと追加して政府委員にお尋ねしますが、家に逃げ込んだ犬というものは、現に人にかみついたことがはつきりし ている犬であるとか、あるいはその場でかみついて逃げ込んだとかあるいは前日とか前々日にかみついて、この犬と目星をつけられた犬というようなものに限る というようなことはできないのでしようか。
○楠本政府委員 ただいま申し上げましたように、どの犬がかんだ犬かということがわからないような場合もありますし、未注射の野犬が危険で ありますので、私どもはただいまのお答え申上げましたように重点的にしぼるということにつきましては、やはり未注射の真の野犬というものであれば、やむを 得ず立ち入つても捕えるというふうに考えたいと思いますが、しかしこの点は、御趣旨の点はこの仕事を支障なく実施いたしますのに一つの考え方だと存じま す。特に高橋先生のお話とも関連して、きわめてしぼるという意味で一つの考え方だと思うのでございます。この点はもう少し技術的に研究をいたしてみたいと 考えております。
○滝井委員 一、二点お伺いいたしたいのですが、それは犬の引取手がなければ、予防員が政令の定むるところによつてこれを処分することがで きるのです。その場合には肉は肥料にし、皮は他に利用する、こういう御説明でしたが、現在大学その他研究機関においてこの小動物を実験に使用しておるが、 こういう野犬狩りで獲得した犬の引取り手がなければ大学その他に払いげるか、あるいはもつと安い値段で売り渡す、そういう方法は現在とられておりますか。
○楠本政府委員 現に研究機関等からは、その府県に対してぜひ犬を何とかしてくれぬかというような依頼がございまして、かような場合には大体無料で喜んで提供いたしておるのが例でございます。
○滝井委員 ぜひそういうことをはつきり天下に周知させていただきたいと思います。現在研究機関はそういうことを知りません。従つておそら く申出手は非常に少いのではないかと思うのです。それが第一点第二点は、最近獣医師法の改正が行政改革本部の方で取上げられて、いわゆる小家畜、犬、ね こ、鶏等は、獣医師の対象から除外するというような意向があるやに聞いておるのです。そうしますと、保健所における予防員の人たちは、犬、ねこを対象にす る資格があるから獣医師を予防員に当てていると思うのです。もしそういうことになれば、何も獣医師でなくてもいいというようなこともあると思うのですが、 厚生省はこういう点はどうお考えでありますか。
○楠本政府委員 現在一部にただいま御指摘のような意見がございます。私どもはこれにつきましては、狂犬病の診断というようなことはそう簡 単にできることでもありませんので、犬、ねこの診断はだれがしてもいいのだというようなことに対しましては、必ずしも賛成をしかねるわけであります。従い まして私どもの意見といたしましては、現在獣医師たる資格の所有者が責任を持つて診断をするという建前で進みたいと考えております。
○滝井委員 そうしますと、厚生省としては、これはちよつと問題をはずれますが、獣医師法の対象として犬、ねこ、鶏等を除外することは現在の公衆衛生の立場からはいけない、こう理解してさしつかえありませんか。
○楠本政府委員 鶏のことは別でございますが、少くとも犬、ねこはやはり正しい診断が必要であるという意味で、現在出ております一部の意見に対しては反対でございます。
○小島委員長 他に本案について御質疑はありませんか――なければ本案の質疑は本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。次会は明後十八日、木曜日の午前十時より理事会、午前十時半より委員会を開会いたします。
   午前十一時三十四分散会