[現代語訳] 家畜伝染病予防法

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家畜伝染病予防法(大正11年4月8日法律29号)

  • 第一条 本法において家畜とは、牛、馬、綿羊、山羊、豚、犬、鶏、及び鶩(アヒル)を言い、伝染病とは、牛疫、炭疽、気腫疽、鼻疽、仮性皮疽、牛の伝染性肋膜肺炎、流行性鵞口瘡、狂犬病、羊痘、豚虎列刺(コレラ)、豚疫、豚丹毒、牛の伝染性流産、馬綿羊山羊の疥癬、加奈陀(カナダ)馬痘、及び家禽虎列刺(コレラ)をいう。
    畜類伝染病予防上必要があるときは、勅令により、前項の家畜、又は伝染病以外の畜類、又は伝染性病について、本法の全部又は一部を適用することができる。
  • 第二条 家畜が伝染病に罹患し、又は罹患した疑いがあるとき、又は牛疫もしくは狂犬病に感染した恐れがあるときは、所有者、保管者、又は診断もしくは検案した獣医は、直ちに家畜所在地の警察官吏又は家畜予防委員にその旨を届け出ること。但し、家畜が船車で運ばれている場合は、船長、鉄道係員又は軌道係員は、最初に寄港又は停留した地の警察官吏又は家畜防疫委員に届け出ること。
  • 第三条 前条の家畜については、所有者もしくは保管者、又は家畜を搭載する船車の船長、鉄道係員もしくは軌道係員は、警察官吏又は家畜防疫委員の指揮に従い、直ちに家畜を隔離し、その他伝染病予防上必要な処置をすること。前項の家畜は、警察官吏又は家畜防疫委員の許可を受けなければ、これを殺すことができない。但し、鶏及び鶩(アヒル)についてはこの限りでない。
  • 第四条 家畜が牛疫に罹患し、もしくはこれに感染した恐れがあるとき、又は狂犬病に罹患したときは、所有者又は保管者は、警察官吏又は家畜防疫委員の指揮に従い、直ちにこれを殺すこと。但し、牛疫に感染した恐れのある家畜のうち、第七条の規定により免疫血清の注射を行う場合は、この限りでない。狂犬病に罹患した犬について、所有者又は保管者は、緊急の必要があると認めるときは前項の指揮を待たずにこれを殺すことができる。
  • 第五条 地方長官は、伝染病予防上必要があると認めるときは、炭疽、気腫疽鼻疽、仮性皮疽、牛の伝染性肋膜肺炎、流行性鵞口瘡、羊痘、豚虎列刺(コレラ)、豚丹毒、綿羊山羊の疥癬又は加奈陀(カナダ)馬痘に罹患した家畜について、所有者又は保管者に対し、これを殺すことを命令することができる。牛疫に感染した恐れのある家畜のうち、第七条の規定により免疫血清の注射を行ったものについては前条に同じ。地方長官は、前項の家畜について、所有者又は保管者が不明なために前項の規定による命令を行うことができないときは、警察官吏又は家畜防疫委員に対しこれを殺させることができる。
  • 第六条 地方長官は、伝染病予防上、病性鑑定の必要があると認めたときは、警察官吏又は家畜防疫委員に対し、家畜の死体を剖検させ、又は剖検のため家畜を殺させることができる。
  • 第七条 地方長官は、伝染病予防上、必要があると認めるときは、警察官吏又は家畜防疫委員に対し、家畜に対する検診、免疫血清もしくは予防液の注射又は薬浴を行わせることができる。警察官又は家畜防疫委員が、前項の場合において助力を求めたときは、所有者もしくは保管者、又は家畜を搭載する船車の船長、鉄道係員もしくは軌道係員は、これを拒むことはできない。
  • 第八条 伝染病に罹患し、もしくは罹患した疑いがあり、又は牛疫に感染した恐れがある家畜の死体は、所有者又は保管者において、警察官吏又は家畜防疫委員の指揮に従い、直ちにこれを焼却又は埋却すること。但し、鶏及び鶩(アヒル)の死体については指揮を待たずにこれを焼却又は埋却することができる。前項の規定は、仮性皮疽又は加奈陀(カナダ)馬痘に罹患し、又は罹患した疑いがある家畜の死体、及び牛の伝染性流産、又は馬綿羊山羊の疥癬に罹患し、又は罹患した疑いのある家畜の斃死体のうち、警察官吏又は家畜防疫委員の指揮に従い化製するもの、並びに、牛の伝染性流産又は馬綿羊山羊が疥癬に罹患し又は罹患した疑いのある家畜の殺死体には、これ(前項)を適用しない。病性鑑定又は学術研究のために地方長官の許可を受けた家畜の死体についても同様とする。
  • 第九条 伝染病の病毒に汚染され、又は汚染した疑いがある物品は、所有者又は保管者において、警察官吏又は家畜防疫委員の指揮に従い、これを焼却、埋却又は消毒すること。但し、家禽虎列刺(コレラ)の場合においては、指揮を待たずにこれを焼却、埋却又は消毒することができる。
  • 第十条 伝染病に罹患し、もしくは罹患した疑いがあり、もしくは牛疫に感染した恐れのある家畜の死体、又は伝染病の病毒に汚染され、もしくは汚染した疑いのある物品を埋却した土地は、これを発掘することができない。但し、地方長官の許可を受けた場合はこの限りでない。
  • 第十一条 伝染病に罹患し、もしくは罹患した疑いがあり、又は牛疫に感染した恐れのある家畜が所在した畜舎、船車、その他の場所は、その所有者、管理人、船長鉄道係員又は軌道係員において、警察官吏又は家畜防疫委員の指揮に従いこれを消毒すること。但し、家禽虎列刺(コレラ)の場合においては指揮を待たずに、これを消毒することができる。
  • 第十二条 伝染病の病毒に接触し、又は接触した疑いのある者は、直ちに消毒をすること。
    警察官吏又は家畜防疫委員は、必要があると認める時は前項の消毒について指揮をすることができる。
  • 第十三条 牛、馬、綿羊、山羊又は豚が疾病のため斃死したときは、所有者又は保管者は、直ちに家畜所在地の警察官吏又は家畜防疫委員にその旨を届け出ること。
    第二条但し書きの規定は、前項の場合に準用する。
  • 第十四条 第三条、第四条、第八条、第九条、もしくは第十一条の規定による義務者、又は第五条に規定する処分による義務者が、その義務に属する事項を行わず、又は行うことが出来ないときは、警察官吏又は家畜防疫委員は、これを行うことができる。
    前項、又は第五条第二項の場合においては、その費用は北海道地方費又は府県費により賄うこと。但し、北海道地方(費)又は府県は、第二十三条の規定に基づいて発令する勅令に定める通り、個人の負担に属する費用をその個人から徴収することができる。
  • 第十五条 警察官吏又は家畜防疫委員は、伝染病予防上必要があると認めるときは、畜舎、船車、その他家畜が所在する場所を臨検することができる。この場合において、家畜防疫委員はその証票を携帯すること
  • 第十六条 地方長官は、伝染病予防上必要があると認めるときは、区域を限り、一定種類の家畜の出入り、もしくは往来、又はその家畜の死体、もしくは伝染病の病毒伝染の恐れのある物品の運搬の停止、その他必要な事項を命令することができる。警察官吏又は家畜防疫委員は、伝染病予防上緊急の必要があると認めるときは、伝染病に罹患し、もしくは罹患した疑いがあり、又は牛疫に感染した恐れのある家畜の所在の場所、及びその隣接区域に対し、一定の期間交通を遮断することができる。
  • 第十七条 地方長官は、狂犬病予防上必要があると認めるときは、警察官吏に対し道路、公園、社寺境内、墓地、その他の場所に徘徊する犬を抑留させることができる。
    警察官吏は前項の規定により犬を抑留したときは、その所有者又は保管者に、その旨を通知し、承諾させること。所有者及び保管者が不明であるときは抑留している旨を公示すること。前項の規定による公示後、命令で定める期間内に犬の返還の請求が無いときは、地方長官はその犬を処分することができる。
  • 第十八条 地方長官は、伝染病予防上必要があると認めるときは、屠場もしくは化製場の事業の停止、又は家畜市場、家畜共進会もしくは競馬会の開設、その他家畜を集合させる施設の停止を命ずることができる。
  • 第十九条 農商務大臣は、伝染病予防上必要があると認めるときは、家畜、並びにその死体、及び肉骨皮毛類、その他伝染病の病毒が拡散する恐れのある物品の輸入、又は移入の停止を命ずることができる。
  • 第二十条 家畜、並びにその死体、及び肉骨皮毛類は、伝染病予防のために施行する検疫を受けなければ、それらを輸入又は移入することができない。検疫官吏は、伝染病予防上必要があると認めるときは、前項に規定する物のほか伝染病の病毒が拡散する恐れがある物について検疫を行うことができる。
  • 第二十一条 検疫官吏は、伝染病予防上必要があると認めるときは、船舶に臨検し、航海日誌その他の書類を検閲することができる。
  • 第二十二条 第二条から第九条、第十一条から第十四条、および第十六条の規定において警察官吏又は家畜防疫委員と規定するものは、輸入又は移入に際して検疫を施行する場合は検疫官吏と呼び替える。
  • 第二十三条 伝染病予防に関する費用は、国、北海道地方費、府県、市町村、又は個人の負担とする。その負担区分は勅令により定める。
  • 第二十四条 地方長官は、左の区分に従い、家畜又は物品の所有者に対し、手当て金を交付する。但し、勅令に定める最高金額を超えることはできない。
    • 一 伝染に罹患し、第四条、第五条又は第十四条の規定により殺した家畜。但し、犬、及び第七条の規定により予防液の注射を行ったために伝染病に罹患した家畜を除く。 評価額の三分の一
    • 二 第六条の規定により殺した家畜 評価額の五分の三
    • 三 牛疫に感染した恐れがあり、第四条、第五条、又は第十四条の規定により殺した家畜。第七条の規定により予防液の注射を行ったため伝染病に罹患し、第四条、第五条、又は第十四条の規定によって殺した家畜、及び第七条の規定により免疫血清、もしくは予防液の注射、又は薬浴を行ったために斃死した家畜 評価額の五分の四
    • 四 第九条の規定により、警察官吏又は家畜防疫委員の指揮に従い焼却又は焼却した物品、及び第十四条の規定により警察官吏又は家畜防疫委員が埋却、又は埋却した物品。 評価額の二分の一
    前項の規定は、輸入又は移入の際に検疫を行う場合における家畜及び物品に付いては適用しない。
    第一項の評価額については、地方長官は三人以上の評価人を選定し、発病前又は病毒汚染前の価額を基に、これを定めさせる。地方長官は、その評価額が不当であると認めるときは、更に他の三人以上の評価人を選定して評価額を定めさせることができる。
  • 第二十五条 前条の手当金は、所有者又は保管者が、左の各号の一つに該当する場合は、その家畜又は物品について手当金を交付しない。
    • 一 第二条、第三条第一項、第四条第一項、もしくは第九条又は第二十条第一項の規定に違反したとき。
    • 二 第五条第一項の規定による処分、又は第十六条もしくは第十九条の規定による命令、もしくは処分に違反したとき。
    • 三 第六条、第七条第一項、又は第二十条第二項の規定による職務の執行を妨げたとき。
  • 第二十六条 左の各号の一つに該当する者は五百円以下の罰金に処する。
    • 一 第二条の規定に違反し、届け出をしない獣医。
    • 二 第三条、第四条第一項、又は第二十条第一項の規定に違反した者。
    • 三 第五条第一項の規定による処分、又は第十六条、第十八条もしくは第十九条の規定による命令、もしくは処分に違反した者。
    • 四 第五条第二項、第六条、第七条第一項、第十四条第一項又は第二十条第二項の規定による職務の執行を妨げた者。
  • 第二十七条 左の各号の一つに該当する者は、三百円以下の罰金に処する。
    • 一 第二条の規定に違反し、届け出をしない所有者、保管者、船長、鉄道係員、又は軌道係員。
    • 二 第八条から第十一条の規定に違反した者。
    • 三 第十二条第二項の規定による指揮に従わない者。
    • 四 正当な理由が無く、第十五条の規定による臨検、又は第二十一条の規定による臨検もしくは検閲を拒み、妨げ、もしくは忌避し、又は尋問に対し答弁をせず、もしくは虚偽の答弁をした者。
  • 第二十八条 第十三条の届け出を行わない者は過料に処する。
  • 第二十九条 航海中の船舶の場合には、船長は第三条、第八条、第九条、及び第十一条の規定にかかわらず、命令が定めるところにより伝染病予防上必要な処置を行うこと。
  • 第三十条 第二十条の規定は、宮内省又は国の管理に属する家畜、その他の物にも準用する。
  •  前項の規定は、軍用の家畜であって軍用施設において検疫を行っているものには適用しない。
  • 第三十一条 本法中、船長に適用すべき規定は、船長に代わってその職務を行う者がある場合においては、その者に適用する。
  • 第三十二条 本法中、地方長官とあるのは、東京府においては警視総監とする。本法中、市町村長とあるものについては、市制又は町村制を施行しない地においては、これに準ずる者とする。
附則
  • 本法施行の期日は勅令により定める。
  • 獣疫予防法及び大正九年法律第三十号は廃止する。
  • 本法施行前に獣疫予防法第四条、第四条の二、第五条又は第八条第一項の場合に該当したものに対する手当金の交付については、従前の例の通りとする。

家畜伝染病予防法施行期日の件

(大正十二年一月十八日勅令第七号)
家畜伝染病予防法は大正十二年一月二十日より施行する。

家畜伝染病予防法により交付する手当金の最高金額の件

(大正十二年一月十八日勅令第八号)
家畜伝染病予防法第二十四条の規定により、手当金の最高金額を左の通り定める。
  • 一 家畜伝染病予防法第二十四条第一項第一号の場合
    牛、馬 一頭に付き 二百五十円
    綿羊、山羊、豚 十三円
  • 二 同第二号の場合
    牛、馬 一頭に付き 四百五十円
    綿羊、山羊、豚 二十四円
    十二円
    鶏、鶩 一羽に付き 一円五十銭
  • 三 同第三号の場合
    牛、馬 一頭に付き 六百円
    綿羊、山羊、豚 三十二円
    十六円
    鶏、鶩 一羽に付き 二円
  • 四 同第四号の場合
    総額 三十円
附則
  • 本令は家畜伝染病予防法施行の日から施行する

家畜伝染病及び畜牛結核病予防に関する費用負担区分の件

(大正十二年一月十八日勅令第九号)
家畜伝染病予防法第二十三条及び畜牛結核病予防法第十六条の規定により家畜伝染病及び畜牛結核病予防に関する費用負担区分を左の通り定める。
  • 第一 左に掲げる費用は国の負担とする。
    • 一 市町村の吏員である家畜防疫委員以外の家畜防疫委員の旅費。
    • 二 伝染病予防のため臨時に雇い入れた獣医の手当て及び旅費。
    • 三 評価人の手当て及び旅費。
    • 四 家畜伝染病予防法第二十四条第一項及び畜牛結核病予防法第十三条第一項の規定による手当金。
    • 五 牛疫免疫血清の購入及び配送、並びに「ツベルクリン」の製造及び配送に要する費用。
    • 六 第四に掲げるものを除く、伝染病予防及び結核病の予防に要する消毒薬品費。
    • 七 第三に掲げるものを除く、家畜伝染病予防法第二十条の検疫及び畜牛結核病予防法第七条の規定による検査に要する費用。
  • 第二 左に掲げる費用は市町村の負担とする。
    • 一 警察官吏又は家畜防疫委員が伝染病予防のため雇い入れた傭人の費用。
    • 二 屍体又は物品を埋却した土地の標示費。
  • 第三 左に掲げる費用は所有者、管理人、管理者又は保管者の負担とする。
    • 一 家畜を牽付、送致、隔離、殺、及び家畜伝染病予防法第三条第一項の処置に要する費用。
    • 二 検疫、検査、隔離、又は繋留中に要する飼養管理費。
    • 三 抑留した犬を返還する場合において、その犬の抑留中に要した飼養管理費及び返還に要する費用。
    • 四 家畜伝染病予防法第九条又は第十一条の規定による指揮を待たずに消毒を行った場合、その消毒に要した費用。
    • 五 屍体及び物品の焼却又は埋却に要する費用。
  • 第四 屠場、化製場、家畜市場、及びこれに附属する物品の消毒に要する費用は、場主、又は開設者の負担とする。
  • 第五 前各項に掲げるものを除き、家畜伝染病又は畜牛結核病予防に関する費用は、北海道地方費又は府県の負担とする。
附則
  • 本令は家畜伝染病予防法施行の日から施行する。
  • 明治三十四年勅令第百三十九号は廃止する。

家畜伝染病予防法施行規則

(大正十二年一月十九日農商務省令第一号)
家畜伝染病予防法施行規則を左の通り定める。
  • 第一条 警察官吏又は家畜防疫委員は、家畜伝染病の発生、又は発生の疑いがあることを知ったときは、その旨を地方長官に報告し、且つ市町村長に通報すること。前項の場合において、市町村長はその旨を部内に公示すること。
  • 第二条 伝染病が発生し、又は終息した時は、地方長官はその旨を管内に告示し、且つ農商務大臣及び隣接府県の地方長官に報告すること。
    牛疫もしくは流行性鵞口瘡が発生したとき、又は伝染病が蔓延する兆しがあると認めるときは、地方長官は農商務大臣並びに隣接府県及び家畜集散上密接な関係がある道府県の地方長官に急報すること。
    家畜伝染病予防法の全部又は一部の適用が必要と認める伝染性病が発生したときは、地方長官はその旨を農商務大臣に急報すること。
  • 第三条 仮性皮疽、牛の伝染性流産、馬綿羊山羊の疥癬又は加奈陀馬痘に罹患し、又は罹患した疑いがある家畜、及び犬以外の家畜で狂犬病に感染した恐れのあるものに限り、警察官吏又は家畜防疫委員が隔離の必要が無いと認めた場合は、隔離以外の処置に止めることができる。
  • 第四条 地方長官は、家畜伝染病予防法第七条の規定により、家畜に対して、検診、免疫血清もしくは予防液の注射、又は薬浴を行わせようとするときは、家畜の種類、区域、及び日時を告示すること。但し、緊急の必要があるときはこの限りでない。
  • 第五条 伝染病に罹患し、もしくは罹患した疑いがあり、又は牛疫に感染した恐れのある家畜の屍体、又は病毒に汚染し、もしくは汚染した疑いのある物品を運搬しようとするときは、牛疫、気腫疽、牛の伝染性肋膜肺炎、流行性鵞口瘡、又は牛の伝染性流産の場合には牛。鼻疽、仮性皮疽又は加奈陀馬痘の場合には馬。炭疽の場合には牛又は馬で運搬することはできない。
  • 第六条 前条の屍体又は物品を埋却する土坑は、屍体又は物品を投入したとき、地表まで四尺(1.2メートル)以上の間隔が無ければならず、屍体又は物品を投入した後、厚く石灰を散布し、土によって埋め戻さなければならない。
  • 第七条 焼却又は埋却すべき屍体は、警察官吏又は家畜防疫委員の許可を受けなければ、裁断してはならない。
  • 第八条 第五条の屍体又は物品の焼却又は埋却は、人家、飲料水、河流又は道路から離れた場所において行うこと。
    前項の埋却を行った場所にはその旨を標示すること。
  • 第九条 家畜伝染病予防法の規定による消毒の方法は、別に定める。
  • 第十条 地方長官は、家畜伝染病予防法第十六条第一項又は同法第十八条の規定による停止を命じたとき、又はこれを解除したときは、その旨を管内に告示し、且つ農商務大臣並びに隣接府県及び家畜集散上密接な関係のある道府県庁の地方長官に報告すること。
  • 第十一条 家畜伝染病予防法第十七条第二項の規定による公示には、犬の種類、性、年齢、毛色及び特徴、これを捕らえた場所、及び日時、並びにそれを抑留している場所を記載すること。
    家畜伝染病予防法第十七条第三項の期間は三日とする。
  • 第十二条 地方長官は、狂犬病流行の際、危険があると認める区域においては、所有者又は保管者に対し、犬を繋留させるようにすること。ただし、口網を付けて牽行するものはこの限りでない。
  • 第十三条 航海中、家畜が伝染病に罹患し、もしくは罹患した疑いがあり、又は牛疫もしくは狂犬病に感染した恐れのあるときは、船長はその家畜を隔離し、病毒に汚染し、又は汚染した疑いのある場所及び物品は消毒すること。
    前項の家畜が斃死したときは、その屍体は消毒液を浸した筵、又は菰等により全体を包み、病毒の拡散を防ぐこと。但し、領海外においてはこれを投棄することができる。
  • 第十四条 家畜防疫委員は、地方長官において、その所属する官吏、吏員、もしくは市町村吏員、又は獣医の中から任命すること。評価人は、地方長官において、その所属する官吏、吏員、又は市町村吏員、及び畜産業に経験のある者の中から選定すること。
  • 第十五条 家畜伝染病予防法第十五条の証票は、別記様式による。
  • 第十六条 本則中、地方長官とあるものは、東京府においては警視総監とする。 本則中、市町村長とあるものは、市制又は町村制を施行していない地域においてはこれに準ずる者とする。
附則
  • 本則は、家畜伝染病予防法施行の日から施行する。
  • 明治三十年農商務省令第一号は廃止する。
(別記)略

家畜伝染病検疫規則

(大正十二年一月十九日農商務省令第二号)
家畜伝染病検疫規則を左の通り定める。
  • 第一条 家畜伝染病予防法第二十条の検疫は、北海道函館港、大阪府大阪港、神奈川県横浜港、兵庫県神戸港、長崎県長崎港、同県厳原港、福井県敦賀港、山口県下関港、福岡県門司港及び鹿児島県鹿児島港においてこれを行う。但し、当分のあいだ、鹿児島港では家畜及びその屍体、並びに綿羊毛、駱駝毛、アルパカ毛、及びカシミヤ毛以外の獣毛の検疫を行わない。函館港、長崎港厳原港、下関港、及び門司港では、綿羊毛、駱駝毛、アルパカ毛、及びカシミヤ毛以外の獣毛の検疫を行わない。
  • 第二条 農商務大臣は、検疫施行上必要があると認めるときは、検疫を受けるべき物の種類を限定し、その検疫を受けるべき海港を指定することができる。この場合においては、少なくとも十日以前にその旨を告示すること。
  • 第三条 外国又は家畜伝染病予防法を施行しない地方から入港した船舶のうち、伝染病に罹患し、罹患した疑いがあり、もしくは牛疫に感染した恐れのある家畜、又はその屍体を搭載したものは、その船舶内における検疫及び消毒が終わるまで検疫信号を掲げること。
    前項の信号は、昼間は前檣頭に第一号様式の旗を掲げ、夜間は同所に紅灯一個、その下に白灯二個を上下に連掲すること。
  • 第四条 検疫官吏は、検疫を受ける必要のある物を搭載した船舶を臨検し、船長に代わって(直接)その職務を行う者に尋問し、第二号様式の調書を作成すること。
  • 第五条 検疫官吏は、船舶において家畜の検診、もしくは家畜の屍体の検案、又は肉骨皮毛類の検査を行い、左の処分を行うこと。
    • 一 家畜伝染病予防法第四条及び第五条の家畜で、殺すことを必要とするものを殺場に送致させること。
    • 二 前号以外の家畜は、直ちに繋留場に送致させること。但し、朝鮮総督府が発給した検疫証明書を有する畜牛であり全群健康と認めるもの、並びに犬、及び支那、西比利亜(シベリア)以外の地から輸入もしくは移入する鶏、鶩で、検疫官の判断により繋留の必要が無いと認めるものは、この限りで無い。
    • 三 家畜の屍体は、焼却場に送致させること。
    • 四 肉骨皮毛類は、消毒場に送致させること。但し、輸出地において日本の官憲が発給した屠殺前の健康証明書があるもの、及び屠肉検査の証明を受けた生肉、及び移出地において屠肉検査を証明を受けた生肉、その他、検疫官吏の判断により消毒の必要が無いと認めるものは、この限りで無い。
  • 第六条 前条第二号の規定により、繋留地に送致させた家畜の繋留期間は左の通りである
    • 一 牛、綿羊、山羊  十五日。但し、支那、西比利亜(シベリア)、朝鮮から輸入、又は移入するもので、検疫所に隣接する指定屠場において屠殺するもの、及び、支那、西比利亜、朝鮮以外の地から輸入、又は移入するものは七日まで短縮することができる。
    • 二 馬  十日。但し、支那、西比利亜(シベリア)、朝鮮以外の地から輸入、又は移入するものは五日まで短縮することができる。
    • 三 豚  十日。但し、指定屠場において屠殺するものは七日まで短縮することができる。
    • 四 鶏、鶩  二日。
    • 伝染病に罹患した家畜は、その快復後二十日間、狂犬病に感染した恐れのある家畜は九十日間、狂犬病に感染した恐れのある家畜のうち検疫所において予防液の注射を行ったものは十四日間繋留すること。伝染病に罹患した疑いのある家畜は、その疑いが無くなるまで繋留すること。繋留中、家畜が牛疫、流行性鵞口瘡、羊痘に罹患したときは、これを同一の畜舎(に繋留すること。)及び、検疫官吏の判断により病毒に汚染した疑いがあると認める場所に繋留した牛、綿羊、山羊は、畜舎又は場所の消毒が完了した後二十日間これを繋留すること。
      但し、牛疫に感染した恐れのある家畜以外の家畜のうち、検疫所に隣接する指定屠場において屠殺するものは七日間まで短縮することができる。 繋留中、家畜が炭疽、気腫疽、鼻疽、仮性皮疽、牛の伝染性肋膜肺炎、豚虎列刺(コレラ)、豚疫、豚丹毒、加奈陀馬痘、綿羊山羊の疥癬に罹患したときは、これと同一畜舎に繋留した家畜は、畜舎の消毒完了後十日間これを繋留すること。但し、検疫所に隣接した指定の屠場、又は場所において殺す場合は七日まで短縮することができる。
      繋留中、家畜が家禽虎列刺(コレラ)に罹患したときは、これと同一畜舎に繋留した家畜は、畜舎の消毒完了後五日間これを繋留すること。但し、指定の場所において殺す場合は三日まで短縮することができる。
      伝染病に罹患した疑いがある家畜が発生したときは、これと同一場所に繋留したものは、感染の疑いが無くなるまで繋留すること。
      前六項の規定は、伝染病に罹患した家畜と同一船にいた家畜を、繋留場に送致した場合の繋留期間に準用する。
      指定屠場に送付する家畜は、検疫証明書が交付された当日に屠殺させること。
  • 第七条 前三条の規定は、家畜伝染病予防法第二十条第二項の規定により行う検疫に準用する。
  • 第八条 検疫官吏は、検疫を終えたときは第三号様式の証明書を交付すること。
    但し、消毒を行った獣毛については包装毎に第四号様式の証明書を交付すること。
  • 第九条 検疫港所轄の地方長官は、所属官吏(待遇官吏を含む)に検疫官吏を命ずることができる。
  • 第十条 第三条の規定に違反した者は、百円以下の罰金、又は科料に処す。
附則
  • 本則は、家畜伝染病予防法施行の日から施行する。
  • 明治三十九年農商務省令第十一号は廃止する。
(様式類 略)

獣疫調査所血清類売払規則

(大正十二年一月十九日農商務省令第三号)
獣疫調査所血清類売払規則を左の通り定める。
  • 第一条 獣疫調査所において売払を行う血清類は左の通り。
    炭疽血清 気腫疽血清
    豚虎列刺(コレラ)血清 豚丹毒血清
    加奈陀馬痘血清 家禽虎列刺(コレラ)血清
    家禽実扶的里(ジフテリア)血清 腺疫血清
    炭疽第一予防液 炭疽第二予防液
    気腫疽予防液 狂犬病予防液
    豚虎列刺(コレラ)予防液 豚疫予防液
    豚丹毒予防液 牛の伝染性流産予防液
    腺疫予防液 ツベルクリン
    マレイン 炭疽沈殿素血清
    気腫疽沈殿素血清 豚丹毒沈殿素血清
    牛肉沈殿素血清 馬肉沈殿素血清
  • 第二条 血清類の売払価格は別に告示する。
  • 第三条 第一条の血清類中、炭疽第一予防液、炭疽第二予防液、狂犬病予防液、豚虎列刺(コレラ)予防液、豚丹毒予防液、及び、牛の伝染性流産予防液は、官公署、畜産組合、又は獣医に限り、これを売払うことができる。
  • 第四条 血清類の売払を受けようとする者は、種類及び数量を記載し、獣疫調査所長に願い出ること。
  • 第五条 血清類の代金は、買受申し出の際、獣疫調査所に納付すること。
附則
  • 本則は、家畜伝染病予防法施行の日から施行する。

家畜伝染病予防法施行心得

(大正十二年一月二十日農商務省訓令第一号)
庁府県(東京府を除く)
家畜伝染病予防法施行心得を左の通り定める。
  • 一 家畜伝染病が発生したときは、それが終息するまで第一号様式により毎月十日までに前月の状況を農商務大臣に報告すること。但し、牛疫、牛の伝染性肋膜肺炎、流行性鵞口瘡、羊痘及び豚虎列刺(コレラ)については、月表のほか、特殊な状況を生じたときはその都度報告すること。
  • 二 家畜伝染病予防法第七条の規定により、免疫血清又は予防液の注射を行ったときは、注射完了後その成績を調査し、遅滞なく第二号様式、又は第三号様式により、その状況を農商務大臣に報告すること。
  • 三 免疫血清、予防液、又は診断液の交付を受けたときは、毎年四月三十日までに、第四号様式により前年度におけるその受け払いについて獣疫調査所長に報告すること。
  • 四 家畜伝染病予防法第十三条の規定による届け出は、一年分を取りまとめ、第五号様式により、翌年一月末日までに農商務大臣に報告すること。
  • 五 伝染病に罹患し、もしくは罹患した疑いがあり、又は牛疫もしくは狂犬病に感染した恐れのある家畜を殺そうとする場合は、その所在の場所において行うこと。但し、特別の事由により、焼却又は埋却を行う場所において殺す場合、又は化製場もしくは屠場において殺す場合はこの限りでない。
  • 六 家畜伝染病予防法第八条第二項の規定による化製は、消毒装置、その他病毒が拡散することを防止できる設備を持つ化製場において行わせること。
  • 七 家畜伝染病予防法第二十条の検疫を行ったときは、毎月十日までに、前月中の検疫成績を第六号様式により農商務大臣に報告すること。

家畜伝染病予防に関する消毒方法

(大正十二年一月二十日農商務省告示第九号)
家畜伝染病予防法施行規則第九条の規定により、消毒の方法を左の通り定める。
  • 第一 家畜伝染病予防のため施行する消毒の方法は左の四種とする。
    • 一 蒸気消毒
    • 二 煮沸消毒
    • 三 薬物消毒
    • 四 発酵消毒
  • 第二 蒸気消毒は、消毒の目的物を一時間以上、摂氏百度以上の蒸気に触れさせること。被服、毛布、毛、器具類等の消毒に適する。
  • 第三 煮沸消毒は、消毒の目的物を水中に浸し、沸騰後一時間以上煮沸すること。第二に掲げるもののほか、肉、骨、角、蹄、飼料等の消毒に適する。
  • 第四 薬物消毒に用いる薬剤、及びその用法は左の通り。
    • 一 煆製石灰末(酸化カルシウムの粉末)
      使用する際には、煆製石灰(酸化カルシウム)に小量の水を加えて粉末にすること。
      畜舎の床、糞便、厩肥、糞尿溜、汚水溝、湿潤な土床などの消毒に適する。
    • 一 石灰乳(十倍) (煆製石灰(炭酸カルシウム)一分、水九分の割合)
      使用する際には、煆製石灰(炭酸カルシウム)に水を少しずつ加え、撹拌して製造すること。
      畜舎の隔壁、隔木、床、欄棚、その他病毒に汚染した場所の消毒に適する。
    • 一 クロール石灰
      畜舎の床、井水、用水、汚水溝などの消毒に適する。
    • 一 クロール石灰水(二十倍)(クロール石灰五分、水九十五分の割合)
      使用する際には、クロール石灰に水を加え、撹拌してこれを製造し、その上澄みを用いること。
      用法は石灰乳と同じ。
    • 一 石炭酸水(二十倍)(防疫用石炭酸五分、塩酸一分または食塩三分に対し、水九十四分または九十二分の割合)
      加熱して溶融させた防疫用石炭酸を水に加え、撹拌した後、塩酸または食塩を加えて製造すること。
      手足、畜舎、屍体、欄棚、器具機械、革具類などの消毒に適する。但し手足等の消毒には石炭酸水を更に水で二倍に希釈したものを使用すること。
    • 一 昇汞水(しょうこうすい)塩化水銀(Ⅱ)(千倍)(昇汞一分、塩酸十分、水九百八十九分の割合)
      塩酸を加えた小量の水に昇汞を溶かした後、水を加えて製造する。
      昇汞錠(一錠中、昇汞0.5グラム含む)を使用する場合は、その一錠を五百立方センチメートルの水で溶かして製造すること。
    • 一 昇汞水(しょうこうすい)塩化水銀(Ⅱ)(千倍)(昇汞一分、塩酸十分、水九百八十九分の割合)
      塩酸を加えた小量の水に昇汞を溶かした後、水を加えて製造する。
      昇汞錠(一錠中、昇汞0.5グラム含む)を使用する場合は、その一錠を五百立方センチメートルの水で溶かして製造すること。
      手足、畜舎、畜体、器具機械の消毒にはこれを使用してはならない。
    • 一 フォルムアルデヒード
      室内、被服、毛布、畜舎、骨、毛、角、蹄、革具類、貴重な器具機械等の消毒に適する。但し、密閉することができない室内の消毒には適さない。
      フォルムアルデヒードを使用して消毒する際には、室内、又は消毒用器の容積百立方尺(0.3×0.3×0.3×100㎥)に対し、フォルマリン四十立方センチメートル以上を噴霧もしくは蒸発させ、又はフォルムアルデヒード十五グラム以上を発生させ、同時に百立方センチメートル以上の水を蒸発させること。この割合で処置した後、七時間以上密閉しておくこと。フォルムアルデヒードを使用して、毛束、被服、毛布又はこれに類似する物品を、その内部まで消毒する場合は、真空装置を使うこと。この場合における消毒時間は、装置及び物品の種類により定めること。
    • 一 フォルマリン水(フォルマリン一分、水三十四分の割合)
      畜舎、畜体、屍体、器具機械、骨、毛、角、蹄、革具類等の消毒に適する。
    • 一 クレゾール水(クレゾール石鹸液三分、水四十七分の割合)
      クレゾール石鹸液を水に溶かして作ること。
      手足、被服、畜舎、畜体、欄棚、器具機械、革具類等の消毒に適する。
    • 一 クレゾール硫酸溶液(粗製クレゾール二分、粗製硫酸一分、水九十七分の割合)
      粗製クレゾールに粗製硫酸を「混和振蘯」させた後、二十四時間以上を経過した後水を加えて作ること。
      糞尿溜、汚水溝等の消毒に適する。
    • 一 クレオリン水、クレシン水(クレオリン、クレシン三分、水九十七分の割合)
      石炭酸水の代用として使用することができる。
    • 一 硫黄石灰水(昇華硫黄三分、煆製石灰一分、水百四十分の割合)
      煆製石灰(酸化カルシウム)一分を水四十分に溶かし、昇華硫黄三分を加え、蒸発水分を補いながら二時間撹拌煮沸した後、水百分を加えて作り、その上澄みを使用すること。
      薬浴に適する。
    • 一 毒酸食塩水(塩酸二分、食塩十分、水八十八分の割合)
      皮の消毒に適する。
    • 一 粗製塩酸、粗製硫酸
      糞尿溜、汚水溝等の消毒に適する。
  • 第五 発酵消毒は、幅四~五尺、深さ五~六寸、長さ適宜の土溝を造り、これを病毒に汚染されていない敷藁、厩肥などで埋め、その上に消毒が必要な糞便、敷藁厩肥などを四~五尺の高さに堆積し、その表面には病毒に汚染されていない筵、菰、敷藁、厩肥などにより適当の厚さで覆い、その上を土で覆い、少なくとも二週間放置しておくこと。
    牛糞、豚糞を消毒する際には、発酵を十分に促すために適当な量の藁類を混ぜること。
  • 第六 消毒方法の応用
    • 一 畜舎の土床は、深さ一尺(0.3m)以上掘り起こし搬出した後、煆製石灰末(酸化カルシウムの粉末)またはクロール石灰を散布し、新鮮な土を入れ、搬出した土は焼却または埋却すること。但し、牛の伝染性流産、馬綿羊山羊の疥癬、家禽虎列刺(コレラ)、加奈陀馬痘、仮性皮疽の場合には、土床を掘り起こさず煆製石灰末、クロール石灰、フォルマリン水、クレゾール水を十分に散布することにより消毒しても良い。
    • 一 著しく汚物が固着した畜舎、または欄棚の消毒は、予め熱□汁(粗製加里(炭酸カリウム)もしくは曹達(ソーダ、ナトリウム化合物)一分、水二十分、または新製の木灰一分、水五分を煮沸して作る)、又は熱湯により洗浄した後、消毒を行うこと。
    • 一 畜体の消毒は、昇汞水、フォルマリン水、又はクレゾール水で湿した布によってきれいに拭き、特に汚物が付着した部分は前記の消毒薬を十分に用意し洗浄すること。
    • 一 屍体、又は物品を運搬しようとするときは、昇汞水、石炭酸水、フォルマリン水、又はクレゾール水で湿した布又は綿類によって病毒を漏らす恐れのある「天然孔」その他の箇所をふさぎ、昇汞水、石炭酸水、フォルマリン水、又はクレゾール水で湿らせた筵、菰類によって全体を包むこと。
    • 一 病畜を牽付途中、又は屍体を運搬中において、糞尿その他汚物を漏らした時は、病毒を含まないものを除き、これを除去し、その場所に昇汞水、石炭酸水、又はクレゾール硫酸水を十分散布し、除去した汚物は適当な場所において焼却、埋却、又は消毒すること。
    • 一 糞尿溜及び汚水溝は、煆製石炭末、クロール石灰、クレゾール水、クレゾール硫酸水、粗製塩酸、又は粗製硫酸を投入撹拌し、その汚物を浚渫した後、更に石灰乳、クレゾール水、又はクレゾール硫酸水により消毒すること。浚渫ができないときは覆いをして五日間以上放置すること。浚渫した汚物は深く埋却すること。
    • 一 皮は、塩酸食塩水中に二日間以上漬けておくこと。
    • 一 芽胞性病毒に対しては、次の消毒薬の一つを使うこと。
      昇汞水 石炭酸水(塩酸を加えたもの)
      クレゾール硫酸水 フォルマリン水
      クロール石灰水 粗製塩酸
      粗製硫酸 塩酸食塩水

獣疫調査所において売払を行う血清類の価格

獣疫調査所において売払いを行う血清類の価格を左の通り定める。
大正十年四月農商務省告示第七十五号及び同年七月農商務省告示第百七十七号は廃止する。
(大正十二年一月二十日農商務省告示第十号)