第019回国会 厚生委員会 第11号
昭和二十九年二月二十五日(木曜日)
午前十時三十八分開会
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出席者は左の通り。
理事 大谷 瑩潤君
委員
高野 一夫君
中山 壽彦君
西岡 ハル君
廣瀬 久忠君
湯山 勇君
堂森 芳夫君
有馬 英二君
政府委員
厚生省公衆衛生
局環境衛生部長 楠本 正康君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
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本日の会議に付した事件
○狂犬病予防法の一部を改正する法律
案(内閣送付)
○清掃法案(内閣送付)
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○理事(大谷瑩潤君) 只今から厚生委員会を開会いたします。
狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引続き質疑を行います。御質疑をお願いします。
それでは私からお伺いしますが、この狂犬病予防法の一部を改正する法律案に対しまする予算措置というものはどういう工合になつておりますか。
○政府委員(楠本正康君) 狂犬病予防対策に関します経費につきましては、現行法におきまして登録手数料というものを徴収することになつて
おります。而もこの登録手数料は他の狂犬病予防以外の目的に使つてはならないということが規定してございます。従いましてこの手数料がすべての狂犬対策の
経費に充てられておるわけであります。なお、現在登録数が全国的に見まして約二百万頭でありますので、三百円の登録手数料といたしまして約六億円の経費で
これを実施しておる結果と相成つております。
○高野一夫君 私はよくこれは知らないのですが、現在登録料を払つておりますね。あれは各地方の収入になるのとは違いますか。
○政府委員(楠本正康君) 御指摘のようにこれは地方の収入でございます。府県の収入で、府県が狂犬対策の経費に使用いたしておるわけであります。
○高野一夫君 このちやんと正規に飼つている犬で繋留されていない犬を薬殺する場合は、狂犬病の蔓延するとかというような憂えのある期間に
限るわけですか。そういう憂えのないふだんに放し飼いしてあるのも、保健所なら保健所のほうから行つて、どんどん捕獲して殺してしまうということはだめで
すか。
○政府委員(楠本正康君) 改正案におきまして薬殺は真に野犬逃走上やむを得ない場合、要するに狂犬病対策として真に止むを得ない場合にのみ一定の期間を限つて実施することが建前であります。従いまして単に野犬が多いからこれを整理しますというような意味で薬殺はできないことになつております。
○高野一夫君 現在各地によつて情勢が違うようですが、東京あたりでは放し飼いしているのはどんどん持つて行つてしまう。それであとからあ
わてて保健所あたりにそれをもらい下げに行くというような場合が頻々としてあるのですが、そういうのはちよつと行過であつて、正規の業務に適したやり方で
はないということになりますか。
○政府委員(楠本正康君) 現在の法律におきましては、繋留命令が出せることになつております。つまり犬を繋いでおけと或る期間を定めて繋
留命令を発せられることになつておりますが、この繋留命令を発せられた場合におきましては、たとえ飼い犬ということが明らかであつても、繋留していないも
のはこれを捕獲抑留されることに規定されております。従いまして東京都の例にとりますと、現在繋留命令が出ておりますので、たとえ飼い犬であつても、放し
飼いにしておきます場合には、捕獲抑留されてもこれは法律の規定に基いて実施されることでありまして、必ずしも行過ぎとは申されません。併しながら繋留命
令の出ていない地方におきましては、或いは繋留命令の出ていない期間におきましては、飼い犬を、登録されている犬を捕獲抑留することはできないことになつ
ております。併しながら実際の仕事のやり方としては、勿論すでに登録され、又予防注射もしてあるような犬を捕獲するのが目的ではありませんので、実際の運
営上には努めて野犬と明らかなものを捕獲するように指導をいたしております。併しながらその見分けができたい等の理由もありまして、しばしばこの飼い犬を
捕獲抑留する事態が発生をいたしておるわけであります。併しこれも現行法から言えば、別に違法というわけではございませんが、ただ運営上の仕事のやり方の
上から言つて、必ずしも当を得たものでなかろう、かように考えておる次第であります。
○高野一夫君 もう一つ伺いますが、この繋留命令が出たとか或いはその期間であるとかいうようなことでなくとも、飼い犬を放し飼いにすると
いうことは非常に困る場合が多いのです、実際問題として狂犬病の流行如何にかかわらず……。だから飼犬は必らず繋留すべしということにして、一日二十四時
間のうちこれが自分の家外に放し飼いされた場合は、一切かまわず捕獲、撲殺しても差支えないというような強いところまで行けませんか。
○政府委員(楠本正康君) 御指摘のように犬というものは、元来がこれはつないで飼うというのが当然のように思われますが、併しながら日本
におきましては、従来長い間犬を放し飼いにする習慣がついておりますので、今直ちにこれを絶対につないでおけ、而もつないでおかない場合は薬殺、撲殺とい
うようなことは、実際問題として極めて困難があるのではなかろうか。むしろこの点は正しい犬の飼い方というようなものを十分に国民に対して普及する、徹底
させるということのほうが先決ではなかろうかと考えております。従いまして現在は繋留命令の出ていない所におきましては、一応放し飼いにしても差支えない
ことになつております。併しこれはやはり正しい犬の飼い方というようなものを国民によく徹底させれば解決すべきもののように考えられます。
○湯山勇君 今のお話とも関連するのですが、野犬とそれから正式に登録された犬というものの明確な区別はどういうことでするわけでございますか。
○政府委員(楠本正康君) 現在登録いたしました場合には鑑札が下ります。これを頸輪に付けるということに相成つております。その鑑札の様
式は省令において規定しております。併しながら現在はこれが省令に規定してありますものは、小さなただほんの金の板でありまして、はつきりいたしませんの
で、今後これをはつきりいたしますためには、何か色を付けた鑑札にするとか、或いはぶら下げるような仕組みの鑑札にすることが必要であろうと考えておりま
すが、現在は鑑札で区別をいたしておるわけであります。
○湯山勇君 今の御答弁にもありましたように、実際は簡単に見ただけで登録犬と野犬との区別が付かないためにいろいろトラブルが起つている実情もあると思うのです。これをはつきり放されている場合でも、一見してそれとわかるような措置を速かに講じて頂きたい。
それから次に、予防員というものが獣医の中から任命されるようになつておりますが、これは各府県何名とかというような大体構想がおありでございますか。
○政府委員(楠本正康君) 現在予防員は専任、兼任含めまして約二千名近くおります。
○湯山勇君 そうすると、大体各府県にこれを割振りいたしますと、まあ数十名という程度に相成るわけでございますね。これで果して今回の改
正にありますように予防員のみが建物とか船車内に入つてもいいという規定だけでこの狂犬病予防の万全が期せられるかどうか。この文章に書いてあることが規
定通りに実施できるかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(楠本正康君) 現行法におきましても、捕獲人が犬の捕獲作業を実施いたします場合には、必ず予防員に指揮監督をさせて捕獲作業に従事することになつております。従いまして現在でも捕獲人だけが勝手に行動するということはございません。
○湯山勇君 建前はそうなつておるかも知れませんけれども、私が実は或る程度その被害を受けた経験もあります。決して予防員はついて参つて
おりません。ただ役所の中でこうこうこういうふうなので、こちらのほうに行けという指図をするか或いはどこかへいて結局捕獲員だけが実際の作業に当るかど
ちらかだと思うのです。従つて追跡しておる犬が建物の中に入つたような場合に捕えて行くということは実際は不可能だと思うのです、如何でございますか。
○政府委員(楠本正康君) 現行法の建前が必ず予防員の指揮を受けて捕獲作業に従事することに相成つております。併し只今御指摘のように私
どもも場合によりますと捕獲人だけが活動をするような場合があつて、甚だ残念に思つておりますことは率直に認めざるを得ません。併しながら今後はできるだ
け府県を督励いたしまして、法の精神に則りまして必ず予防員が、官吏たる職員がついて現場作業をするというふうに厳重に監督いたしたいと考えております。
ただ、この人数の点から申しますと、現在は、捕獲人の数が全国で約千五百人でございまして、人数の数から申しますと、必ず捕獲人及び予防員を一つにいたし
ました捕獲班が編成できるのでありまして、この点は今後できるだけ監督を厳重にいたしたいと考えております。ただ、ここで一つ附け加えさして頂きたい点は
現在犬の捕獲人は地方の長、府県から任命されました職員であります。従つて或る程度監督もできるわけでございます。ただ困つたことに、以前は捕獲人という
ものは一つの商売のようなものでありまして、別にこれは役所の職員或いは役所の認可を受けたというものでなかつたわけであります。従つて現在なおそのよう
な昔のいわゆる犬捕りという商売の、まあ商売人のなりきたりというようなものが若干存在をいたしておるのでございます。私どもはこれらのいわゆる昔の犬捕
りというものがときどき問題を起しますので、これらは速かに解決をいたしますようにいろいろ監督をいたしておりますが、最近殆んどこれは陰を失して参りま
したが、今後一層努力をいたしまして、これら昔のなりきたりの犬捕りというものの撲滅を図つて、一方かようなものがあれば、必ず府県の職員として働くよう
に注意をいたしたいと考えております。
○湯山勇君 今の点私もお尋ねしようと思つておつたのですが、もぐりの何といいますか、捕獲人に対しての取締りとか何んとかいう規定はございますでしようか。
○政府委員(楠本正康君) 現行法におきましては、捕獲人が犬を捕獲するその捕獲人は知事が、都道府県がこれを任命するということに相成つ
ております。従つて知事が捕獲人として指定した者以外は犬の捕獲はできないことになつておりまして、その意味では明らかにこれは違法行為に相成るわけでご
ざいます。
○湯山勇君 これは罰則か何かあるのでございますか、それにつきましては……。
○政府委員(楠本正康君) この法には罰則というものは適用されておりませんが、併しながらあとで詳しく調べた結果をお答え申上げますが、
何らか制裁の手があるように考えております。現に東京都等はこの取締りに大いに力を入れまして、最近大分さようなものが減つて参つておりますが、併しこれ
をどういう根拠においてやるかという点につきましては、のちほどお答えをいたすことにいたします。
○湯山勇君 まあ野犬の撲滅ということに民衆が協力しないという一つの理由はそこにあると思うのです。私どものところでもそうなんですが、
ほかでもそうだと思いますが、どんな飼犬でも、私どものほうでは犬殺しと呼んでおりますが、この犬殺しに狙われたらどんなにしておつても結局やられる、こ
れが一つの通念でございます。でそれは今のような正しい捕獲人ともぐりの捕獲人との区別がつかない。これに対する取締りが十分できていないというところに
もあるのじやないかと思いますので、これは一つ十分対策を講じて頂きたい。
それから更にお尋ねいたしたいのは、予防員が入ることのできる場所として、人の住居を除くとこうありますが、これは簡単に住居というば常識的にはわかる
のでございますけれども、厳密にこれは何か規定する定義のようなものをお持ちになつてお書きになつたのでございましようか、ただ単に人の住んでいる所とこ
ういう意味でお使いになつたのでございましようか。
○政府委員(楠本正康君) この場合住居の意味でございますが、これは単に部屋というだけではなく、例えば縁先であるとか、物置であるとか、洗濯場というようなものも一つの住居の観念に入ります。従いまして実際に立入りのできますものは、結局庭先というふうになるわけでございます。
○湯山勇君 それはこのどういう意味でそういうふうな解釈をされたのでございますか。と申しますのは、この文章通り読めばです、必ず今おつ
しやつたように庭先というふうにはとれないと思うのです。例えば母屋と納屋というふうなものが田舎にはたくさんあるのですが、そういう建物の構造が母屋に
は入れないけれども納屋のほうはいいとか、或いは物置のほうはいいとかこういうような解釈ができるのではないかというようにもとれますし、その辺は非常に
問題を起しやすいところだと思いますので、重ねてお尋ねいたしたいと思います。
○政府委員(楠本正康君) それはこの住居というものは、広く解釈いたしております理由は、その前に合理的に必要と判断せられる限度という
ことが明らかに規定してございます。これはつまり必要最少限度の範囲という意味でございまして、従いましてこれを受けて住居となりますので、その住居は逆
に広く解釈されるということに相成るわけでございます。
○湯山勇君 そのことに対してはそういう解釈の指示は各府県宛になさるのでございますか。住居とはこういうふうな意味でこうこうだということについては……。
○政府委員(楠本正康君) 勿論法律の解釈並びに運営等については厳重に地方に徹底を図るつもりでございます。
○湯山勇君 最後にお尋ねしたいのは、私は野犬がこのようにたくさん殖えた原因は、現在の世相にあると思うのです。戦争中には食糧が乏しい
という理由と、それから防寒具の関係で、私ども飼つておる犬まで供出いたしました。従つて戦争の終つたときには犬が少くて困つたはずでございます。ところ
が戦後の世相がああいうふうに悪化したために、泥棒が非常に多くなりまして、結局泥棒を防ぐという意味かり非常にどこも犬を欲しがつたわけでございます。
そういうことがまあこういうふうな野犬が著しく多くなつたという一つの大きな原因をなしておると思うのですが、現在となつてはそういうふうにどんどん犬を
飼つたけれども、子供がどんどん生まれて来る。処置に困つて捨てる、こういうことになつたので、実際は今犬を飼つているところでも、犬の生れて来る子供の
処置に困ると思うのです。で一々雄犬を飼つている家で手術をするということは考えられませんので、雌犬の飼つている家で困るわけですが、そうかといつて
一々手術するというのも大変でございますので、そうするとお尋ねを先ずしたいのは、簡単に獣医師の所で何とかして堕胎をさせるというような方法はないでご
ざいましようか。
○政府委員(楠本正康君) 現在殖えて困る犬は結局飼主がはつきりしておらない、責任を持つた飼主がない、半ば平野犬というような犬が最も
殖えて参りまして、これが又いろいろ私どもに迷惑をかけておる存在であります。従つて予防注射等もできません。登録も無論できない。かようなものを対象
に、それ以上に複雑な操作でありますところの避妊手術、或いは堕胎作業というようなことは、これは極めて困難だ、かように考えられます。
○湯山勇君 勿論今おつしやつたような、非常に複雑なものは別でございますけれども、大体まあ大都市は別として、田舎のほうでは成るほど正
式な登録はされていない、飼主もはつきりしてないといいながら、或る程度この家付きの犬だというのは大体はつきりしておるわけでございます。それで子供が
生まれるようになりますと、田舎でございますからえびを食べさすといいとか、或いはかにを食べさすと子供が堕りるとかいうので、随分そういう苦労もしてお
るようでございます。結局放置して置くと堕胎手術をしてもらうということもなく、生まれるまで放つておいて、生れたらどこかへ捨てに行く。こういう事実も
あるわけでございますので、簡単に、ほかのこととの関連でありますが、人間などに使われない程度で、例えばこれを飲ませれば犬ならば大丈夫という程度のも
のを簡単に求めて、犬に飲ますというような方法があれば、私は非常に違つて来るだろうと思うのです。その点についてどうですか。
○政府委員(楠本正康君) 確かにさような、極めて簡単な、犬が喜んで食べるようなもので、食べれば堕胎ができるというものがあればよろし
いのでございますが、犬は何分にも繁殖力の強い動物でありますので、犬の生命がなくなるような程度のことをしなければ、結局傾向的には堕胎はできんわけで
す。従つて、犬の堕胎というものは結局手術に依存しなければならない。ここに困難があるわけです。これがまあ犬の、何と申しましようか、繁殖力の強さから
来る問題、かように考えております。
○湯山勇君 胎盤の構造なんかも人間と犬とうんと違いますね。だから案外簡単に堕りるような方法もあるのじやないかということを、私どもも
素人考えで考えたようなこともあつたわけです。自分の必要に迫られまして……。そういうのがあればと思つてお尋ねしたようなわけですけれども、何かそうい
う点にも一つ、考慮の余地があるということだけお含み頂きまして、御善処頂きたいと思います。
○有馬英二君 今度の新らしい改正で薬殺することができるということがあるのですが、薬殺とはどういう薬を使うのですか。従来、私も飼犬を殺されたことがあるのですが、大抵ストリヒニンを用いているようでありますが、どういう薬を……。
○政府委員(楠本正康君) これはストリヒニンを考えております。
○有馬英二君 この間新聞か何かにちよつと書いておつたのですが、ストリヒニンで薬殺すると非常に残酷であるので、何か眠り薬を飲まして殺
すような方法がないだろうかということを、暗に犬に同情をする方の投書らしいのですが、そういうことを書いてありまして、私もこれは個人事だからなんです
が、雌犬がストリヒニンの入つたものを食べて死ぬところを見ておつたのですが、実際全身にけい攣を起こして死ぬところは非常に残酷ですね。野犬ですから、
撲殺するくらいだから薬殺も差支えないだろうと言えばそれまでですが、もう少し何かいい方法はないでしようか、尤も、ストリヒニンが効果的で迅速でありま
すから、効果の上るのは優れておりますけれども、何かはかにお考えはないですか。
○政府委員(楠本正康君) 私どもも犬を処分する方法につきましては、できるだけ安楽死させる方法を工夫いたしまして、例えますれば、捕獲
した犬を処分いたします場合は、現在では電気を通してひと思いに安楽死させる方法をとつております。ただ薬殺の場合でございますが、薬殺の条件といたしま
しては、薬を置いた場所から極めて近い範囲で倒れる、つまり食べた殆んど瞬間的に効果が現われて来るようなことでありませんと、あとで取片付けができない
ことになります。そこで実際に食べたのち、殆んど瞬間的に始末できるというものは、現在のところストリヒニン以外にはないのです。勿論眠り薬等を与えてや
れば一番いいわけですが、これには相当時間がかかりますので、果してどこに行つて寐ておるかということを調べ出すに極めてほねでありまして、これは殆んど
不可能に近い。そこで現在のところは、技術的に申しまして、ストリヒニン以外に適薬はないと言わざるを得ないと、かように考えておるわけでございます。併
しこれらの点につきましては、今後なお研究の余地はあろうと存じます。
○有馬英二君 この薬殺は、恐らく捕獲した犬を殺す方法ではないと私どもも考えますが、結局幾ら追い廻しても、なかなかつかまらない、そこ
で何か食物の中に薬を入れてそこに置けば、犬が来て食べてそうして死ぬと、こういう考でやるのではないかと思いますが、そういう薬品を用いないで、何か口
の中に入つて噛んだらすぐ爆発して、それで一遍に死んでしまうという方法のほうが簡単ではないでしようか。その点において少し考察が必要ではないかと私は
思いますが……。
○政府委員(楠本正康君) 現在は一応ストリヒニンを考えておりますが。かような点につきましては、今後なお十分に研究いたして、もつと合理的な、而も完全な方法を一つ研究いたしたいと存じます。
○有馬英二君 狂犬病の発生の資料を見ますと、やはり東京が中心であつて、地方には非常に少い。東京、千葉、神奈川、埼玉というような、東
京附近が最も多い発生を示しておるようであります。でありますから、これの予防対策というものは、従つて全国的に一様にやる必要はないと言つてはおかしい
かも知れませんが、それよりもやはり重点的にやらなければならん、こう考えておりますが、こういう点で予防の予算の使用をどういう工合にされております
か、それをお伺いしたいと思います。
○政府委員(楠本正康君) 只今御指摘のように、全く関東地方に局限された一つの流行と考えて差支えなかろうと存じます。従つてその対策も
勿論、流行地に集中して実施することは申すまでもございません。従つて、現在繋留命令或いはその他いろいろな方法は、殆んど東京を中心にして実施をしてお
る現状であります。ところが先ほどもお答えを申上げましたように、現在これに要する費用は、それぞれの府県で登録手数料を徴収し、その登録手数料を以て対
策の経費に充てておる関係上、費用は重点的に配れないという一つの悩みがございます。併しながら、今直ちに他の予算措置というようなことを講ずることもな
かなか困難な状況でありますので、東京都のごときものは、登録手数料のほかに更に純粋の都費から相当な経費を支出してこの対策に当つておるような次第でご
ざいます。それに反しまして、殆んど流行を見ない東北地方等におきましては、むしろ手数料が余つてしまうというような矛盾を呈しておりますが、これは現在
の経費の規定からいつて止むを得んことと思つております。併しながら、重点的に実施するということにつきましては全く同感でありまして、かような府県にお
きましては、今後も努めて足らんところを純粋地方費によつて補うように督励をいたしたい考えでおります。
○有馬英二君 もう一つ伺いたいのですが、この狂犬病発生の年次的の変遷を見ますと、昭和八年頃からずつと満つて、昭和十八年までの十カ年
間が非常に減少しておるのに、十九年から俄かに増加をして、それから又一度減少して、それから二十五年になつて又頂点に達しておるようでありますが、最近
は年々減少の傾向を示しておるようですが、この十九年以降の発生の数がこんなに急激に増加したということは、先ほど湯山委員が言われたように、犬の数が急
に増した、そこで野良犬も非常に増して来た、それだから病気が蔓延したのであるというにしては、少しどうもこの数字が合致しないのではないかと思うのです
が、これは狂犬病予防の方法が何らかその間に作用しておるのでありますか、或いは犬の捕獲というようなことに特に原因があるのかどうかということについて
御説明を頂きたい。
○政府委員(楠本正康君) 昭和十八年当時におきましては、衛生当局の努力によりまして、おおむね日本全土から犯狂病毒は壊滅したというふ
うに考えておつたわけであります。ところが、十九年に満洲から一頭狂犬が内地に搬入されまして、これが原因となりまして急激に拡がつたわけであります。而
も、その当時はすでにもう日本には殆んど狂犬はいないということになつておつたものでありますから、その辺の手を抜いておつたわけであります。そこへ持つ
て来て満洲から入つて参りました関係で、ここに大きく殖えて参つたわけであります。併しながらその一方、対策を実施すると同時に、幸いなことに二十年、二
十一年というものは食糧も極端に不足した時期でありまして、そのために犬の数がずつと減つて参つたために、相対的に流行が減少して来たものと、かように考
えております。ところが、その後社会の混乱その他に伴いまして、やはり病毒がだんだん蔓延して参りまして、その後二十三年、二十四年と逐次又殖えて参りま
した。そこで昭和二十五年に現行法の猛犬病予防法を実施いたしまして、登録の徹底、予防注射の徹底というようなことを努める一方、捕獲に努力をして参りま
した。その効果が現われまして、二十五年以降逐次減少して参つておるものと考えております。併しながら、一方野犬と申しましようか、犬の数はこれに反比例
して二十五年以降急激に増加をいたしておりますので、これらの努力にかかわらず、必ずしも数の上では十分な効果を上げ得ないのでありますが、併しながら犬
の増加に比例いたしますれば、これらは或る程度現在効果が上りつつあるものと、まあいささか手前味噌になりまするが、かように考えておる次第であります。
○高野一夫君 先ほど私は飼犬の放し飼いを厳重に取締つてもらいたいという意味のことをお尋ねしたのでありますが、その理由の一つを言い尽
し得なかつたところが、湯山委員からお話が出たわけですが、私も実は犬を飼つて困つておる一人なんですが、こつちで二十四時間繋留しておつても、放し飼い
にされておる犬がやつて来るのです。そうして、先ほど湯山委員からおつしやるように、双方共に飼主の欲せざる繁殖が起つて来ると、こういうわけでして、先
ずここにも一つの禍根があるわけでありますから、私は有馬委員のお話がありましたように、東京、神奈川方面、特にこの狂犬病の多いところは、一つ強い繋留
命令といいますか、これを実施されるように、これは行政措置でできると思いますから、お願いをしておきたいと思います。神奈川県あたりは非常に放し飼いが
多くて、恐らく繋留命令の先ほどのお話のようなことが励行されていないのではないかしらと思つております。これはお願いしておきます。それからもう一つ
は、野犬であればかまわずどんどん捕獲して殺してしまつても差支えないわけですね。
○政府委員(楠本正康君) ええ。
○高野一夫君 それからもう一つ、先ほど湯山委員の御質問で思いついたわけですが、この捕獲人というものが全国で千五百人ばかりおるという
ことで、全国の都道府県に配置されておる予防員の配置状況を見ると、あるところもある、ないところもあるという状態ですが、ここに書いてある正式の狂犬病
予防員というのは、国家公務員ですか。
○政府委員(楠本正康君) これは獣医師たる地方庁の吏員であります。
○高野一夫君 そうすると、捕獲人も都道府県の任命による職員が殆んど大部分を占めておるというお話でありますが、この予防員も地方の公務
員みたいになつておるのならば、この捕獲人も予防員のようにしてしまつて、一本の線にして人数を殖やして対策の万全を期するというふうなことは考えられま
せんか。
○政府委員(楠本正康君) 捕獲人も府県職員、地方の職員ではありますが、ただこれは用人としての職員でございます。一方予防員のほうは、
これはれつきとした役人でございます。ただこの捕獲作業の、例えば実際に犬を車乗せるとか、さような作業は、これは役人がやつて悪いということはございま
せんが、まあ常識的にかようなことには用人がこれに当つて行くということだろうと存じます。
○理事(大谷瑩潤君) それでは本法安に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じまするが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(大谷瑩潤君) 御異議ないと認めます。
○理事(大谷瑩潤君) 次に、清掃法案を議題といたします。御質疑をお願い申上げます。
○高野一夫君 まだよく勉強をしておらないので、質問の的が外れるかも知れませんが、この清掃法案に関して地方に強く義務付けをするというような場合に、地方に対する経費の補助とか国庫負担とかいうような点についてはどういうふうになつておりますか。
○政府委員(楠本正康君) 只今御指摘のように本法案におきましては、かなり地方に対しましていろいろな義務付けをいたしておるわけであり
ます。これに見合います経費につきましては、極めて総括的でございまするが、第二条に財政的な援助に努めなければならないというように極めて漠とした書き
方で総括的に書いてございます。この内容は例えて申しますれば、平衡交付金の算定基礎にするとか或いは起債の斡旋をする、更にできたら補助金等も支出して
行く。こういう総括的な意味で財政的援助に努めるというふうに規定してございます。現に、現在清掃事業に関しましては、地方平衡交付金の算定基礎といたし
まして約二十億円が算定いたされております。なお、施設の整備につきましては、し尿関係並びに塵芥関係を合せまして、二億余りの金が二十八年度においては
起債で承認をされております。その他本年三十八年からはし尿処理の施設に要する費用として現在五千万円が認められ、これが数地方に支出をいたして、その整
備に努めておる次第でございます。
○高野一夫君 その二十億というのは、二十九年度の予算ですか、二十八年度ですか。
○政府委員(楠本正康君) 二十七年度でございます。二十八年度の平衡交付金はまだ算定基礎が完成いたしておりません。
○高野一夫君 二十八年度は年度末になるのに、算定基礎が完成していないのはどういうわけですか。
○政府委員(楠本正康君) これは最後に特別平衡交付金、或いはいろいろな関係がありますので、例年その年の基準財政需要がはつきり決定いたしますのは年度末になると存じます。もう間もなくはつきりした数字が示されるここと存じます。
○高野一夫君 二十八年度の予算を組むとき、或いは二十九年度の予算を組むときに、一応推算としてでも算定予想をつけるべきではないですか、そういうことはやりませんか。
○政府委員(楠本正康君) 勿論当初地方が予算を組む場合、或いは我々が地方を指導する場合にも、おおむねさような見当をつけて地方に指示
してございます。地方も又その大体の概要によりまして予算を組んでおるわけでございます。ただ、極めてはつきりした数字は、これは年度末にきまるというこ
とを申上げた次第であります。
○高野一夫君 そうすると只今の二十七年度の状態を基にして、二十九年度は大体どういう予想になつておりますか。
○政府委員(楠本正康君) 大体これも前年を踏襲することになろうと考えます。ただ、金額といたしましては恐らく前年を踏襲することになろ
うと存じますが、従来は地域差というものが必ずしも法律におきまして明らかになつておりませんでした。ところがそのために或る金額を人口割に人頭配分する
というような結果に相成つておりました。ところが実際に清掃事業を行います程度というものは、地方によつて非常に差がございます。にもかかわらず人頭割の
配当しかできなかつたのでありますが、今後はかような点に少しく考えを改めまして、特別清掃地域というような制度を設けまして、これによりまして重点的に
この平衡交付金が算定されるように措置いたしたい所存でございます。
○理事(大谷瑩潤君) どなたか御質疑ございませんか。
○堂森芳夫君 局長にお尋ねしますが、この法案に出ております特別清掃地域で、し尿の処理を完全に下水道によつて処理する、こういうことだと概算どのくらいの費用が要るのですか。
○政府委員(楠本正康君) 現在仮に市の面積、市だけを対象にいたしまして、而もその市の面積の一五%を考えます。その一五%の面積に住んでいる人間を二千七百万人と仮定いたします。これだけに下水道を完備いたしますには約五千億の経費が必要となります。
○堂森芳夫君 このし尿を取扱うことを業としておるという十四条でございますが、現在のところ全国的に見まして、農業を営む人たちは殆んど
民家から屎尿を汲取つて荷車で運んで自分の家へ持つて帰つてこれを肥料にしておるわけですが、この汲取を業としておるということは、お百姓はどういう枠に
入るのですか、
○政府委員(楠本正康君) この場合には百姓がいわゆる自由汲取をいたしますのは別に業としてやるものではなく、自分の肥料を自給しようと
いう一つの操作でございます。従つてこの十四条に示す業というものとは考えてございません。従つて農家の自由汲取は今後も自由に従来通りやつていいと、こ
ういうことに相成ります。
○堂森芳夫君 そうしますると、農業を業としておる人はこの法律から外れると、いうことになるわけですか。その制約を受けないのですか。
○政府委員(楠本正康君) さようでございます。自由汲取は制約を受けませんです。
○堂森芳夫君 そうするとこの法律の根底が崩れないのですか。
○政府委員(楠本正康君) これは別に組織的に汲取るというような状況でございませんので、別にこの全体の清掃事業計画というものに特別な
支障はないと考えております。と申しますのは、現在自由汲取の行われているようなところは、やはりそれ自体放つて置いても自然に解決が付いて行くという一
つの地域に限られておりまして、おのずから一つの行詰つた都市におきましては自由汲取は放つて置いてもできなくなります。つまり歴史的に見ますると、自由
汲取で始められたことが逐次行詰つて、或いは直営或いは請負又そこには必然的に一つの業として行う者が現われたと、こういうことでございまして、従つて現
在のところは従来の自然の姿の自由汲取はこれを放置しておいて差支えないものと考えております。
○堂森芳夫君 そうすると、特別清掃地域又は季節的清掃地域に指定しておきながら、立法上そういう地域に含まれておる農業経営者ですね、第十一条の制限を外して農業経営者だけは糞尿を生のまま使つてもいいということになるのじやございませんか。
○政府委員(楠本正康君) この特別清掃地域においては糞尿をそのまま生のまま使つてはならないということは、これは誰にも適用されること
でございます。従つて百姓が自由汲取をして仮に家へ持つて来た場合にも、それをそのまま使つてはならんという制約は受けるわけでございます。それが特別清
掃地域であれば、そういう制約を受けることになります。
○堂森芳夫君 そうすると今後特別清掃地域或いは季節的清掃地域に指定された区域内の農業経営者はし尿を貯蔵する設備を持たなければならないと、こういうことになるのですか。
○政府委員(楠本正康君) これは一つの処理の基準を考えておりますが、これらは勿論只今御指摘のように堆肥のように処理するとか、或いは
完全に腐熟させるということも一つの基準に考えております。併し一方埋没する方法というようなことも基準として考えておりますのです。まあ埋没するような
場合には、これは一つの施設は要らんわけであります。併しながら全体的には只今お話の通りに若干の施設は必要となつて参ります。併しながら私どもといたし
ましては、いやしくも都市の形態をとつておる特別清掃地域においては、し尿を扱う場合に若干の安全化する施設を整えることは当然であろうという一つの考え
方でございます。
○堂森芳夫君 そうしますと、今後農業を営む人たちは、あなたのおつしやるように施設が必要になつて来る。その経費というものはかなりかかるのじやないですか。
○政府委員(楠本正康君) まあ堆肥にする、或いは腐熟させるというようなことには若干の経費はかかろうと存じますが、併しそれほど大きな
負担ではなかろうと存じております。特にこれは全国的に考えておりますのじやございませんので、極めて特定の特別清掃地域でございます。特別清掃地域とな
りますと、これは何といたしましても都市的形態をとつておるところでございます。例えば市と名が付きましても、市の地域でありましても、余り都市的の形態
のない農村地域は当然清掃地域から第四条によつて除外されて参りますので、従つて勿論これらに農耕を行なう者、而も自由汲取を行なつて農耕を行う者なしと
は申されませんけれども、極めて数が少いものだろう、かように考えて、著しい支障はあるまいという一つの考え方でございます。
○堂森芳夫君 さつきの農業経営者が汲取ることは汲取業ではないと、そういう御解釈ですね。そうするとこれは少し屁理窟になるのですけれども、薬剤師が薬を売つていましよう、注射しても医師法違反にならないのですかな、どうです。同じようなケースじやないですか。
○政府委員(楠本正康君) 私ちよつと所管外でございますが、薬剤師が医療行為をしてはならんように理解をいたしております。
○堂森芳夫君 やつぱり農業経営者が継続的に屎尿を汲取つて来る、それはあなたのように解釈していいのでしようか、どうですかね。私はどう
もこれは業として解釈するのが本当のように思うのですが法制局なんかでいろいろ勿論検討されたでしようが、そういう見解でございましたか。私もちよつと調
べてみたのですがね。
○政府委員(楠本正康君) これは先ほども申上げましたように組織的にかような作業をするものでなく、全く個人の自由意思によつて個人的に
汲取つて肥料に利用いたしておるのであります。この場合その業はこれは百姓が業でございまして、汲取るということはただ自分の業を活かすための一つの便宜
手段に過ぎない。従つてこれは特別縛るような業ではないと、かように考えております。
○堂森芳夫君 これはもう法規論になるわけですが、どうでしよう、私はやつぱり農業を営む人がし尿を汲取ることは業として私は規定すること
も論拠があると思うのですが、そうなつて来ると、これは非常に重大な問題を含んで来るわけです。例えばお百姓達がし尿を汲取ることを続ける場合ですね。例
えばボスがおつてそれの支配下に入らなければできないとか、いろいろな弊害が起きて来ると思うのです。ですからそういうふうなことを申すのであつてあなた
のおつしやるような解釈のように、農業を営む人はまあ汲取を業とするのではない、こういうふうに断定していることは、これは私は危険じやないかと、こう思
うのですが……。
○政府委員(楠本正康君) 例えば百姓が自由汲取をしておつたと、これが少し組織化いたしまして、農業協同組合か何かで一括して引受けて汲
取るようになるというようなことになりますと、これは明らかに一つの組織的な清掃作業に従事することになりますので、かような場合には業として当然許可を
要するわけになります。従つて、農業協同組合等が実施する、或いは他にボス的な存在が生じてかような業を営み始めるというようなことになりますと、当然こ
の規定にひつかかるわけでございます。
なお御参考までに申上げたい点は、現在全国でいわゆる業として汲取られておるもの、それが市の直営であろうが、或いは請負いによろうが別といたしまし
て、少くとも農家の自由汲取でなく汲取られておる対象人口が、百三十二都市人口にして千八百四十九万人でございます。そのほかはすべて農家の自由汲取或い
は自家汲取に依存をいたしておる次第であります。
○高野一夫君 一つだけ伺いますが、季節的清掃地域は市町村長が指定することになつておりますが、これが清掃法の精神をよく理解しないで、地域を指定すればどうも面倒だという横着な市町村長がおつて、指定してもらいたいところも指定しないというような場合はどうなるのですか。
○政府委員(楠本正康君) 確かに御指摘のような心配は考えられるわけであります。ただ、これは何と申しましようか、国の事務と考えており
ますので、若しも市町村長がみずからまあ金がかかるからやめようというようなことで、必要がありながらやめておりますような場合には、地方自治法によりま
して勧告をいたしましてさような方法をとらせる。それから更に徹底しない場合には執行命令を出しまして実施させることができます。併し、まあそれは実際の
行政手段でありまして、当然御指摘のような心配は考えられるわけであります。
○湯山勇君 私も一点だけお尋ねいたしたいと思います。それはこの法案に対する予算措置が非常に不明確だと思うのです。で、御提案のときに
御説明もありましたように、日本ではこういうことに対するいろいろな点が非常に不十分である。そうだとすれば、これをどうして行こうか、今後この問題につ
いてはどのような対策でどういうふうに進めて行こうという、この見通しがなければならないと思います。その見通しに立つて、これについてはこういうふうに
して、何年計画でこの点はこうして行くと、これはこうして行くということになれば、当然それぞれについてのどれだけの費用が要るから、この分はこうする、
この分はこうして行くという、そういう計画が必要だと思うのですが、その点について御説明頂きたいと思います。
○政府委員(楠本正康君) おつしやる通り、現在この仕事を或る程度計画を立てます場合には、かなりの経費が必要となります。そこで私ども
一応その計画について申上げたいと存じますが、これは先般も申上げましたように、私どもといたしましては現在し尿の処理は将来の理想計画から申しますれ
ば、これは下水道処理ということに相成ります。先ほどもお答え申上げましたように、それには市だけをやつても五千億も金がかかるので早急にはやれない。而
もそのし尿問題は日が経つにつれて処理に困つているという現状でありますので、取りあえずし尿は消化槽に入れまして、消化槽で水分と固形分とに分けて、そ
うして水分は川に流す或いは海に流す、固形分はこれは農村に肥料として還元する。それならば今でも農村に還元すればいいのじやないかということになると思
いますが、現在農村に還元のできない一つの大きな問題は輸送力の問題であります。何分にも九〇%余りも水分であるから、このし尿の輸送は輸送力で参つてし
まいます。そこで水分と固形分とに分けますれば量が著しく減少いたしますので、輸送力が解決いたしまして農村還元が可能になる、而も一方これらの水分、固
形分に分れたものは、いずれも全く衛生的に無害な状態である。而も見た目も別に汚なくもございません。かような方法で参りたい。
なお、殊に汲取、運搬は先般申上げましたように真空式のタンクにホースで汲取口からそのまま汲取り、し尿臭さくなく、飛散もなく消化槽まで運べる仕組を
考えているわけであります。それをいたしますのに現在差当つて、これは将来全国的にさような方法を考えられますが、差当つては現に何ともし尿の処分に困難
を来しまして或いは砂地に埋める、海へ捨てる、或いは溜めて置くというような、極めて不衛生な状態を現出しております都市及び五年以内には当然現在と同じ
ような困難が予想される都市、合計いたしまして九十六都市、その処分量は千二百万人分、これを五カ年計画によりましてこの整備をしようという方法でござい
ます。一応この千二百万人分のし尿を完全処理できますれば、一応現在の問題は解決し得られる見通しでございます。
そこでこれらに要する経費といたしましては、千二百万人分の消化槽その他を整備いたします費用といたしましては約六十億五千五百万円を要するのでござい
まして、これだけの金額でおおむね汲取、輸送並びに消化設備が完了いたす予定でございます。従つて私どもといたしましてはこれを五年間で実施するというの
が、取らぬ狸の皮算用のようなきらいがございますが、一応の目標でございます。
なお、塵芥につきましては、これ又先般お話を申上げましたように、今後これはできるだけ資源科学的な処理方法をとつて行きたい。こういたしますと現在の
清掃をこの資源科学的に施行いたしました場合には、必ずしもこれは企業としては成り立ちません。併しながら土地改良用の資源を得ることによつて若干の収入
がありますので、現在の各都市が支出しておる塵芥処理に要する経費よりも若干収入の面でカバーされて減つて来るのではないか。そういたしますればこれらは
そう大きな費用の負担にはならんで済むのではなかろうかとさように考えております。併しながらこれに要する経費もかなりの経費、施設を作るのにかなりの経
費を要します。一応私どもは現在約日量二百万貫の処理をするといたしまして約五十億円の経費がかかるものと考えております。併しながらこれ又取らぬ狸でご
ざいまして一応はさように考えております。併しこれはくどいようでございますが、今後収入がそれによつて出ますので、これらは大きな目で見れば却つて経費
は減額されると、かように考えております。
○湯山勇君 一応の計画を承わつたわけですが、大体百十億ばかりの経費が必要である。で、これからの何と言いますか、収入もあるということ
ですけれども、当分は収入も考えられないし、殊にし尿のほうに至つては殆んど考えられない。こういう実状だろうと思うのですが、私が心配するのは、折角こ
ういうふうな画期的な法律ができましても、今申されたような点の裏付けが或る程度明確にされておらなければ、実際は空文化する虞れがあるのではないかとい
うことを心配するのでございますが、その点は如何でございましようか。
○政府委員(楠本正康君) 現在も極めてささやかではありますが、若干の補助費も出ております。一方起債も若干は認められております。従い
まして五カ年計画と申上げました点につきましては、これは大きな支障が参りますが、長い目で見ればだんだんにこの線に近ずいて行くのではないか、甚だ気の
長い話ではありますけれども、さような感じがいたします。
○有馬英二君 伺いたいのですが、一般論としましてし尿並びに塵芥の処理は勿論文明都市としてやらなければならん事業なんですが、我々が昔
衛生学で習つたときからみるというと、今月は数十年の間に非常に進歩を来たしたと思うのですが、そういう状況についてここにその関係資料を頂いたのですけ
れども、まだすつかり勉強していないのですが、非常に進歩したものでありましようか、どうでしようか。現在の状態において……。
○政府委員(楠本正康君) これは率直にお答えを申しまして誠に進歩いたしませんで、全く立ち遅れたかつこうだと言わざるを得ないと思いま
す何でも汲取り柄杓で汲取つて身で運ぶというやり方は、これは室町時代に初めて都市に出て来たそうであります。殆んどその当時から何ら進歩していない、こ
ういうような現状でありまして、誠にお恥しい限りだと存じます。なお世界各国におきまして私よく存じませんが、恐らく日本のような処理方法をしているのは
他にあるまいと存じております。
○有馬英二君 大都市の現今の施設についても我々は余りよく知らないのですが、自分たちのおりまする例えば札幌のような所を見まするとし尿
の処理はやはり部長が先日からお話になつたように、消化槽を設けてやつておるのですが、これが処理の際に非常な臭気を発して、風が吹くとその風の模様によ
つては全市をその臭気が蔽うというふうに非常に住民が迷惑しておるというような方法を講じておるわけです。恐らく他の都市でも同じことが行われておるので
はないかと私どもは考えておるのですが、消化槽についても私どもは見たこともありませんけれども、誠にどうも原始的なやり方でやつているように考えられる
のです。こういう点についてはまだ金がないせいでもありましようが、非常にやり方が何と言いますか科学的でないと申しましようか、甚だ原始的のことをやら
なければならないのかも知れませんが、私どもは甚だ不満足を感じておるのです。それから小さい都市、特に北海道のように最近その周囲の町村を合併してやた
らに急激に市になつたというような都市では、これはもう町村と何ら変るところがない。殆んど施設らしい所は何もしておらんと私は思う。第二にたつておるこ
とは、最近漸く下水をやつておる。それも起債によつて漸く下水をやつておるに過ぎないというようなことでありまして、先ほどお話の九十六都市というのは、
これはよほど日本でも相当進歩した都市ではないかと私は思うのですが、小さい人口五万或いは六万くらいの市ではもう殆んど何にもやるだけのこともできない
のではないか。こういう点は勿論これはまあその住民の意思にもよりましようけれども、中央の監督官庁、監督官庁という言葉はないかも知れませんが、厚生省
もよほど指導をよくされて、一日も早く清掃事業が完備するように、それにはこの国会の清掃法がこれで十分であるかどうかということを私は非常に不安に思う
のですが、まあ法を幾ら作つても、実施において足りなければ、到底それは行われるものではない。従いまして、我々の社会生活が少しも向上しないということ
では何にもならんわけですから、そういう実施の面において十分考慮を払わなければならんと私は考えております。これはただ希望のようなものですけれども、
なお近頃の例えばまあ東京の清掃事業がどういう工合になつておるか、東京都が専ら日本では模範的なことをやつておると考えられるのですが、そういうことに
ついて一応我々の認識を新たにしなければならんのじやないかというようなことを私は考えるのですが、これはまあ委員長に御相談をして、一応そういうところ
を視察に行つて、どういうことを実際にやつておるかというようなことを調べなければならんのではないかというふうに考えられるのです。
○理事(大谷瑩潤君) 本日の質疑はこの程度にいたしたいと思いますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
○理事(大谷瑩潤君) 御異議ないと認めます。
本日の委員会はこれにて散会いたします。
午後零時一分散会