第019回国会 厚生委員会 第10号
昭和二十九年二月二十三日(火曜日)
   午後一時二十八分開会
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 出席者は左の通り。
   委員長     上條 愛一君
   理事
           大谷 瑩潤君
   委員
           高野 一夫君
           中山 壽彦君
           西岡 ハル君
           廣瀬 久忠君
           竹中 勝男君
           湯山  勇君
           堂森 芳夫君
           有馬 英二君
  国務大臣
   厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
  政府委員
   厚生省公衆衛生
  局環境衛生部長  楠本 正康君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       草間 弘司君
   常任委員会専門
   員       多田 仁己君
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  本日の会議に付した事件
○狂犬病予防法の一部を改正する法律
 案(内閣送付)
○清掃法案(内閣送付)
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○委員長(上條愛一君) 只今から厚生委員会を開きます。
 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。先ず提案理由の御説明をお願いいたします。
○国務大臣(草葉隆圓君) 狂犬病予防法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。
 狂犬病予防法の施行以来狂犬病の予防に努めました結果、その発生は、逐次減少して参りましたが、なお根絶に至らず年々相当数の発生をみる現状であります ので、更に一層狂犬病予防措置の強化に努め速かに日本全土からその根絶を図らなければならないと考えられる次第であります。本法律案は、これが対策の一環 といたしまして、次に述べるような改正を行おうとするものであります。
 第一に、近時いわゆる野犬の激増に鑑み関係各方面からの要望に応え、その対策といたしまして狂犬病予防員が犬の所有者からその不要となつた犬の引取を求 められたときは、これを引き坂つて処分しなければならないこととして、犬の野犬化防止の一助といたしました点であります。
 第二に現在狂犬病予防員が犬を捕獲しようとして追跡中に犬が土地、建物等に入つた場合、そこへ立ち入ることができないため、これを逃走させ捕獲の徹底を 期し得ない場合が多々ありましたので、捕獲するため止むを得ないと認める場合は職権の濫用を防ぐため必要な制限を設けて、その場所に立ち入ることができる ようにした点であります。
 第三の改正点といたしましては、狂犬病が発生した場合には、けい留命令が発せられているにもかかわらずけい留されていない犬について、都道府県知事が、 緊急の必要があり、且つ、抑留を行うことが著しく困難な事情があると認めるときは、抑留のみによらず狂犬病予防員をして、これらの犬を薬殺させることがで きるようにしたことであります。この場合、都道府県知事は、人及び他の家畜に被害を及ぼさないよう必要な措置を講じなければならないこととし、薬殺の適正 化を図つております。
 以上申し述べましたことが今回改正しようとする主要点でありますが、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことを御願いする次第であります。
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○委員長(上條愛一君) 次に、清掃法案を議題といたします。提案の理由の御説明を願います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 只今議題となりました清掃法案につきまして提案の理由を御説明申し上げます。
 清掃事業の能率的な運営によつて、生活環境を清潔に保つことが環境衛生対策の第一歩であることは今更申すまでもありませんが、現在清掃事業の根拠法規と なつておりますものは、明治三十三年の制定に係る汚物掃除法であります。然るに現行法制定後五十数年間における都市の発展、人口の増加、産業の発達等は著 しいものがあり、その反面公衆衛生、なかんずく衛生工学は長足の進歩を示しておりますので、現行法は今日の社会情勢に即応した清掃事業を行う上において、 もはや充分にその機能を果すことができなくなつたのであります。かかる事情に鑑み清掃事業の効率的な運営を図るために、本法案を提案致した次第でありまし て改正の主な点は次の通りであります。
 第一は、清掃事業における市町村、都道府県及び国の責務を明らかにすると共に、国民の積極的な協力についても規定を設けたことであります。
 第二は、清掃の対象となる汚物について、実態に即応して若干変更を加えたことであります。
 第三は、清掃の必要性の地域差を考慮し、特別清掃地域の制度を設けると共に、季節的観光地、キャンプ場、スキー場、海水浴場等季節的に多数人の集合する地域については、期間を限つて、季節的清掃地域の制度を設けたことであります。
 第四は、特別清掃地域及び季節的清掃地域においては、濫りに汚物を投棄することを禁止することと共に、ふん尿は一定の方法によるのでなければ肥料として使用してはならないこととしたことであります。
 第五は、清掃施設に関し、し尿浄化槽、し尿消化槽の維持管理の基準を定めると共に、これらによるふん尿の処理が不完全であると認めるときは、都道府県知事が必要な措置命令をすることができることとしたことであります。
 第六は、特別清掃地域内においては、市町村の作業の計画的運営に支障なからしめるために、汚物取扱業は市町村長の許可を要することとしたことであります。
 第七は、全国的に生活環境の清潔保持を図るため、公共の水域、一定の海域には、濫りにふん尿を捨てることを禁止し、又大掃除の施行について規定したことであります。
 以上が本法案の提案の理由並びにその要点でございます。何とぞ慎重御審議の上速かに御可決あらんことを御願い申上げます。
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○委員長(上條愛一君) これから二法案の審議に入りますが、先ず狂犬病予防法の一部を改正する法律案について政府委員から詳細な説明を聞きたいと存じます。政府委員の御説明を願います。
○政府委員(楠本正康君) 御指名によりまして狂犬病予防法の概要につきまして問題点を申上げたいと存じます。
 我が国におきまする狂犬の発生は、昭和の当初から逐次減少をして参りまして、戦前並びに戦時中はおおむね我が日本全土から狂犬病毒を駆逐することができ たのであります。ところがその後戦争中の末期に満州からたまたま狂犬が国内に移入されまして、それがきつかけとなりまして、終戦後の混乱時代に再びこれが 蔓延いたしたわけでござ言います。
 その後私ども現行狂犬病予防法を制定いたしまして、極力これらの防止に努めて参つたのでありますが、最近なおこれを根絶するに至らず特に関東地方に限局 いたしまして、かなりの蔓延を見ております。特に東京都のごときにおきましては、むしろ二十七年に比べまして二十八年は遥かに増加しておるような現状でご ざいます。而も毎年甚だ遺憾ながら直接人命に被害を与えるような例も少くないのでございます。
 かような観点からいたしまして、やはり日本におきましても世界の文明国同様、かような狂犬病のごときものは、速かに日本全土からこれを根絶やしにするこ とが必要かと存じておるのでございます。ところがなぜ狂犬病の根絶やしができないかと申しますと、最近御承知のように犬の増加が極めて多いのでありまし て、これらの犬のうちむしろ大部分は無登録或いは予防注射をしない、いわば野犬或いは半ば野犬というような犬が大部分を占めております。全国で登録をいた しまして、正規の予防注射をいたしております犬は、大体現在で二百万頭と考えております。ところがこれに対しまして無登録の野犬と申しますものは、これは なかなか数がつかめませんが、私どもはこれを登録犬の同数乃至二倍と考えております。従つて現在ではこれらの数を私どもは約三百万頭と仰えております。つ まり合計五百万頭の犬のうち三百万頭は野犬又はこれに類する現状でございます。従いまして従来の例から見ましても、狂犬というようなものはおおむねこれら の野犬から出ておるのでありまして、殆んど登録してある犬からは出ておらんのであります。
 そこで私どもは狂犬対策の根本方策といたしましては何としてもこれらの野犬を整理することが極めて大事だろうと存じます。ところが現行法におきまして は、この野犬の整理は専ら生捕りにする捕獲手段だけが現定されております。併しなかなかすばやに犬を捕獲だけで整理することは極めて困難な現状でございま す。そこで只今大臣からもお説明を申し上げましたように捕獲の犬の整理方法をもう少し強化して行きたいというのがこの法案の趣旨でございます。
 そこで第一に考えなければなりませんことは、然らば現在野犬はなぜ殖えているか、無登録犬はなぜ殖えるかと申しますと、これは純然たる野犬というより も、半ば飼主のある犬が大部分であります。これはなぜ殖えるかというと、犬は何分にも繁殖力が強い、ところが子供が生まれるとどうもかあいらしいから人情 も手伝つてこれを殺したり捨てたりすることもいやだ、そのうちだんだん大きくなつて野郎犬のようなふうになつてしまう。こういうような経過でなかなか野犬 が殖えて参りますので、そこで私どもはかような困つた犬は保健所或いはその他でこれを引取つて処分をしてくれるようにすることが先ず第一必要であろう。例 えば保健所に電話をかければ犬を取りに来てくれるとか、或いは持つて行けば買上げてくれるというようなことをすれば、みすみす野犬にならずに整理されて行 くのではなかろうか、かように考えたのが一つでございます。
 次に、現在犬は捕獲だけを実行いたしておりますが、ところが犬を捕獲いたします場合には、どうしても犬は逃げ出しますと、えて人の家の塀の中などへ逃げ 込むのが普通でございます。ところが逃げ込んだら最後もうそこへ立ち入つて捕るというようなことはできない。みすみす犬の捕獲をできずにとり逃がしてしま うというようなのが現在の捕獲作業の現状であります。従つて今回の改正案におきましてはもう少しく逃げ込んだ犬ぐらいは何とかして捕れるような一つ仕組を 考えたい。現在犬は大道でこれを捕える以外に捕える方法がない。これではなかなか捕獲作業の能率が上らん、かように考えております。
 それから次に、以前昭和の当初、大正の末期等に著しく狂犬が蔓延したがこれをどうして防いだかと申しますと、このときにやはり一番効果を挙げましたの は、犬の薬殺或いは毒殺であつた。まあこれは警視庁等が中心となつて薬殺をいたしました。これが大きな効果を挙げておりますので、今回もどうしても止むを 得ない場合には犬の薬殺を一つ考えようということで今回法律を改正いたしておるわけでございますが、ただここで注意しなければなりませんのは、犬は何分に も甚だ恐ろしい事態を発生する場合がございますが、併しながらどうも私どもの感情からいたしますと、とかく愛情がからんでここに余りこれを強行することに は問題がある。えて世間の非難も受ける。こういうような状況でございますが、従つて現在犬の捕獲作業等は殆んど国民の協力を得ず、むしろこれに妨害作業が 大分加えられる、例えば石を投げられるとか、或いはあえて犬を自分の家へ隠してしまうというようなことまでして妨害をされる、この妨害にうち勝つて現在捕 獲作業をいたしておるわけでありますが、このような犬に対する愛情というような点から止むを得ないと思つておりますが、併し狂犬病のことを考えますと、と ても放置はできませんので、とにかく現在の予防ワクチンは未だ完全に安全の域に達しておりません。やはりこの或る一部は予防注射の副作用のために命をなく したり、或いは気がおかしくなり気違いになる者もかなりの数に上つております。例えば帝銀事件の平澤というような犯人はあの記録によりますと、曾つては非 常に秀才であつたそうでありますが、狂犬病予防の注射をしてから頭がおかしくなつたというような話であります。又一面東京都の予防医、つまり狂犬予防係が 犬に噛まれて予防注射をしたために現在二名、松澤病院に入院しているような状況であります。従つて一旦犬に噛まれたら、その犬が狂犬であれば、と思えば命 は当然なくなつてしまう。若し狂犬でないで、まあ予防注射をすれば、或いは予防注射の副作用によつて命をなくすか、気が違うというようなことを考えます と、若し犬に噛まれたら神経衰弱になる以外に方法はないというような現状であります。而も現在東京都におきましても随分犬に噛まれる者が多いという現状で あります。何としてもこれは一日も速かに日本にはもう狂犬はないのだ、万一犬に噛まれても狂犬の心配はないというところまで持つて行かなければ、この問題 は解決しないという悩みがございます。そこで私ども今回意を決しまして、多少問題があろうとは存じますが、ここ当分の間努力いたしまして、日本から狂犬病 毒を絶滅いたしまして、安心して住める社会を作りたいという趣旨でございます。
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○委員長(上條愛一君) 次に、清掃法案について政府委員の説明をお願いいたします。
○政府委員(楠本正康君) 清掃法案はかねて本委員会におきましても問題にして頂いたものでございまして、極く問題点の概要を申上げてみた いと存じますが、現在の清掃事業は汚物掃除法によつて実施をいたしておりますが、汚物掃除法は明治三十三年の法律でございます。その当時の都市人口は僅か に三千五百万人だと言われております。ところがすでに現在は都市人口というものがすでに五千万人を超えてております。それで現在の社会に明治三十三年の法 律を適用して十分な成果が収め得ないことは当然でございますが、現在この清掃というものは大体塵芥の処理と屎尿の処理が中心に置かれておりますが、塵芥の 処理につきましては現在九百六十七市町村がこの作業をいたしておりまして、この処理する日量は約三百万貫に達しております。その人口は三千九百万人が対象 となつております。
 それからなおここのこれら塵芥の処理は埋立に利用されますものが大体六〇%を占めておりますが、併しこれらの埋立は、埋立と申しますか実際は捨場に困つ て単に堆積して置くというような状況でありまして、ただ堆積するということも言えませんので、一応は埋立と称しておりますが、本当に埋立の目的を達してい るものは余り数はないのであります。大部分は単に放置しておる状況であります。なお、焼却するものは現在僅かに二八%に過ぎませんが、これらはこの焼却施 設が戦災等をこうむりまして、十分な能力が発揮できず、その復興も現在まで殆んどされていないために、殆んど焼却というものは極めて貧弱な数字になつたわ けであります。なお、肥料等として還元されておりますものは、これは極めて微々たるもので、僅かに五万貫程度であります。なお、参考までに申上げたい点 は、現在世界各国の趨勢を見ますると、塵芥をこれを化学処理いたしまして、これを土地改良用の資源に活用しておるのが大体世界各国の趨勢のようでありま す。これは塵芥を先ず最初に磁力の中を通しまして鉄分等を取り除き、次にベルトに乗せましていろいろ鹿芥を分けまして、木材の切れ等では簡単なパルプを作 る、或いは鉄はこれをスクラツプの材料にするとか、そして最後に残りました厨芥を、これに特別なバクテリアを作用させまして、これを土地改良用の資源に還 元するというのが大体の行き方のようでありますが、日本ではまだかような点は考慮されておらんのであります。
 次に、屎尿の現状につきましては、これが最も厄介なものでございまするが、現在屎尿の汲取処理をいたしております都市は百十三都市でございますが、これ らのうち大部分は農村に還元されるものでありまして、約百二十万石が毎日農村に還元されておる恰好になります。なお下水道、或いは消化槽等によつて処理さ れることが最も理想的でありますが、これらは極めて少く、僅かに日量で二十三万石が計算されております。なおその他は海に捨てる、或いは地面に埋没する、 或いは砂地等に自然に吸収させるというような不衛生処分でございまして、これが日量三十二万石に達しております。
 そこでなぜこの屎尿問題が最近問題になつて来たかと申しますと、これは何と申しましても都市の人口の増加に伴います排泄量の増加であります。而も一方農 村の受入れは、化学肥料がしきりに増産されている、使われている、或いは有畜農業が普及いたしまして、堆肥の原料に事を欠かない、或いは一般農村の青年た ちが屎尿を使うことを余り好まないというようないろいろな条件が積み重なりましたほか、更に都市においては家庭菜園というようなものが最近姿を消しており ます。従つて勢い農村の還元が極めて窮屈になつて参つておるのであります。このために都市の屎尿というものの置場に困るというような状況に相成つておるわ けで、ここにここ一、二年大きな問題が起きて来たわけであります。
 そこで一体現在どのような具体的に被害がこの屎尿処理から来ておるかと申しますと、最近海洋投棄のほかに困つて、各家庭が夜こつそり目分の家のものを汲 み出して、川口に流すとかいうような状況であります。又詰め替え作業その他でこぼれる分もかなりございます。そんなようなわけで、海水、河川というものは 著しく屎尿によごれております。私どもが各地の海水等をとつてみまして、或いは川の水等を調べてみましても、これにはかなりの大腸菌が見つかるのでありま す。つまり現在の都市の周辺の河川、海洋というものは、著しく屎尿によごされておるという現状でございます。なお、私ども東京湾その他でとります貝類を調 査いたしてみますると、殆んど都市周辺の海岸から採ります貝類からは、例外なく大腸菌が発見されるのでありまして、これは勿論水が大腸菌によつてよごされ ておる結果止むを得ないことではありますが、実に恐しい感じが、これでは赤痢の流行も止むを得ないというような感じがいたしました。なお、最近は都市の周 辺等におきまして、単に穴を掘つて屎尿を放棄する、或いは貯溜槽がオーバーフローしておるというような関係で、それが地下等に滲透いたしまして、附近の井 戸水等をよごしまして、問題を起こしているところも各地に見られます。一方農業等に対しましても、多量の汚物が川に流れて稲の発育にも障害を来たす、或い はは川の水がよごれ過ぎまして、却つて漁業に損害を来たしておるような状況も多数にございます。これらの障害の結果は、いろいろ問題を起しまして、例えば 大阪市のごときものは、現在年々一千万円の補償金を漁夫に出しておるような現状でございます。川崎、横浜等もやはりかような補償金までも出して海に捨てさ せてもらつておるというような現状であります。又先ほど申しましたような井戸水、或いは田圃にかける水等がよごれた結果、これ又いろいろ補償を出している 例も少くないのであります。そこで現在一体各都市はどのくらいの経費を支出しておるかと申しますと、現在約四十一億の金が清掃事業のために消費されており ます。このうち私どもが平衡交付金において積算の基礎にいたしましておるものは二十億でございますが、併しながらこの二十億というものは、人口一人当りの 計算で参ります。併しながら実際に金を出しておる四十億というものは、これに勿論特別な都市に限られております。ここに一つ平衝交付金が矛盾を感じておる わけでありますが、いずれにいたしましても四十数億円はこのために消費をされておるわけであります。それから一方私どもかねてこの施設に対しまていろいろ 起債その他の斡旋によつて施設の整備を考えておりますが、これも必ずしも十分な成績でなく、例えば屎尿関係の起債というようなものは昨年度におきましても 僅かに一億二千万、塵芥関係におきましても一億二千万程度、要望額に対しては極めて微々たる数字であります。
 なお、もう一つの問題点は、現在各都市とも直営のみによつて清掃事業を行なつておるところは殆んどございません。大部分が直営及び請負の二つの形態によ つて行われております。又請負のみによつて行われておるところもございますが、これら請負によります経費は極めて割高につきまして、これが結局市民に大き な負担となつておるわけで、又この請負というようなものがしばしば市民生活に対しまして批判の的となりまして、ごみをとりに来ないとか、或いはチツプを要 求するとかいろいろの問題が私どもの耳に入る、耳に入るだけでなくいろいろ陳情等も受けておるわけであります。
 そこで今後一体どういう対策でこれを進めたらいいという点について最後に一つ附加えさせて頂きますが、塵芥につきましては、先ほども少しく触れました通 り、やはり世界の大勢から考えまして日本のような資源の少い国におきましては、やはりこれを資源的に活用するということが一つの目標とならなければならん と考えております。なおどうしても止むを得んものはこれは焼却に持つて行く、その他はすべてこれを資源的に活用して行く。仮に日本の日量三百万貫の塵芥を 完全にこれを資源的に活用いたしますれば、大体十万町歩の土地改良ができる恰好になるわけでありますが、これは併し全部をするということはできませんで、 ほんの数字に過ぎませんけれども、そういう勘定になるわけです。
 次に、屎尿問題につきましてはどうするかという問題でありますが、これは現在では理想といたしましては勿論下水道の処理による屎尿処理が最も望ましいわ けでありますが、併しながらこれには相当な経費がかかります。今直ちに日本各都市の下水道を完備することは到底許されませんので、仮に現在都市面積の一 五%、その該当人口二千七百万人の下水を完備するにしても約五千億の経費がかかるのであります。到底下水処理というものは今早急には望めません。そこで私 どもは一応これを消化槽による消化処理というものを考えておる次第であります。この消化槽を作りますれば、将来下水道ができましたときにはそのままこれを 下水の終末処理場として活用ができます。そこで下水道が完備するまでの間は止むを得ずトラツク輸送等によつてこれを消化槽に入れる。将来逐次下水ができて 参りましたらトラツクを廃して下水でその消化槽に流し込む仕組みにいたしたい、かように考えておる次第で、現在は少くとも屎尿問題は消化槽によつて一つ解 決をいたして行きたい。
 なお、汲取りの問題でありますが、これがかねていろいろ問題を起しております。殊に都市の美観或いは都市の衛生状態等から考えまして、かような肥桶によ る汲取り、肥桶の運搬というようなことがいろいろ問題を起しておりますが、これらは現在私どもはいろいろ研究をいたしまして、真空式のタンク車によつて汲 取る方法を研究いたしております。現在これはすでに研究が大体成功いたしまして、川崎市その他で試験的に実施をいたしておりますが、大きなタンク車にホー スをつけましてホースを直接便池に入れまして、スイツチ一つひねつてそれを吸上げてしまおう、こういたしますれば全然屎尿臭もございませんし、又扱いも極 めて衛生的である。これをそのままタンク車で消化槽に運んで消化してしまう、消化した暁にはこれは極めてきれいな水分と、それから固形分とに分れますか ら、水分はそのまま川に流す、固形分はこれを肥料として農村に還元する、こういうことを考えておるわけでありますが、これらにつきましてはなお今後それら の作業につきましては十分なる研究を要します。又一方これにつきましては若干の経費も必要ありますので、その点は今後の問題だと考えております。
 なお最後にもう一点触れさせて頂きたい点は、現在観光地というものは極めて不衛生な状況であります。殊に夏だけ、或いは季節的にいろいろ賑わいます観光 地は殆んど屎尿問題或いは塵芥問題等の手のつかない現状であります。これが日本の観光というようなものにも非常な支障を来たしておりますので、今後かよう な観光地の季節的の清掃というものも十分留意して行かなければならんものである、かように考えておる次第であります。
 極く簡単でありますが、一応二、三の問題点を申上げた次第でございます。
○委員長(上條愛一君) 本日の審議はこの程度にいたしまして、あとは次回に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。
 本日の委員会はこれで散会いたします。
   午後二時八分散会