第019回国会 厚生委員会 第29号
昭和二十九年四月十六日(木曜日)
午後二時十分開会
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出席者は左の通り。
委員長 上條 愛一君
理事
大谷 瑩潤君
常岡 一郎君
湯山 勇君
委員
高野 一夫君
横山 フク君
廣瀬 久忠君
藤原 道子君
堂森 芳夫君
有馬 英二君
国務大臣
厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
政府委員
厚生省公衆衛生
局環境衛生部長 楠本 正康君
厚生省薬務局長 高田 正巳君
厚生省社会局長 安田 巖君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
説明員
厚生省医務局次
長 高田 浩運君
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本日の会議に付した事件
○狂犬病予防法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院提出)
○らい予防法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院提出)
○消費生活協同組合法の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院提出)
○医薬関係審議会設置法案(内閣提
出、衆議院提出)
○小委員会設置の件
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○委員長(上條愛一君) 只今から厚生委員会を開会いたします。
初めに御報告を申上げます。先に当委員会において決定し、手続等は委員長に御一任になつておりました厚生年金保険法案の公聴会日程は先の通り議長の承認を得て決定いたしましたから御報告を申上げます。
一、新聞広告、四月十五日毎日新聞朝刊。
一、公述人申込み締切り、四月二十一日。
一、公聴会開催、四日二十七日火曜午前十時。
以上であります。御了承願います。
○委員長(上條愛一君) 次に、医薬関係審議会設置法案を議題といたします。提案理由の説明を願います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 只今議題となりました医薬関係審議会設置法案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
御承知の通り、去る昭和二十六年六月二十日に制定公布されました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律は、明年一月一日から施行されること
になつておるのであります。この法律によりますと、薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤をしてはならないこととなつているのでありますが、獣医師
が自己の処方せんにより自ら調剤するとき及び医師又は歯科医師が、患者又は現にその看護に当つている者から、特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受
けることを希望する旨を申し出た場合、省令の定めるところにより診療上必要があるとされる場合及び省令の定めるところにより薬局の普及が十分でないとされ
る地域で診療を行う場合において、自己の処方せんにより自ら調剤するときは、販売又は授与の目的で調することができることになつているのであります。又医
師、歯科医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して授与する必要があると認める場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなけ
ればならないこととなつているのでありますが、省令の定めるところにより処方せんを交付することが患者の治療上特に支障があるとされる場合は、これを交付
しなくてもよいとなつているのであります。而して以上申し述べました省令を制定し又は改正しようとするときは、別に定める審議会の意見を聞かねばならない
と規定されているのであります。従いまして、以上の如き省令の制定及び改正について調査審議させるため、このたびここに医薬関係審議正を設置し、併せてそ
の組織及び運営の方法を定めんとする次第であります。以上が、本法案を提案いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんこ
とを切呈する次第であります。
○委員長(上條愛一君) 本案に対する質疑は次回に譲りたいと思いますが御異議ございませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。ちよつと速記をとめて。
午後二時十五分速記中止
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午後二時三十七分速記開始
○委員長(上條愛一君) 速記を始めて下さい。
次の狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。
○有馬英二君 質問をするに当つてこれは非常に重大ですから、厚生大臣の出席を私は求めたいのですが、厚生大臣がちよつと来られただけで又どこかへ消えてしまつたのですが、もう一度側出席を願えませんか。
○委員長(上條愛一君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕
○委員長(上條愛一君) 速記を始めて。
○湯山勇君 この前問題になつております狩猟法との関係ですね、野犬の関旅ですが、これはやはり相当問題だと思うのです。これについてはどういうふうになつておりますか。
○政府委員(楠本正康君) お答え申上げます。只今御指摘のように狩猟法の弟十五条におきまして薬物、爆発物等を用いて動物を建つてはなら
ない、獲物を建つてはならない、とかように規定してございます。その動物の種類につきましては同法の省令第一条におきまして獲つてはならない種類が列挙し
てございます。そのうちに野犬、野猫というものが一部入つております。この野犬と申しますのは、俗に申します山犬と申しまして、私先般来専門家にも聞いて
みましたが、現在はすでに日本内地には種切れになつておるそうでして、現在日本には野性の野犬というものはいないそうであります。それから野猫はこれ又山
猫と言われるものでありまして、これも現在はすでにおおむね姿を消しておるそうであります。仕つてこれらのものは現実にはいないのでありまして、而も犬と
は全然これは別な種類のものでありまして、こ」の野犬とは違うものでありますから、私どもはさような点では毛頭支障のないものとかように考えております。
○湯山勇君 この野犬が果して山犬に該当するかどうか、ここに問題があると思うんです。どこかの県で問題になりたことがあるとか言つており
ましたが、この間参考人が野犬が山犬であるこいうことになれば、これはおつしやる通り問題はありません。但し野猫ということになると、これは対馬におりま
して天然記念物になつております。従つてこれはやはり問題が残ると思いますので、やはり狩猟法を改正するかどうかしなければ、この問題はいつまでも残ると
思うんですが、そういう点どうでしようか。
○政府委員(楠本正康君) 犬と野犬それから猫と野猫とはこれは定義にも全然種類が違つておりますから、従つて狂犬病予防法におきましては
これはあくまで犬を対象にいたしております。そこで強いて申しますれば、薬殺等をいたします場合に誤つて他の動物に危害が及んだというようなことを考えま
すと、これは若干疑問はあろうと存じますが、この点は併し人畜に危害が及ばんということを建前にいたしております。なお私どももこれを実施するに当りまし
ては、人畜等に絶対危害のない方法を工夫して参りたい所存でございますので、かような点は心配がないと思いますが、いずれにいたしましても法の建前上、狩
猟法とは何ら関係がないわけでございます。
○湯山勇君 もう一度確認しておきたいと思うんですが、この農林省のほうも、野犬とは何と言うか、現在の飼犬フアミリアリスですか、それではないと、それから野猫というのは、現在の猫の野生化したものではないという定義をはつきりいたしておるんでございますか。
○政府委員(楠本正康君) その通りでございます。
○高野一夫君 ちよつと伺いますが、この間狂犬病登録手数料が総額一カ年六億というお話があつて、各市町村で狂犬対策に使うというお話でし
たが、大体大都市を除けて小さい町村あてに振り当てて見ると四、五万円程度になりはしないか。一カ年にそうすると四、五万円になるか、少くなるか多くなる
かわかりませんが概略見てみてそういう感じがするんですが、そうすると市町村における狂犬病対策の費用というものは大体どれ位かかるか、その足りないとこ
ろは国庫補助か何かどういうふうにされるつもりか、それをちよつと聞いておきたい。
○政府委員(楠本正康君) 只今御指摘の通り全国的に見ますると、五億近い経費は狂犬病のために法律に基いて使用されることになつておりま
す。ところがこれらの経費は各府県に大体畜犬数に比例して配賦されておるものでございます。そこでこれだけの経費で足りるかどうかという問題であります
が、先般来御説明を申上げておりますように、関東地方以外の府県におきましては狂犬の発生は殆んどない状況でございますので大体関東地方以外の府県におい
ては、これらの経費は僅かながらではあるにもかかわらず、若干余裕があり余つて他に振り向けられておるような状況でございます。ところが関東地方、特に東
京都等におきましては狂犬病が流行いたしております関係でいろいろ対策に経費が必要であります。にもかかわらずこれらはやはり畜犬数に比例した手数料だけ
が財源に一応なつておるわけであります。そこでとてもこれでは不足を来たしますので、現に東京都は年間約四千万円ばかりを更にこれに純都費のうちから加え
て使つておるような現状であります。なお神奈川県等におきましても、これ又狂犬病の流行がありますために経費に不足を告げて地方費をこれに追加いたしてい
るような現状であります。ところがこういう追加をいたしました純地方費につきましては、目下のところ何ら補助その他の裏付けはございません。ただ私どもと
いたしましては内容を自治庁によく話をいたしまして、できるだけ特別平衡交付金でこれを見てもらうように努力をいたしておる次第であります。
○有馬英二君 厚生大臣が出席されましたので、私から特に厚生大臣に質問をいたします。今回の狂犬病予防法案の改正について大体三点くらい
特に大臣からお答え願いたいのでありますが、それは従来浮浪犬或いは無繋留の犬が多数発生して、未だに発生数が余り減らないようなお話も前に承わつたので
すが、然るにこれについてただ狂犬病が発生しておるときだけこういうような野犬狩或いは浮浪犬を捕獲したり、或いは毒殺をしたりして来ておるのであつて、
その以外において、その時を経てしまうと、少しもそういう犬の増加するというようなことに意を使つておらないように私どもは思われる。それがために浮浪犬
が或いは野犬がだんだん多くなつて、そして又狂犬病が発生すると、その対策に困るというような状態であるように見受けられる。でありますからして、勿論狂
犬病は戦後俄かに増加しておるんでありますが、これはどうも一般に犬が非常に殖えた。殖えるに至つたのは、犬の食物もなくなつたんでありましようし、いろ
いろな点あるんでありましようが、どうかしてこういうような浮浪犬或いは無繋留の犬の発生を阻止するという根本的の対策を一つ立てられたらどうかというこ
とを私は考え、かたがたをれを希望するわけでありますが、それの対策として先だつても参考人もここに来て、斎藤弘吉君からも供述があつたのでありますが、
犬の断種法をということを政府で奨励するとか、或いは断行するというような具体案を立てられたらどうかと思つておりますが、それについて御意見を承わりた
い。
○国務大臣(草葉隆圓君) お話のように野犬が最近大変終戦後殊に急激に増加いたしたのでございまして、現在では大体登録犬が全国で約二百
万、野犬が約三百万と推計いたしておるのであります。終戦末期頃は殆んど狂犬病は絶無のような状態でありましたが、最近、その後終戦後再び、殊に関東を中
心にした地域におきまして、狂犬が発生するような状態に相成つておるのであります。誠にこれは危険でありまするので、今回狂犬病予防法においてこれらを十
分絶滅をしたいという意味から御審議を頂いておる次第であります。そこで根本の野犬をなくする方法、これは御尤もな御意見でありまするから、今度の改正法
におきましても従来子供を生んだ犬が処置に困つて結局野犬になる、浮浪犬になつて行く、無登録の犬になつて行くという状態でありますから、これらの子供
犬、野犬になる根本の犬を何とか処置をする方法を請じなければならないというので、保健所におきましてこれらを引取る、或いは買上げるという処置をとつて
参ることにいたしたのであります。更にそういう将来の場合を考えると断種をして、そうしてこれらの浮浪犬を少くししたらどうか。これも誠に一方から考えま
すると御尤もな御意見と存じます。ただ飼犬の場合には、これらの方法も或いは将来十分指導いたしましてできると存じまするが、野犬になりました野犬そのも
のの野合と申しまするか、によつて増加いたしまする場合におきましては、どうもそれがうまいこと行きにくいような場合もあろうと存じますが、只今断種の点
につきましては将来とも生まれた犬が多く野犬になつておりますような現状から考え、又野犬の現在推定いたしております三百万頭もあります野犬が、おのおの
更に野犬を生むという状態になつておりますから、こういうような点も十分尊重して参りたいと存じます。
○有馬英二君 それからこの捕獲がなかなかむずかしい、野犬を、捕獲員を使用して捕獲されるのでありましようが、逃げ廻つてなかなかつかま
らないというような場合に、薬殺を行うということが従来にも行われているらしいのでありますが、今回先だつての参考人からも繧々意見を聞いたのであります
が、特に一月の十七日、十八日の両日に亘つて日比谷公園で毒物の入つた食物を撒布して、そしてその際アメリカ人のハリスという人の畜犬が二頭もそれにかか
つて被害を受けたというために、それがニッポン・タイムスに出たり或いはアサヒ・イヴニング・ニュースにまで、というような外字新聞にまでそれが報道され
て、それが又ニューヨーク・タイムスであるとか或いはイギリスのほうまでそれが伝わりまして、そうして動物愛護というような方回から、日本人はどうも残虐
なことをするというような非難を受けようとしおるように報道されておる。これはどうも我々日本人としてもよほど考えなければならん点であろうと思うのであ
ります。そうでなくても第二次戦争川の際に日本人は非常に残虐なことをしたということで、思わざる誤解を受けておるというようなこともあることでもありま
するし、動物愛護というような方面から特に動物を殺すにしても余り苦痛を与えないような方法にして殺すというようにされたいというような動物愛護会からの
希望もありまするからして、この際政府はどうしても毒物を以て犬を捕獲する、或いは殺さなければならんということであれば、今まで用いておるような硝酸ス
トリヒニンというような毒物を用いないて、何かほかにこれに代るようなものがないかどうか、例えば睡眠剤を用いて殺せんかどうか。これは先だつてもそうい
うことについて一部お答えもあつたようでありますが、その点について特にこれは大臣からお答えを頂きたい。
○国務大臣(草葉隆圓君) 実はお話のように一月の十七、八日でございましたか、日比谷公園で犬が二匹であつたと思いますが亡くなつて、そ
れが今お話のような状態であつた。ちようどたまたま狂犬病予防法が出ておつて、そこに薬殺というのがありますために、大変大きくお話のように響いて参つて
来たのであります。これをだんだん調べて参りますると、実は現行では薬殺するということについては私ども適当でないと思つております。さような方法が東京
都でとられたと存じまして、東京都に対しましては厳重に注意を与えておいたのであります。これがたまたま外国人のちようど厚生省の前あたりにありますとこ
ろの犬であつて、従つてこのことががいろいろと私どものほうへ直接申して来られ、或いは世界動物虐待防止会長等の来訪の機会にも本人等にもそのことが申さ
れたということに相成つたのであります。お話のようにもともと動物虐待防止というのは、殊に外国等では相当早くから発達しまして、私がニューヨークヘ参り
ましたときにも、むしろ児童虐待防止は動物虐待防止から、どうしても最初親から子供を虐待している取締りがない。当時は動物虐待防止があるからそれによつ
てやつたという工合に思想的にも発達しておつたと思うんです。そういう関係から殊に最近犬がお互いの生活の中に飼犬として柔らかく……、そしてなければな
らないような状態で飼われておりまする関係から、一層その感を深くして参つたと存じます。従来は虐殺というようなことはむしろ捕獲というものに中心を置い
ておつたと存じます。私も実は犬を曾つて飼つておりました。捕獲をされ、而もそれが虐殺をされ、誠に悲痛な思いをいたしたことがあります。そういう関係も
殊に私自身といたしましても深く注意をし、今側の狂犬病の予防処置としてとります場合におきまして、万止むを得ない時期及び止むを得ない期間並びに止むを
得ない地域に限つてその処置をし、而もその処置による薬等は、お話のように大変悲惨なような状態を現出することのないような方法をとり得ないか。現在薬等
におきましても、それぞれ専門の方で研究をいたしておる次第であります。そういう意味におきまして、人心に与えまする影響、又動物愛護の思想に与えまする
影響がこの取扱い如何によりましては、強く響いて参るのであります。この点は慎重に取り扱いをいたしまして、そのような悪影響の起らないようにいたしたい
と存じます。
○有馬英二君 ただ、現在におきまして、やはり都の一部分においてストリヒニンの入つたものを用いて犬を捕獲するようなことが現に行われつ
つあるのであります。これは今年の一月に日比谷公園で起つたということが非常に響いたのでありますけれども、その後もやはり行われているらしい。私どもう
ちの犬がときどき濫から出まして、そうして夜暫らく家の廻りを廻つて歩いて、それから帰つて来るというようなことがあると思うのですが、その近辺の犬がや
はり毒物の入つたものを食べて死んだというような例を、やはり私どもの家族が見ておりますというと、現に行われておると思うのです。それですから、やはり
薬殺をしなければならんという場合におきましては、やはり都の衛生課におきましても十分そういう点に注意をして、犬を余り苦しめないで、一つ捕獲をする。
或いは薬殺をするというようなことに、現在注意が払われておらないということを、一つよく厚生省のほうから注意をされて、実際において、これを一日も早く
他の方法に変えられるようにして頂きたいと思うのでありますが、それについても、一つこれは都のほうのことでありましようけれども、やはり厚生大臣から何
分の指令があればいいのではないかと思うのですが、厚生大臣から一つ……。
○国務大臣(草葉隆圓君) 実は、あの一月の日比谷公園で二匹、殊に外国人の則つておりました犬が薬殺の状態ということは、私どもはその状
態を知りまして、早速都のほうへ厳重に忠告をいたしておいたのであります。従いまして、その後はさような話を、この本法案の審議中でありますし、まだ通過
もいたしておりませんし、通過いたしました際におきましても、この薬殺の場合には、それぞれ十分注意してやるようになつておりますし、私どもはむしろさよ
うなやり方をする場合には、飼主の人たちに十分に徹底するように注意をし、時間、場所等も十分知らして、正しい飼犬に対して、不慮の災難にかかることのな
いように万全の注意をすべきものだと考えておるのであります。従いましてその後は東京都におきましてはないと存じておりましたが、只今のお話を承わります
と、なおさようなことがあつたように考えられますので、早速この点は東京都のほうへ連絡いたしまして、十分な注意を喚起いたしておきたいと存じます。
○委員長(上條愛一君) 本法案の本日の質疑はこの程度にいたしまして、次に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないものと認めます。
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○委員長(上條愛一君) 次に、らい予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。
○高野一夫君 楠本部長に伺いますが、先般もお尋ねしたのですが、国立癩研究所のその後の経過はどういうふうになつておりますか、設立補助が決定したか、或いは又その後ずつと研究所そのものについての準備が進められておるかどうか、経過を聞かして頂きたい。
○政府委員(楠本正康君) お答え申上げます。研究所の問題は、主として医務局がこれを担当いたしておりますが、私どもが関連事項といたし
まして承知いたしております範囲では、未だその決定に至らんように聞いておるのであります。なお、これらの点は準備の都合もありますので、近く決定を見る
ことと存じますが、未だその内容は決定を見ていないと、かように考えておる次第であります。
○高野一夫君 昨年度臨時国会で政府改正案が通りまして、当時国立癩研究所を二十九年度から置かなければならないということはもうきまつて
おるわけです。それが今日までどこに置くかということもきまらんというのは、どういうわけですか。何か場所を選定するのに非常にむづかしい点でもあるので
すか。二十九年慶の予算はすでに取つてあるわけだし、これは楠本さんには所管が違うかも知れませんが、同じ管内の問題ですから、かまわずに一つ倒所見を聞
かして頂きたいと思います。
○政府委員(楠本正康君) これはやはり、研究所の設置はいろいろなところを総合的に考えまして、立派な成果が上ることを考えなければなら
ないと存しますので、従つていろいろな面から研究を要する点があろうと存じます。従いまして、恐らくこれまでいろんな点を考慮しつつ比較検討をいたしてお
るものとかように考えている次第であります。
○高野一夫君 この癩研究所の設置については東京都のほうから、九州各地非常に猛烈な陳情運動があるのです。そういう点について厚生省が動かされて或いは迷つてきめられないのか、それとも厚生省独自の立場に調査が進まないのかどうか、その辺の事情も承わつておきたいと存じます。
○政府委員(楠本正康君) 今医務局次長も来られると思いますが、私どもはまだいろいろ癩研究所の目的を達するために、いろんな点から総合的に考えて、決定するということで、まだ資料が十分でない。そのために結論を得ないように聞いております。
○高野一夫君 医務局次長が見えましたから、あなたからそれでは一つお願いいたします。
○説明員(高田浩運君) ちよつと遅れまして申訳ございません。癩の研究所を二十九年度から作るということになりましたのは誠に御同慶の至
りに堪えないと存じております。癩の研究というのは一通の、ほかの部門の研究と相当異なつた性格を持つておるものと考えますし、従いまして、今後の癩の研
究についての行き方、運営の仕方、そういつたものについて、十分できるというような見通しも付け、研究もした上で、場所の問題等も決定をして行くというこ
とがむしろ妥当な行き方ではないか、かような考え方をいたしておるのでございます。申上げるまでもなく、癩に関する研究は、癩菌の培養等もまだできてない
状況でございますし、そういう基礎的な面、或いは治療の面につきましても、今後いろいろなさなければならない点が多いことは勿論でごいます。更に進んでさ
ような社会的な面も相当考えて行かなければならない点もあろうかと思うのでございますが、一面において、これらの癩に関する研究は、独立した研究というよ
りも、いろんなほかの研究部門と非常に密接な関連を持つておりますし、同時に研究所というのが、率直に申上げまして、僅かの人数でやらなければならない、
そういう恰好になつております関係上、これらの小数の人間を以つて癩の研究という非常に重大な問題に取組んで、その成果を将来に期待されておる。そういう
関係からして、どうしたならばそれだけの人数で最大の効果を挙げることができるか、単的に申上げますならば、一つの建物を作つて、そこにある程度の人間と
機械設備を備えて、そこオンリーで研究を進めて行くということには、見通しとして参らんのじやないか、それだけの人数を例えて申上げますれば、一つのケル
ンとして、どういうふうに研究を将来に拡散をして行くか或いは集中をして行くかというようなことを、よほど考えて任組まなければ、研究所を設立いたしまし
た目的を達することができないのじやないかというような点もありますし、一面におきましては、癩に関する研究はそれぞれの地理的な条件等もありまして、各
地で或る程度行われておるし、これを十分尊重し、且つ延ばして行くということもこれも考えなければならない。それから癩の将来における分布という問題も勿
論考えなければなりませんし、それらの問題を実は慎重に討検して終局の結論を出さなければならんというふうに考えておる次第でございまして、一、二年で早
急に結論が出るというような生まやさしいものでありませんだけに、将来の問題を考えて慎重に検討し決定をいたしたいと考えておる次第でございます。なおこ
の癩研究所の発足は予算の関係から申上げますれば、半年分の経営費ということになつております関係上、まだ相当時間的な余裕もあるとも言えますので、その
辺のところを勘案をして目下検討をいたしておる次第であります。
○高野一夫君 この国立癩研究所はこの委員会において修正してくつつけた問題ですが、これはさまつてからすでに半年以上経つておつて、いろ
んな事情もございましようけれども、まだ杏としていろいろな構想がまとまらんということは、少し遅過ぎるのじやないかと思います。この点については私は次
回に詳しく御質問申上げたいと思います。今日はこれで保留いたします。
○委員長(上條愛一君) それでは本日の本案に対する質疑はこの程度にいたしまして次回に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないものと認めます。
―――――――――――――
○委員長(上條愛一君) 次に、消費生活協同組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。
ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕
○委員長(上條愛一君) 速記を始めて。それではこれはまだあれですかり、次回に質疑を廻したいと思いますが、よろしうございましようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないものと認めます。
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○委員長(上條愛一君) この際お諮りいたします。社会保障制度に関する調査の一環として、覚醒剤取締法改正に関する調査のための小委員会を設け、小委員の数、氏名等は委員長の指名に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないものと認めまして、覚醒剤取締りに関する小委員会を設けることに決定いたしました。その数、小委員の氏名等は次回に指名いたしたいと存じます。
それでは本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十一分散会