第019回国会 厚生委員会 第30号
昭和二十九年四月十九日(月曜日)
   午後一時四十三分開会
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  委員の異動
本日委員藤原道子君辞任につき、その
補欠として竹中勝男君を議長において
指名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     上條 愛一君
   理事
           大谷 瑩潤君
           湯山  勇君
   委員
           高野 一夫君
           谷口弥三郎君
           横山 フク君
           廣瀬 久忠君
           竹中 勝男君
           有馬 英二君
  国務大臣
   厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
  政府委員
   厚生省公衆衛生
  局環境衛生部長  楠本 正康君
   厚生省医務局長 曾田 長宗君
   厚生省社会局長 安田  巖君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       草間 弘司君
   常任委員会専門
   員       多田 仁己君
  衆議院事務局側
   常任委員会専門
   員       川井 章知君
  説明員
   厚生大臣官房人
   事課長     畠中 順一君
   厚生省公衆衛生
  局結核予防課長  聖成  稔君
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  本日の会議に付した事件
○狂犬病予防法の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○らい予防法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○消費生活協同組合法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○社会保障制度に関する調査の件
 (厚生省の定員に関する件)
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○委員長(上條愛一君) 只今より厚生委員会を開会いたします。
 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。
○湯山勇君 この前にお尋ねしておつたときの御答弁について、なお疑義がございますのでお尋ね申上げたいと思います。それは例の狩獵法の「ノイヌ」、「ノネコ」ですね、これはどういうふうになつているか、もう一度御説明頂きたいと思います。
○政府委員(楠本正康君) この「ノイヌ」「ノネコ」いずれも野犬その他の犬を意味いたしておりませんし、又猫とも全然別なもので、種類の違うことを意味しております。従つて狩猟法は犬及び猫には適用がないものと考えなければなりません。
○湯山勇君 ところがこれは林野庁長官から各府県知事に出ております通牒によりますとそういうふうにはなつていないのです。これは愛知県知 事からの問合せに対して昭和二十五年十二月二十八日林野第一万六千九百九十九号を以て回答したのには、そういうふうにはなつていない。でこの「第一条のノ イヌとは山野に常棲する犬をいう市街地村落に棲息する所謂野良犬はこの範疇には入らないものと解せられたい」と、こういうふうになつておりまして、結局こ の畜犬が山に入つたもの、種類としては同じものを指しているわけです。林野庁のほうの見解としては……。そうすると種類が違うというのじやなくて、ただそ の棲息の場所が違つただけであるのです。そうなりますと薬殺の場合に非常に問題になつて来るのじやないか、こういうふうに考えるのですが。
○政府委員(楠本正康君) 私この「ノイヌ」の見解を、動物園の古賀園長に実は尋ねたわけであります。古賀園長はこれは全然もう種類が違う ものである。そしてすでに日本には現在はこの「ノイヌ」というものは残念ながらいなくなつたということを伺つておりますが、なお併し只今御指摘のような林 野庁の見解等については、更にその点を質してみたい考えでございますが、なお実際に薬殺するというような場合に、山野の、人里離れた山野等において薬殺す ることはこれは考えられませんので、実際に人畜に傷害を与える犬を、つまり薬殺する意味であります。殊に現に狂犬が出て、真に緊急上止むを得ない場合に限 つておりますので、さような観点からいたしましても山野に適用されることはあるまいと、かように考えておる次第であります。
○湯山勇君 今の見解は動物園長のお話だつたということですけれども、これは園長も恐らく若干勘違いしておられると思います。と思しますの は、学名じやなくて和名ですね、日本の名前というのは、いろいろな文献見たのですけれども、やはり「ノイヌ」という名前はありません。「山の犬」となつて いるのはあります。「山犬」若しくは「山の犬」、まあですから「ノイヌ」というのは、やはり林野庁の言う見解に立つたほうが、この法の適用上から言つても 間違いないと思います。そうでなければ今部長の言われた処置もできなくなると思いますので……。
 なお都市の中には、都市の真ん中に山がある、例えば私の郷里の松山なんかは市の真中に山があります。そうしてその山の中に相当多数の畜犬の野性化したも のがいるのです。そうしていわゆる野良犬がそれに入り込むということもたくさんございまして、このことは、やはり林野庁との間にはつきりした見解統一をな さるのと、そうして今のように山に入ることはないというけれども、事実そういうこともあるということも併せて一つ事施上においては御検討頂きたいと思いま す。
 それからもう一点ですね、この狂犬病予防法によれば「第四条等四項」、二十二条のこの登録料の問題で、この前に何か登録料を他へ廻す。東京、神奈川のよ うな所では足りないが、ほかの所では他へ流用するというような意味の御答弁があつたかと思うのですが、これは三百円以内の登録料というものは、すべてこの 目的達成のために用いなければならないと法律にはなつていると思うのです。そうすると狂犬病の予防以外にはこの費用は使えないのではないかと思うのです が、これは如何でしようか。
○政府委員(楠本正康君) この点は全く御指摘のように登録手数料の収入というものは、挙げて狂犬病予防法のために使いまするのが法の建前 でございます。但し先日、狂犬が殆んど出ていない地方におきましては、ときたま地方も経費に困る点もありますものですから、さようなときにおきましては、 場合によつて他のほうに流用されることもあるという意味のことを申上げたわけでございます。
○湯山勇君 それは他のほうへ振向けるということを厚生省としては認めておられるわけですか。或いはそういうことをしちやいけないというように指示しておられるか。
○政府委員(楠本正康君) これは法律の示しますように、私どもといたしましては極力地方に対しましてこれらの経費は挙げて狂犬病予防のために使うように指導をいたしております。
○湯山勇君 そういたしますと、狂犬病の発生の虞れのない地区等におきましては、これはそういう予防の措置を講ずる必要のない地区において は登録料というものを取らなくていい、実際にそのために要する手数料は別として、それ以外のものは法律によつても三百円以内ということですから、実際の実 費として最低額で以て現在取つておる。大体どこも三百円取つておると思うんですが、そういうことはどうも不都合ではないかと思うんですが、如何でしよう か。
○政府委員(楠本正康君) この点は誠に御指摘の通りでございまして、私どもはかねがね他に仮にも転用するような余裕があるならば、当然御指摘のようにこれは登録手数料を減額すべきものでありまして、この点も府県に強く要望いたしておる次第であります。
○湯山勇君 最後に今の御趣旨が御答弁では非常にはつきりしておりますけれども、実際はもう殆んど違反しておるのが大部分の県であると思うので、重ねてこれをよく守るように御措置を願いたいと思います。
○廣瀬久忠君 今の登録料というものは全国でどのくらい取つておりますか。
○政府委員(楠本正康君) 現在全国で登録犬は最近逐次登録が徹底いたしておりますので、最近は約二百万頭と概算をいたしております。なお手数料は約三百円でございますので、おおむね五、六億ほどの経費が狂犬病予防のために使われておるわけでございます。
○廣瀬久忠君 その狂犬病予防のためにということの内訳は大体予防注射の経費ということですかね、如何ですか。
○政府委員(楠本正康君) これは狂犬病予防事業、広く考えた狂犬病予防事業という意味でございますが、ただすでに関東地方のように狂犬病 の発生いたしておりまする県におきましてはこれは極めて経費が足りませんので、かような場合には極めて厳格に解釈しておるようであります。ところが逆に狂 犬病が殆んど出ていない地方等におきましては、比較的幅を以て解釈をいたしておるようであります。
○廣瀬久忠君 私が一つ伺いたいのは、人間が狂犬に噛まれた場合の治療の注射ですね、これはいつか説明を伺つたのですが、大体非常によくなつてはいるようですが、まだ完全ではないというように聞いておりますが、どんな実情なんでしようか。
○政府委員(楠本正康君) 現在私どもが国の基準として決定いたしておりまするのはカルボールワクチンであります。これは先日も証人が申さ れましたように、約百五、六十名について一名の被害者が出ております。又一方私どもはすでに各国の例にならいまして、逐次ワクチンの改正を図つております が、なかなか思うに任せません。これは何も日本だけの例でなく、世界各国もなかなかこれは困難な問題のように聞いております。なお最近カルボールを使いま する代りに紫外線照射ワクチンができております。このほうは若干被害が、副作用は少いようでありますが、併しこのほうはまだ試験した数字も極めて少うござ いますし、先日これ又証人のお話になりましたように、必ずしも最後的な決定はし得られないという実情でございます。なお世界各国におきましてもこの紫外線 照射ワクチンについてはまだ議論が残つているわけでございます。そこで私どもといたしましては、やはり国で定めた基準といたしましては、現在のところ若干 その副作用はありますが、止むを得ずカルボールワクチンを使用いたしているわけであります。
○廣瀬久忠君 このワクチンなり或いは治療薬なりについて政府自身が研究をいたしているのですか。或いは全然これは民間の任意に任してあるものなのでしようか。
○政府委員(楠本正康君) 政府の予防衛生研究所におきましては、公衆衛生研究の立場からこの問題をかねて研究をいたしております。なお伝染病研究所その他各地の研究機関でもこの問題は研究されているわけであります。
○廣瀬久忠君 それからもう一つお伺いしたいのです。現在狂犬病予防のために働いている職員等の犠牲者というようなものは相当数あるものでしようか。
○政府委員(楠本正康君) これも御指摘のように東京都の例をとりましても、東京都の狂犬病予防員が狂犬を命を的に捕ろうとしたために、つ い狂犬に咬まれまして、その結果注射をしてそのうち二名が副作用のために気が違つて参りまして、目下松沢病院に入院をいたしております。かように狂犬病病 予防作業は都民のためにも命を的にして闘つていると言うても過言ではなかろうかと存じます。
○廣瀬久忠君 私は質問ではありませんがやはりこの狂犬に咬まれた一般人並びにその職員等に対する被害の実情を見ますると、如何にもお気の 毒なことであり、これが非常にやはり公安を書する、若しも薬が非常に発達して必ずなおる。副作用がないのだということになると、非常に安定すると思うので すが、政府においてこの治療方策についてなお一段と一つ御研究を願つて、一つとして副作用によつて事故のおきないように最善の努力をいたして頂きたいと思 います。
○高野一夫君 これは私欠席したときにすでに質問が出たかも知れませんが、この追跡中の犬を捕獲しようとして人の家に入るには、「合理的に必要と判断される限度において」というのは大体どういうことになりますか。
○政府委員(楠本正康君) これは家族に頼みまして入つた屋敷内から追い出してもらうとか、或いは棒でも持つて行つて塀の外へ追い出せるというような場合には、入つてならんことに考えております。どうしても入らなければならん場合を合理的だと考えたわけであります。
○高野一夫君 これは私は実際にこういうときにたびたびぶつかつておるのでお伺いするのですが、人の家へ逃込むのですね。ところがそれは石 の塀でもありまして取囲まれるのならいいんだけれども、どこからでも、こつちから入つて向うのほうの庭の隅から逃げられるというような場合に、その屋敷に 入る、人の家へ入る場合に協力してくれないとなかなか捕らないのです。そういうような場合に一々家人に尋ねて、そして何とかして出してくれと言つている間 に犬はいなくなつてしまう。だから一々家人に言わなくても事後承認でどんどんそこに入つて差支えないという解釈にはできませんか。
○政府委員(楠本正康君) この点は私ども実務にたずさわつておりますものには誠に有難いお言葉なんですが、併しながら実際に国民生活の立 場から考えますと、やはり正しい仕事とはいえ、犬取り、まあ捕獲のための予防員に立入られるようなことは余りいいことでもありませんので、私どもといたし ましてはやはりさような点を考慮いたしまして、真に止むを得ない場合に限つて、而も承諾を求めて立入るというふうに絞つて考えておるわけでございます。併 しまあこれはいろいろ行過ぎその他を防ぐ必要もありますので、かような措置をとつておる次第であります。
○高野一夫君 これはまあそういうような御配慮は誠に結構だと思うけれども、これではなかなか捕りません、実際問題として……。だからこれ をもう少し厳格に考えて、皆が協力してくれるようなふうに仕向ける何か啓蒙運動でもやつて頂かなければ、やはり一々遠慮して入れないというので、逃げちや うというようなことでは、これは実際問題としてむずかしいと思うのですがね。どうせ人の家へ逃込むのですから、この点は十分一つ何とか御配慮を願いたいと 思います。
○委員長(上條愛一君) 他に御発言もないようでございますから質疑は尽きたものと認めて差支えございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見をお述べ願います。
○大谷瑩潤君 私は繋留されていない大で薬で殺すということに対しまして、随分世間でも輿論になつておりますし、この委員会でもいろいろ御 意見あつたようでありますが、時によりますと、繋留されなかつた犬でも飼犬であつて非常にその家では大事にしておられた犬が絞殺されたというようなこと、 又薬殺のために死亡いたしますときに、非常に残酷な有様で息を引取るというような事情も、我々人間として見るに忍びないというようなことがたびたびあつた ようであります。つきましては、本案に左の附帯決議を附する動議を提出いたしたいと存じます。
   狂犬病予防法の一部を改正する法律案に関する附帯決議案
 野犬の薬殺については、狂犬病予防のため緊急止むを得ず、且つ他に代るべき捕獲方法のない場合に限り、これを実施するものとする。而してこれが薬殺の実 施については、場所及び日時を指定し、他に不測の災害を及ぼさざるよう周知徹底せしめると共に、犠牲動物の苦痛を軽減し、社会人心に与える影響を顧慮して 慎重に措置すべきことを要望する。以上の通りであります。
○湯山勇君 私は只今の大谷委員の御提案に賛成をいたします。なお、この附帯決議案の中の周知徹底という項目につきましては、これの対象に なるものは犬でございますから、そういう点、並びにこれに対しては子供のいたずらもあるだらうし、又子供が誤つてそういうものをどうこうするという問題も ありますので、従来のような周知徹底という概念と違つて、実質的に周知徹底するということを特に御確認願つておきたいということをも要望いたしたいと思い ます。
○委員長(上條愛一君) 大谷委員の附帯決議は成立いたしました。
 他に御発言はございませんか……。別に御発言もないようでございますから、討論は終局したものと認めて差支えございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより採決いたします。衆議院送付の案について御賛成の方は挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(上條愛一君) 全会一致でございます。
 次に、大谷委員提出の附帯決議に御賛成の方は挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(上條愛一君) 全会一致でございます。よつて本案は附帯決議を附して可決いたすことにいたします。
 それから委員長から議院に提出する報告書には、多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
  多数意見者署名
    大谷 瑩潤  高野 一夫
    谷口弥三郎  廣瀬久忠
    湯山  勇  有馬 英二
    竹中 勝男  横山 フク
○委員長(上條愛一君) 署名洩れはございませんか……。署名洩れないと認めます。
 なお、本会議における委員長の口頭報告については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔(異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。
○委員長(上條愛一君) 次に、らい予防法の一部を改正する法律案を議題と
 いたします。御質疑を願います。
○高野一夫君 私は先週のこの問題の質疑のときに国立癩研究所のことについて政府当局のほうに質疑を申上げたのですが、なお十分でなかつた ので大臣に伺いたいと思いますが、国立癩研究所の設置を昨年この委員会において決定をいたしましてから相当の時日が経つておるわけでありますが、まだ癩研 究所の設置について何ら具体的にきまつていないというような局長のお話でございましたが、これはいろいろ各地から陳情がございまして、東大を中心として東 京に設立したい、或いは九大を中心にして学者連中が熊本こそ好適の地であるというので各地から陳情もございまするししておるのですが、我々としては研究、 文化、教育の中心地は東京だけでなく地方に分散してそれぞれ特色を生かすことが本当に研究機関、教育機関を活かすゆえんだと考えてこの意見も先般申上げた ことがあるわけですが、それはそれといたしまして、この国立癩研究所はいつ頃場所なり、或いは規模なり、そのほか具体的に設立又運営の運びになるものであ りましようか。大よその大臣の御見解を伺つておきたい。
○国務大臣(草葉隆圓君) これは予算関係もありまするが、予算は只今六カ月分を二十九年度では計上いたしております。そういたしますと、少くとも後半までには決定いたさなければならないと存じております。
○谷口弥三郎君 私から二、三お尋ねしたいと思います。この癩は疫学的に申しましても、寒いところからだんだん暑いところに残つて行くとい うことが言われておりますので、我が日本におきましても、現在は九州においては総数の三分の一ぐらいの患者が九州に来ているように思いますのですが、現在 我が国における十カ所ほどの国立の癩療養所並びに二、三の私立の療養所におきましての入院患者はどの程度になつておりますか。これは大臣でなくてもほかの 方でも結構です。
○政府委員(楠本正康君) 只今医務局長がすぐに参りますから暫らく一つ……。
○谷口弥三郎君 それでは医務局長が来られてから二三続いてお話を聞きたいと思いますが、先刻高野委員からもお聞きになりましたので関連し てお尋ねしたいのですが、実は二、三年前に癩の刑務所ができるということになりました場合に、癩の刑務所につきましてそれを九州の恵楓園のごときは、九州 の恵楓園に置いたらよかろうという話が出ました場合に、全患者は非常に反対いたしました。人段しの癩患者とか、喧嘩ばかりするような癩患者を自分の軒下に 入れられることは絶対反対である。刑務所を作るなら全国の療養所にお作りになるか、或いはいろいろと御便宜であろうから中央に置いてもらいたいということ をしきりと言いますので、その恵楓園の園長が参りまして、是非一つ刑務所はほかにしてもらいたいというお願いをいたしました場合に、厚生省の当局としてお つしやられますのには、刑務所は全国に一カ所しか作らんのである。従つて各療養所に作るわけには行かん。殊に癩病は非文明病と言われておるのであるから、 日本の体面上から言うても、東京みたいなところに癩のそういうような刑務所を置いたり、或いは癩の療養所とかいうのを置くことは実は好まんのであつて、東 京附近にある癩療養所は次第によそに持つて行きたいとまで思うておるのである。若し癩の研究所などができる機会があつたら、今度は刑務所の設置に賛成をし てもらえれば、その場合には大いに考慮するということを言われたというので、その患者に対しまして非常に納得に努めたようでございます。丁度私は第五国会 から十三国会ぐらいまではこの参議院の厚生委員会における癩の小委員長をいたしておりました関係で、昭和二十六年十一月十八日を以て国立癩療養所菊地恵楓 園の患者総代増重文氏というのからこういうような陳情書がその当時参つたのでございます。それは全国に一万五千からの患者がいるが、これらの全体の希望 は、国立の癩研究所を設置してもらうということが我々のすべての希望である。ところが今回刑務所を自分のほうの恵楓園に置いてくれということであるが、将 来癩の研究所を我々のところに置いてもらえるなら、それなら、大いに苦しいけれどもこらえてそれに賛成をしたいというようなことを言つて参つたのでござい ます。従つて当参議院内における癩の小委員会におきましても、非常にこの問題について、或いは各方面の研究所又はこの癩に関しまして特別の権威者などに来 てもらつていろいろと研究をいたした結果、やはり癩は先刻も申しましたような、将来は日本の南のほうに残るのであるから、又従つてそのために恵楓園が最も 大きい療養所としてあるのであるから、やはり恵楓園に置くべきものであろうというような大体の話ができた。なお我々のその当時の委員会におきまして恵楓園 がよかろうと言うた条項につきましては、又あとで申上げてみたいと思いますが、大臣におかれましては、どうせ今度は癩のいよいよ国立の研究所ができるとい うことになつておりますので、癩の患者並びに恵楓園の園長などに厚生省がそういうようなふうに言つておつたやつを、これをその当時ほんの方便的に患者をな だめるために言うたことということになれば、これは非常なあとで又問題が起りはせんかと思うのですが、大臣におかれましてはどういうようなふうにお考えで ございましようか、その点を……。
○国務大臣(草葉隆圓君) 只今いろいろ過去のいきさつを拝承いたしまして、そういう点につきましては十分一つ検討してみたいと存じております。
○谷口弥三郎君 次に医務局長見えたようですから、医務局長にお伺いしたいと思いますが、この癩の患者は現在文明諸国には殆んどなくなつて しまいまして、いわゆる非文明的とでも言われるような例えばアフリカとかインドとか或いは中共とか南米とか日本という方面に癩の患者が現在まだ残つておる ようでございますが、どういうふうな程度に残つておるのでございましようか、そういうような点をお知らせ願いたい。
○政府委員(曾田長宗君) 大体の数字で申上げますと、詳しい数字はこの性質上なかなかつかみにくいかと思うのでありますが、この世界各国 殊にWHO等が集めました資料というものに基いて見ますと、大体世界にほぼ三百万ぐらいの癩患者がおるようであるというふうに言われております。で、勿論 このうちにも推定が入つておると思いますけれども、この三百万というものはかなり確実なものと考えられるのでありまして、さようにとるといたしますれば、 恐らく実際には更にその倍ぐらいもおるのではないか、よく検査をいたしますればおるのではないかということさえ想像されるのであります。そのうち最も数の 多く上つておりますのは、いわゆる東南アジア地区でありまして、インド、ビルマ、それからマレー、インドネシア、というような方面でございまして、約二百 二十万ばかりという数字が出ております。それからそれに次いではアフリカで四十万余りということになつております。それからそれに続きましてはソビエト及 びその近隣というバルカン半島等のソ連区域というようなものが入つておると思うのですが、これは十五万というような数字が一応出ております。それからオー ストラリア及び南洋諸島と申しますか、その周辺に約一万七千というようなことが出ております。それからなお、南北アメリカには六万五千くらいということに なつておりまして、この日本の近隣におきましては、朝鮮がこの数字によりますと三万五千という数字になつております。それから中共地域は、これはもうなお 明確でないのでありますけれども、恐らく百万に近いものがあるんじやないかというようなこともいわれております。それから台湾は大体二、三千というような ことになつております。日本は御承知のように大体一万五千というふうに推定されておるのでございます。大体今日においての流行の状況はおおむね今申上げた ようなことではないかというふうに承知しております。
○谷口弥三郎君 先刻医務局長の見えておらんときにお伺いしたいのですが、日本の今の十カ所の癩療養所並びに私立の療養所にはどのくらい入つておりますか。
○政府委員(曾田長宗君) 正確な数字といたしましては昨年末の数字がございます。国立に当時九千九百十人おりました。それから丁度その頃 日本の統治下に還つて参りました奄美大島に和光園というのがございます。これが定床三百でございますけれども、二百九十八人というのでございまして、これ はまあ中へ入れるべきか入れないほうがよろしいか疑問でございますが、これだけおります。そのほかに法人立の民間の療養所に二百三十一名ということになつ ておりまして、全体で奄美の和光園を含めまして一万四百三十九というのが収容いたしております患者の数ということになつております。
○谷口弥三郎君 続いてちよつとお伺いしたいと思いますが、癩の研究所は、まあ私ども知つておる範囲でも、無論病気もないせいでありましよ うが、ロンドンとか、パリとか、ベルリンとか、或いはワシントンとかいうような文明国の首都には全然ないということでありますが、今、現在世界のうちで癩 の研究所を開設しておる所はどこにありますか。
○政府委員(曾田長宗君) 国立の癩研究所というものを設けております国は只今のところ承知いたしておりません。
○谷口弥三郎君 国立でなくてもよろしうございますが、ほかに研究所は何かありますか。
○政府委員(曾田長宗君) 例えばフイリピンでございますとかのような所で、大きな療養所のございます所に相当完備した研究施設があるということは承知しておりますけれども、それが特に研究所という銘を打つているかどうか、その点については私もよく存じておりません。
○谷口弥三郎君 国際癩学会というのが開かれておることは御承知の通りでありますが、これは五年ごとに開かれますので、十一、二年前にエジ プトのカイロに開かれ、続いてキユーバのハバナ、昨年はスペインのマドリツド、次はインドで開くという順序になつておりますが、前に来ましたいわゆる癩学 者というのはどこ辺からどのくらい来ておつたか、それを一つおわかりならばお知らせ願いたい。
○政府委員(曾田長宗君) 今度のと申しますのは昨年でありますが、昨年の会議に出席されました東大の北村教授からの話でございますが、非 常にほうぼうから集まつて見えたということでございまして、勿論開催国でございますからスペインが一番多くて、それから南米のほうからアルゼンチン、ブラ ジル等、これはまあいろいろ経費の関係もあるかも知れませんですが、相当にたくさん参加者があつた。又土地の関係からヨーロツパのドイツ、フランスという ような所からも十数名の参加者があつたというようなことでございまして、そのほか参加国が四十六カ国、参加者二百八十名というような状況で、かなり広範囲 に亘つて参加者があつたというふうに聞いております。
○谷口弥三郎君 いま一つお伺いしたいのでありますが、癩の癩菌は御承知のように未だに純粋培養ができんくらいの程度でありますので、癩の 研究をしようと思えば、どうしても癩の療養所内に研究所がなければならん、或いは療養所に極く接近した場所でなければならんということは殆んどすべての人 が言つているようでございますが、従つて今回いよいよいよお作りになる、癩の国立研究所をお設置になる場合には、そういう点も十分に無論お考えの中に入れ られまして、そうしてやはり癩の研究所は、いわゆる療養所内又はその附近に是非置くようにして頂きたい、大いに御考慮願いたいと思います。なお、その点に つきまして一、二私の、これは質問よりか希望の問題でありますが、先刻も申しましたように、恵楓園においては患者がそれだけひどく熱望した点もあります し、又やはり実際に申しますと、あそこには朝鮮などからの密入国者もやはりあそこに入れてしまつておるというふうなことで、すべてのいわゆる犯罪患者、或 いは密入国者というのまでも入れておるところのものに対して、前に申しましたような方便的にやられたというようなことが絶対にないように、一つ大いに御考 慮願いたいと思つております。
○竹中勝男君 谷口委員のに関連したことと思いますが、或いは前に申されたかと思いますけれども、癩の治療或いは撲滅に対する政策といいま すか、国の政策という点について、ここ十年或いは二十年前から今日までにどういうように癩患者が減つておるか、或いは伝染がどういう状態におかれておるか という点について何か御報告がありましたでしようか、なかつたら私はお伺いしたいと思います。
○政府委員(曾田長宗君) 先ほども申上げましたように、癩患者の的確の数というものをつかみますことが非常にむずかしいのでございます が、大体都道府県におきまして、いろいろ患者の状況を調べるとか又ときどき検診をいたしますというようなことから、各都道府県における現在患者、又収容所 に収容されております患者の数というようなものを合算いたしまして推計したのが時々発表されて記録に残つております。今日残つております数字としまして は、明治三十七年に患者が三万三百九十三、当時の人口に比較いたしまして、人口一〇〇〇に対して〇・六四三というような数字が出ております。その後数年、 四、五年ごとぐらいな数字が記録されておるのであります。例えば明治三十九年には二万四千四百八人、大正八年は万六千二百六十一、それから大正十四年が一 万五千三百五十一、昭和五年が一万四千二百六十一、昭和十年が一万五千百九十三、それから昭和十五年が一万五千七百三十六、人口対比としましては明治三十 九年が〇・五〇四、次いで〇・二九二、次が〇・二五七、次が〇・二二一、次が〇・二一九、昭和十五年、戦争前の数字といたしましては〇・二一六という数字 が最低になつておつたのであります。それが戦後におきましては大体一万五千というふうに推定されておりますので、今日の人口の比率ということにいたします ると〇・一六七というくらいなことになつて参ります。如何ような、どの政策がこの効果を挙げたかというような分析も困難でありますし、又減少いたしました ことは、これは広く日本の文化がだんだんと進んで参つたというようなことにもよるのかも知れませんが、一応順調に減つて参つたという数字は出ております。
○竹中勝男君 これは非常に調査が困難であろうと思うのですが、まあ順調に減つておると言えば減つておるとも言えるのですけれども、三十七 年から三十九と非常に減つておる。大正年間には相当減つておるのですけれも、人口比率の上から減つておると言えるわけです。絶対数は減つていない。即ち大 正十四年から今日まで、患者数というものは減つてない、人口比率からすりや減つておりますけれども……。だから順調に癩撲滅政策というものが進展しておる という数字上の基礎というものは私は疑問じやないかと思いますが、ただそれは、例えば現在でも五千人の癩患者というものは療養所以外にいるわけになります が、そういう人たちが癩菌を伝染さしておるという事実はどういうように考えられるのですか。
○政府委員(曾田長宗君) 今お話がございましたように、率としては多少減つておるかも知らんけれども、余り絶対値においては減つておらな いというようなお話でございますが、私はこの絶対値におきましても決して減つていないとは言えないのじやないかというふうに思います。と申しますのは以前 はこれも、結核の場合でもさようだと思うのでございますけれども、この診断の的確さと申しますか、検査が以前のほうがどうしても粗漏でございまして、だん だん見つけ方が厳密になつて参りますので数も殖えておる。勿論これは又見つかつて収容されました患者のその後の治療にも響くかも知れませんけれども、御承 知のように最近は一万人もおります中で、百人という死亡者は出ない。八十数名というくらいのところまで減つても来ております。又患者の病状を見ましても非 常に程度が軽くなつて参つております。こういうような意味で、必ずしもこの数と申しますか、患者の状況も改善の跡が認められないとは言えないと私考えてお るのであります。併しそれにもかかわらず数千名のまだ未収容の患者がおるということにつきましては、私どもとしては、これは私よりも公衆衛生局のほうから お答えするほうがいいのかも知れませんけれども、この患者はできるだけ多く収容いたしたいというふうに考えてはおりますけれども、なかなか十分にし尽さな い。併しながらこの未収容の患者は概して言いますならば、収容患者よりは軽症の者が多い。勿論例外はございます。こういうような意味でそのうち感染の危険 のあるという者は半分か三分の一かというようなことではないかと思います。いずれにしても、さようなものが感染源となりまして、これも一遍や二遍の危険暴 露では感染いたしませんかも知れないのでありますが、これが長く続きますと、そこから患者が出て来る。今日まで年々届出のありますいわゆる新発見患者であ ります。この届出もなかなか完全さを吟味いたしますというと、いろいろ検討の余地はございますが、例えば昭和二十三年には七百十二人、それから二十四年に は七百七十八人、それから二十五年には六百四人、それから二十六年には四百八十五人、それから二十七年には三百二十六人、二十八年の分ももうまとまつてお るのでありますけれども、今ここに持つて参りませんでしたが、こういうような工合に二十四年が最高でございますが、以後逐次この新らしい発見患者の数も一 応は、減つて参つてはおりますので、大体蔓延の状況としましては改善の跡は見えるというふうに思つております、油断はできないと思いますけれども……。
○竹中勝男君 こういう未収容の患者が未収容のままで減りつつあつても、五千人、少くともそういう者が実際未収容であるということに対する 対策は、収容対策といいますか、或いは収容対策のどういうところに隘路というか、困難があるのですか。療養所が足りないというのか、或いは生活問題がそれ に関係するからして収容ができないというのですか、或いは研究所ができれば、それがこの未収容患者に対しては、どういうような結果になつて来るわけです か。
○説明員(聖成稔君) 現在、先ほどお話がございましたように約五千人未収容の癩患者がおるわけでありますが、これをことごとく療養所へ入 つて頂くということが癩対策の根本の問題でございますが、現在医務局所管の国立のベツトのほうから言いますと、約二千床の空床があるのであります。従つ て、現在の在野の患者が全部入つてしまうには十分ではございませんけれども、なお二千名が入れるという状態にある。これを早く少くとも現在空床になつてお りますだけでも、早く入れたいというように私ども考えておるわけでございますが、ただ入れ方といたしましては、昨年制定になりました新らしい癩予防法にも はつきりございますように、長期に亘ることでございますから、これを強権を以て直ちに入れてしまうということは好ましくない。従つて、十分に相手に納得を させまして、そうして連れて行つて、収容するという方法をとつておるわけでございます。いわゆる勧奨によつて入所させるということを建前にいたしておりま して、併しどうしてもそれで成功しない場合には、止むを得ず入所するように都道府県知事の命令を発する、或いは又、最悪の場合には、どうしても強制的な収 容の方法を考慮しなければならないというような考え方になつておるわけでございますが、実際問題といたしましては、全部これを話合い、納得によつて入れた い、こういう方針をとつておるのでございます。
 そこでその収容、なせ入らないか、ベツトは若干空いておる、当然入るべき患者がおるのに、なせそこがうまく行がないかという問題なんでありますが、大体 未収容の患者でまだ入りません理由は、私どもの調査によりますと、大体三つくらいの理由に分けられるのでありまして、一つはやはり経済上の問題で、自分が 行つてしまうと、あとの家族が生活に困るからという理由によるものが一つであります。もう一つは、やはり長期に亘りまして妻子、或いはその他の家族と別れ ることが辛いという、その何といいますかそういう感情の上から、家を離れて行くに忍びないという点で、どうしても行くのを肯んじないというのが第二の理 由、なおもう一つの理由といたしましては、世間で、あそこの家には癩患者がいるというような頻りに噂が立つておる。併し自分が頑張つておれば、はつきりと 癩でないと頑張つておればいいのですけれども、療養所に行つてしまえば、やはりいなくなるから、やつぱり癩だつた、癩が発生したのだということをそこで確 認されるということになるのを嫌いまして、ために収容に応ぜない、大体この三つに大別ができると思うのであります。その第一の家族の生活の問題、この点を 考慮いたしまして、一昨年の参議院で、附帯決議をお付け頂きましたように、患者の家族の生活援護を行うということが、今回の癩予防法の改正の第一点である わけでありますが、この措置によりまして、かなり入所の促進を図ることができるのではなかろうか、かように、又是非さようにいたしたい。あとの二点の問題 につきましては、専ら啓蒙であり、又いろいろ癩の係りの職員の努力によりまして、よく納得して、行く気になつてもらいたい、かように考えておるわけでござ います。大体そういうような状況でございます。
○竹中勝男君 研究所は元来治療法の研究に主力を注がれると思いますけれども、もつと総合的な研究もやられる。その何年後には癩を撲滅して しまうというような経済的な研究も、或いはその心理学的な研究もですね、或いは国民の輿論、それに対する輿論を作り上げるというような、例えば癩患者を非 常に恥じておつたり、いやがつたりするのに対して、輿論をやはり正当に、国民の医療とか健康上、それは当然収容所に入るべきだという輿論を作るというよう なそういう総合的な研究もやられるという研究所ですか。
○政府委員(曾田長宗君) 御指摘の通り今度できます癩の研究所は、主として治療の問題が重点となるというふうには考えるのでありますけれ ども、その治療を十分にいたしますということのためにも、患者の状況、病状を的確につかまなければならんし、又如何ような変化が体内に起つておるかという 病理的な研究というものも必要でございます。又そのことから見て参りまして癩菌それ自身に関する研究も必要になつて来る。又癩菌自身の研究或いはそれを用 いての動物実験の研究というようなものに進んで参りますれば、これは当然今度感染の様式というような、どうして癩にうつるかというようなことも明らかにな つて来ると考えられる。そういうような意味におきまして治療が、特に患者の今直截に要求しておるところではございますけれども、この研究所はそれだけでは なしに、この病気がどうやつて次から次とうつつて行くか、それを防止するためにはどういう方法をとればよいかというような予防の面もこれは当然に取上げて 参りたい。又それと同時に今のお話のございましたように、癩患者のいろいろな心情というものは、この非常に病人独特なものがございますので、その患者の心 理的な研究、心理の動きというようなものの研究、或いは患者が出ました場合に、その家族に如何ような影響を与えるかというようなこと、従つてこの患者の収 容に付添ういろいろな困難というようなものも如何に解決して行くべきであるかというような心理学的、社会学的、経済学的な、そういうような考慮もやはり払 つて行かなければならんかというふうに考える。そうしてこれらをすべて総合いたしました国の癩対策というようなもののプランも、ここで或る程度骨組を立て て行くということが望ましいと思うのでありまして、今のところではまだそう資料が十分に収集されておりませんけれども、初めから余り多くを望んでもどうか と考えられます。併しこの研究所の何と申しますか、大きい目的としてはすべてをカバーしたもので行きたい、ただ当初、本年認められました予算というような ものでは、そのうちのどの部分から着手するかということを慎重にきめて参りたいというふうに考えておるのであります。
○竹中勝男君 もう一つだけ大よそ何年くらいしたら癩患者が日本になくなるというふうな計算が立てられますか、この伝染率といいますか、今までの抵抗率といいますか、減少しつつあるものから計算しますとそういうものが立てられるものですか。
○政府委員(曾田長宗君) 大体の傾向で見ますならば、先ほどお話申上げましたように明治三十七年と申しますか、七年はたしか一九〇三年じ やないかと思つております。本年が丁度一九五四年に当るわけです。丁度五十年経つておるのじやないかと思うのであります。そういたしますれば五十年で約四 分の一程度に減少したというようなことでございますので、この傾向で今後も行くとすればという計算は割合に簡単に出て参ります。併し伝染病の状況を見ます と、同じ比率で以て年々減少して行くというものと、それから中に特別な治療方法とか、或いは予防方法が考案されますというと、そのときから急激に減る場合 もございますので、まあ私どもは更に急激に減少して来ることを希望しておるわけでございます。いずれにいたしましても、今後百年もいたしますれば、まあな いに等しい状況に行きやせんかというふうに思つております。
○竹中勝男君 有難うございました。
○有馬英二君 関連することになりますが、癩の感染のことですけれども、今のところ、そんなにたくさんの患者でないと言えるわけですが、多 いと言えば多い、少いと言えば少い、どつちにも解釈ができるかも知れませんけれども、とにかくどこの村には何の某が癩患者であるという記録が恐らくできて いるのじやないかと思うのですが、そうすれば今年はその記録以外に新らしい患者が、つまり誰々が今度は癩として発見されたということになつて、新患の発生 というものが一年に何名であるということが大体わかつているかと思うのですが、どうでしようか、そういう点は……。
○政府委員(曾田長宗君) 実はその数字に該当いたしますのが、先ほど申上げました通り新らしい患者の届出数ということなのでございますけ れども、併しまあこれを見付けることがなかなかむずかしいので、どの程度に正確かということを申上げかねる。ただ特にいつから急に詳しくなつたり又急に粗 漏になつたということもございませんので、この数が一時七百くらいでございましたのが三百くらいにまで下つて来たところを見ますと、まあ発生は逐次減少し つつあろうというふうには予想がつくと思うのでございます。
○有馬英二君 その発生された新らしい患者の年齢層というものは大体どういうようなことになりますか。
○政府委員(曾田長宗君) 今ここに細かい数字を持つて来ておりませんけれども、大体新らしい患者はやはり若い者でございます。大体十歳前後から二十歳代ぐらいまでというのが殆んど全部を占めております。その他の年齢はむしろ例外的な事例になつております。
○有馬英二君 そういたしますと新患者は十歳から二十歳までくらいの……二十歳代と申しますかに大体限定されておる。そうすると年を取つた或いは成年以上になつた年齢の人には新らしい感染はないということになりますか。
○政府委員(曾田長宗君) 決してないというわけではございませんので、かなり高齢になりまして、五十、六十を過ぎまして発病しておる者もございますが、これは若い者に比べますと格段に少くなつておるという意味でございます。
○有馬英二君 昨年らい予防法案が出ました際に、多数の癩患者が療養所から出て、そうして本院の周囲にまで押し寄せて来た。あの際の患者の 言い分と申しますか、考え方の中に、癩は大人になるとうつらないのだ、癩病というものは子供の時分にうつつてしまうので、大人になるとうつらんのだという 考えから、自分たちは出て歩いて、何と申しましようか、健康な社会を汚染して歩くのだというような考えを持つてはおるのかも知れませんが、それは大人には そう有害ではないのだ、或いは伝染の虞れはないのだ、従つて出て歩いても許さるべきであるというような観念を持つておる者があるやに私どもは聞き及んだの ですが、その際当局ではどういうようにお考えになりましたか。
○政府委員(曾田長宗君) 今申上げましたのは比較の問題でございまして、若い者に年を取りました者よりも遥かに感染率が高いということを 申上げたわけでございますが、年令の高い者に対しましても感染の事例は相当にございます。それともう一つは、この患者か外へ出まして子供だけに危険を及ぼ し、大人に危険を及ぼさないという保障かどうもできません。而もこれは直接の感染だけではなしに、やはり間接の感染ということもこれは皆無とも言い得ない のでございます。そういうような意味から、患者がやはり外で一般の人たちと共同の生活をするということは、仮に年を取つた人たちに対する感染力というもの が或る程度低いといたしましても、危険がないとは申上げかねるというふうに思います。
○有馬英二君 もう一点まあ昨年は特に頻繁でありましたが、らい予防法案が改正されるというので、非常な陳情が各療養所から参りましたが、 その際療養所から発送されておるところの書状が消毒済という判が押してあるのと判が押してないのとがあつた。恐らく判の押してなかつた未消毒のままのもの は、これは療養所の外に出て出したのではないか、或いは何らかそういうような手段によつて出したのではないかと、私どもはその当時非常に癩患者の、つまり 収容患者の考え方なり、或いはそういう処置について疑いを抱いておつたのでありますが、最近はその数は非常に減りましたけれども、未だにまだ療養所から消 毒或いは未消毒という区別なしに、何らの判も押してないのがやはりやつて来る。非常に数は減りましたけれども、やはり来るのでありますが、これは患者自身 の考え方が大変間違つておるのか、或いは昨年と同じように外に持ち出して送るというのでありましようか。つまり監視が不十分であるのか、監督がだんだん ルーズになつたというようなことを昨年は特に感じたのでありますが、今日はどういうふうな状況になつておりましようか。
○政府委員(曾田長宗君) 今の消毒の点につきましては私ども国立療養所の方針といたしましては、全部消毒をして、消毒済の判を押すという ことにいたしておるのでありますが、その判を押した書状が患者の家族等に送られますと非常にそれが目立つというようなことで、それはやめてくれというよう な患者の意向もあるので、判を押すことを差控えておるという療養所がございました。その後、成るべく判を押すほうがいいのじやないかというようなことを私 ども話しておるのでありますが、まださような意味でこの消毒済みの判を押さないところも若干あるのじやないか、併しながら判が押してないのは全部未消毒か と申しますというと、決してそういう意味でもないのでありまして、私ども大体消毒は済んでおるものと了解いたしておるのでありますが、更に療養所のほうに よく注意いたしまして、抜けることのないようにいたさせたいと思います。
○谷口弥三郎君 先刻のに関連してちよつと一言……。日本の癩患者は、先刻のお話のように三万或いは最近では一万五千と言われておるのです が、八年ほど前に出ましたアーネスト・ミユアーさんの、あのような大学者の出しました書物でマニユアル・オブ・レブロンに日本の癩患者は十万二千人ほどお る、そして日本は東洋においてはインド、中国に次いで癩病国であるというようなことを非常に宣伝されておるということは、これは日本を観光都市というふう にするという上においても、こういうようなのは一つ厚生省あたりから先刻おつしやられたような実情を少しそういう方にも知らしてあげるような方法でもとら れてできるだけ日本は今一万五千そこそこしかおらんのだということを言つて頂きたいと思うのです。従つて私は、ついででありますが、この癩の研究所なども 東京あたりみたいな中央に置くということは、これはやはり癩の宣伝に使われるわけでありまして、できるだけ癩研究所なども田舎のほうに持つて行くようにす べきものじやないか、こういうように思つておりますからして、その点お考えの上に、一方にはミユアーさんあたりに一つ御連絡をとつて頂きたい。
○廣瀬久忠君 先ほど竹中君からの御質問に対する答弁のうちに、決して私言葉尻をとらえる意味ではありませんし、又そういう意味でおつしや つたのではないと思いますが、今までの癩患者の減り方を推定すると、今後非常に長くかかる、百年という言葉も言われましたが、それで別にそういう言葉をと らえるわけではありませんが、私は長い間自分自身も厚生行政にたずさわつて参つて、癩に対する国の行政は私みずから顧みて甚だ遺憾であつたということを考 えるのであります。昨年私はらい予防法につきましていろいろ陳情を聞き、又実際の模様をもなお深く研究して見ましてそう思つたのでありますが、今までの国 の行政が予防ということには非常に力が入つておりましたが、治療ということにはどうも力の入り方が足らなかつた。これは病気自体が非常にむずかしいという ことと、それから予防に非常に力を入れ、治療に非常に力が入らなかつた、どうしたらいいかという方面に非常に力が入らなかつたというような面から、国の行 政が予防のみに力が入り過ぎたという感じを自分は持つのであります。そこで今日法を犯さず、罪を犯さないで、偶然の伝染ということで、あれだけ長い間死に 至るまで自由を拘束せられなければならん事実に直面しまして、非常に深刻な感じを私は持ちます。これは是非治療の力によつて、医学の力或いは薬学の力によ つてどうしてもこれはなおすということにしてあげなければ……、あれを自由にしてあげることができない、私は罪を犯さずしてあれだけ長い間、死に至るまで 自由の拘束を受けなければならんという制度は、どうもなかなか納得ができないように自分は思うのです。今日まで長い間日本の癩対策というものが予防には非 常に力が入つておつたが、治療に関する力が入つておらなかつた。従つて患者になおるという確信を与えることもできないし、世の中に対してもどうしても拘束 しなければということで来ておるということは、どうも非常に私どももむしろ苦しく感じられます。そこで先ほども竹中さんも、文化国家であるから長い間拘束 しておいてはならんという、全く同感であります。文化国家であろうとなかろうと、非常に自由の大拘束であつて、これを早く何とかしてやりたい。そして強制 収容しておる間というものは伝染力のある間、これだけの間は伝染力があるのだ、併しここまで行けば伝染力がないんだから自由にしてあげるのだ、何とかそこ まで持つて行かないと、これは私は厚生行政の中で重要なむずかしい問題だと思う。そうして予防に何とか力を入れて頂かなければならんのですが、今年の治療 機関の何を見ますと、甚だまだ貧弱であつて誠に残念です。是非一つこれは大臣に考えてもらいたいのです。罪を犯さずして一生自由を拘束される一万数千の人 があるのだ。これはやはり医学の力、薬学の力、即ち根本においては厚生に関する政治の力によつて、この悲惨なる事実を除去するほうに最善の努力をして頂か なければならん。先ほどの百年という言葉を聞いて胸を打たれる感じがしました。こういう言葉尻をとらえるわけではありませんが、是非一つ長いことではなく して、一刻も早く自由に解放してやりたいという熱意を以て厚生大臣はこの問題に臨んでもらいたい、これを一つお願いいたします。
○国務大臣(草葉隆圓君) 誠に私ども衷心緊張して伺う御意見と拝聴するのであります。先刻来だんだん御答弁も申上げましたように一応一万 五千の現在の、将来伝染の状態が相当ありましても、とにかく一応は一万五千の人たちを早く収容し、その収容施設におきまして十分な治療をし、又治療の方法 を研究し、而もそれが殆んど一生を通じたような病気でございますから、その収容所はもつといろいろな意味から考えた収容所にして行くという意味から、大変 大事な、そしてこの病気に罹つている立場の方々にとりましては、誠に言語に絶するお気の毒な状態であると存じます。私は従来から前の皇太后様なり或いは宗 教家、或いは識者の方々がこの病気に対しまして大変な力を注ぎ、又殊に本委員会等におきまして、昨年来からいろいろと御検討を頂き、お力添えを頂いており ます点も同様そこにあると存じます。一方から申しますと、この一方五千の方々を早くなおしてあげて、そうしてこれが一般社会に伝染しないようにするという 方法さえとりますと、割に目標ははつきりして来る治療対策が講ぜられるのではないか。今年もほかの仕事に比べますと、昨年の当委員会等の附帯決議等もあり まして、相当このほうの費用は増額いたしたつもりでございますけれども、それにいたしましても今申上げましたような、又お話のありましたような病気の性質 から考えまして、まだ不十分であると考えます。十分御意見の点を私ども今後尊重いたしまして、この病気にかかつておられる方々の心情等も十分汲みまして、 治療並びに施設に力を注いで参りたいと、かように考えます。
○高野一夫君 私は曽田医務局長に今の廣瀬委員の質問に関連して伺いたいのですが、あなたが百年かかるだろうとおつしやつたことは、医務局 長として僕は非常に軽率な意見だと思う、過去四十年間の間に三万人が一万五千人に減つた、その比率から見ましても、今後意外に医学や科学の進歩いろいろ考 えてみて、プロミンもできた、今後更にもつと優秀なやつもできるかも知れない。医術のほうももつと進歩して来るでしよう。そうするとこの過去四十年の間に 三万人が一万五千人に減つたということと、医薬の進歩ということを考え併せたならば、これが五十年で済むかも知れない、或いは三十年で病気がなおるかも知 れない。それを無視して百年もかかるであろうということは、医務局長ともあろう人が軽々におつしやることは速記にも残つておるし、国会においてこういうこ とを世間に発表されることは非常に遺憾だと思う。この点についてどうお考えになるか。医務局長はさようにどうしても百年かかるとお考えなのかどうか、これ は私は由々しき言葉だと思う。それを伺つておきたいと思います。
○政府委員(曾田長宗君) 私も今の速記録をよく調べて頂いて、若しも私の申しましたことが間違つておりましたら、或いは御訂正を願う必要 があるかと思いますが、私が申しましたのは癩がなくなるのに百年かかるとは申上げなかつたと思う。今の勢いで行ければ計算ができます。計算ができるという ことは結局五十年に四分の一、更に五十年経ちますと百年目になりますが、更に四分の一の十六分の一、だから現在一万五千人でありますならばこれは千人にな ります、というようなことが考えられると思います。私が申しましたのは併しながらこの勢いでなしに、特別な治療というものが起ればもつと急速に減つて行く し、そのことを希望する。それで先がどれくらいに将来なるかということは私はなかなかわからないのでありますが、併し百年も経てば殆んどないに等しいとこ ろに参りましよう、百年かかるとは申さないので、これはちよつと詭弁のようですけれども、百年も経てば殆んどないようになるということを申上げましたが、 言葉が悪かつたら又改めて御訂正申上げます。
○高野一夫君 私の受けた印象が違つていたら私が取消しますが、百年も経てばなきに等しいということは、あなたの直感であろうというように しか、我々は頭がぼんくらだからわかりませんよ。だからその辺のことは家族もいることだし、患者もいることだから、殊にらい予防法案の審議について神経過 敏なくらい速記録は全部調べております。だからお互いにこういう質疑応答等については注意すべきではないかと思います。
○湯山勇君 私も今の点申上げようと思つていたのですが、高野委員のほうからお話がありましたが、過去四十年なら四十年の実績でこうなつた ということで今後を推測するということは、やはり工合が悪いのじやないかと思うのです。と申しますのは、若しそういうことの計算ができるとすれば、これは 医学の進歩とか、薬学の進歩ということは別としても、何のためにらい予防法をこういうふうに改正したかということが意味がなくなつて来ると思うのです。こ の法律がこういうふうに適正に実施された場合には、こうという、一つのこの法案を審議する段階においては医務局長のほうの御見解がなくちやならないのでは ないか。そうすると、この法律を一層適正に実施するように社会がなつて行く一つの方法であるというふうに考えられますので、これはやはり医務局長のおつし やつたのは非常に用心深くおつしやいましたけれども、言葉の響きとしてはやはりそういう響きがあると思いますので、一つ御善処を願いたいと思います。
 なお、ついでにと申しまして失礼ですが、大臣にお尋ね申上げたいのですが、昨年九項目に亘る附帯決議が廣瀬小委員長の下で随分苦心をされてできたのであ りますから、今回は今大臣がお話にありましたように不十分であるが、他に比べると先ず満足しなければならないような措置がなされたということでございます が、これはなお九項目についてもこれは国会の意思でございますから、次の機会に更に順次それらの点が実現するように大臣としては御努力をして頂けるかどう か、この点はつきり一つお示し頂きたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) あの九項目の中にも、予算措置の伴わずに行けるものもあつたのでありますし、又実際行政の面に亘り、又収容施設におきましての取扱方の上におきまして、今後なし得る点もありますので、これは十分尊重して参りたいと存じております。
○湯山勇君 具体的なことを申上げますと、先般四国のほうで患者が収容されまして、何か家族の人が患者に附添つて行つた留守に、係の人がや つて来て、近所隣へこれはこうこうでこうだから消毒をするのだというようなことを宣伝しましたというか、警告を与えて消毒したというようなことも、事実か どうか、聞いております。こういうことやそれから癩という病名も随分この前に問題になつたのですが、非常に中国の古い時代の名前であつて、悪い病気であ る、どちらかと言えば前世の何と言いますか、業によつて起るというような意味を多分に持つている。新らしい観点に立つて科学的に見て行つた場合には、そう いう性格のものでないということも大体認められている。今日国民社会一般のこの病気に対する認識を新たにするという手がかりを作る意味からも、名前につい ては変えたらどうだろうかというようなことを前の十六国会のときにも申上げたのですが、こういうことについても今回の修正、改正案では何ら措置されていな いわけなので、こういう点は私どもとしては非常に不満に思います。と申しますのは、これはこうこうだからこうだという説明をされれば別ですが、今回の改正 に当つてそういうことに関しての納得の行くような御説明がなされておりません。是非こういう問題は本気で誰かにやつて頂かなければできないし、殊に大臣が これに関心を持つておられて、ときどきあれはどうか、こうかと、こう言つて頂くのと言つて頂かないのとでは、うんと違うと思います。で、これは要望のよう な形になりましたけれども、是非一つそういう点につきまして、大臣の御善処をお願い申上げたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 実は今の名前の点につきましてもいろいろ検討いたして参つたのであります。今後も一層研究して参りたいと存じま すが、ただ癩という名を直ちに変えて、世の中に余りわからんような名前にしてしまうのも一つの方法だと思います。ハンゼン氏病という名前だけで適当かとい うのも一つのこれは問題のようであります。従いまして、こういう点はよほどもう少し検討を十分する余地がありまして、なお私自身も実は就任いたしますとす ぐに療養所に参りまして、職員も本当に献身的にやつておりますし、又入つておられる人たちも、先ほど広瀬さんのお話のような誠にお気の毒であります。それ で一層今後とにかく治療が十分、いわゆる一応治療ができ上る、なおる、一応のなおるという程度まででも早くいたしながら、そして社会とは一種の隔離したよ うな状態になつておりまするから、生活等におきましても、かれこれ十分検討しながらやつて行かなければならんわけであります。そういう考えでいたしており まするから、いつでもそれを念頭に置いて今後も参りたいと存じております。従いまして、本委員会で御検討を頂きました先般の附帯事項等につきましても、十 分検討して参りたいと思つております。
○竹中勝男君 私の質問から医務局長の御返答に対して高野委員或いは広瀬委員からの御希望があつたようですので、その点に関連して私は医務 局長に、いわゆるどこまでもやはり科学者として、私も社会科学のはしくれをやつている者ですから、冷静にやはりお答え願つたことを私は認めています。これ は傾向率について冷静に言つたらやはり百年かかるということが、私は却つてまじめな返事だつたと私は拝聴しているのです。これを医務局長が、若し政治的に 或いは社会的な影響だけを考えて、十五年とか二十年とかで全滅するというような返事をされたら、なお私は国民が不安を感ずるだろうと思うのであります。そ れに関連して、私は、だからこそ研究所を作つて、それで国家が新らしい癩患者に対しての不安を除くような即ち治療の道を講じ、或いは伝染の防止の方法を研 究する。それによつて百年かかるものが或いは五十年になり、或いは三十年になるかも知れないということ。そういう基礎の数字として百年ということは出て来 たんだというふうに私は解釈するものです。そういうふうにはつきり希望を持たせるということは、そういう意味において冷静に、やはりここは委員会ですか ら、科学者として又、良心的な行政官としての返事だつたというふうに解釈して頂きたいと思います。又自由の点については、私は新らしい文化国家という、或 いは民主主義国家という上から言つても、その特定の人が、将来の民族の幸福のために、一定の強制を受けるということは、私はこれはあり得ることである。又 非常なこれは枠であると考えているものです。併しながら自由を一層拘束されるということについては、成るだけ収容の程度において、或いは収容後の施設の中 における自由において、即ち人間としての権利が最高度に収容においてなされ、確保せられるということを我々は考えなくちやならないと思いますので、ただ私 はいつでも、私は政治なんかやれる柄ではないのですが、科学的な冷静などこまでもそういう基礎に立つて、こういう問題を扱うということが委員会では殊にふ さわしいのだと思います。私の質問から医務局長のお言葉は私は正しいと、そういうふうに感じたのです。一言国民に対して了解を与えるという意味において、 そういうふうに解釈して頂きたいと私は思います。ただそれだけを附加えます。
○委員長(上條愛一君) それでは本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしまして、次に移りたいと存じますが御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。
  ―――――――――――――
○委員長(上條愛一君) それでは消費生活協同組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。先ず本案に対する衆議院における修正の要点について、衆議院の厚生委員会専門員の川井章知君から説明を聴取することにいたしたいと存じますが御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。それでは、川井衆議院専門員から御説明を願います。
○衆議院専門員(川井章知君) 只今お手許に衆議院の修正部分に関する対照表をお配りいたしておりますが、衆議院でもこの法律に関する論議 は相当長く続いたのでございますが、結局条文にいたしますれば九十三条、九十四条、九十五条の三カ条、事項にいたしますれば一項目に集約される次等でござ います。それで九十三条を御覧を頂きますと、下の衆議院の修正部分について、「又は組合の会計経理が著しく適正でないと認めるとき」その上のほうには、 「組合の運営が著しく不当であると認めるとき」この組合の運営は著しく不当であるときはどういうことであるかという問題について論議が非常に交されたので ございます。例えば会計の紊乱が極めて甚だしい場合というようなことを政府のほうで答弁されたのでございますが、いろいろの場合を考えて見ますると、結局 組合の運営が著しく不当である。そういうことは、それがどういう形において現われるかということになりますると、結局において組合の会計経理が著しく適正 でない。こういう形に集約されて来るということになりまして、この九十四条にも九十五条にもございます通り、すべて組合の運営が著しく不当であるという場 合を、ことごとくその会計経理が著しく適正でないと認める。こういう項目に修正いたした次第でございます。
 簡単でございまするが、修正の趣旨だけ説明させて頂きました。
○委員長(上條愛一君) 御質疑を願います……それでは衆議院の修正に対する御質疑はないものと認めて差支えございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。それでは政府に対する御質疑を願います。
○湯山勇君 最初お尋ね申上げたいのは名義の使用についてですが、今回の改正案の第三条第三項によつて消費生活協同組合、或いは連合会がそ の名称を他人に使用させることはできないそういうことをした場合には九十五条によつて必要な措置をとることを命じこれに従わないときは解散を命ずることが できるというようになつておりますが、これは考え方によれば当たり前のように見えますけれども、考え方によれば非常に組合にとつては重大な問題ではないか と思うのです。現状から見まして……。でこれの実際の運営なり或いは実施に当つてはどういうふうにお考えになつておられるか承わりたいと思います。
○政府委員(安田巖君) 消費生活協同組合が名義を貸しまして、事実上個人経営の商店が消費組合の或いは青果部であるとか、或いは菓子部で あるとか、パン部であるとか、こういうふうな名前を持つ例が非常に多いのでありまして、これは今のところでは名称保護規定がございますから、使うほうは若 しそれが消費生活協同組合でなければ使うことができないのであります。併しそれを許容したほうは別に何ら罰則の対象にならないわけでございます。で私ども の調べましたところでは、大体もう名義貸し組合として何とかしなければならんという組合が三十五組合ぐらいございます。それから又一番甚だしい例を申しま すというと、一つの組合で組合所有の形の店舗が二つで借上げの形の店舗が百五十というようなのがある。一組合平均二十一店舗ぐらいがそういうふうな名義貸 しの組合の実態であります。これはいろいろ弊害がございまして脱税方面の関係で国税庁関係からもいろいろ注意がございますし、又一方から言いますという と、消費生活協同組合というものはそんなものかということで、正しく運用いたしておりますところの消費生活協同組合の今後のいろいろ運営に支障を来すわけ でございます。いろいろ考えました結果、どうしてもやはり名義貸しというものはいけないということをはつきり書きまして、そうしてそれに対しよしては勿論 措置命令等もございますけれども、最後には解散ができるぞということを書かなければいかんという結論に達したわけでございます。
○湯山勇君 お終いのほうからもう一度お尋ねしたいと思うのですが、これはできるぞというその可能性を示したものであつて必ずしも名義貸しをしておるものはすべてこれによつて解散させるというわけではないのでございますか。
○政府委員(安田巖君) 法律の、改正法の九十五条の三項を御覧になりますと「組合が第二条等一項各号に掲げる要件を欠くに至つた場合、」 それから「第三条第三項」と書いてございます、これが名義貸しでございます。それからずつとお出でになりますと、そういつた場合には「当該行政庁が第一項 の命令を出したにもかかわらず、これに従わないときは、当該行政庁は、その組合の解散を命ずることができる。」ということになります。先ず第一に措置命令 を出しまして、それからそれでも聞かない場合に解散を命ずることができるとなつております。
 それでなおその次の九十五条の二を御覧になりますと、新らしく設けられました規定でございますけれども、そういう場合にも、組合が実はそうじやないのだ という弁明の機会を与えるという条文が新らしく入つております。そこで解散ということは、組合にとりましては死刑のようなものでございますから、できるだ けそういう措置はとりたくないのでございますが、ただ私どもが地方庁におりましてこういう仕事をしております係りに聞いてみますというと、なかなか指導と いうことがむずかしいような実例も聞いておりますので、この法律のきめたことに従いまして措置命令を出して、どうしても聞かないという場合には、甚だしい ものはやはり解散命令まで行かなければならんのじやないかというふうに考えます。併し尤もこういうふうな解散命令というものが規定にはつきり現われます と、或いはその措置命令もよく聞かれるということはあるかも知らんと思つております。
○湯山勇君 そこでもう一つ関連してお聞きしておきたいことは、名義を貸すということの定義といいますか、意味ですね。これはいろいろな場 合があると思います。今局長御指摘になつたように脱税等のためにやるというのもあると思いますけれども、実際その組合の運営のために是非必要である、例え ば消費生活協同組合の扱う品物というものは雑多でございますから、その中で特に臭気の強い物、味噌とかたくあんというものはここでやらせるというようにし て名義貸しというか、こちらから頼んでやつてもらおう、分店とか出張所とか、そういう場合もあり得るのではないかと思うのですが、そういうこともやはりい けないということになるわけでございますか。
○政府委員(安田巖君) これは具体的な実態について議論をいたしませんというと、名義貸しに当るとか当らないとかいうことは言えないかと 思うですけれども、原則的に申しますれば、組合が当該商店なら商店というものに対しての人事権をはつきり持つておりまして、そうして会計経理が一本でされ るということが必要なのでありまして、往々に現在組合がやつておりますような指定店とか、或いは委託店舗だとかいうようなものは取締るつもりはないのであ ります。これはただ組合が、どこへ行つて買えば、自分の組合員でありましたならば、幾らか安く売つてもらえるということになるのでありまして、それは別に 取締るつもりはないのであります。併しそうでなくて、生活協同組合の中の有機的な一部だということになつておりながら、実際上は会計においても人事におい ても一体になつていないというのが実は問題なんでございます。
○湯山勇君 そうすると、やはりこの今の局長のお話は衆議院のほうで修正されましたように、主として会計経理が著しく不当であるということが、まあ全部じやありませんけれども、半分くらいはその理由になつている、こういうふうに大体解釈してよろしゆうございますか。
○政府委員(安田巖君) 現在までの法律でございますというと、行政庁の権限を特に御説明申上げますが、報告の徴収ということがあるのでご ざいます。これは法令処分、定款違反の疑いがあるときだけでございます。法令に基く行政処分と定款に違反した場合、それから今度検査というのがあるのでご ざいます。これもやはり法令及び法令に基く行政処分、定款に反した場合、いずれも千円以下の罰金がつけてあるのでございまして、更にそれからどう処理する かということはできなくなつております。それから措置命令というのがございまして、これも法令に基く行政処分、それから定款違反の事実がある場合、それか ら事業停止命令というのは右の措置命令に従わないとき、それから解散は委員外利用と、それから消費生活協同組合の目的たる事業として掲げられておること以 外の仕事をやりました場合にできるということになつております。今度の規定は先ず第一に名義貸しをしてはいかんというのがございます。現行法にありますと ころの員外利用の点とそれから事業目的にはずれた場合と、それからもう一つ入りましたのが認可になりましても一年も事業をやらないという場合、それから事 業休止を一年以上やるというような場合、これが解散の理由になる。それで今仰せの会計経理が著しく適当でないといいますものは、今度新しく入つたのでござ いますが、これは実は解散命令の対象になつていないのでありまして、そういうものがありました場合に、措置命令まで行くというので、解散命令は実は落ちて おるわけであります。これは首尾一貫いたさないのでありますけれども、いろいろ消費生活協同組合等の意向もございまして、解散だけは実は当初から落してご ざいます。それで私はまあこの程度のことは今までの行政の実績から見ますというと、法令とか定款違反ということはなかなかございませんし、併しながらやは り何とか経理上の問題等につきましてはこちらから意見も言い、調査もし、それから措置命令も出さなければいかんというような問題もたくさんありますから、 それだけは一つ今度の改正でやつて行きたいと、こう思つております。
○湯山勇君 今のお話で聞きましても、この名義貸しの問題というのは相当実際の適用に当つてはむずかしい問題がたくさんあるのじやないかと 思うのですが、それらはやはり個々の実情をよく調査した上で、これは措置命令を出すべきだというようなことの御判定をなさると、こういうふうに解釈してよ ろしうございましようか。
○政府委員(安田巖君) 勿論この法規できめられましたことに具体的に当るかどうかということは、地方庁で判断いたさなければならんわけで ございます。名義貸しの場合は、仰せのようになかなか具体的にこういう点が事実があるから名義貸しになるという証明がむずかしいかも知れません。むずかし いかも知れませんけれども、今までの私どもの行政上の経験では、もうそういうのではなくて、はつきりわかつておつてもどうにもならんというのがあるのでご ざいます。でありますからしてそう私はこれをやりましたからといつて、いい組合が迷惑を受けるということはないのであつて、むしろこういうふうなことがど しどし行われるならば、消費生活協同組合に対する信用も高まつて行きますし、又こういうことがありますというと、将来又消費生活協同組合に対しまして立法 的に或いは行政的にいろいろと便宜を与えるということがだんだんやりやすくなりやしないかということを実は狙つておるわけでございます。
○湯山勇君 私も今おつしやつたような点は同感ですけれども、ただこの法律ができることによつて、ともすればこの中小商店と対立的な関係に あるものですから、そういう場合に今後においてこういう法律ができたために、今までなかつたようないろいろな問題が又起つて来ることも懸念されると思うの です。そういうことからお尋ねしたわけですが、今の御説明によつて大体御趣旨よくわかりましたので、次の質問をいたしたいと思いますが、前に一度御提案に なつたときには、員外利用の拡大ということをお考えになつておつたかに記憶しておりますが、どうだつたでしようか。局長おわかりでございますか。
○政府委員(安田巖君) この前は別に員外利用の拡大ということは考えておりません。実は現在今湯山委員からお話がありましたように小売商 店といろいろ問題がある、と申しますのは、消費生活協同組合が仕事をするために、小売商と対立するという本質的な問題のほかに、員外利用を無制限にさして いるんじやないかということが、実は一番大きな点なんでありまして、これは最近で申しますというと会社、工場あたりの職域の組合員がそういう点で問題を起 していることを私は二、三聞いておるわけでございます。そこで私どもはこの際員外利用ということを持ち出すことは、いろいろと今回の改正をいたしますよう な、若干でも生活協同組合に得になるような措置をいたします上におきましては、不利だと思つて、実は出さなかつたのであります。現在はどういうことになつ ておりますかというと、員外利用を認めますには、当該行政庁の許可を得ることになつておりまして、この許可は例えば衣料なんかのように事柄の性賃上員外利 用をさせなければならんとか、或いは炭鉱の所在地のようなところで消費生活協同組合があります場合に、これは生鮮食料品その他のものはやはりその地域にな ければ、当然許さなければならんと思います。それから薬でありますとか、専売品なんかもやはり許さなければいかん。事の性質上止むを得ない、そういうふう なことを考えておるのであります。
○湯山勇君 それから次にお尋ねしたいのは、生活協同組合の事務担当者の問題ですが、これは民間の労働組合などが、そういう言い方は悪いん ですが、まあ工場とか会社単位にできておるものには大して問題ございませんけれども、公務員の場合ですね。その場合には公務員が生活協同組合の事業に専念 するということは認められてないわけなんですが、これは非常に矛盾しておると思います。というのは、公務員関係の生活協同組合の専従職員というのはそれ以 外のものから採らなければならない。もとこういう生活協同組合ができないときには、組合の事業としてそういうことはできるというので専従が認められておつ たわけですが、認められておつたわけではなくて、組合専従がその業務をしてよかつたわけですが、今日はそれができない。併し消費生活協同組合の仕事という のは、そういう公務員にとつても非常に重要なものであると思いますが、これらの仕事を身分をそのままにしてこれに専従するというような措置はとれないもの かどうか。これはひよつとすると国家公務員法か地方公務員法か、そつちの関係かと思いまするけれども、一応お尋ねいたします。
○政府委員(安田巖君) その問題は仰せのように公務員法の問題になりまするので、地方公務員法にしろ国家公務員法にしろ、そこまで認めて いいかどうかということは、公務員法の規則によつて考えなければならんと思います。私の今の気持から申しますと、そこまで行くのはちよつと無理じやないか という気がいたしております。現在学校生協というのがございまして、これはやはり地方公務員でございましようが、消費生活協同組合の仕事をするために、勿 論俸給をもらつてどうということは私は聞いておりません。或いは教職員組合の方がおやりになつておるかも知れませんけれども、現在の実情及び私の漠然たる 気持は以上のようなことでございます。
○湯山勇君 私は学生協を二年ほどやつた経験を持つておるのですが、まあ私どものところは厚生省からもお調べに見えましたが、問題なかつた のですが、佐賀県あたりでは、教員の身分で給料はもらつていないわけです。休職の形で無給休職ですが、そういう形にしてやつておつたのが問題になつて、結 局その人は職を引きましたが、そういう形があります。で、別に身分だけ繋がれば、給料はもらわなくていいわけです。そういう形で丁度これは職員団体のほう でもああいう形で無給休暇が認められておるように、消費生活協同組合にも、こういう組合を結成するということが法によつて認められている以上は、これは当 然認められていいじやないかと思うのですが、その点に関しての御見解は如何でしようか。
○政府委員(安田巖君) 法によつて認められておりますという点になりますと、まだほかにもあるのじやないかと思うのでありますけれども、 とにかく現在は公務員法によりますというと、そういつた職員団体につきましては専従職員を認められておるということで、それをほかにもつと拡げろというこ とになつて来るわけです。まあ私もよく考えてはみますけれども、俸給を出さないにしてもちよつとどうだろうかという私気がいたしております。現在はこれは 湯山委員も御承知の通りで、先ほどもちよつと触れましたけれども、団体のそういつたような専従員が手伝つている場合が相当多いように私聞いておりますか ら、そのほうで実は専従員で俸給をもらつて、そして学校その他に出ていない方が手伝つておる例が多いのじやないかと私は承知いたしております。
○湯山勇君 これは手伝つている例が多かつたのは二、三年前です。二、三年前か、三、四年前なんで、各府県で問題になりまして、結局全部殆 んどそういう形で外しまして退職をして入るか、或いは又専従者のほうからそれから手を引くという形になつたのがむしろ多いと思うのです。それで又実際に職 員団体の専従者はこういうことをしてはいけないということに法律でもなつておりますから、常勤でない、非常勤の役員としての業務はとつておると思いますけ れども、常勤としてはとつてないと思うのです、実情は……。そこでこれは非常に困るので、例えばその仕事に専念するために職を退けば、もうその組合員たる 資格を喪失します、正式には……。ほかから雇つて入れるにしても、正式な組合員の中からは入れるわけにいかないというので、運営と組合の性格が非常に違つ ておるということになつて、どこも困つているのではないかと思うのですが、それらの点については何か御考慮頂けるかどうか。
○政府委員(安田巖君)  その専従職員を置いて給料を払うかどうかという問題、或いは又給料を払わないけれども、そういう仕事に専従さし たらどうかというような点もあるだろうと思いますが、私はそういうことまで実は深刻に考えたことはなかつたものでございますが、お話もございますので、研 究さして頂きたいと思います。
○湯山勇君 この頂いた資料で見ましても、職域組合では相当組合員の中からそういう役員が置かれております。例えば職域組合では、組合数二 百十五の中で常勤が三百九名いるという形になつておりますが、学校組合などでは、これは二十八年三月となつておりますけれども、私立学校等は別として、公 立ではこういうことができないわけです。やつておれば又工合が悪いはずですから……。この資料にもおかしいところがあると思いますので、それやこれやを併 せてもう一度御検討頂きたいと思います。
 それから最後にお尋ねいたしたいことは、この資料で拝見いたしましても、生活協同組合の資金面です、これは非常に窮屈である。殊に今回のような財政投融 資、金融引締めというようなことになつて来ますと、従来これを殆んど銀行からの融資に仰いでいた生活協同組合としては、非常にむずかしいことになつて来る というように考えられますが、今年度まあ生活協同組合に対して一千二百五十万円の政府資金の融資ということが考えられておるのですが、これはどういうふう に出される御予定なのか、一応それを御説明頂きたいと思います。
○政府委員(安田巖君) 消費生活協同組合に対する金融の問題は御指摘のように大事なことでありますが、而も系統金融機関がないという状況 でございます。それで実はこれができますときは、国民金融公庫等とも連絡をつけてそちらから借りたらいいじやないかというようなお話があつたのであります けれども、実際問題としてはそれはいろいろむずかしいことでございますので、労働金庫法ができましたときに消費生活協同組合がその中に入るという条項を入 れまして、そちらからも貸してくれることにいたしまして、大蔵大臣も非常に好意を示してくれまして、これから貸してくれた額は、この表にありますように相 当の額に上つております。なお、これは確かだつたと思いますが、中小企業金融公庫法の中に消費生活協同組合に貸していいということが今度の法律の中に入つ ております。それから中小企業信用保険法の中にも、生活協同組合が入りまして、金融面で実際上どのくらい助かるかまだわかりませんけれども、新たな途が開 かれたことは事実でございます。
 なお昨年と本年二千五百万円ずつ国から金を出しておるわけでございますが、これは昨年が二千五百万円、本年が一割引きの二千二百五十万円で、これを県に 持つて行きまして、県がそれを同額のものを組むわけででございますが、そうして大体二年据置きで五年償還でございますから、七年間で償却をするという形で 参つております。利率は国から県へ参りますのは年三分でございますが、県は最初の二カ年間というものは据置き期間にいたしまして利子を取ります関係上、大 体五分近いものを取つておるわけです。これは主として生活協同組合が施設をいたします場合に、それを対象として融資をするという方針をとつております。
○湯山勇君 今のお話ですが、これは二千二百五十万円というものを各県にばら撒きましても極く少額でございまして、実際私どもの知つておる 範囲では、国から来たものはその大部分をその県の県庁職員の生活協同組合に先ず出して、そうして残りの僅かなものが他に行つているというような形が大多数 ではないかと思うのです。そういうほどまあ額が少いということを申上げたいわけなんですが、そこで今の労働金庫からの借入れということもありますけれど も、これは結局出資総額の十分の一ですか、それを超えてはならないという規定がありますので、実際問題としてそう今日こうやつて拾い上げてみますとかなり たくさんになりますけれども、消費生活協同組合が活溌に本当に役目を果して行くためには随分不自由をすると思いますし、又中小企業金融公庫ですか、それや 信用保証協会等から来るものにいたしましても、どうもまだはつきりしない。これと丁度対比的な関係にある農協等に対しては、各県は相当何億という融資をし ておるわけでございます。それに比べて如何にもそれはそういう面で虐待視されておりますので、やはり政府のほうから特に今日の金詰りの状態、そういうこと をも御考慮に入れてもつとたくさん融資して頂かなければ、なかなか消費生活協同組合の何といいますか、育成強化ということは困難ではないかと思うのです が、この点に関して局長の御所見を伺いたいと思います。
○政府委員(安田巖君) 仰せのごとく二千五百万円、二千二百五十万円で十分とは申されないのでございますが、二十八年度の実績を見ます と、大体御指摘のように県庁の職員の組合に大部分行つておるということはございません。私ども承知いたしておりますのは、熊本と徳島か何かにそういうとこ ろに多少そういうものが動いておるようですが、ほかは全部、地域内の職域の組合に参つておりますから、数から申上げますと、問題なく一般の消費生活協同組 合に行つておると思います。それで農業協同組合との御比較でございますが、確かにこれは農業協同組合のほうが融資、その他につきましても多額の金が流れて おりますし、手厚く私は措置されていると思うのでありますが、これは実態も私は違うと思うのでございます。それでどうしてもまあ農業協同組合というもの は、これはもう農村におきましては一つの組織的な下部機構として、生産とか或いは配給その他にタツチしておりますけれども、都市を中心にいたしますところ の消費生活協同組合というものは、なかなか現在は伸びんとしても伸びないような事情がたくさんあるわけでございます。実は私はなせ伸びないかということを よく聞かれるのでありますけれども、はつきりはわかりませんけれども、最近のように小売店が非常に殖えて参りますと、これは日本のそういつた一つの特色だ と思うのでありますけれども、小商人が非常に殖えて参りまして、それが取つているマージンというのは非常に低いものでございます。そしてこれは家族労働で 以て成立つておりますからして、朝から夜遅くまで働いてサービスをいたしております。そういうのと競争して行かなければならという点、まあなかなかむずか しい問題が実はあると思うのであります。そこで私どもはさつきの融資等につきましても、そういつたものの販売でございますね、そういう面ばかりで消費生活 協同組合というものを育てようと思つても、なかなかむずかしいので、やはりこの施設を利用するというような点であるとか、或いは組合員双互にいろいろと会 合などを持つて生活改善等に乗出して行くとか、そういうものがやはりあつたほうが私は消費協同組合のあり方としては本当じやないか。そこで今の施設に対す る融資にいたしましても、例えば浴場を設けるとか、或いは洗濯場を作るとか、そういうようなものに成るべく貸して行きたいと思うので、商売の資金にすぐ に、運転資金或いは施設資金に貸して行くというやり方は、まだ今のところとつていないのであります。それにはやはり償還その他について非常に心配もござい ますし、非常によい組合というのは少い現状なんであります。で重ねて申しますけれども、今の現在の政府資金の貸付といたしましては、決して或る特殊なとこ ろに偏するというようなところはないように気を付けておりますし、なお又どうしても割にしつかりした組合を中心にして貸付けるというようなことが現在の段 階でございます。併しだんだん消費組合が建直つて来まして立派になりますならば、仰せのようにどしくどし又資金等も殖えて行くのじやないかと思います。
○湯山勇君 今の県庁の生活協同組合の問題は、昨年とか一昨年とかじやなくして、ずつと継続してみますと、恐らくどの県庁職員の協同組合も 借りていると思います。そういうことを申上げたので、昨年だけがどうこうという意味ではなかつたわけですが、今の局長のお話のように、私どもやはり実際に はそういう施設が必要だと思いますし、そういう面でやつて行かなければ、今日のような状態ではむしろ消費生活協同組合は要らない、ダンピング等が相次いで 起つた場合には、むしろ要らないということのほうの要素が多くなつて来ると思います。そこで今のように施設等をどんどんやつて行かせるといつたようなこと から考えれば、一層政府資金はそういう方面へ向けられるという性格上、更に増額しなければならないのじやないか。それがなければなかなかああいう零細な資 金の持ち寄りで、新らしい施設を作るということは困難だと思いますので、この点については更に御検討、御善処を頂きたいと思います。
○委員長(上條愛一君) 他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議はございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。
○湯山勇君 私は本案に左の附帯決議を附する動議を提出いたします。案文を朗読いたします。
 消費生活協同組合法の一部を改正する法律案に関する附帯決議案
 わが国消費生活協同組合の実態にかんがみ政府の融資額を増額すると共に、その指導監督に当つては慎重適正な配慮を以て之に当り、特に名義貸による解散権の実施に関しては、真に已むを得ない場合に止め、その育成発展を図ることを要望する。
 以上の通りであります。
○大谷瑩潤君 今の湯山委員の動議に賛成いたします。
○委員長(上條愛一君) 湯山委員の動議は成立いたしました。
 他に御意見もないようでございますから、討論は終結したものと認めて差支えございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより採決に入ります。衆議院送付の案に賛成の方は挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(上條愛一君) 全会一致でございます。
 次に、湯山委員提出の附帯決議を附することに御賛成の方は挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(上條愛一君) 全会一致と認めます。よつて湯山委員提出の通り附帯決議を附することに決定いたしました。
 それから委員長が議院に提出する報告書には、多数意見者の署名を附することになつておりまするから、本法案を可とせられた方々は、順次御署名を願います。
 多数意見者署名
 大谷瑩潤 高野一夫
 谷口弥三郎横山フク
 廣瀬久忠 湯山 勇
 竹中勝男
○委員長(上條愛一君) 署名漏れはございませんか。……署名漏れはないと認めます。
 なお、本会議における委員長の口頭報告については、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕
○委員長(上條愛一君) 異議ないものと認めます。
  ―――――――――――――
○委員長(上條愛一君) 次に、厚生省の定員改正に対するその後の状況を聴取いたしたいと存じます。畠中厚生省人事課長の御説明を願います。
○説明員(畠中順一君) 御説明申上げます。厚生省の現在の定員は、資料を手許にお配りしてあると思いますので御覧願いたいと思います。
 厚生省の現在の定員は四万五千八百八十七人でありまして、これに対しまして減員となりますものは、行政整理によるものが二千七百三十八人、それから国立 病院の地方移譲に伴うものが三百八十七人でありまして、増員となるものは国立癩療養所の百十一人、それから国立癩研突所が十人及び国立精神療養所の五十人 でありまして、差引新らしい定員は四万二千九百三十三人となります。
 次に行政整理の二千七百三十八人の内訳を申上げますと、内部部局が百七十六人、附属機関が一千三十一人、地方支分部局が三十人、それから四月一日から引揚援護局となりました元引揚援護庁が一千五百一人でございます。
 以上の整理数はおおむね各機関の事務の簡素化、事務運営の能率化等を行うことによつて算定いたしたものでございます。ただ、厚生省といたしましては、附 属機関のうち、国立病院及び国立療養所につきましては、医療機関の特殊性に鑑みまして、癩療養所、精神療養所等の特殊療養所につきましては全く整理は行わ ないことにいたしましたし、又一般の病院、療養所につきましても医師、看護婦等は整理を行わないことにいたしております。又引揚援護局におきましては、そ の業務が逐次進捗するに従いまして減少することといたしまして、特に四カ年計画で行政整理を行うことといたしております。即ち初年度におきましては百五十 人、三十年度が四百八人、三十一年度が四百八十三人、三十二年度は四百五十人整理することにいたしております。
 簡単でございますが御説明申上げました。
○委員長(上條愛一君) それでは人事課長の御説明に対して御質疑を願います。
○横山フク君 看護婦の定員でございますけれども、普通病院は四ベツドに一人でございます。療養所は六ベツトに一人の割合になつておるのだと思いますが、そうでございますか。
○説明員(畠中順一君) そうでございます。
○横山フク君 でございますと、実際において四ベツドに一人、六ベツドに一人の割合に定員法がなつておりますか。
○説明員(畠中順一君) 患者四人に一人が病院、それから患者六人に一人が療養所ということになつております。
○横山フク君 私の伺うのはそうでないんです。それは四ベツドに一人、六ベツドに一人ということは定員できまつておりますが、総数ベツドに対してその割合で定員ができておるかということです。
○説明員(畠中順一君) 定 員はそのようになつております。
○横山フク君 私の伺いますところによりますと、ベツドは増設されておるけれども、総体数の定員は殖えていない。従つて、四ベツドに一人、六ベツドに一人という割合になつていないということを聞いておりますが、如何でございますか。
○説明員(畠中順一君) 四ベツドに一人、六ベツドに一人ということになつておりますが、ただ今度の予算で通りました結核の一千床につきましては人員が入つておりません。それ以外につきましてはそういうことになつております。
○横山フク君 今よく伺わなかつたのですが、一千のベツドの増床に対しては人員が入つていないとおつしやつたのですか。
○説明員(畠中順一君) 二十九年度の予算におきまして予算が修正されまして、一千床ベツドが増床になつておりますが、その分につきましては職員の定員が入つておりません。
○横山フク君 これは非常に大きい問題だと思います。ベツドを殖やして定員を殖やさない。四ベツドに一人、六ベツトに一人という割合がきま つておるが、総数において定員が殖えないということは、事実上においては減員されたとか、超過労働という形になつておるわけであります。而も一千ベツドと いうのは公式的にきまつた増床でありまして、そのほかに随時臨時に増床されたベツドがあるわけであります。なお四ベツドに一人、六ベツドに一人の内容を調 査いたしますというと、看護婦以外の人をその六ベツドに一人の割合の中に当てはめて、そうして六ベツドに一人という割合にみなされておるということを私は 実情として聞いておりますが、如何でございますか。
○説明員(畠中順一君) 先ほど申上げましたように、一千床の二十九年度の増床分については職員が入つておりません。それから看護婦の定員のうちでも看識婦の養成募集が十分でないために、いわゆる代用看護婦というものですか、そういうものを採用しておることは事実のようであります。
○横山フク君 今の御答弁は私には承服できないのです。看護婦の養成が足りないためにほかの者を、雑役婦等を看護婦の定員の中に入れておる という御答弁でありますが、国立療養所の附属の看護婦養成所で養成された人がそこの療養所で採用されないで、地方のほうに職を求めて流れておるのを見てお る実情なんであります。養成所の入が足りないから、だからほかに雑役婦で看護婦の定員に当てはめておるという御答弁は私は実際と離れた御答弁だと思います が、如何でございますか。
○説明員(畠中順一君) 国立病院、療養所におきまして、附属看護婦の養成所で看護婦を養成しておりますが、それが民間の病院等に行く者もございますので、国立病院養成所で十分確保するだけの職員を得られない状況でございます。
○横山フク君 それはますますおかしいのございます。国立療養所で採用してくれないからよそへ行かなければならない。而も東京にそういうと ころがないから、地方に流れて行くのです。これは、私ははつきりした資料を持つておりますので、お目にかけても結構でございますけれども、法律で定員法が きまつておりまして、四ベツドに一人、六ベツドに一人になつておる。そうしたら、総数もそういう割合の定員が当然きまるべきだと思います。そうして看護婦 が四ベツドに一人、六ベツドに一人であつたら、看護婦の資格者で充てるべきで、雑役婦で充てるべきものではない。それは結局予算の上で他のものを以て代用 するといつたようなこと、それは看護の、医療の低下という形にもなるのだと思います。そうしてそのために患者をして苦しませる、病気に苦しませるというこ とであつて、そうして長い期間そういう費用を使うということであつたら、結果においては大きな損失だと思うのであります。この点については是非御再考願い たいと思うのであります。先ほどのような御答弁は事実から離れております。私いつでもそれに対して、実際どこの病院は幾つのベツドであるのに幾ら足りない ということ、而もそれが整理されるという、卒業生もそこでは採用されないでよそへ流れて行くといつたような資料は、いつお目にかけても結構だと存じており ます。よろしく看護婦の問題については御再考を願いたい。そうして今後においてそれだけの定員数は確保するように御努力を願いたいと私は思います。
○湯山勇君 定員法の問題は非常に問題が多くて、これは資料等の関係も随分あると思うので、本日は定員法については一応これで置いて頂い て、厚生省のほうもずつとそういう具体的調査をして頂く資料も集めて頂いて、ゆつくりこれは本腰を入れてやつて行く問題ではないかと思いますので、そうい う扱いにして頂きたいと思います。
   (「賛成」と呼ぶ者あり)
○委員長(上條愛一君) それでは定員法の問題は、本日はこの程度にいたしまして次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) なお、二十八年度における風水害予算中、厚生省所管事項の実施状況を聴取することにいたしておりましたが、本日は政府当局のほうの都合によりまして当局の出席が困難でありますので、次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(上條愛一君) それでは本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十分散会