犬の引き取りに関する条文の追加
昭和29年4月30日「狂犬病予防法」に以下の条文が追加されました。
狂犬病予防法より抜粋
(犬の引取)第五条の二 予防員は、犬の所有者からその犬の引取を求められたときは、これを引き取つて処分しなければならない。この場合において、予防員は、その犬を引き取るべき場所を指定することができる。
*この条文は、昭和48年「動物の保護及び管理に関する法律」制定時に移行された事が分かります。
動物の保護及び管理に関する法律より抜粋
(犬及びねこの引取り)第七条 都道府県又は政令で定める市(以下「都道府県等」という。)は、犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときに、これを引き取らなければならない。この場合において、都道府県知事又は当該政令で定める市の長(以下「都道府県知事等」という。)は、その犬又はねこを引き取るべき場所を指定することができる。
2 前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又はねこの引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。
3 都道府県知事は、市町村長(第一項の政令で定める市の長を除き、特別区の区長を含む。)に対し、第一項(前項において準用する場合を含む。以下第六項及び第七項において同じ。)の規定による犬又はねこの引取りに関し、必要な協力を求めることができる。
4 都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする公益法人その他の者に犬及びねこの引取りを委託することができる。
5 都道府県等は、第一項の引取りに関し、条例で定めるところにより、手数料を徴収することができる。
6 内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、第一項の規定により引取りを求められた場合の措置に関し必要な事項を定めることができる。
7 国は、都道府県等に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、第一項の引取りに関し、費用の一部を補助することができる。
(狂犬病予防法の一部改正)
4 狂犬病予防法(昭和二十五年法律第二百四十七号)の一部を次のように改正する。 第五条の二を削る。
以下に条文が追加された際の国会審議をまとめます。
- 第19回国会 衆議院 厚生委員会 6号(昭和29年02月16日)
- 第19回国会 参議院 厚生委員会 10号(昭和29年02月23日)
- 第19回国会 参議院 厚生委員会 11号(昭和29年02月25日)
- 第19回国会 衆議院 厚生委員会 10号(昭和29年03月02日)
- 第19回国会 衆議院 本会議 16号(昭和29年03月06日)
- 第19回国会 参議院 厚生委員会 20号(昭和29年03月29日)
- 第19回国会 参議院 厚生委員会 29号(昭和29年04月16日)
- 第19回国会 参議院 厚生委員会 30号(昭和29年04月19日)
- 第19回国会 参議院 本会議 37号(昭和29年04月22日)
▼
第19回国会 衆議院 厚生委員会 6号(昭和29年02月16日)原典1
○小島委員長 | 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。高橋等君。 |
---|---|
○高橋(等)委員 | 狂犬病に対しまする大衆の協力が少いために、野犬の捕獲その他について不便なことがたくさんあるというようことを伺うのでありますが、狂犬病の周知と大衆の協力を求めることに対していかなる方策を従来講じておられますか、まずそれから伺いたいと思います。 |
○楠本政府委員 | お答えを申し上げます。ただいま御指摘のように狂犬対策、なかんずく野犬の捕獲に関しまましては、なかなか国民の協力を得 がたい現状にありますので、従来ラヂオ放送等を行う一方、絶えず電車その他にもポスター等を展示いたしまして、与論の喚起に努めております。一方、お手元 に差上げましたようなパンフレット等も厚生省においてしばしば作成いたしまして、これを配布して協力を求める方法に努力いたしておる次第であります。 |
○高橋(等)委員 | 次に犬の捕獲人といいますのはどういうような性格を持つたものでありますか。犬の捕獲を業としておる者であるか。あるいはまた犬の捕獲は副業であつて、いろいろなことをなしておるのか。捕獲人の性格といいますか、そういうことについてお答え願いたい。 |
○楠本政府委員 | 現在の捕獲人は、都が専任の職員として雇上げておる職員でございます。従つて他に何ら職業を持つでおるものではございません。 |
○高橋(等)委員 | 東京都の話をお伺いしているのではないので、全国にわたつてのお話を私は伺つているのであります。 |
○楠本政府委員 | 現在法律規定いなしております通り、各府県を通じて、これは府県が責任を持つて雇い上げました職員を使つておるけであります。 |
○高橋(等)委員 | そうするとこれは職員なんですか。犬を捕獲することを専業としてしる者なんですか、どうなんですか。 |
○楠本政府委員 | 専業にいたしておりますが、これらは府県知事から任命されまして用人ではありますが、府県の職員と働いておるわけであります。 |
○高橋(等)委員 | そうしますと、この捕獲人に対する報酬はどうなつておりますか。またその月当りの収入、東京地方その他にわけて、月当りの収入をお示し願いたいと思います。 |
○楠本政府委員 | お答えを申し上げます。月額で俸給を出しますほかに、大体において各府県とも一頭幾らといつて、報奨的に若干の割増しを加えておる実情ございます。 |
○高橋(等)委員 | その金額をお知らせ願いたい。 |
○楠本政府委員 | 一万五千円内外の俸給でございます。 |
○高橋(等)委員 | 捕獲人の数は一体全国でどれくらいでありますか。あるいはもつと言えば、東京あるいは普通の府で何人くらいおりますか。及び一保健所当りをどれくらいになりますか。それだけの予算がはたしてあるのかないのか。 |
○楠本政府委員 | 全国で捕獲人の数は、専任として常時これに従事いたしておりますものが五百七十名で、次に臨時に雇い入れます、たとえば期間を定めて一箇月あるいは二箇月特にその作業を実施いたしますときに臨時に職員といたすものが約一千名程度ございます。 |
○高橋(等)委員 | これは全国ですか。 |
○楠本政府委員 | さようでございます。全国の集計でございます。 |
○高橋(等)委員 | この程度の捕獲人では――たくさんおる野犬は、東京だけでも五百人や七百人の人間では私はできないと思う。これでは結局 狂犬予防法というものをつくつて捕獲人があつても、実際は犬はほとんどとれぬと思います。この数字から見ればとれぬのがあたりまえじやないかと思います が、どうお考えですか。 |
○楠本政府委員 | この犬の捕獲作業は捕獲人だけで実施するわけでございませんで、捕獲人のほかに、同時に運転手あるいは公務員たる予防員あ るいは補佐、かようなものがつきまして、一つの班をつくて捕獲作業に従事するわであります。従つて、現実に現場で働きます職員の数かなりの数に上つている ものと考えられます。 |
○高橋(等)委員 | 少し話がが飛びます。が、予防員は全国でどれくらいいるのでございますか。 |
○楠本政府委員 | 予防員は全国で、専人にその仕事だけをいたしております者が百名程度で、その他獣医師であつて、府県の公務員でありますた めに、若干他の仕事も責任を持つて実施しておるような職員で、同時に予防員を兼ねております老が、約千四百名おります。なお若い獣医師等で、その補佐とし て働いております者が約百五十名おります。 |
○高橋(等)委員 | ちよつとうかつですが、全国に保健所の数はどれくらいありますか。 |
○楠本政府委員 | 現在七百七十箇所あります。 |
○高橋(等)委員 |
そうしますと、ただいまあげられた数字を見ますと、一保健所管内に一体何人おるか。何か数字の間違いではないかと私は思 うのです。その点はあまりつつ込んで伺つてもどうかと思いますが、もし間違いならば間違いとおつしやつていただきたい。どうもふに落ちない。こんなことで はやれるはずがないのです。 それから次に捕獲した犬の処置ですが、これはどうなさつておりますか。犬をとらまえて来る。それから殺害までの間にはどういう手続をとりますか。 |
○楠本政府委員 | 捕獲いたしました犬は、一応犬の抑留所に抑留いたしておきます。その間にこれを公報でもつて公示いたしまして、もし万一飼犬がとられたような場合には引取りに来ることができるようになつております。なおこの抑留期間は従来は五日間抑留しておいたわけでございます。 |
○高橋(等)委員 | 抑留所といふのは一体保健所の中にあるのですか、どこにあるのですか。またそれの監督はどうなさておるのですか。 |
○楠本政府委員 | 抑留所は府県によつて大分所在の場所は違います。保健所に付置してあるところもございますが、多くは保健所付外の場所にございます。と申しますのは、たくさんの犬がきやんきやん鳴いたりしてじやまになりますので、得て比較的さわりのない場所に抑留をしております。 |
○高橋(等)委員 | この抑留所は政府が家賃を払つておるとか、何か政府が直接管理いたしておるのですか。 |
○楠本政府委員 | 各府県が抑留所を設置いたしまして、府県がこれを責任を、もつて管理いたしておるわけであります。 |
○高橋(等)委員 | それで殺害後の肉とか皮とかの処置はどういうふうにやつているのですか。 |
○楠本政府委員 | 大体引取手がなくて処分いたしました犬は、きわめて安く払い下げるのが例となつております。払い下げられました結果は、肉は主として肥料、皮革等は他に利用いたしております。 |
○高橋(等)委員 | 長々といろいろこまかいことをお聞きいたしましたのは、結局捕獲人自体について、政府として十分な関心をもつてお取締り をいただかなければならない点がたくさんあると考えておるものですからお伺いいたしたのであります。それで例をあげてみますれば、抑留所と申しますのは、 あなたがおつしやる形の上はどうなつておるかしらぬが、捕獲人の住宅の近所とか、あるいは住宅内とか、地方としてはそういうところにあるのが例でありま す。そうして犬が捕獲されると飼主がもらい下げに行く。そうすると飼育料と称してべらぼうな金をとりまして犬を返しておるのであります。また捕獲人は路上 の野犬に興味を持つよりも、むしろ飼犬に興味を持ち、種類のいい犬をとりたがつて、野犬の方はおついでである。こういう傾向が非常に頻繁にわれわれの目に 立つのであります。そこで先ほど捕獲人の収入なんかを伺いましたが、専任であろうと思うのですが、一万五千円内外で、いろいろな点から見て非常にむずかし いと思ふのですが、捕獲人自体については十分な取締りをやつていただかなければならぬ点が多いと考えるのです。それでそれらについてどういうような処置を おとりになつておるか、またその実績がどういうふうになつておるか、こういうことも一応伺つておきたいと思います。 |
○楠本政府委員 | 御指摘の点、さような事実も確かに私は卒直に認めざるを得ない状況でございまして、まことに恐縮をいたしてをりますが、現 在飼主が引取る際に、飼育料として公然ととります金額は一日当り三十円ないし五十円でございます。これが得てして高くとられるというようなことがございま すならば、今後大いにこの辺の監督を厳重にいたしまして、さようなことのないような処置をとりたいと存じます。なお野犬の捕獲は、御指摘のように、路上等 に徘徊している犬を捕獲すべきものでありまして、庭先あるいは玄関先等に休んでいる犬はとるべきものではないのであります。しかしかような点につきまして も、従来比較的さような犬は捕獲が容易なために、得て実績をかせぎたくてかようなことをした例も聞いております。今後は必ず現在法律に規定してありますよ うに、公務員たる予防員の指揮監督を受けて、捕獲人夫が実際の作業をするというふうに厳格に指導いたしたいと考えております。なおその他いろいろ行き過ぎ の点もあるかに思われますが、今後は注射済みの犬あるいは登録犬をとるということはなるべく慎む方針でありまして、そのために現在考えておりますことは、 首輪につけております注射済証あるいは登録済証見やすい色刷り等にいたしまして、一見この犬は注射が済んでおる、この犬は登録が済んでおるということを明 らかにして、間違いの起きないように実行いたしたいと考えております。 |
○高橋(等)委員 | 今の点は大衆が非常に迷惑をいたす問題も起つて来るわけでありますから、十分御留意を願いますとともに、皮とかその他の売却にあたりましても、十分なる監督を保健所がやるようにお勘めをいたします。それから予防員というのはこれは主として獣医でありますか。 |
○楠本政府委員 | すべてこれは獣医であります。 |
○高橋(等)委員 | そうしますと、大体獣医は一保健所当り一人くらいは常時専任がおるのでありますか。 |
○楠本政府委員 | 現在獣医は公衆衛生関係の技術者で最も数が多く、現在全国で大体四千数百名が勤務をいたしております。従つて保健所等におきましても技術者としては最も多く配置してある種類に属するわけでございます。 |
○高橋(等)委員 | 「土地、建物又は船車内に入つた場合において、これを捕捜するためやむを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において、」と書いてありますが、これは文句はよいのですが、どういう意味ですか。 |
○楠本政府委員 | やむを得ないという意味は他に方法がないという意味でありまして、たとへば外に出ない場合でも棒をもつて追い出すとか、あ るいは石を投げて追い出すとか、または家人に頼んで追い出してもらえるというようなときには、これは方法がありますから立入りができないわけであります。 なお「合理的に必要」という合理的という意味でありますが、これは必要最小限度の範囲においてのみ立ち入ることができるという意味でありまして、単に庭先 だけに入るという意味でございまして、家屋敷中を追いまはすということはこの最小限度の範囲を越えるものと考えておるわけでございます。 |
○高橋(等)委員 | それで逃げた犬をつかまえますために人家に立ち入ることを従来認めた例がありますか。たとえば犬が人をかんだ、これはも う狂犬だと思えるような、あるいは狂犬と思えないでも人をかむ危険がある犬がおる、これをつかまえる、あるいは目の前で人をかんだが逃げた、これを追つか けて行つてかまえる、こういうことを認めた例がありますか。またこれが認められておるのですか、認められておらないのですか。 |
○楠本政府委員 | 従来は逃げ込みました場合には、家人の承諾を求みて入ることにいたしておつたわけでありますが、ただこの場合、従来の例から見ますると、決して承諾をしてくれない。むしろ積極的に犬をかばう、隠すというような事態が普通であつたように思われます。 |
○高橋(等)委員 | 諸外国の立法例はどうなつておりますか。 |
○楠本政府委員 | 諸外国におきましては……。 |
○高橋(等)委員 | 諸外国はどこかひとつ話してください。諸外国ではわかりません。 |
○楠本政府委員 | イギリスとかオーストラリアとかいう大体文明国におきましては、すでに狂犬病は根絶されておりますので、その必要がござい ませんで、現在狂犬が多いところはアメリカ合衆国等でございますが、アメリカ合衆国におきましては、かような立入権あるいは野犬の捕獲等は実施をいたして おりません。しかしながらこれは日本と事情が違うのでありまして、外国におきましては、犬を放し飼いにするというような習慣もございません。また犬の数も 日本比べて非常に少い現状であります。ただアメリカにおきましては野獣、きつねとかたぬきとかおおかみとか、かようなものに狂犬病が流行いたしております のが、一番困つておる現状だそうでありまして、従つて日本と事情も違いますが、かような日本のような法律はないように聞いております。 |
○高橋(等)委員 | 住居に侵入権は認めておらぬわけですね。 |
○楠本政府委員 | ええ。 |
○高橋(等)委員 | それで予防員が人家に立ち入ることができるということになつておるのだが、立ち入つて何をするのですか。犬をつかまえるのですか。どうするのですか。 |
○楠本政府委員 | 予防員は役人でありまして、犬をつかまえることもできないわけではございませんが、主として立ち入つて、捕獲人夫のいる道路の方に追い出すというのが、主たる仕事になるわけでございます。 |
○高橋(等)委員 | 捕獲の際に家に立ち入る場合は、家人の承諾を得るのですが、黙つて入つて行つて、入つちやいかぬと言つた場合に断るので すか。法文を見ると、入つ行つて拒まなければ、知らぬ顔をして入つて行つていいということになつておるのですが、それはどうなんですか。前からの御説明と 少し違うものですからお伺いします。 |
○楠本政府委員 | 入るに先だつて承諾を求めて入ることになつております。ただ正当な理由がなくて拒んではならぬというだけでありまして、理由さえあれば断ることができるわけであります。 |
○高橋(等)委員 | 断る正当な理由とは何ですか。 |
○楠本政府委員 | たとえば来客中であるとか、あるいは庭に種をまいたばかりで家庭菜園が荒されるとか、あるいはきれいな花、ばらでもつくつてありまして、そんなところで犬を追いまわしては困る、というようなときには、これは正当な理由と解釈されるのです。 |
○高橋(等)委員 | 捕獲の際に、人家等に逃げ込む犬ですが、大体とろうと思つたら上手にとつておるようにわれわれは見ておるのですが、これはパーセテージからいつたらどれくらいになるのですか。非常にむずかしいこまかいことをお聞きするようですが…。 |
○楠本政府委員 | これは従来の例から見ますと、逃げ込まれてとれないものが二割程度少くも考えられるそうであります。 |
○高橋(等)委員 | ただいまのお答えによりますと、二割程度の犬を追い出すために、予防員が人の家に入つて承諾を得て、犬を追い出す。この 立入権の問題のためにこの法律が必要になつて来る。しかしこの住居権の問題は私は非常に大切な問題だと思うのです。そこでこれを侵害する場合に、その目的 とその実効ということについてはよほど慎重に考えていただかなければならぬ問題だと考えます。それで今お伺いしますと、家人の承諾を得て入る。承諾を得る までに犬は実際逃げてしまう。追跡中の逃げている犬だから、承諾を得る前に、追い出してくれというわけで、家人を教育した方がいいわけです。最初にお伺い した問題はそれだつたのです。協力を求める方向に持つて来ねばうそだ。それでどうも住居権の侵害をするとしても、予防員の数も非常に少いのだし、それから 逃げる犬は二〇%だという、またその必要から考えましても、住居権を侵害することと比較すると、私はどうも問題であるように思うのです。住居権の問題から 行きまして、まあ犬が人の家に逃げたらもう没法子にしてやれというようなことをわれわれは考えたいと思うくらいです。そうしてもう一つ恐ろしいことは、逃 げた犬を追うて行くのですから、取り巻いてる連中は夢中になつて、飛びまわる。入つてはいいとなると、自然に捕獲人がかつてに人の家に入る習慣と口実を与 えるおそれがあると私は考えます。これは必ず起ると考える。そうゆうようなことについて、いはゆる住居権を侵害するにしては少し実効が少いのじやないか。 もしやるとすれば、きはめて特殊な場合にしぼつて考える必要があるのじやないだろうかということ、あるいはまた今いう捕獲人がかつてに入つて来るようなこ とになつたらたいへんですから、それらについて、何かその後ここでいろいろ質疑をしているうちこお考えがかわつているような点はありませんか。それをちつ よとお伺いしたい。それで私は質問を終ります。 |
○楠本政府委員 | 従来は、先ほど申上げましたように、繋留命令が出ております間は、たとい飼犬ということが明らかであつてもこれを捕獲する というようなことをいたしたわけでありますが、これはやはり予防注射も済んでいるりつぱな飼犬であれば、必ずしもこれを捕獲するというようなことは少し無 理じやないかと考えまして、今後は実際の運用上におきましては、繋留命令が出ておるときでも、重点的に真の野犬を捕獲するというふうに考えたいと存じま す。なお従来も捕獲人夫の行き過ぎというようなものがありますので、注意をして参りましたが、今後は絶対に捕獲人だけで作業をすることをやめさせまして、 必ず予防員が責任を持つて監督して作業をするというふうに、厳格に実行いたしたいと考えております。 |
○小島委員長 | 委員長からちよつと追加して政府委員にお尋ねしますが、家に逃げ込んだ犬というものは、現に人にかみついたことがはつきりし ている犬であるとか、あるいはその場でかみついて逃げ込んだとかあるいは前日とか前々日にかみついて、この犬と目星をつけられた犬というようなものに限る というようなことはできないのでしようか。 |
○楠本政府委員 | ただいま申し上げましたように、どの犬がかんだ犬かということがわからないような場合もありますし、未注射の野犬が危険で ありますので、私どもはただいまのお答え申上げましたように重点的にしぼるということにつきましては、やはり未注射の真の野犬というものであれば、やむを 得ず立ち入つても捕えるというふうに考えたいと思いますが、しかしこの点は、御趣旨の点はこの仕事を支障なく実施いたしますのに一つの考え方だと存じま す。特に高橋先生のお話とも関連して、きわめてしぼるという意味で一つの考え方だと思うのでございます。この点はもう少し技術的に研究をいたしてみたいと 考えております。 |
○滝井委員 | 一、二点お伺いいたしたいのですが、それは犬の引取手がなければ、予防員が政令の定むるところによつてこれを処分することがで きるのです。その場合には肉は肥料にし、皮は他に利用する、こういう御説明でしたが、現在大学その他研究機関においてこの小動物を実験に使用しておるが、 こういう野犬狩りで獲得した犬の引取り手がなければ大学その他に払いげるか、あるいはもつと安い値段で売り渡す、そういう方法は現在とられておりますか。 |
○楠本政府委員 | 現に研究機関等からは、その府県に対してぜひ犬を何とかしてくれぬかというような依頼がございまして、かような場合には大体無料で喜んで提供いたしておるのが例でございます。 |
○滝井委員 | ぜひそういうことをはつきり天下に周知させていただきたいと思います。現在研究機関はそういうことを知りません。従つておそら く申出手は非常に少いのではないかと思うのです。それが第一点第二点は、最近獣医師法の改正が行政改革本部の方で取上げられて、いわゆる小家畜、犬、ね こ、鶏等は、獣医師の対象から除外するというような意向があるやに聞いておるのです。そうしますと、保健所における予防員の人たちは、犬、ねこを対象にす る資格があるから獣医師を予防員に当てていると思うのです。もしそういうことになれば、何も獣医師でなくてもいいというようなこともあると思うのですが、 厚生省はこういう点はどうお考えでありますか。 |
○楠本政府委員 | 現在一部にただいま御指摘のような意見がございます。私どもはこれにつきましては、狂犬病の診断というようなことはそう簡 単にできることでもありませんので、犬、ねこの診断はだれがしてもいいのだというようなことに対しましては、必ずしも賛成をしかねるわけであります。従い まして私どもの意見といたしましては、現在獣医師たる資格の所有者が責任を持つて診断をするという建前で進みたいと考えております。 |
○滝井委員 | そうしますと、厚生省としては、これはちよつと問題をはずれますが、獣医師法の対象として犬、ねこ、鶏等を除外することは現在の公衆衛生の立場からはいけない、こう理解してさしつかえありませんか。 |
○楠本政府委員 | 鶏のことは別でございますが、少くとも犬、ねこはやはり正しい診断が必要であるという意味で、現在出ております一部の意見に対しては反対でございます。 |
▲▼
第19回国会 参議院 厚生委員会 10号(昭和29年02月23日)原典2
○委員長(上條愛一君) |
只今から厚生委員会を開きます。 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。先ず提案理由の御説明をお願いいたします。 |
---|---|
○国務大臣(草葉隆圓君) |
狂犬病予防法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。 狂犬病予防法の施行以来狂犬病の予防に努めました結果、その発生は、逐次減少して参りましたが、なお根絶に至らず年々相当数の発生をみる現状であります ので、更に一層狂犬病予防措置の強化に努め速かに日本全土からその根絶を図らなければならないと考えられる次第であります。本法律案は、これが対策の一環 といたしまして、次に述べるような改正を行おうとするものであります。 第一に、近時いわゆる野犬の激増に鑑み関係各方面からの要望に応え、その対策といたしまして狂犬病予防員が犬の所有者からその不要となつた犬の引取を求 められたときは、これを引き坂つて処分しなければならないこととして、犬の野犬化防止の一助といたしました点であります。 第二に現在狂犬病予防員が犬を捕獲しようとして追跡中に犬が土地、建物等に入つた場合、そこへ立ち入ることができないため、これを逃走させ捕獲の徹底を 期し得ない場合が多々ありましたので、捕獲するため止むを得ないと認める場合は職権の濫用を防ぐため必要な制限を設けて、その場所に立ち入ることができる ようにした点であります。 第三の改正点といたしましては、狂犬病が発生した場合には、けい留命令が発せられているにもかかわらずけい留されていない犬について、都道府県知事が、 緊急の必要があり、且つ、抑留を行うことが著しく困難な事情があると認めるときは、抑留のみによらず狂犬病予防員をして、これらの犬を薬殺させることがで きるようにしたことであります。この場合、都道府県知事は、人及び他の家畜に被害を及ぼさないよう必要な措置を講じなければならないこととし、薬殺の適正 化を図つております。 以上申し述べましたことが今回改正しようとする主要点でありますが、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことを御願いする次第であります。 |
▲▼
第19回国会 参議院 厚生委員会 11号(昭和29年02月25日)原典3
○理事(大谷瑩潤君) |
只今から厚生委員会を開会いたします。 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引続き質疑を行います。御質疑をお願いします。 それでは私からお伺いしますが、この狂犬病予防法の一部を改正する法律案に対しまする予算措置というものはどういう工合になつておりますか。 |
---|---|
○政府委員(楠本正康君) | 狂犬病予防対策に関します経費につきましては、現行法におきまして登録手数料というものを徴収することになつて おります。而もこの登録手数料は他の狂犬病予防以外の目的に使つてはならないということが規定してございます。従いましてこの手数料がすべての狂犬対策の 経費に充てられておるわけであります。なお、現在登録数が全国的に見まして約二百万頭でありますので、三百円の登録手数料といたしまして約六億円の経費で これを実施しておる結果と相成つております。 |
○高野一夫君 | 私はよくこれは知らないのですが、現在登録料を払つておりますね。あれは各地方の収入になるのとは違いますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 御指摘のようにこれは地方の収入でございます。府県の収入で、府県が狂犬対策の経費に使用いたしておるわけであります。 |
○高野一夫君 | このちやんと正規に飼つている犬で繋留されていない犬を薬殺する場合は、狂犬病の蔓延するとかというような憂えのある期間に 限るわけですか。そういう憂えのないふだんに放し飼いしてあるのも、保健所なら保健所のほうから行つて、どんどん捕獲して殺してしまうということはだめですか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 改正案におきまして薬殺は真に野犬逃走上やむを得ない場合、要するに狂犬病対策として真に止むを得ない場合にのみ一定の期間を限つて実施することが建前であります。従いまして単に野犬が多いからこれを整理しますというような意味で薬殺はできないことになつております。 |
○高野一夫君 | 現在各地によつて情勢が違うようですが、東京あたりでは放し飼いしているのはどんどん持つて行つてしまう。それであとからあ わてて保健所あたりにそれをもらい下げに行くというような場合が頻々としてあるのですが、そういうのはちよつと行過であつて、正規の業務に適したやり方で はないということになりますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現在の法律におきましては、繋留命令が出せることになつております。つまり犬を繋いでおけと或る期間を定めて繋 留命令を発せられることになつておりますが、この繋留命令を発せられた場合におきましては、たとえ飼い犬ということが明らかであつても、繋留していないも のはこれを捕獲抑留されることに規定されております。従いまして東京都の例にとりますと、現在繋留命令が出ておりますので、たとえ飼い犬であつても、放し 飼いにしておきます場合には、捕獲抑留されてもこれは法律の規定に基いて実施されることでありまして、必ずしも行過ぎとは申されません。併しながら繋留命 令の出ていない地方におきましては、或いは繋留命令の出ていない期間におきましては、飼い犬を、登録されている犬を捕獲抑留することはできないことになつ ております。併しながら実際の仕事のやり方としては、勿論すでに登録され、又予防注射もしてあるような犬を捕獲するのが目的ではありませんので、実際の運 営上には努めて野犬と明らかなものを捕獲するように指導をいたしております。併しながらその見分けができたい等の理由もありまして、しばしばこの飼い犬を 捕獲抑留する事態が発生をいたしておるわけであります。併しこれも現行法から言えば、別に違法というわけではございませんが、ただ運営上の仕事のやり方の 上から言つて、必ずしも当を得たものでなかろう、かように考えておる次第であります。 |
○高野一夫君 | もう一つ伺いますが、この繋留命令が出たとか或いはその期間であるとかいうようなことでなくとも、飼い犬を放し飼いにすると いうことは非常に困る場合が多いのです、実際問題として狂犬病の流行如何にかかわらず……。だから飼犬は必らず繋留すべしということにして、一日二十四時 間のうちこれが自分の家外に放し飼いされた場合は、一切かまわず捕獲、撲殺しても差支えないというような強いところまで行けませんか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 御指摘のように犬というものは、元来がこれはつないで飼うというのが当然のように思われますが、併しながら日本 におきましては、従来長い間犬を放し飼いにする習慣がついておりますので、今直ちにこれを絶対につないでおけ、而もつないでおかない場合は薬殺、撲殺とい うようなことは、実際問題として極めて困難があるのではなかろうか。むしろこの点は正しい犬の飼い方というようなものを十分に国民に対して普及する、徹底 させるということのほうが先決ではなかろうかと考えております。従いまして現在は繋留命令の出ていない所におきましては、一応放し飼いにしても差支えない ことになつております。併しこれはやはり正しい犬の飼い方というようなものを国民によく徹底させれば解決すべきもののように考えられます。 |
○湯山勇君 | 今のお話とも関連するのですが、野犬とそれから正式に登録された犬というものの明確な区別はどういうことでするわけでございますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現在登録いたしました場合には鑑札が下ります。これを頸輪に付けるということに相成つております。その鑑札の様 式は省令において規定しております。併しながら現在はこれが省令に規定してありますものは、小さなただほんの金の板でありまして、はつきりいたしませんの で、今後これをはつきりいたしますためには、何か色を付けた鑑札にするとか、或いはぶら下げるような仕組みの鑑札にすることが必要であろうと考えておりま すが、現在は鑑札で区別をいたしておるわけであります。 |
○湯山勇君 |
今の御答弁にもありましたように、実際は簡単に見ただけで登録犬と野犬との区別が付かないためにいろいろトラブルが起つている実情もあると思うのです。これをはつきり放されている場合でも、一見してそれとわかるような措置を速かに講じて頂きたい。 それから次に、予防員というものが獣医の中から任命されるようになつておりますが、これは各府県何名とかというような大体構想がおありでございますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現在予防員は専任、兼任含めまして約二千名近くおります。 |
○湯山勇君 | そうすると、大体各府県にこれを割振りいたしますと、まあ数十名という程度に相成るわけでございますね。これで果して今回の改 正にありますように予防員のみが建物とか船車内に入つてもいいという規定だけでこの狂犬病予防の万全が期せられるかどうか。この文章に書いてあることが規 定通りに実施できるかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現行法におきましても、捕獲人が犬の捕獲作業を実施いたします場合には、必ず予防員に指揮監督をさせて捕獲作業に従事することになつております。従いまして現在でも捕獲人だけが勝手に行動するということはございません。 |
○湯山勇君 | 建前はそうなつておるかも知れませんけれども、私が実は或る程度その被害を受けた経験もあります。決して予防員はついて参つて おりません。ただ役所の中でこうこうこういうふうなので、こちらのほうに行けという指図をするか或いはどこかへいて結局捕獲員だけが実際の作業に当るかど ちらかだと思うのです。従つて追跡しておる犬が建物の中に入つたような場合に捕えて行くということは実際は不可能だと思うのです、如何でございますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現行法の建前が必ず予防員の指揮を受けて捕獲作業に従事することに相成つております。併し只今御指摘のように私 どもも場合によりますと捕獲人だけが活動をするような場合があつて、甚だ残念に思つておりますことは率直に認めざるを得ません。併しながら今後はできるだ け府県を督励いたしまして、法の精神に則りまして必ず予防員が、官吏たる職員がついて現場作業をするというふうに厳重に監督いたしたいと考えております。 ただ、この人数の点から申しますと、現在は、捕獲人の数が全国で約千五百人でございまして、人数の数から申しますと、必ず捕獲人及び予防員を一つにいたし ました捕獲班が編成できるのでありまして、この点は今後できるだけ監督を厳重にいたしたいと考えております。ただ、ここで一つ附け加えさして頂きたい点は 現在犬の捕獲人は地方の長、府県から任命されました職員であります。従つて或る程度監督もできるわけでございます。ただ困つたことに、以前は捕獲人という ものは一つの商売のようなものでありまして、別にこれは役所の職員或いは役所の認可を受けたというものでなかつたわけであります。従つて現在なおそのよう な昔のいわゆる犬捕りという商売の、まあ商売人のなりきたりというようなものが若干存在をいたしておるのでございます。私どもはこれらのいわゆる昔の犬捕 りというものがときどき問題を起しますので、これらは速かに解決をいたしますようにいろいろ監督をいたしておりますが、最近殆んどこれは陰を失して参りま したが、今後一層努力をいたしまして、これら昔のなりきたりの犬捕りというものの撲滅を図つて、一方かようなものがあれば、必ず府県の職員として働くよう に注意をいたしたいと考えております。 |
○湯山勇君 | 今の点私もお尋ねしようと思つておつたのですが、もぐりの何といいますか、捕獲人に対しての取締りとか何んとかいう規定はございますでしようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現行法におきましては、捕獲人が犬を捕獲するその捕獲人は知事が、都道府県がこれを任命するということに相成つ ております。従つて知事が捕獲人として指定した者以外は犬の捕獲はできないことになつておりまして、その意味では明らかにこれは違法行為に相成るわけでございます。 |
○湯山勇君 | これは罰則か何かあるのでございますか、それにつきましては……。 |
○政府委員(楠本正康君) | この法には罰則というものは適用されておりませんが、併しながらあとで詳しく調べた結果をお答え申上げますが、 何らか制裁の手があるように考えております。現に東京都等はこの取締りに大いに力を入れまして、最近大分さようなものが減つて参つておりますが、併しこれ をどういう根拠においてやるかという点につきましては、のちほどお答えをいたすことにいたします。 |
○湯山勇君 |
まあ野犬の撲滅ということに民衆が協力しないという一つの理由はそこにあると思うのです。私どものところでもそうなんですが、 ほかでもそうだと思いますが、どんな飼犬でも、私どものほうでは犬殺しと呼んでおりますが、この犬殺しに狙われたらどんなにしておつても結局やられる、こ れが一つの通念でございます。でそれは今のような正しい捕獲人ともぐりの捕獲人との区別がつかない。これに対する取締りが十分できていないというところに もあるのじやないかと思いますので、これは一つ十分対策を講じて頂きたい。 それから更にお尋ねいたしたいのは、予防員が入ることのできる場所として、人の住居を除くとこうありますが、これは簡単に住居というば常識的にはわかる のでございますけれども、厳密にこれは何か規定する定義のようなものをお持ちになつてお書きになつたのでございましようか、ただ単に人の住んでいる所とこ ういう意味でお使いになつたのでございましようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | この場合住居の意味でございますが、これは単に部屋というだけではなく、例えば縁先であるとか、物置であるとか、洗濯場というようなものも一つの住居の観念に入ります。従いまして実際に立入りのできますものは、結局庭先というふうになるわけでございます。 |
○湯山勇君 | それはこのどういう意味でそういうふうな解釈をされたのでございますか。と申しますのは、この文章通り読めばです、必ず今おつ しやつたように庭先というふうにはとれないと思うのです。例えば母屋と納屋というふうなものが田舎にはたくさんあるのですが、そういう建物の構造が母屋に は入れないけれども納屋のほうはいいとか、或いは物置のほうはいいとかこういうような解釈ができるのではないかというようにもとれますし、その辺は非常に 問題を起しやすいところだと思いますので、重ねてお尋ねいたしたいと思います。 |
○政府委員(楠本正康君) | それはこの住居というものは、広く解釈いたしております理由は、その前に合理的に必要と判断せられる限度という ことが明らかに規定してございます。これはつまり必要最少限度の範囲という意味でございまして、従いましてこれを受けて住居となりますので、その住居は逆 に広く解釈されるということに相成るわけでございます。 |
○湯山勇君 | そのことに対してはそういう解釈の指示は各府県宛になさるのでございますか。住居とはこういうふうな意味でこうこうだということについては……。 |
○政府委員(楠本正康君) | 勿論法律の解釈並びに運営等については厳重に地方に徹底を図るつもりでございます。 |
○湯山勇君 | 最後にお尋ねしたいのは、私は野犬がこのようにたくさん殖えた原因は、現在の世相にあると思うのです。戦争中には食糧が乏しい という理由と、それから防寒具の関係で、私ども飼つておる犬まで供出いたしました。従つて戦争の終つたときには犬が少くて困つたはずでございます。ところ が戦後の世相がああいうふうに悪化したために、泥棒が非常に多くなりまして、結局泥棒を防ぐという意味かり非常にどこも犬を欲しがつたわけでございます。 そういうことがまあこういうふうな野犬が著しく多くなつたという一つの大きな原因をなしておると思うのですが、現在となつてはそういうふうにどんどん犬を 飼つたけれども、子供がどんどん生まれて来る。処置に困つて捨てる、こういうことになつたので、実際は今犬を飼つているところでも、犬の生れて来る子供の 処置に困ると思うのです。で一々雄犬を飼つている家で手術をするということは考えられませんので、雌犬の飼つている家で困るわけですが、そうかといつて 一々手術するというのも大変でございますので、そうするとお尋ねを先ずしたいのは、簡単に獣医師の所で何とかして堕胎をさせるというような方法はないでご ざいましようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現在殖えて困る犬は結局飼主がはつきりしておらない、責任を持つた飼主がない、半ば平野犬というような犬が最も 殖えて参りまして、これが又いろいろ私どもに迷惑をかけておる存在であります。従つて予防注射等もできません。登録も無論できない。かようなものを対象 に、それ以上に複雑な操作でありますところの避妊手術、或いは堕胎作業というようなことは、これは極めて困難だ、かように考えられます。 |
○湯山勇君 | 勿論今おつしやつたような、非常に複雑なものは別でございますけれども、大体まあ大都市は別として、田舎のほうでは成るほど正 式な登録はされていない、飼主もはつきりしてないといいながら、或る程度この家付きの犬だというのは大体はつきりしておるわけでございます。それで子供が 生まれるようになりますと、田舎でございますからえびを食べさすといいとか、或いはかにを食べさすと子供が堕りるとかいうので、随分そういう苦労もしてお るようでございます。結局放置して置くと堕胎手術をしてもらうということもなく、生まれるまで放つておいて、生れたらどこかへ捨てに行く。こういう事実も あるわけでございますので、簡単に、ほかのこととの関連でありますが、人間などに使われない程度で、例えばこれを飲ませれば犬ならば大丈夫という程度のも のを簡単に求めて、犬に飲ますというような方法があれば、私は非常に違つて来るだろうと思うのです。その点についてどうですか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 確かにさような、極めて簡単な、犬が喜んで食べるようなもので、食べれば堕胎ができるというものがあればよろし いのでございますが、犬は何分にも繁殖力の強い動物でありますので、犬の生命がなくなるような程度のことをしなければ、結局傾向的には堕胎はできんわけで す。従つて、犬の堕胎というものは結局手術に依存しなければならない。ここに困難があるわけです。これがまあ犬の、何と申しましようか、繁殖力の強さから 来る問題、かように考えております。 |
○湯山勇君 | 胎盤の構造なんかも人間と犬とうんと違いますね。だから案外簡単に堕りるような方法もあるのじやないかということを、私どもも 素人考えで考えたようなこともあつたわけです。自分の必要に迫られまして……。そういうのがあればと思つてお尋ねしたようなわけですけれども、何かそうい う点にも一つ、考慮の余地があるということだけお含み頂きまして、御善処頂きたいと思います。 |
○有馬英二君 | 今度の新らしい改正で薬殺することができるということがあるのですが、薬殺とはどういう薬を使うのですか。従来、私も飼犬を殺されたことがあるのですが、大抵ストリヒニンを用いているようでありますが、どういう薬を……。 |
○政府委員(楠本正康君) | これはストリヒニンを考えております。 |
○有馬英二君 | この間新聞か何かにちよつと書いておつたのですが、ストリヒニンで薬殺すると非常に残酷であるので、何か眠り薬を飲まして殺 すような方法がないだろうかということを、暗に犬に同情をする方の投書らしいのですが、そういうことを書いてありまして、私もこれは個人事だからなんです が、雌犬がストリヒニンの入つたものを食べて死ぬところを見ておつたのですが、実際全身にけい攣を起こして死ぬところは非常に残酷ですね。野犬ですから、 撲殺するくらいだから薬殺も差支えないだろうと言えばそれまでですが、もう少し何かいい方法はないでしようか、尤も、ストリヒニンが効果的で迅速でありま すから、効果の上るのは優れておりますけれども、何かはかにお考えはないですか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 私どもも犬を処分する方法につきましては、できるだけ安楽死させる方法を工夫いたしまして、例えますれば、捕獲 した犬を処分いたします場合は、現在では電気を通してひと思いに安楽死させる方法をとつております。ただ薬殺の場合でございますが、薬殺の条件といたしま しては、薬を置いた場所から極めて近い範囲で倒れる、つまり食べた殆んど瞬間的に効果が現われて来るようなことでありませんと、あとで取片付けができない ことになります。そこで実際に食べたのち、殆んど瞬間的に始末できるというものは、現在のところストリヒニン以外にはないのです。勿論眠り薬等を与えてや れば一番いいわけですが、これには相当時間がかかりますので、果してどこに行つて寐ておるかということを調べ出すに極めてほねでありまして、これは殆んど 不可能に近い。そこで現在のところは、技術的に申しまして、ストリヒニン以外に適薬はないと言わざるを得ないと、かように考えておるわけでございます。併 しこれらの点につきましては、今後なお研究の余地はあろうと存じます。 |
○有馬英二君 | この薬殺は、恐らく捕獲した犬を殺す方法ではないと私どもも考えますが、結局幾ら追い廻しても、なかなかつかまらない、そこ で何か食物の中に薬を入れてそこに置けば、犬が来て食べてそうして死ぬと、こういう考でやるのではないかと思いますが、そういう薬品を用いないで、何か口 の中に入つて噛んだらすぐ爆発して、それで一遍に死んでしまうという方法のほうが簡単ではないでしようか。その点において少し考察が必要ではないかと私は 思いますが……。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現在は一応ストリヒニンを考えておりますが。かような点につきましては、今後なお十分に研究いたして、もつと合理的な、而も完全な方法を一つ研究いたしたいと存じます。 |
○有馬英二君 | 狂犬病の発生の資料を見ますと、やはり東京が中心であつて、地方には非常に少い。東京、千葉、神奈川、埼玉というような、東 京附近が最も多い発生を示しておるようであります。でありますから、これの予防対策というものは、従つて全国的に一様にやる必要はないと言つてはおかしい かも知れませんが、それよりもやはり重点的にやらなければならん、こう考えておりますが、こういう点で予防の予算の使用をどういう工合にされております か、それをお伺いしたいと思います。 |
○政府委員(楠本正康君) | 只今御指摘のように、全く関東地方に局限された一つの流行と考えて差支えなかろうと存じます。従つてその対策も 勿論、流行地に集中して実施することは申すまでもございません。従つて、現在繋留命令或いはその他いろいろな方法は、殆んど東京を中心にして実施をしてお る現状であります。ところが先ほどもお答えを申上げましたように、現在これに要する費用は、それぞれの府県で登録手数料を徴収し、その登録手数料を以て対 策の経費に充てておる関係上、費用は重点的に配れないという一つの悩みがございます。併しながら、今直ちに他の予算措置というようなことを講ずることもな かなか困難な状況でありますので、東京都のごときものは、登録手数料のほかに更に純粋の都費から相当な経費を支出してこの対策に当つておるような次第でご ざいます。それに反しまして、殆んど流行を見ない東北地方等におきましては、むしろ手数料が余つてしまうというような矛盾を呈しておりますが、これは現在 の経費の規定からいつて止むを得んことと思つております。併しながら、重点的に実施するということにつきましては全く同感でありまして、かような府県にお きましては、今後も努めて足らんところを純粋地方費によつて補うように督励をいたしたい考えでおります。 |
○有馬英二君 | もう一つ伺いたいのですが、この狂犬病発生の年次的の変遷を見ますと、昭和八年頃からずつと満つて、昭和十八年までの十カ年 間が非常に減少しておるのに、十九年から俄かに増加をして、それから又一度減少して、それから二十五年になつて又頂点に達しておるようでありますが、最近 は年々減少の傾向を示しておるようですが、この十九年以降の発生の数がこんなに急激に増加したということは、先ほど湯山委員が言われたように、犬の数が急 に増した、そこで野良犬も非常に増して来た、それだから病気が蔓延したのであるというにしては、少しどうもこの数字が合致しないのではないかと思うのです が、これは狂犬病予防の方法が何らかその間に作用しておるのでありますか、或いは犬の捕獲というようなことに特に原因があるのかどうかということについて 御説明を頂きたい。 |
○政府委員(楠本正康君) | 昭和十八年当時におきましては、衛生当局の努力によりまして、おおむね日本全土から犯狂病毒は壊滅したというふ うに考えておつたわけであります。ところが、十九年に満洲から一頭狂犬が内地に搬入されまして、これが原因となりまして急激に拡がつたわけであります。而 も、その当時はすでにもう日本には殆んど狂犬はいないということになつておつたものでありますから、その辺の手を抜いておつたわけであります。そこへ持つ て来て満洲から入つて参りました関係で、ここに大きく殖えて参つたわけであります。併しながらその一方、対策を実施すると同時に、幸いなことに二十年、二 十一年というものは食糧も極端に不足した時期でありまして、そのために犬の数がずつと減つて参つたために、相対的に流行が減少して来たものと、かように考 えております。ところが、その後社会の混乱その他に伴いまして、やはり病毒がだんだん蔓延して参りまして、その後二十三年、二十四年と逐次又殖えて参りま した。そこで昭和二十五年に現行法の猛犬病予防法を実施いたしまして、登録の徹底、予防注射の徹底というようなことを努める一方、捕獲に努力をして参りま した。その効果が現われまして、二十五年以降逐次減少して参つておるものと考えております。併しながら、一方野犬と申しましようか、犬の数はこれに反比例 して二十五年以降急激に増加をいたしておりますので、これらの努力にかかわらず、必ずしも数の上では十分な効果を上げ得ないのでありますが、併しながら犬 の増加に比例いたしますれば、これらは或る程度現在効果が上りつつあるものと、まあいささか手前味噌になりまするが、かように考えておる次第であります。 |
○高野一夫君 | 先ほど私は飼犬の放し飼いを厳重に取締つてもらいたいという意味のことをお尋ねしたのでありますが、その理由の一つを言い尽 し得なかつたところが、湯山委員からお話が出たわけですが、私も実は犬を飼つて困つておる一人なんですが、こつちで二十四時間繋留しておつても、放し飼い にされておる犬がやつて来るのです。そうして、先ほど湯山委員からおつしやるように、双方共に飼主の欲せざる繁殖が起つて来ると、こういうわけでして、先 ずここにも一つの禍根があるわけでありますから、私は有馬委員のお話がありましたように、東京、神奈川方面、特にこの狂犬病の多いところは、一つ強い繋留 命令といいますか、これを実施されるように、これは行政措置でできると思いますから、お願いをしておきたいと思います。神奈川県あたりは非常に放し飼いが 多くて、恐らく繋留命令の先ほどのお話のようなことが励行されていないのではないかしらと思つております。これはお願いしておきます。それからもう一つ は、野犬であればかまわずどんどん捕獲して殺してしまつても差支えないわけですね。 |
○政府委員(楠本正康君) | ええ。 |
○高野一夫君 | それからもう一つ、先ほど湯山委員の御質問で思いついたわけですが、この捕獲人というものが全国で千五百人ばかりおるという ことで、全国の都道府県に配置されておる予防員の配置状況を見ると、あるところもある、ないところもあるという状態ですが、ここに書いてある正式の狂犬病 予防員というのは、国家公務員ですか。 |
○政府委員(楠本正康君) | これは獣医師たる地方庁の吏員であります。 |
○高野一夫君 | そうすると、捕獲人も都道府県の任命による職員が殆んど大部分を占めておるというお話でありますが、この予防員も地方の公務 員みたいになつておるのならば、この捕獲人も予防員のようにしてしまつて、一本の線にして人数を殖やして対策の万全を期するというふうなことは考えられませんか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 捕獲人も府県職員、地方の職員ではありますが、ただこれは用人としての職員でございます。一方予防員のほうは、 これはれつきとした役人でございます。ただこの捕獲作業の、例えば実際に犬を車乗せるとか、さような作業は、これは役人がやつて悪いということはございま せんが、まあ常識的にかようなことには用人がこれに当つて行くということだろうと存じます。 |
○理事(大谷瑩潤君) | それでは本法安に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じまするが御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○理事(大谷瑩潤君) | 御異議ないと認めます。 |
▲▼
第19回国会 衆議院 厚生委員会 10号(昭和29年03月02日)原典4
○小島委員長 |
これより会議を開きます。 まず狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案の寒査に入ります前に、最初に配付されました印刷物に誤りがあり、これを正す旨通知がありましたので、念のため政府委員より説明を聞くことといたします。楠本政府委員。 |
---|---|
○楠本政府委員 |
ちよつと印刷上の手落ちがございまして、正誤表を出すことに相なりましてまことに事務不手ぎわでございました。厚くおわびを申し上げます。 現存の狂犬病予防法におきましては、犬の狂犬病を対象といたしておりますが、同時に現在家畜伝染病予防法において規定している動物のうちにおきまして も、必要がある場合には狂犬病予防法を適用することに相なつております。ところがその後家畜伝準病予防法が最近改正されまして、個々の動物について規定を いたしまして、そのうちには現在当然狂犬病予防法を準用すべき動物の種類が欠けておりますために、今回は従来通り犬のほかに牛、馬、緬羊、やぎ、豚、にわ とり等を入れる必要がありますので、除外をいたしまして、その他の動物を準用することといたした次第でございます。別に趣旨は少しもかわりませんが、単に 家畜伝染病予防法の改正に伴いまする機械的な一つの正誤でございましてはなはだ失礼をいたしました。 |
○小島委員長 | それでは本案の審査を進めます。本案はすでに質疑を終了いたしておるのでありますが、現在委員長の手元に本案に対する各派共同提案になる修正案が提出されておりますので、その趣旨弁明を許します。高橋等君。 |
○高橋(等)委員 |
狂犬病予防法の一部を改正する法律案に対しまして修正案を提出いたしたいと思います。 まず趣旨弁明をいたします前に修正案につきまして朗読をいたします。 狂犬病予防法の一部を改正する法律案に対する修正案 狂犬病予防法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。 第六条の改正規定中「第九項」を「第十項」に、『「第六項」に』を『「第七項」に』に、「第八項」を「第九項」に、「第七項とし」を「第八項とし」に、「第六項とし」を「第七項とし」に、「第五項とし」を「第六項とし」に、「次の二項」を「次の三項」に改める。 第十条の改正規定の前に次の項を加える。 5 第三項の規定は、当該追跡中の犬が人又は家畜をかんだ犬である場合を除き、都道府県知事が特に必要と認めて指定した期間及び区域に限り適用する。第十四条及び第十八条の改正規定中「第九項」を「第十項」に改める。 附則第二項中「第六条第八項」を「第六条第九項」に改める。 以上であります。 住居等はわれわれ生活の根拠でございまして、これに対する侵入あるいはそれに類似するような行動に対しましては法によつて保護をせられておることは申す までもないのであります。従いまして、人の住居関係に軽々しく侵入をするような行動をきめる法律につきましては、その法律の目的としておりますことが、な おその住居権を侵害いたすよりほかに方法がない、あるいはまた侵すだけの必要性があるのだということでなければならないと考えるのでございます。狂犬病予 防法の一部改正法律案には、予防員が逃走中の犬を追跡いたします場合に、人の住居を除きましたその他の場所には立ち入ることができる、すなわちこの説明は 庭先その他へももちろん入り得る、こういうような規定になつておるのでございますが、もちろん狂犬病は恐ろしい病気でございまして、野犬等の捕獲というこ とは大切なことであると考えるのでございまするが、なおこの住居権と、いうものとの間の調整を考えまして、まず第一にはいわゆる繋留命令を都道府県知事が 出した場合、あるいはこれに準ずる場合、都道府県知事が特に必要と認めた場合に、一定の期間、区域を指定いたしましてその立入りを認めることにする、及び 追跡中の犬が人または家畜をかんだ犬で、これが捕獲中逃走いたしまする場合には立入りを認める、この程度にしぼつて住民権との間の調整をはからんといたし たのが本修正案提案の理由でございます。その他の点は、これは条文の整理のためにつけ加えた修正でございます。 なお本修正案の通過にあたりまして、特に政府に御留意を願つておきたいことは、あくまでもこれは予防員が追跡中の犬に対してかくのごとき行為をなすので あります。いわゆる捕獲員がこういうことを勢いに乗じてやることがないように、その点は法の弊害が出て来ないように、特に監督上の御留意をお願いいたした いと思うのでございます。 以上をもちまして修正案の説明を終ります。 なおこの修正案は各党共同の提案の修正案であることをつけ加えておきます。 |
○小島委員長 | 以上で趣旨弁明は終りました。この修正案についての御質問はございませんか。――なければ、次に狂犬病予防法の一部を改正すそ法律案及び、同法律案に対する修正案の両案を一括して討論に付します。古屋菊男君。 |
○古屋(菊)委員 | 私は改進党を代表いたしまして修正案に賛成し、修正部分を除く残りの原案に賛成するものであります。近来とみに野犬の増 加に伴う狂犬病等の発生が増発しつつあります折から、現行の狂犬病予防法を一部改正いたしまして狂犬病の蔓延防止、さらにはその撲滅をはかる諸措置を講ぜ られますことは、公衆衛生の確立上真に適切なる措置と存ずる次第であります。しかしながら原案中、第六条第三項につきまして、予防員が犬を捕獲するため土 地建物または船車内へ立ち入ることができるという点において若干の問題点を含んでおると思うのであります。もちろん予防員は法律上獣医師という身分を有し ておるものであつて、一応その身分もはつきりしておるわけであり、また建物といつても人の住居が除かれており、さらにはその場所の看守者が拒否した場合に おいては立ち入ることができないことになつておる等の規制があります点からいたしまして、盗難その他この住居立入りに伴つて懸念される事故の発生につきま しては、さほど心配する余地はないとも思われるのであります。しかしながら現在社会的にも、ときに問題とされております捕獲員の資質、あるいはこの特殊な 職務遂行上における心理状態等と勘案して考えてみますときに、あるいは不測の事故が発生するおそれも多分にあるかとも思われますので、建物等への立入りに つきましては、さらに厳格なる規則を行つて万全の防止措置を講じますことは必要なことと思われるわけであります。かかる観点から私は修正案に賛成の意を表 するものであります。当局においても今後一層係員の資質の向上をはかられるとともに、厳格に法が施行されるよう積極的に指導されんことを希望してやまない 次第であります。 |
○小島委員長 | 長谷川保君。 |
○長谷川(保)委員 |
私は日本社会党を代表いたしまして、狂犬病予防法の一部を改正する法律案の修正案に賛成し、修正部分を除く原案に賛成するものであります。 すでに論議されましたように、本案の趣旨に対しましては、狂犬病予防撲滅の立場からして何人も異論のないところであろうと思うのであります。ただ問題は ただいまも指摘されましたが、予防員の家屋、屋敷等に対する立入りの問題、これが法の実施にあたりまして予防員ならざる捕獲員が立ち入ることによつてそこ に紛争が起り、また住居権が侵害され、家宅侵入というような問題が起つて来るであろうということが懸念されるのであります。これにつきましては、法の実施 にあたりましては、当局も格段の御留意を希望してやまない次第であります。またさらに狂犬病の蔓延の場合におきまして繋留されておりませんところの犬を薬 殺する場合、その周知方において十分なる配慮をいたしませんければ、これまたいろいろな紛争や間違いが起つて来ると思うのでありますが、住民に対しまする 周知の方法について格段の御注意を希望してやまない次第でございます。 以上の点に対して十分なる法実施院の注意を喚起いたしまして、私は賛成の意を表する次第であります。 |
○小島委員長 | 山口シヅエ君。 |
○山口(シ)委員 |
私は社会党の右を代表いたしまして、各党提案の修正案並びに狂犬病予防法の一部を改正する法律案に賛成するものでございます。 しかしここに私は当局に対しまして要望いたしたいことがあるのでございます。過般私のもとに野犬捕獲人の主婦より陳情がございました。ところがその後陳 情の内容とひとしくするような記事が、読売新聞の二月七日の記事として掲載されておりましたので、要望といたしましてその記事を読み上げさせていただきま す。「野犬捕獲人を侮辱、横浜市予防課小学館のマンガに抗議、児童雑誌「小学四年生」(小学館発行)三月号のまんが「ニコニコゲンちやん」(吉沢日出夫 作)は公務員であるイヌの捕獲人を侮辱し、しかも狂犬病予防思想を童心からもぎ取る悪質な捕獲業務妨害だと横浜市衛生局予防課は、あす八日、東京都公衆衛 生課と連絡、出版元の小学館に厳重抗議する。問題のまんがはイヌの捕獲人を悪者扱いにし捕獲したイヌをとりかえすために「ゲンちやん」ら子どもたちがパチンコをうつたり、仕掛ナワで妨害するという筋書で悪者に仕立てたイヌの捕獲人には東京都のマーク入り腕章をつけさせており、さる五日南区イヌ抑留所勤務者 の長女A子ちやん(一〇)がこのまんがをみて『うちのお父ちやんは悪い人だ』といつて泣き出したことが発端となつたもの。」こういう記事が掲載されており ましたが、私は陳情を受け、またこの記事を読みましたときに、この思想がいまだに大衆に徹底してない感が強くいたしたのでございます。そこで御当局におかれましては、ぜひ積極的にこの思想の啓蒙に努めていただきますことを要望いたしまして、本法案に賛成をいたす次第でございます。 |
○小島委員長 |
以上で討論は終局いたしました。 これより採決いたします。まず各派共同提案になる修正案を可決するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○小島委員長 |
御異議なしと認め、本修正案は可決いたされました。 次に、ただいま修正いたしました残りの部分を原案の通りに可決するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○小島委員長 |
御異議なしと認めます。よつて本部分は原案の通り可決され、本案は修正議決されました。 なお本案に対する委員会の報告書の作成については、慣例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○小島委員長 | 御異議なしと認め、そのように決します。 |
▲▼
第19回国会 衆議院 本会議 16号(昭和29年03月06日)原典5
○議長(堤康次郎君) |
日程第二、猛犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員会理事古屋菊男君。 [古屋菊男君登壇〕 |
---|---|
○古屋菊男君 |
ただいま議題となりました狂犬病予防法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審査の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。 狂犬病予防法の施行により狂犬病の発生は逐次減少して参りましたが、なお根絶に至らず、年々相当数の発生を見る現状でありますので、さらに一層狂犬病予防措置の強化に努め、その根絶をはかろうとするのが、政府の本法案提出の理由であります。 本法案のおもなる改正点を申し上げますれば、第一に、野犬化防止のため、狂犬病予防員が犬の所有者からその不用となつた犬の引取りを求められたときは、これを引取つて処分しなければならないこととしたことであります。 第二は、狂犬病予防員が犬を捕獲しようとして追跡中に、犬が土地、建物等に入つた場合、捕獲するためやむを得ないと認める場合は、職権の濫用を防ぐため必要な制限のもとに、その場所に立ち入ることができるようにしたことであります。 第三は、都道府県知事は、緊急の必要があり、かつ抑留を行うことが著しく困難な事情があると認めるときは、狂犬病予防員をして繋留されていない犬を薬殺させることができるようにしたことであります。 本法案は一月二十六日本委員会に付託せられ、二月一日厚生大臣より提案理由の説明を聴取しました後、ただちに審査に入り、同日並びに十六日、狂犬病予防 員が犬を捕獲するため、土地、建物等に立ち入ること、及び繋留されていない犬の薬殺等の点について、きわめて熱心なる質疑応答が行われたのであります。 かくて、二月二十四日質疑を終了したのでありますが、三月二日の委員会において、自由党の高橋委員より各派共同提案による修正案が提出されました。修正 案の要旨は、犬を捕獲するためやむを得ないと認めるときは土地、建物内に立ち入ることができる規定を、都道府県知事が特に必要と認めて指定した期間及び区 域に限り適用されることといたしたことであります。 次いで、修正案と修正部分を除く原案とを一括して討論に入りましたところ、改進党を代表して古屋委員より、日本社会党を代表して長谷川委員、同じく日本社会党を代表して山口委員より、それぞれ賛成の意が述べられたのであります。 かくて、討論を終了し、採決に入り、まず修正案について採決いたしましたところ、全会一致をもつて修正案は可決いたされました。次いで修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、これまた全会一致をもつて原案通り可決いたしました次第であります。 右御報告申し上げます。(拍手) |
○議長(堤康次郎君) |
採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○議長(堤康次郎君) | 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。 |
▲▼
第19回国会 参議院 厚生委員会 20号(昭和29年03月29日)原典6
○委員長(上條愛一君) |
只今から厚生委員会を開きます。 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。本日は本案審査上の参考に資するため、伝染病研究所附属病院長東京大学教授北本治君、社団法人日本動物愛護協会理事長齋藤弘吉君のお二人に参考人として御出席願つて御意見を拝聴いたすこととなつております。 参考人の方々にはお忙しいところを御出席願いまして誠に有難うございました。この機会に厚生委員会を代表いたしまして厚く御礼を申上げます。何とぞ先に文書を以てお願いいたしましたように、それぞれの角度から御高見の発表をお願いいたします。 なお各委員の方々に申上げますが、時間の都合上、参考人の方々の意見発表が終つてから委員の方々の御質疑をお願いいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
---|---|
○委員長(上條愛一君) | 御異議ないと認めます。それでは北本さんから御意見の御発表をお願いいたします。 |
○参考人(北本治君) |
私北本でございます。私まだ不慣れでございまして、余り勝手をよく存じないのでございます。それで実は何か御質問が 出まして、それについてまあお答えをするということのように予期して参りましたので、まとまつたことを申上げます準備が十分でございませんので、その点悪 しからず御了承お願い申上げます。私に与えられております題の狂犬病ワクチンの製造方法、その効果及び副作用についてということでございますので、順を逐 いまして極く概括的に申上げさして頂くことにいたしたいと思います。 狂犬病のワクチンの製造方法でありますが、これは歴史的には皆様も広く御存じの通りに、フランスのパストウール研究所の祖であるパストウールが一八八四年にやり出しましたわけでありまして、その後逐次改良が行われて今日に至つておるという状況でございます。もともとはこのパストウールが動物実験をいたし まして、動物実験でまあワクチンが有効であるということを確かめました上で人間に使つたのでございますが、そのワクチンと申しますのは、動物にわざと狂犬 病にならせまして、その動物の脳脊髄を乾燥減毒いたしたものでございます。つまり苛性加里があります瓶の中に暫く吊して置く、或いは苛性加里の上に乗せて 置くというようなことをいたしまして、狂犬病にかかつた動物の脳脊髄を要するに乾燥いたしまして、減毒いたしまして、そうしてそれを人間に刺す、こういう わけでございまして、勿論非常に強い毒でありますというと、人間にそれが発病してしまうわけでありますが、医者のほうで申します街上毒というものをだんだ んと動物にかけて、それを繰返して参りますというと、いわゆる固定毒と申しまして、毒力が非常に減りまして、併しこの免疫性を附与する力は十分に保たれ る。而もそれが早く現われて来るというような性質を持つて参るのでありますが、そういう固定毒を用いましてまあそういうことをやるわけであります。そうい うワクチンが連綿と長い間続けて行われておつたのであります。伝染病研究所におきましても、永年の間そのワクチンを製造いたしましたり、使用いたしました りしておつたわけであります。 これが一番最初の製造方法のあらましでありますが、その後こういつた乾燥によつて減毒したワクチンが、効力において不安な点が多少あるというようなこと が言われるようになつて参つたわけであります。で、諸家の発病の報告等を見ましても、まあパーセントは低いのでありますけれども、大体〇・五%前後の発病 者があるというようなこと、殊にこの頭でありますとか顔、頸或いは耳というようなところを噛まれました場合には、非常に毒の脳に達することが早く且つ強く ありまして、ワクチンで治療いたしましても助からない場合がままあるわけであります。殊に目の玉なんかを噛まれますというと、目の玉の神経を伝わつて脳に 入りますせいか、殆んど助からないというような状況でございます。終戦後狂犬が多くなりました際に、折角ワクチンをうちましても、犠牲になる人が相当に出 たわけであります。東京都におきましては私どもの承知いたしております一、二の事例といたしましては、杉並区でたしか一個所で五人が一度に咬まれまして、 それでその五人が旧来のワクチンを射したのでありますが、そのうち三人が発病して死亡したというような例が終戰後あつたわけであります。それでは折角ワク チンに上る治療の効果が薄いのでありますので、これでは改良の必要があるということになりまして、伝染病研究所におきまして諸方面のそのような御努力と一 緒になりましてやつたのが、不活化ワクチンの応用でございます。で不活化ワクチンと申しますのは、これは先ほどの乾燥によつて減毒をするというのから一歩 進みまして、この固定毒に対しまして薬品を加えまして、ホルマリンでありますとか、或いはマーゾニンでありますとか、石炭酸でありますとか、いろいろな薬 物を作用させまして、病毒を不活化させるという方法であります。でありますからして、この場合におきましてはこの原始的なワクチンに比べますというと、な お一層強力で、而もまあ副作用が少くなるのではなかろうかという見込みで、いろいろ行われたわけであります。ところがこの狂犬病の治療の実験と申しますも のは、なかなか人体の場合と動物の場合とが必ずしも一致いたしませんで、動物実験の成績即人間の応用というわけには参らないのでありますので、旧来のワク チンを使いながらそれにそういう不活化ワクチンを併用いたしますという方法をとつたのであります。これは実は私の前の、前院長の頃にそういうことが大分行 われたのでありまして、私はそれをデータの上でお伝え申上げるわけでありますが、そういたしますと、頭を咬まれたり、首を咬まれたりいたしました従来なら ばワクチンがしばしば無効に終つたような例にも有効でありまして、犠牲をなくすということに成功したわけであります。 ところが一方におきまして効果が挙りましたと同時に、まあ副作用が今度は目につくというような傾向が現われて参りまして、この副作用と申しますのは、実 は統計がなかなかとりにくいのでございます。それで従来のものに比較してどうということはなかなかむずかしい場合が多いのでありますが、どうも副作用が多 いようであるというようなデータが出ましたので、その後この副作用を除くためにワクチンの改良をしなくちやならないというふうになつて参つたのでありま す。でそれにつきまして我々どもがやつておりますのが、紫外線による不活化でありまして、従来化学薬品によつて化学的に不活化しておりましたのを、今度は 物理的に不活化させるという方法に移つて参つたのであります。つまり紫外線を一定の時間かけまして、そういたしましてそれによつて病毒を不活化したものを 射す、こういうことになつて参つたのであります。でありますので、乾燥減毒ワクチンから化学的薬品による不活化ワクチン、物理的操作による不活化ワクチン というふうに移行して参りまして、現在行われておりますのは、伝染病研究所においては紫外線照射のワクチン、紫外線による不活化ワクチン一本に現在なつて いるわけでありますが、その他の製造所において作つておりますのは、石炭酸不活化ワクチンであります。でありますから日本全国として見ますと、石炭酸不活 化ワクチンと紫外線照射ワクチンとが並んで行われておりますのが現状であるというふうに申上げられるのであります。 で、非常に細かい製造方法につきましては省略をいたしまして、次にその効果ということでございますが、先ほどもちよつと申上げましたように、旧来のワク チンの場合には首や頭その他を咬まれますと、今日の毎日新聞にも引用されておつたようでありますが、大体一〇・八%の発症率があつたのであります。で上肢 を咬まれました場合には、三・五%、下肢を咬まれました場合には三%というような率におきまして、折角ワクチンで治療をいたしましても発病を防ぎ得ないと いう状況であつたのでありますが、その後化学的物質による不活化ワクチン、それを併用するようになりましてからは、発症率はゼロになつたのであります。で 頭部、顔面を咬まれました九十七名の中からも一人も出ておりませんし、上肢を咬まれた五百二十五名も一人も発症いたしておりません。下肢の二百六十二名の 中からも一人も発症していないと、こういうような状況になつておりまして、効果が優れて参つている。 次には紫外線照射ワクチンでありますが、紫外線照射ワクチンも非常に効果はいいようでありまして、頭部、顔面を咬まれました者は、その後狂犬病が減りま したので十五名が統計に出ておりますが、それも発病は全然ゼロでありまして、上肢を咬まれました二百十七名同じくゼロ、下肢の百五名同じくゼロ、こういう ふうなことになつております。これに関する印刷物がございますから、委員長、先生方にお配りして頂きましよう。 |
○委員長(上條愛一君) | 有難うございます。 |
○参考人(北本治君) |
そんなわけでありまして、カルボール・ワクチン或いは紫外線照射ワクチンになりましてから、効果におきまして先ず不安がなくなつたのであります。極端な場合はどうか存じませんが、先ず大体において、顔面、頭部を咬まれても心配ないというような効果になつて参りました。 次には副作用の点でありますが、只今副作用の調査と申しますのは、なかなか実際問題といたしますと困難な点が多々ございますが、私のほうでは医局の大谷 君その他がいろいろと努力をいたしまして定期的に調査書を送りましてその返答を求めましたり、或いは訪ねてみまして、実際にその患者を検査するというよう な比較的刻明な調査をいたしましてそのデータを出しているわけであります。で、副作用にはまあ私どもの考えではおおよそ二つのタイプがございまして、早期 に出て来ますところのタイプと少し遅れて出て参りますタイプとございます。勿論その移行型も多少はございますが、およそそういう二つのタイプがありまし て、予防注射を始めましてから二週間前後に始まつて参りますところの早期の副作用、これは概して脊髄性に来ると申しますか、脳には余り影響が少うございま して、手足がしびれたり、或いはその運動が障害されたり、こういうようなことがときどきある。で、その前後に少し熱が出ましたり、食欲がなくなりました り、嘔吐を催したりというような附帯の現象もあるのでありますが、主たる症状はそういう脊髄性の麻痺症状を呈するものが一つのタイプで、それからもう一つ のタイプは注射後大体六十日或いはそれ以上経ちまして現れて参りますタイプでありまして、この場合には先ほどの脊髄性に比べまして、どちらかと申せば脳性 のニユアンスが多くなつて参りまして、性格が変りまして、いらいらしたり、怒りぽくなつたり、昂奮しやすくなるというような症状が現われて参りまして、多 くの場合はそれが数週或いは数ヵ月の経過で自然に軽快をいたしまして治るのでありますが、中にはその後引続きまして性格異常、ときには精神の異常を来たす という場合がまま見られる、こういうような状況になつております。それが副作用の大体の症状でありますが、その率は、これが昨今いろいろ注目されておるよ うでありますが、最近のワクチンにおいては、そういうものは非常に少いと私ども思つております。従来からの副作用のデータは先ほどお出しいたしました印刷 物にも出ておるのでありますが、パストウール法におきましては合計六千三百六十七名のうちで三十六名、こういうような数になつておるのであります。であり ますからしてこの場合におきましても大体〇・五、六%というような数字になるわけであります。この場合に注目されますことは、十四歳以下の者と十五歳以上 の者とで格段の違いがありまして、十四歳以下の者の場合には普通は先ず副作用は現われることはございませんで、この六千三百六十七名のうちの十四歳以下の 者は二千八百三十五名におきまして副作用発現はゼロであります。十五歳以上の三千五百三十二名の中から三十六名出ておるわけであります。これは外国の文献 などによりますと、極めてまれには十一歳ぐらいで出た例がないことはありませんが、殆んど例外的なものと申すことができます。 次には併用法を行なつた場合の成績でありますが、マーゾニンの不活化ワクチンにおきましては十四歳以下の者にはゼロ、十五歳以上の者三百九十一名中八 名、合計いたしまして七百五十七名のうち八名ということになつておるわけであります。ホルマリン・ワクチンの場合は十四歳以下はゼロ、十五歳以上五百六名 のうち七名、全年齢を通じ九百四十六名のうち七名というような数になつておるわけであります。紫外線照射ワクチンの場合には十四歳以下は三百三十八名のう ちゼロ、十五歳以上五百名のうちに二名、合計九百四十六名のうちに二名、こういうような数になつておるのであります。 大体を総括して申上げますというと、十五歳以上のいわゆる後麻痺というような副作用が発現する年齢層のものにつきましてだけ申しましてパストウール・ワ クチン、古いワクチンでありますが、これが一%、これは十五歳以上だけでありますから十四歳以下をまぜると半分ぐらいになるわけであります。併用法では 二%、紫外線不活化ワクチンでは〇・四%というふうに大体四分になつておるわけであります。これは非常に広い意味で副作用を集計いたしました数でありまし て、例えば少し熱が出てしびれるような気がするというような程度のものから含んでおるのでありまして、只今申上げました数のおよそ三分の一が少し脳症状を 示すというように思われる。その又大体四分の一ぐらいが性格異常、比較的強い性格異常を来たすということになりますので、大体副作用があると見ました数の 中の大体十二分の一前後がまあ精神的に性格異常乃至は精神異常を来たすということになるわけでありまして、その率は低いものであるというふうに私どもは思 つております。従来日本におきますいろいろな副作用の症例報告が大体二百何十例かあります中で精神異常と申していいようなものは二十例前後でありまして、 そういう方面から見ましても、おおよそその数が当つておるというように思われるのであります。最近におきましてはこの副作用も強力なビタミンB1の注射で ありますとか、コーチゾンの注射或いは服用等によりまして、時期が早い場合には、相当な治療効果を収めることができるように今なつて参りましたので、全部 をなおし得るとは言い切れないかも知れませんが、かなり処置がしやすくなつておるようなわけであります。不幸にして診断がつきませんであちこちを転々とい たしまして時期が遅れるというようなことになりますと、比較的永続性な故障を残す、こういうようなことになるようであります。 なお、世界的な状況ではどういうことであるかということに一言触れますると、余り詳しいことを申上げる資料はございませんが、狂犬病ワクチンをやり出し ましたパストウール研究所におきましてでは、一九五二年の三月末日までは旧来のワクチンをやつておりまして、一九五〇年から五一年にかけて私どもあちらへ 行つてみました頃には旧来のワクチンを使つておりました。その後五二年四月から石炭酸ワクチンに切替えて、アメリカ方面におきましては石炭酸ワクチンと紫 外線照射ワクチンとが数社から出ておりまして両方やつておるのじやないかと思われますが、傾向としましては紫外線照射ワクチンの製造のほうが盛んになつて 来ているように私どもは感ずるのであります。 誠に概略でありますが、又後ほど補足さして頂くことにいたしまして一応これで終りたいと思います。 |
○委員長(上條愛一君) | それでは齋藤さん。 |
○参考人(齋藤弘吉君) |
私日本動物愛護協会理事長をしておりますが、この犬の問題につきましてはほかに東京都の狂犬病予防審議会の委員を 二十四年九月からずつといたしておりまして、この問題には約六ヶ年間取組んでおります。そのほか日本哺乳動物学会などいろいろ動物に関した面約十の会の役 員をしておりますので、動物愛護協会の立場だけでなくて、広くこの狂犬病予防法の今度の改正問題について意見をちよつと申上げたいと思います。 動物愛護協会と申しますと、外国のほうの名前で申しますと、動物虐待防止会でございまして、ことごとくこういう狂犬病予防法のようなことに反対する会の ように世の中で非常に誤解されておりますが、決して私たちの会はそういうものでございませんで、英、米、日の役員によつて組織されておりますが、その事業 を逐つて申上げますと、狂犬病にむしろ非常に協力しておりまして、何年か前も英国が島国であつて日本と非常に環境が似ておるのに、狂犬病を国内から絶滅い たしまして、最近約三十六年間は一頭も出ておりません。それでその特色を一つ真似たらいいだろうというので、丁度今の会長が前の英国大使夫人だものですか ら、英国政府に交渉してもらいまして、英国内における今日までの狂犬病に関した法律を全部取り寄せましてその原文と日本訳とを厚生省並びに東京都の衛生局 に参考までに提出いたしましたことがございました。又現在でも私たちの協会では病院を持つておりますので、これは日本で一番設備の完備した、又立派な家畜 病院でありますが、そこで浮浪犬、飼主のない犬、或いは必要のない犬などを全部収容いたしまして、そうして或る程度飼つておきまして、欲しい人があります ときにはそれを全部狂犬予防の注射をうちまして、そうしてその上に雑種は繁殖されては困るものですから、雄は去勢、雌は避妊手術をいたしました上に欲しい 人に上げております。そういう人をしよつ中新聞の広告で欲しい人がないかと募集しております。それから要らない犬は、残りました犬は大体英国がとりました 電気による安楽死、一遍ですぐ死ぬ、或いは硝酸ストリキニーネの心臓における注射で安楽死をさしております。これで安楽死をさしています犬が今丁度統計を 持つておりませんが、年に三千頭以上に上つております。それからなお政府のほうに今交渉しておりますが、英国の関係省から英国国内における狂犬病撲滅につ いての一番権威者を日本に呼びまして、日本の状態を見せまして、これについてはどういう施設が一番よろしいかという意見を聞いたらどうだろうということを ロンドンにおりましたこちらの会長に私が照会しましたら、向うに、ロンドンにおりますうちに向うの関係省のほうに内意を打診をいたしまして、これは日本政 府からそういう要望があつたときには派遣し得る確信を得て、会長は一昨日の土曜日の晩に日本に飛行機で飛んで来て現在おります。本日も実は傍聴したいと言 つておりましたが、外人が傍聴すると、何か日本の内政介入みたいで悪いから行かないと言つておりました。 なお、私たちの会はそういう虐待を防止するとありまするが、日本の狂犬病予防の仕事が非常に今日まで研究が不足だということを痛感いたしまして、協会の 理事会の下に諮問機関を作りまして、これは狂犬病の対策の諮問機関でございまして、動物をつかまえますのに最も国内で経験のある例えば上野動物園の園長の 古賀君、或いは飼育主任の林君、これは一昨年アフリカのナイロビに猛獣の捕獲の見学実習に約一年おりました。或いは狂犬病予防法のことを警視庁でやつてお りましたときから約三十年以上この事業に主任として携わりました荒木技師、或いは大澤技師、この方は日本における狂犬病の最も長い経験者でありますが、そ れらの人々及び私の病院の院長など約十名ばかりでこの委員会を作りまして、現在どうしたら野犬の捕獲ができるか、どうしたら狂犬病撲滅ができるかという実 際的な具体的な案を持つております。この案によりまして私のほうでいろいろなことを実際に実験してみよう。一部薬品を今実は実験中で、それをつかまえる方 法も近く実験してみるつもりであります。そういう工合で、決して私のほうは狂犬病予防法案反対の会ではございませんので、その点を前以て御了解願いたいと 思います。今度の改正法案を拝見いたしまして、逐条的にちよつとした意見を申上げますが、この中で、一頁第五条の「予防員は、犬の所有者からその犬の引取 を求められたときは、これを引き取つて処分しなければならない。この場合において、予防員は、その犬を引き取るべき場所を指定することができる。」これは 捨てるのを捨てさせない一つの大変いいことなんでありまするが、処分をするということがはつきりどういう意味でありますか、旧来の狂犬病予防法によります と、殺すことができるということと又違つた意味で処分という言葉を使つておりますが、それは生きたままで大学とか何とかの実験に供するために犬を売るとい うようなことを言つておるのじやないかと思いますが、この処分しなければならないということの解釈をもつとはつきりきめて頂いたほうがいいのじやないか、 こういうふうに考えております。又同時に引取るべき場所を指定することが、これが非常に疑問なんでございまして、例えて申上げますと東京都でそういう設備 のありますのは、三河島の野犬収容所及び世田谷の野犬収容所でございますが、いずれも非常に辺鄙な交通の不便な所であります。こういう事態が出ますという と、そういう引取るべき場所、指定された場所というのが割合に交通の便利な所であつて而も一定の設備を有しなくちやならない、こういうことであります。現 在の保健所及び警察署にあります設備と申しますのは、犬の輸送箱のような小さい真暗な箱だけでありまして、あれでは誰も持つて来るものはないのじやない か。又私たちの協会でもやつておりますが、外国でも皆やつておりますように、持つて来られました犬や猫は飼つておきまして、五日なり一週間なり、そうして その中の健康なものは欲しい人に新らしい飼主を世話してやる。いわゆる生きる可能性を与えてやるということで、残つて欲しい人のないものは殺すという、生 きる可能性を与えないと、持つて来る人か日本では非常に少い、持つて行けば殺されるということになりますと非常に少いのじやないか、これは私どもの協会の 病院でもそうなんですが、持つて来てそれを五日なり一週間なり飼つて新らしい飼主、これを希望する人のないときには殺せますよというと、又持つて帰ろうか とか何とか言つて非常に悩むのです。持つて来るものを殺すということになると持つて来る人が少いのじやないか。そういう生きる途、希望を一部に与えて、そ うしてそれを裏書きする一つの犬舎なり何なりを保健所ごとに作る、こういう設備が要るのじやないか、こう思うのです。 それから次のページの第六条の第六項でございますが、これに「「三日以内」を「一日以内」に改め」、これは現在までの東京都の統計を見てみますと、大体 捕まつた犬を受取りに来ますのが三日以内だそうでございます。三日以内と申しますのは、持主のわかつている犬は内容証明便で持主に通知いたしますし、捕ま つても持主のわからない犬は区役所で二日間繋留いたしますので、抑留の三日と併せて五日間であります。五日間のうちに三日以内に大体受取りに来るから、あ との二日を除いてもいいじやないかということから一日以内に改めたのでございましようが、これをできれば一日を二日ぐらいにしたほうが安全じやないか、こ ういうふうに考えております。 その次の第十条、「「その発生地を中心とした半径五キロメートル以内における」を削る。」これは狂犬病が発生しましたときに従来繋留令、縛つておく或い は口輪をかけるという都道府県知事の発令の権限が、狂犬病の起つた土地から半径五キロメートル以内でできるという制限があつたのでございますが、今度この 制限を除いたのでございます。この改正法案で五キロメートルといいますのは、大体これは英国の法律に合つておるのでございまして、英国の法律で言いますと 周囲十五マイル乃至二十マイルとなつております。で十五マイルと申しますのが半径五キロメートルなんで、二十マイルとなりますと半径が六キロ半ぐらいにな ります。でほぼ合つているのでございますが、日本の狂犬病に罹つた犬がどれくらいその狂犬病にかかつてから走つているかということを調べて見ましたら、二 十年ぐらいに一、二例しかないのでございますが、七里乃至八里近く走つている例があるのでございます。それでまあそういう例があるところを見ますと半径五 キロメートルという制限を全部とつてしまうということも無理もないことと思いますが、これが第十八条の二の薬殺する問題と関連いたしますと、殆んどこれは 無制限のようになるのでございまして、十条の改正だけは何ともないと思いますが、十八条と連関いたしますとこれは非常な権限になるのじやないか、そういう ように考えております。と申しますのは従来は狂犬病が出た半径五キロメートルまで繋留令が出る、繋留令の出たところの犬は十八条の二の新らしい条文により ますと薬殺することができる、そうしますために五キロメートル以外の土地の犬は殺せなかつたのでございますが、今度制限を除きましたから、例えて申します と一つの県の或る端に狂犬病が発生した。そういうときに県知事の権限ですから、その県全体に繋留令が施行し得るわけなんであります、制限がありませんか ら……。繋留令が全県に施行された場合に繋留しない犬は薬殺することができる。そうするとずつと反対側の端でもこれは殺されてしまうわけなんです。然るに この制限の撤廃ということが第十八条の二の薬殺と関連しますと非常な大きな力をもつて来ますので、この点の実施の如何ということが大変問題になるのじやな いか、そういうように考えております。第十八条の二は「都道府県は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急の必要がある場合において、前条第一項の規定 による抑留を行うについて著しく困難な事情があると認めるときは、区域及び期間を定めて、予防員をして第十条の規定によるけい留の命令が発せられているに かかわらずけい留されていない犬を薬殺させることができる。」で、著しく困難な事情というのがどういうふうに判断いたしますか、今までの私の見ました例で 申し上げますと、私どもの眼からは何もそんなに困難じやないと思われる状態なのに毒薬を用いておりました。すでに御承知のように狂犬予防法においては、第 二章の通常措置においては、狂犬病が出なくても届出とか何とかしない犬は捕えまして抑留しなければならない、第三章ですね、それから第三章におきましては 狂犬病が発生したときは、狂犬病にかかつた犬とか、かかつた疑いのある犬とか、又はそれらの犬に咬まれた犬については、人命に危険があつて緊急止むを得な いときは殺すことを妨げない、こういうときには殺すことを妨げない、前のときには抑留することができる、捕えて抑留することができるという一つの限定され た法律でございましたが、こういう限定された法律がありますにかかわらず実際においては毒薬を散布するのであります。 去年の八月に目黒区清水町一帯におきまして五十個の硝酸ストリキニーネの毒だんごを散布しまして、犬が一頭猫が二頭死にました。今年の十一月三十日に東 京都の真中の日比谷公園におきまして麹町保健所が二十五箇の硝酸ストリキニーネの毒だんごを散布して犬八頭、猫一頭、外人の飼つている犬が二頭死んでおり ます。そういうことは今の予防法では許可していないのです。許可してないのですが、これを又罰する、或いはそういうことは、毒薬撒いちやいけないというこ とも又ないのです。それで東京都の責任庁の局長はこれは法の盲点である。私にこう言いました。それは法律の盲点である、法律の盲点ですからやつても差支え ない、こう言つた。私はこれは国会を軽視するものである、我々の代表の代議士諸氏がきめました国会できめました法律でこういう場合はできる、こういう場合 は差支えないと限定しているのに、その範囲を逸脱して、そういうはげしいことをしているのは、私は法の限界を逸脱しているのじやないかというような意見を 申上げましたが、これはなかなかそのどちらが正しいかということは、公務員法や何かじやわからないということを言われました。これは恐らく真接被害をこう むりました人間が民法上の裁判に訴えまして最後まで行かなくちやわからんじやないか、こう思つております。そういうふうに、それらのときが、必ずしも著し く困難な事情があるとは私は思われないのであります。それから今までそれについての周知徹底せしめる方法が必ずしも万全を尽していない。例えば日比谷公園 なんかは外人の非常に出入りする公園でありますが、それに対しまして日本語で書いたものを紙に貼つて或いはプラカードを以て示しているだけで、外国語で周 知徹底せしめる方法については手を打つていない。こういうことが私は日本の東京都というものが国際的な都市として外来者に対して非常に親切を欠く一つの措 置である、私はこう申上げたのであります。これは或いは国法によりまして日本語だけの掲示でいいかも知れませんが、親切を欠くものである、こういうふうな 状態でございますので、この法を直ちに活かす或いは実行するとなりますと、いろいろな実際の法文が或る程度結構なものでありましても、実際に行うことにつ いては、いろいろな障害が、或いは副作用が出て来るのじやないか。で、若しもこれをどうしてもおきめになられるようでございましたら、私はむしろこの「著 しく困難な事情」というものを、条項を、薬品使用以外の方法を以てしては捕獲することが不可能な場合とはつきり言つたほうがいいんじやないか。それから 「区域及び期間」これは場所及び日時を限定し、区域というのは一つの区、東京都で言うと一つの区のような地域を指すように解釈されておりますので、場所及 び日時を限定しと言つたほうがいいんじやないか。それから「けい留されていない犬を薬殺させることができる。」という言葉を、けい留されていない犬を激烈 に作用せぬ薬品を用いて捕獲させることができると、こういうふうに言つたらどうかと、自分の私案でございますが、そういうふうに考えております。従つて最 後に、「その近傍の住民に対して、けい留されていない犬を薬殺する旨を周知させなければならない。」というのも、「薬殺」を、薬品を用いて捕獲する旨を と、捕獲という言葉が必ずしも生きたままつかまえるだけでなくて、狩猟法なんかによりますと、これを殺してつかまえるということもすべて捕獲になつており ますので、その狩猟法の捕獲の言葉を使いましても、この捕獲の文句はかまわないのじやないかと思うのであります。これは私は法律は余り存じませんが、そう いうふうに解釈しております。 それでこの法案が通つたとなれば、そういうように一つの極めて限定されたもので通して頂ければ、まだいいんじやないかと思いますが、それではお前は本当 はどういうものを希望しているのかと聞かれましたならば、次の国会まで延ばして頂くほうがいいんじやないか、こう考えております、正直に申上げます と……。その理由は、まだ研究が足りない。第一番に狩猟法ですね、ハンティング・ロー、私も狩猟法による東京都の狩猟監視員をいたしておりますが、例えば 狩猟法の第十五条に「鳥獣ヲ捕獲スルコトヲ得ス」という中に、劇薬、毒薬が入つております。鳥獣に劇薬や毒薬を用いて、鳥獣を捕獲することができない。第 十五条ですね。そうして施行規則に鳥獣、いわゆる狩獲の対象になりますものには野猫、野犬があるんです。これにつきまして、私は農林省の林野庁のほうの意 向を聞きましたら、昭和二十四年でしたか静岡県の県庁のほうから問合せがありまして、林野庁のほうは鉄砲で撃つ狩猟法のほうは、山にいる犬、山にいる猫 と、野犬、野猫をそう解釈しておる。街のものを、それを野猫、野犬とは解釈しない。だからこれは差支えないと、自分のほうの狩猟法の範囲には入らないのだ というふうに回答をしております。そうしますと、今度逆になりますと、実際に山におります、二十頭、十頭と群をなして山にいるものを、その野犬、野猫は、 毒薬、劇薬を用いて捕獲することができなくて街の中のものはこれは捕獲することができるというふうになつちやうのです。でこれは狩猟法との関係がどうなつ ておりますか、これはもうやはり御研究を要する問題じやないかと思います。 それから次に、これは厚生省管轄になつておりますが、厚生省は、現在乳肉衛生課で、お乳と食用の肉をつかさどる課でつかさどつておりますが、課長一名に 課員二名ですか、ほかに兼務の方六名ぐらいいらつしやいますが、これが殆んど犬とか狂犬病とかいうものに余り経験のない方です。又地方自治団体において も、私が委員をしております東京都におきましても、今まで捕獲について試みましたものは、ただ投繩、或いは投縄に代るべき針金で作つたわなであつて、犬を 追駆けてひつかけるだけなんです。これは犬と人間との、捕獲人夫との間が約四尺ぐらいに近付かなくちやこれはつかまらないのです。その長さだけしか繩も針 金も、その長さだけしかないものですから、つかまらないのです。この方法だけで捕えるのはとても困難だからと言つて、従来はよく薬品を使用しておつた。こ れはもつとそのほかの方法を研究した上で、初めて著しく困難だという場合が出て来るのじやないかと私は思つております。 それで前の警視庁時代はどんなことをやつておつたかと調べてみますというと、現在よりは進んでいるのであります。現在むしろ狂犬予防のやり方は後退して いるのじやないかと思うのでありますが、前には警官が戸別訪問いたしまして、犬のことを調べまして、それから犬の捕獲人夫と共に、警官が附添いまして、こ れをつかまえておりましたために、現在の予防員よりは権威があつたということが一つ、それから現在いたしておりませんが、昔は牝犬が出産したときには全部 警察に届けさせました。で、届けさせましたから、その牝犬がどこに行つたかという質問が又出るわけでありまして、二月、三月経ちますと、なぜ届出ないかと いう、届出の対象になつたのです。それから警視庁時代には、去勢を無料でいたしておりました。このために街に警視庁から獣医さんを派遣いたしまして、無料 で雑種犬の去勢をしておりました。現在こういうことをちつともしておりません。それから又牝犬の避妊手術が、当時四円五十銭だつたそうですが、その三分の 一の一円五十銭を、手術した獣医に警視庁から補助金を出した。それで一円五十銭所有者が出しまして、残りの一円五十銭は獣医がこれを負担する。いわゆる手 術した獣医と警視庁と所有者と、三人が三分の一づつ出し合つたというような、一つの去勢の奨励方法を講じております。それから薬品を撒布いたしますにつき ましても、その撒布いたしますところの住民と、警官と、予防員と、三者が協議の上で、どの場所に薬品を置いたらいいかという協議をしておりました。そうし てきまりましたらその略図を書きまして、それを隣組に、旧隣組に全部廻しまして、危険防止をした。又畜犬届の出ています家庭には、はがきを以て、前以てこ この場所に薬品を置くということを予告しております。そうして而もその薬品は白い紙の上に載せまして、あとで回収が便利なようにしております。犬は白い紙 に載ろうが、黒い紙に載ろうが、そんなことは考えませんから、人間が発見しやすいように、白い紙に載せております。そういうように、警視庁時代は、この一 応の手を打つて、そうして薬品を出しておりますが、現在はそういうことは全然ございません。 又これは申上げていいかどうか知りませんが、登録料、犬は税金が取られていますが、そのほかに登録料というのを取られておりまして、これは年に三百円、 この登録料はこの狂犬予防法によりまして、狂犬予防以外の金に使つちやいけないという金だつたのです。然るにこれが本当にそれが実行されているかどうか、 私はいろいろな評判を聞きますと、すでに狂犬病の現在ない県、或いは自治体におきましては、この金は使い途がないものですから、金は出て来るものですか ら、これをほかに転用してるのじやないかということが出ておりますので、皆さんがお調べになればはつきりするのじやないか。 それからもう一つ細かいことを申上げますと、狂犬予防の、犬に射ちます注射液でありますが、これが東京都にしましても、自治体にいたしましても、製造の 北里研究所その他から直接購入しておりません。私の調べによりますと、必ず中間に商人が入つております。それで商人のネツトと、この原価をずつと上廻るも ので、これを入札に付して各官庁が入手しております。これらも自治体の官庁がそういう製造所と直接ワクチンの取引をなさればずつともつと安く行くのではな いか。事実安く行くのです。それらの都民の負担なり、或いは狂犬予防費のために出しておる登録料なりがもつと有効に使われるのではないか。これらの点がま だまだ研究の余地がある。そのほか私が見ますのに、去勢とか、避妊とか、そういうことの手術の励行、行使をしなければ野犬は撲滅はできません。 それから監視員制度、これは狩猟法では各県毎に監視員を作りまして、狩猟法違反を注意したり摘発したりしておりますが、私も東京都の監視員をいたしてお りまして、丁度警察手帳みたいな入物を渡されまして、ここの中に証明書がつきましてそういう狩猟の違反に一々文句をいつております。こういう制度を役員及 び民間の人間、東京都では約二百名であります、これに委託いたしますれば、無届畜犬、注射をしない犬なんかはどんどん注意を与えることができる。こう思う のであります。 それからもう一つは、小学校で子供に犬を飼つたならば必ず届出て注射をせよという知識を普及することであります。なぜならば無届畜犬の九九%は子供が野 原から拾つて来る犬であります。これは飼うつもりはないけれども、子供がかわいがるから仕方なしに残飯を与える。それらが皆無届畜犬になる。それらが大き くなると皆野犬になつております。これは児童教育に徹底を図ることによつて、殆んど全部の犬が届出ができる、こう思うのであります。 それから先ほど申しましたように、要らない犬を持つて来る人に、不安を与えない設備と組織が必要だ。それから浮浪犬の収容につきましても、一個所だけで なくて、ほうぼうに収容所を作つてやること、それから犬とか猫とか人間の助力によらなくちや生きることができない家畜、いわゆる野獣、野鳥、これは離せば 自由になりますが……、山羊とか、豚とか、牛とば、馬とかありますが、牛、山羊、馬は捨てる人はありませんけれども、人間によらなくちや生活できない家畜 を捨てることを禁止する、或いは罰する、こういう一つの制度が必要なんじやないか。こういうふうに考えています。 それから捕獲方法につきましても、私どもの諮問委員会でこの間ありましたときには、一案はドツク・キヤツチヤーが行きますと、犬が逃げてしまう。におい で逃げてしまう。もつと近付く方法はないか。一種の媚薬みたいなものでありますが、旧日本陸軍がアメリカの飛行基地に犬がいて入れなかつたものですから、 どうして犬をごまかして入ろうかというときに作つたものがありますので、それらの研究、それから投繩などにしましても、針金では緊つて非常に痛い。柔らか なロープでは長い年月訓練しないとかけきれない。ところが革にしますと一定の強さをしますと、それを割合にかけることができる。それで今まで日本で使いま した繩若しくは針金を革にかえる。これは野獣なんかをつかまえる方法ですが、そういう硬さを持つていれば、非常に便利につかまえられる。或いは箱に餌を置 いてつかまえる。檻の前に獣が来ますと自分の体重で扉が自然にあきます、中に入るとしまつて出られない、こういうように一つの檻の方法、これらはすべてア フリカあたりで使つておりまする野獣をつかまえる方法であります。或いは電気であります。或る所に餌を置いて、餌を食べたところをこちらから見ていてスイ ツチを入れると引つくり返える、二分ぐらいは殆んど起きられませんからそれをつかまえる。これはアフリカあたりで猿をつかまえる方法であります。こういう ふうにもつと考えればまだいろいろ出ると思いますが、今までのような方法だけではなく、いろいろな方法を考えて適当なる施設をすれば、やはりつかまらない 浮浪犬というものはないと思います。私は動物が好きで今までやつておりますが、とにかく食欲と性欲を持つております動物が人間の知識に対抗してつかまらな いということはない。犬科動物、犬のような種類の中で一番利好なものは狼ですが、この狼さえつかまる。まして都会の浮浪犬やなんかが人智に対抗してつかま らない、そんなばかなことはない、もつとつかまえる方法を研究する余地が十分あるのじやないか。 その次には国内に対する影響でありますが、毒薬を使つてもいいじやないかということが新聞に出て来ましてから、各地方に現在民間でそういうことをやる人 間が出て来たのです。ついこの間も今年の三月になつてからの例だけをあげますと、三月の二十五日に港区麻布新龍土町においてアメリカのミセス・パロツト、 ニユーヨーク・タイムスの支社長の奥さんですが、そのうちの愛犬が庭で遊んでいてぱつたり死んでしまつた。私のほうの病院長が行きまして薬殺の疑いがある というので解剖をしたら、胃の中に立派に硝酸ストリキニーネの反応が出たのであります。それから私たちの会の理事をしておりました者もやかましくいつて調 べさせましたところ、三月五日、十五日、二十一日、二十二日、二十四日、二十五日の六日間に毎日一頭乃至五頭これはみんな薬殺です。家の中、庭の中に繋い であつた犬まで薬を投下されて殺されております。こういう予防法改正によつて、薬品で殺すことが許可されるならば、あれはうるさいからやつてもいいだろう ということで僅かの区域の目黒区中根町、自由ヶ丘、柿ノ木坂町で三月五日、十五、二十一、二十二、二十四、二十五の六日間に合計十六頭が殺されておりま す。そういう社会的な影響もよほど考えなくちやならんものだ。こう思うのであります。 次に、これは撒きます毒薬でありますが、そういう薬を撒きますと、殊に北海道なんかの例では、雪が積ります。これは一晩で積りますから今度は回収するこ とができない。雪がとけた頃に犬が行つて食べてしまう。とつくに制限期間は過ぎておりますから、飼主が安心しているうちに食べてしまう。これは北海道大学 の動物学助教授の市川助教授の飼犬にそういう例があるのであります。それからこれは私確認しておりませんが、何か殺鼠剤を拾いまして、そうして近所の犬が うるさいというので塀越しに投げている。こういうような劇薬、毒薬は非常に危険なことでございまして、殊に日時と場所とを指定して撒くのですから、他人が 拾つたり、悪用したりすることは簡単であります。医者でなければ手に入らない毒薬、劇薬も拾えば簡単であります。今までは番人もついておりませんから、簡 単である。犯罪予防上も考えなくちやならない問題であるというふうに考えております。 国内だけでなく国外への影響でありますが、大体外国においてはそういうことをしないのであります。なぜかといいますと、動物の虐待を防止するということ は、人間の残虐性を除くというように解釈しているのであります。アメリカなんかの例を見ますと、ヒユーマン・ソサイテーや、ヒユーマン・エデケイシヨン・ ソサイテーの事業は動物が対象なんです。それでものを言えない動物に残虐なことをしないということが人道の基礎であつて、それが人類の平和の基礎となる。 こういう教育を基本にしていますから、無駄な虐待はしないのであります。殊にその会の、そういう全世界の会の連盟がへーグにありまして、これはオランダの 主宰になつております。動物の保護連盟、これは現在全世界五十八の団体が参加して、私たちも参加しておりますが、これらが一昨年でしたか、世界共通の動物 保護法という虐待防止の法律……、法律がないのは日本だけですが、世界共通の動物保護法の案を寄せて来ました。それによりますというと、毒を与える、或い は与えるためにおいた、或いはおかしめたというようなことに対しては非常な厳罰、最高の厳罰に処しております。それで英国なんかも勿論そうでございまし て、英国の法律で許可されておりますのは鼠と二十日鼠、その他小さい動物の害獣を除くために毒物を置いたときは、ほかの動物がその場所に立入らないだけの 設備をしなくちやならない。その設備というものは事件の弁護の一つの理由になる、このくらいにしか解釈していません。 それから狂犬病予防をどういうふうにやつているかと申上げますと、英国の一番古い狂犬病予防法は一八七一年、今から八十年ぐらい前に出ておりますが、大 体口輪であります。で、口輪をかけさせるのでありますが、その口輪は私最初反対したのであります。かけますと、夏にはああ言つて犬はいけないものでありま すから、犬は汗線がありませんから口を空いて体力を調節いたしますので、口が空かないと非常に困るだろうと、口輪を反対したのでありますが、最近は英国で は頭まですつぽり被る、頭部を被う一つの輪がありまして、それでやつておるそうでありますが、これは非常に高いものであつて日本では一般には無理だろう、 ガス・コイン夫人から実は昨日聞いたばかりなんですが、そう言つておりました。それから英国は大体口輪には住所氏名を書かせる。日本は昔はあつたのが今そ れがないようですが、警視庁時代は口輪に飼主の住所氏名を書かせたものですが、今はそれがありません。英国はそれをやらせまして、狂犬病が出たときには十 五マイル乃至二十マイルの地区は口輪をかけさせる、こういうやり方で以て畑部絶滅しまして、一八五五年のときには一ヵ年間に狂犬病発生数が六百七十二であ つたものが、一九〇二年から一九一八年まで十六年間というものは、国内に一頭の狂犬病もないぐらいになつた。ところが一九一八年の九月に或る一人の復員の 兵隊が一匹の犬を検疫を免れて密輸した。それがたまたま狂犬でありましたために、南部のイングランドとか、南部ウエールス地方に三百十九件狂犬病が発生し た。それが先ほど申上げました口輪で以て三カ年間で一九二一年に絶滅いたしまして、それから今日まで三十三カ年間というものは、狂犬病は英国じや一頭も出 ておりません。ただ出ましたのは、海外から来ました犬は六ヵ月間飛行場又は港で以て抑留されるのでありますが、これは国王の犬でも六ヵ月抑留されます。抑 留されますその中で今日まで二十三頭の狂犬が出ております。国外から輸入されましたために、六カ月間の抑留期間に出ましたのが二十三件、それで一九三八年 に最後の狂犬病予防法が出ておりますが、一番最近のものが出ておりますが、それは狂犬病に侵された犬又は侵されたと疑われる犬或いはそれらに咬まれたと思 われる犬猫、これらが、検査官がそういうものだと十分認められた犬は強制的に殺される、屠殺される。それから次は狂犬病に侵された犬又は侵されたと疑われ る犬、或いはそれに咬まれたと思われる犬猫、或いはそれらの犬猫に触れたことのあつたと思われる犬猫は隔離しなくちやならない。ほかと全然別個にしなくち やならないというふうにこの二カ条になつております。それしかないのですが、それが随分過去において英国が狂犬病を最初に撲滅する、いわゆる一八七一年か ら一九〇二年に至る間には非常なむごいことを毒薬や何かをどんどん撒いたのじやないかという説が日本で最近唱えられましたが、ガス・コイン夫人に聞きまし たら、自分の生れる前のことは知らんけれども、ひよつとしたらそういうときには鉄砲を使つたかも知れない。そういう薬品を使つたことは今まで聞いたことが ない、こう言つておりました。それからアメリカなんですが、アメリカの例を申上げますと、アメリカは皆州法ですから国法がないのですが、ニユーヨーク市だ けで畜犬が約三十万頭以上、東京都の十四万頭の約倍です。で、そこでは人間を咬んだ犬は衛生局の役人が犬を調査することができる。人の顔面を咬んだ犬、顔 を咬んだ犬はニユーヨークの動物虐待防止会の犬舎に十日間抑留しなくちやならない。こういうふうになつておる。 それから非常に注目すべきは町の浮浪犬というものは全部役人が野犬狩をしませんで、ニューヨークの動物虐待防止会がやつている。毎日トラックで町中歩き まして浮浪犬を集めまして、そうして先ほど申上げましたように、健康な犬は新らしい飼主を求めてやり、不健康で飼主の希望のないものは二日間抑留の上に処 分をしている。殺しております。で、捨てる必要のない犬が生れましても、捨てる必要がないようにそこへ持つて行けば、或いは廻つて来たトラックに頼めば、 ちやんと持つて行つてくれる。而も新らしい飼主に飼わせてくれるというような設備をしております。狂犬病の最も多いのはアメリカで、シカゴなんですが、こ れが約畜犬が三十五万頭あります。それで昨年の一九五三年の犬に咬まれた人の数は千五百五十人、最も激しいときは二十四時間内に八十八名咬まれておりま す。それで町でも非常に驚きまして、全アメリカ合衆国の衛生中央研究所の所長のジユームス・スチール博士をわざわざシカゴ市に呼びましてその対策を練つた のでありますが、浮浪犬は毎日約百頭つかまえておりまするが、咬まれましたために狂犬病になつた人間が出て来ましたので、非常な問題になつたのでございま すが、結局これはやはり薬品を、毒薬、劇薬を使わないで処理しております。又テキサス州のフーストンという町においては、二百五十頭の犬を検査して八十三 頭の狂犬病菌を持つている犬を発見しております。これもやはり毒薬を使つておりません。 それでアメリカで一体狂犬病による死亡者はどのくらいあるかと申しますと、一九五三年度は全アメリカにおいて十三名死んでおります。日本においては三名 ですね。それから過去十二年間のアメリカの平均の死亡者は一カ年間二十六名であります。全米の畜犬数は二千二百万頭、これが日本と比較いたしまして、日本 は全国の畜犬数が約二百万頭だからアメリカの一割です。それから咬まれて狂犬病になつた犬は、昨年度は日本全国におきまして百七十八頭、それから狂犬に咬 まれました人間が全日本で三百二十一人、こうなつております。それで死亡が三人、東京都におきましては昨年度が、狂犬に咬まれた人間が百五十九人、それか ら狂犬病でない犬に咬まれた人が六千六百五十四人、アメリカのほうが約十倍畜犬数が多くて、そういう狂犬発生率及び咬まれた人の数が非常に多いにかかわら ず、アメリカはやはり人道協会と動物虐待防止会などの意見を聞きまして毒殺、薬殺をいたしておりません。シカゴあたりでは放し飼いの犬を非常にやかましく 厳禁しておりまして、犬を放している者は見つかり次第に二十五ドル乃至百ドルの罰金に処しております。これは昨年度シカゴがきめました最近の法律でありま す。 インドはこれ又ひどい所でありますが、南インドのクーノール市のパストウール研究所が扱いましたのは、一九〇八年から一九四八年、約四十年間に二十六万 三千七百三十六名の患者を扱つております。それでそういう狂犬病にかかつて人を咬んだもの、動物が又インドですから多くて、三十二種類の動物を挙げており ます。犬、ジャッカル、狼、狐、猫、豹、いろいろなものです。それで死亡は、そのために死んだ者は、犬に咬まれて死にましたのが一千四十四名、ジャッカル に咬まれまして死んだ者八十六名、狐に咬まれて死んだ者十名、これは狂犬病ですが、野犬に咬まれまして死んだ者が三名、猫に咬まれて死にました者が一名、 豹に咬まれて死んだ者が三名、山羊、羊に咬まれまして死んだ者が一名、こういうふうになつおります。それで一九四八年は犬とジャッカルに咬まれた者のみが 死亡しておりまして、又アドラスというインドの州では一九一三年から一九四八年までに死亡した者が一万九千三百八十名、こういうような一つの野犬の被害が ありまするが、インドでもそういう薬殺はいたしておりません。又オーストラリアでもいたしておりませんが、最近オーストラリアではそこにおりますデン ゴー、これは本当の野犬で猛獣の犬でありますが、これが牧場を襲うので、牧場の保護のために硝酸ストリキニーネを使いまして、それが昨年度の世界動物保護 連盟の議題に上りまして、これは反対抗議が世界連盟から出まして、恐らく本年からは中止するだろうと思います。 これらが各国の狂犬予防の現状でありまするが、このたびの一月二十日の日比谷公園の毒殺及びこの狂犬予防法ができましてからこれらのことが各国に伝えら れましたために、私のほうの協会では英国のロイヤル・ソサイエテイ、これは王室の動物虐待防止会でエリザベス女王が会長になつておりますが、直ちに抗議が 来まして、どうしてもそういうことがないように闘つてもらいたい、それからアメリカの北米合衆国の動物虐待防止会、これからは長い手紙が朝日新聞社長の村 山さんに来まして、これが朝日イブニング・ニュースに来ております。それでいろいろな予防のための方法を建議しております。私が驚きましたのはカリフオル ニアのパロアルトという名前の小さい町なんでありますが、そこの動物福祉協会理事長のミセス・バルバラ・ダーニールという人から手紙が来まして、自分の田 舎の新聞で日本はこういう法律が下院、衆議院を通つたということを聞いたが、これに対してはどこまでも反対してもらいたいという手紙が来ております。だか らそんなカリフォルニアの小さい町の地方新聞にまで日本のこの狂犬予防法の改正案というものの話が伝わつている、そしてこれらが皆反対している。最も驚き ますことは、三月十三日付のニューヨーク・タイムズの社説にこれが出ております。ニューヨーク・タイムズが日本のことを社説に取上げて云々するということ はこれは殆んどないことだと思いますが、これを取り上げまして、この外国人が日本のことにそういう容喙をする権限はない、これは国内的な問題であるけれど も、こういうことは実にいけないことだから何とかしてもらいたい、最後にこの法案は非人道的な毒殺方法を日本の輿論が看過するならば、他の国の人々は決し て褒めはしないであろう、参議院は必ずやこの法案を否決し、他の方法による情けある決定がなされるだろうと、こちらの参議院のことも申しております。衆議 院が通つたことを説いておりますし、これがニューヨーク・タイムズがこういうことを書いたということは私は実に驚いたのですが、昨日ですか、ニユーヨー ク・タイムズ東京支局長リンゼー・パロツト氏が見えましたが、ニューヨーク・タイムズ社長はこの問題はどこまでも日本の問題だけれども、自分たちは人道上 無視できないからどこまでも闘う、こういうふうに社長は言つておりました。ニューヨーク・タイムズ社長はどこまでも闘う、そして日本で反対の立場の人々を どこまでも援助する、こういう手紙が私宛、理事長宛に来ておりました。そういうことを言つておりますが、そのほかにさつき申上げました世界連盟、それから アメリカ全部の連盟、それから英国王室の協会、これらが全部日本の内閣に出先の大使を通じまして抗議文を出す、こう言つておりますから、恐らくもう着くの じやないかと思います。これらのことが対外的に非常に日本人が誤解される、残虐な国民だといつて誤解される面が非常に多いのじやないか。これは私たちの会 も戦争中に日本人が捕虜を非常に虐待したということからこの会ができたのでございまして、日本人の捕虜のインテリを印度で集めまして、いろいろなテストを しました結果、動物に対しては非常に残酷なことを平気でやる、丁度日本の子供にしますならば、とんぼをつかまえて揚子を付けたり、蝉の羽を取りましたり、 そういうことで日本人が平生は非常におとなしいが、何かの機会があつたときは、非常に残虐なことをする、これは平和になつたら日本でも外国と同じような動 物虐待防止会を設けて、日本人にそういう残酷性をなくしてもらわなければ安心してつき合えないというので、それでマツカーサー夫人が会長になられまして、 それでこれはお前は日本人の代表だからというので選挙をされまして、それを何とか残虐性を取つてもらいたい、そういう懸念なしにつき合えるような民族にし てもらいたい、こう言われたのであります。で、この会ができたわけでありますが、そういうように世界の各国の民族が非常にこの大戦によつて日本人を残虐性 のある民族だと考えているときに、又誤解の種を播くようなことはよほど注意しなければならない。そのほかに方法が全然なくて仕方がないのならともかくも、 方法があるならやらないほうがいいのじやないか。殊に観光にもこれが大きく宣伝されますと非常に差支えるのじやないかというふうに思つております。 そう言いますと、お前は人間が大切か、犬が大切かとすぐ言われますが、犬というものは動物の中で一番人間とのいき合の歴史が最も古いものでございまし て、そうして最も愛情に富んでいて、人間のえらい人が失脚したときには、友だちも、周囲も寄りつく人がなくなるのに、犬だけはその飼主が乞食になつても、 愛情に変りがない。墓に入つても、犬がお墓の側に付いていて十何年離れなかつたという例があるくらいなのであります。届出ないとか、注射をしないというの は飼つている人間が悪くて、犬自身にはちつとも罪がないのに、狂犬病予防のために捕えられて殺されるということにつきましては、できるだけその犬自身の苦 痛の少くなるような方法をとるのが、これは我々人類の責任じやないか、そういう一つの責任を持つて行つてこそ初めて人類というものが平和に到達できるので あつて、人類の利益のためには如何なる方法を以てしてもこれを虐殺をしてもかまわんということは、これは最も私は人間の文明の後退じやないか、こう考えて おります。 それで先ほど申上げましたように、この法案につきましては、これの研究がまだ不十分である、国内の影響も相当悪い影響がある、海外の影響はまだまだ悪い ということから、相当期間をおきまして、これを審議しまして、或いは英国から一人の責任のある権威者を派遣してもらいまして、それらの意見を聞いて撲滅の 方法を考えた上で、この法律の国会をパスして施行してもいいのじやないか、そういうふうに考えております。大変長い間どうも有難うございました。 |
○委員長(上條愛一君) | それでは今のお話につきまして御質疑を願います。 |
○有馬英二君 | 狂犬病予防ワクチンのことで参考人の北本さんにお伺いいたしたいのですが、時間がなかつたので、十分にお述べにならなかつた のではないかと思うのですが、又余り専門的なことをここで長いことお話を承わつても時間がありませんから、そういう意味であつたのかも知れませんが、先ほ どお触れになつたので、石炭酸とそれから紫外線の方法という二つの方法が今でも両方併用して行われておる。どうして片一方にならないのですか。その紫外線 のほうがあとから研究されて、そのほうが完全のようでありますが、どういうわけでこの両方とも今でも行われておるのか。又それが併用されるほうがいいので ありますか。どういうわけなんでしようか。そいつを一つもう一度お伺いしたいと思います。 |
○参考人(北本治君) | 只今の有馬博士からの御質問、私の先ほどの説明が少し足りなかつたかと思いますが、併用と申しましたのは、同じ人間 に両方使うというのではございませんで、日本の国内の状況を申上げましたときに、例えば東京で私どもの伝研へいらつしやる方は、紫外線照射ワクチン一本で やつております。ところが大阪なり九州なりへ参りますと、紫外線ワクチンをやつていないところが多うございますから、それでカルボール・ワクチンでやつて おる、日本国内として見ました場合に紫外線照射ワクチンも行われておるし、石炭酸ワクチンも併せて行われておる。そういう、つまり場所を異にし、人を異に して行われておる意味の併用でございます。同じ人に両方のワクチンを使つておるという意味で申上げたのではなかつたのでございます。そういうわけでござい ます。 ○有馬英二君 それは両方ともが学問的に殆んど同じ効果があるという意味でありますか。或いは製造方法に優劣がないということに帰するのでしようか。学問的に統一するという必要はないのでありますか。それを一つお伺いしたいと思います。 |
○参考人(北本治君) | 大変大事な御質問でございまして、学問的な現在の段階といたしまして私どもが申上げてよろしいと思いますことは、紫 外線照射ワクチンにおいては、少くともここに上げましたような何千人という数を扱つて非常に効力もよく、副作用も少いというかなり確かなデータがあるとい う点であります。そのほかのワクチンにつきましては少数例のデータはあるようでありますが、まあ何千人というような非常にたくさんな数を正確に集計した データが乏しいのでございます。そういう点から申しますというと、確かなデータに基いて只今処置を講ずるという点から申しますと、紫外線照射ワクチンのほ うがいいというふうに考えるのであります。ただ、紫外線照射ワクチンが現在直面しております一つの大きな問題は、ワクチンの保存性の問題でございます。学 問的に申しますというと、その点だけが残つておるのであります。製造いたしましてから、石炭酸ワクチンの場合は大体半年有効期間ということを認めておるわ けでございますけれども、紫外線照射ワクチンは只今のところでは液状のままにいたしました場合が大体一、二ヵ月というところがまあいいところでありまし て、そのために東京におきましては新らしいワクチンを次から次へ応用することができますので、地方にもそういうセンターができまして、新らしいワクチンを 次々作ることができるようになれば、紫外線照射ワクチンに全部切替えるということがやはり望ましいのじやないかと思うのでありますが、実際問題といたしま しては現在東京だけしかそういうことが実行できないものですから、全国的に見ました場合にはまだ少しこの間に幾つかの段階を要する、こういうふうに考える わけです。なお、紫外線照射ワクチンを乾燥凍結いたしまして、いわゆる乾燥ワクチンにいたしますというと、保存性が長くなると思われますので、そういう研 究もやつておるわけでありますけれども、それは現在研究途上にありまして、まだ結果として申上げる段階に至つておりません。でありますから、紫外線照射ワ クチンと石炭酸ワクチンは同じかということになりますと、片一方にはデータがあつて、片一方には十分のデータが少し足りないように私は感ずるのでありま す。正確な意味の比較はできないのでありますが、データのあるものについて見ました場合には、紫外線照射ワクチンのほうは一応優れておるというふうに推定 されるわけであります。 |
○有馬英二君 | 北本参考人にもう少し伺いたいのですが、ワクチンの効力についてお答えでありましたが、副作用についてワクチンの製造方法の差異による何と言いますか、差異というようなものがないわけですか。 |
○参考人(北本治君) | 先ほど印刷物をお配りいたしましたが、有馬先生のところに行つておりますか、まだ行つておりませんか……。副作用に つきまして、この紫外線照射ワクチンの場合は非常に少いということがわかつております。石炭酸ワクチンの場合はまだ余り数が多くないのでありますが、最近 の市販のワクチンについてわかつております一、二の例を申上げますと、百二十二名のうちで五名、約五%に後麻痺が出ておるような、そういう数字がございま して、この数字は数がまだ百台の数字でございますから余り断定的なことを申上げるのは無理のように思うのでありますが、紫外線照射ワクチンの場合に八百三 十八名のうち二名というのに対しまして、一般石炭酸ワクチン百二十二名中五名というような数字がございます。この場合数が一方は少いものですから、私ども の感想といたしましては、石炭酸ワクチンによる副作用が一体どのぐらいあるかということを早急にデータとして集める必要があるというふうに考えておりま す。そのデータがございませんために紫外線ワクチンと石炭酸ワクチンとの厳密な意味の比較というものはまだできないわけでございます。 |
○有馬英二君 | 新聞に書かれておるのですから、これはどうも本当に学問的に言うべきことではないと思うのですが、それが併し非常に誤解され ておるのは、ワクチンの副作用として、先ほどお話になつた精神障害と申しましようか、或いは性格の異常というようなことが起される。それがワクチンの注射 によつて脳の中に穴があく。そうしてそれはレントゲンで写せば写るとか、或いは見えるとかいうようなことが非常に誇張されておるのじやないかと私思うので すが、そういうことの発表が、何らか普通の人に正しく理解されるように学者の発表があつて欲しいように思うのですが、実際においてどんなものでしようか。 |
○参考人(北本治君) | 只今の御説の通りでありまして、非常にセンセーショナルに扱われ過ぎた嫌いが、私どもの目からいたしましても十分に あるように思われるのであります。あの御研究は非常に独創的なところがありまして、従来ああいうことに余り及びもつかなかつた点に注目をされたという点 で、世界的な意味でも非常に興味のある学問的には貴重な御研究でありますけれども、その発生率というものは、先ほど申上げましたように、軽い副作用を全部 とりまぜました数の大体十分の一から十二分の一くらいに相当する少数でありますし、レントゲンでわかるほどの穴が脳にあいてしまうというようなことは、も う極めてその中でも又少数でありまして、その本体は、医学的に申しますと脱髄性脳脊髄炎と称される形でございますことは有馬博士も御承知の通りでありまし て、大体脳の組織の中に脱髄現象が起りまして、健康の組織のときと違つたこういう病変が起るのでありますが、それは極めて稀なものであります。ただ稀であ るからいいんだというのではございませんで、我々研究者としては、如何に稀であろうとも、尊い一命に関することでありますので、絶無にしたいというのが願 いでありますけれども、現在の段階においてはまだそこまでは行つていない。併し非常に恐れて、そのために肝心の狂犬病を多数発生させるようなことになつて は、これは本末填倒であるということが真相であると思うのであります。 |
************** (ここで区切り線が引かれていますが、以下部分が本議題部分なのか次の議題に関する部分なのか不明です) ************** |
|
○委員長(上條愛一君) |
速記をとめて。 〔速記中止〕 |
○委員長(上條愛一君) | 速記を始めて。それでは齋藤さん、北本さん甚だ恐れ入りますが。只今から母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由の説明を願います。 |
▲▼
第19回国会 参議院 厚生委員会 29号(昭和29年04月16日)原典7
○委員長(上條愛一君) |
速記を始めて下さい。 次の狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。 |
---|---|
○有馬英二君 | 質問をするに当つてこれは非常に重大ですから、厚生大臣の出席を私は求めたいのですが、厚生大臣がちよつと来られただけで又どこかへ消えてしまつたのですが、もう一度側出席を願えませんか。 |
○委員長(上條愛一君) |
ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕 |
○委員長(上條愛一君) | 速記を始めて。 |
○湯山勇君 | この前問題になつております狩猟法との関係ですね、野犬の関旅ですが、これはやはり相当問題だと思うのです。これについてはどういうふうになつておりますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | お答え申上げます。只今御指摘のように狩猟法の弟十五条におきまして薬物、爆発物等を用いて動物を建つてはなら ない、獲物を建つてはならない、とかように規定してございます。その動物の種類につきましては同法の省令第一条におきまして獲つてはならない種類が列挙し てございます。そのうちに野犬、野猫というものが一部入つております。この野犬と申しますのは、俗に申します山犬と申しまして、私先般来専門家にも聞いて みましたが、現在はすでに日本内地には種切れになつておるそうでして、現在日本には野性の野犬というものはいないそうであります。それから野猫はこれ又山 猫と言われるものでありまして、これも現在はすでにおおむね姿を消しておるそうであります。仕つてこれらのものは現実にはいないのでありまして、而も犬と は全然これは別な種類のものでありまして、こ」の野犬とは違うものでありますから、私どもはさような点では毛頭支障のないものとかように考えております。 |
○湯山勇君 | この野犬が果して山犬に該当するかどうか、ここに問題があると思うんです。どこかの県で問題になりたことがあるとか言つており ましたが、この間参考人が野犬が山犬であるこいうことになれば、これはおつしやる通り問題はありません。但し野猫ということになると、これは対馬におりまして天然記念物になつております。従つてこれはやはり問題が残ると思いますので、やはり狩猟法を改正するかどうかしなければ、この問題はいつまでも残ると思うんですが、そういう点どうでしようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 犬と野犬それから猫と野猫とはこれは定義にも全然種類が違つておりますから、従つて狂犬病予防法におきましては これはあくまで犬を対象にいたしております。そこで強いて申しますれば、薬殺等をいたします場合に誤つて他の動物に危害が及んだというようなことを考えま すと、これは若干疑問はあろうと存じますが、この点は併し人畜に危害が及ばんということを建前にいたしております。なお私どももこれを実施するに当りましては、人畜等に絶対危害のない方法を工夫して参りたい所存でございますので、かような点は心配がないと思いますが、いずれにいたしましても法の建前上、狩 猟法とは何ら関係がないわけでございます。 |
○湯山勇君 | もう一度確認しておきたいと思うんですが、この農林省のほうも、野犬とは何と言うか、現在の飼犬フアミリアリスですか、それではないと、それから野猫というのは、現在の猫の野生化したものではないという定義をはつきりいたしておるんでございますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | その通りでございます。 |
○高野一夫君 | ちよつと伺いますが、この間狂犬病登録手数料が総額一カ年六億というお話があつて、各市町村で狂犬対策に使うというお話でし たが、大体大都市を除けて小さい町村あてに振り当てて見ると四、五万円程度になりはしないか。一カ年にそうすると四、五万円になるか、少くなるか多くなる かわかりませんが概略見てみてそういう感じがするんですが、そうすると市町村における狂犬病対策の費用というものは大体どれ位かかるか、その足りないとこ ろは国庫補助か何かどういうふうにされるつもりか、それをちよつと聞いておきたい。 |
○政府委員(楠本正康君) | 只今御指摘の通り全国的に見ますると、五億近い経費は狂犬病のために法律に基いて使用されることになつておりま す。ところがこれらの経費は各府県に大体畜犬数に比例して配賦されておるものでございます。そこでこれだけの経費で足りるかどうかという問題であります が、先般来御説明を申上げておりますように、関東地方以外の府県におきましては狂犬の発生は殆んどない状況でございますので大体関東地方以外の府県におい ては、これらの経費は僅かながらではあるにもかかわらず、若干余裕があり余つて他に振り向けられておるような状況でございます。ところが関東地方、特に東 京都等におきましては狂犬病が流行いたしております関係でいろいろ対策に経費が必要であります。にもかかわらずこれらはやはり畜犬数に比例した手数料だけ が財源に一応なつておるわけであります。そこでとてもこれでは不足を来たしますので、現に東京都は年間約四千万円ばかりを更にこれに純都費のうちから加え て使つておるような現状であります。なお神奈川県等におきましても、これ又狂犬病の流行がありますために経費に不足を告げて地方費をこれに追加いたしてい るような現状であります。ところがこういう追加をいたしました純地方費につきましては、目下のところ何ら補助その他の裏付けはございません。ただ私どもと いたしましては内容を自治庁によく話をいたしまして、できるだけ特別平衡交付金でこれを見てもらうように努力をいたしておる次第であります。 |
○有馬英二君 | 厚生大臣が出席されましたので、私から特に厚生大臣に質問をいたします。今回の狂犬病予防法案の改正について大体三点くらい 特に大臣からお答え願いたいのでありますが、それは従来浮浪犬或いは無繋留の犬が多数発生して、未だに発生数が余り減らないようなお話も前に承わつたので すが、然るにこれについてただ狂犬病が発生しておるときだけこういうような野犬狩或いは浮浪犬を捕獲したり、或いは毒殺をしたりして来ておるのであつて、その以外において、その時を経てしまうと、少しもそういう犬の増加するというようなことに意を使つておらないように私どもは思われる。それがために浮浪犬 が或いは野犬がだんだん多くなつて、そして又狂犬病が発生すると、その対策に困るというような状態であるように見受けられる。でありますからして、勿論狂 犬病は戦後俄かに増加しておるんでありますが、これはどうも一般に犬が非常に殖えた。殖えるに至つたのは、犬の食物もなくなつたんでありましようし、いろいろな点あるんでありましようが、どうかしてこういうような浮浪犬或いは無繋留の犬の発生を阻止するという根本的の対策を一つ立てられたらどうかというこ とを私は考え、かたがたをれを希望するわけでありますが、それの対策として先だつても参考人もここに来て、斎藤弘吉君からも供述があつたのでありますが、 犬の断種法をということを政府で奨励するとか、或いは断行するというような具体案を立てられたらどうかと思つておりますが、それについて御意見を承わりた い。 |
○国務大臣(草葉隆圓君) | お話のように野犬が最近大変終戦後殊に急激に増加いたしたのでございまして、現在では大体登録犬が全国で約二百 万、野犬が約三百万と推計いたしておるのであります。終戦末期頃は殆んど狂犬病は絶無のような状態でありましたが、最近、その後終戦後再び、殊に関東を中 心にした地域におきまして、狂犬が発生するような状態に相成つておるのであります。誠にこれは危険でありまするので、今回狂犬病予防法においてこれらを十 分絶滅をしたいという意味から御審議を頂いておる次第であります。そこで根本の野犬をなくする方法、これは御尤もな御意見でありまするから、今度の改正法 におきましても従来子供を生んだ犬が処置に困つて結局野犬になる、浮浪犬になつて行く、無登録の犬になつて行くという状態でありますから、これらの子供 犬、野犬になる根本の犬を何とか処置をする方法を請じなければならないというので、保健所におきましてこれらを引取る、或いは買上げるという処置をとつて 参ることにいたしたのであります。更にそういう将来の場合を考えると断種をして、そうしてこれらの浮浪犬を少くししたらどうか。これも誠に一方から考えま すると御尤もな御意見と存じます。ただ飼犬の場合には、これらの方法も或いは将来十分指導いたしましてできると存じまするが、野犬になりました野犬そのも のの野合と申しまするか、によつて増加いたしまする場合におきましては、どうもそれがうまいこと行きにくいような場合もあろうと存じますが、只今断種の点 につきましては将来とも生まれた犬が多く野犬になつておりますような現状から考え、又野犬の現在推定いたしております三百万頭もあります野犬が、おのおの 更に野犬を生むという状態になつておりますから、こういうような点も十分尊重して参りたいと存じます。 |
○有馬英二君 | それからこの捕獲がなかなかむずかしい、野犬を、捕獲員を使用して捕獲されるのでありましようが、逃げ廻つてなかなかつかま らないというような場合に、薬殺を行うということが従来にも行われているらしいのでありますが、今回先だつての参考人からも繧々意見を聞いたのであります が、特に一月の十七日、十八日の両日に亘つて日比谷公園で毒物の入つた食物を撒布して、そしてその際アメリカ人のハリスという人の畜犬が二頭もそれにかか つて被害を受けたというために、それがニッポン・タイムスに出たり或いはアサヒ・イヴニング・ニュースにまで、というような外字新聞にまでそれが報道され て、それが又ニューヨーク・タイムスであるとか或いはイギリスのほうまでそれが伝わりまして、そうして動物愛護というような方回から、日本人はどうも残虐 なことをするというような非難を受けようとしおるように報道されておる。これはどうも我々日本人としてもよほど考えなければならん点であろうと思うのであ ります。そうでなくても第二次戦争川の際に日本人は非常に残虐なことをしたということで、思わざる誤解を受けておるというようなこともあることでもありま するし、動物愛護というような方面から特に動物を殺すにしても余り苦痛を与えないような方法にして殺すというようにされたいというような動物愛護会からの 希望もありまするからして、この際政府はどうしても毒物を以て犬を捕獲する、或いは殺さなければならんということであれば、今まで用いておるような硝酸ス トリヒニンというような毒物を用いないて、何かほかにこれに代るようなものがないかどうか、例えば睡眠剤を用いて殺せんかどうか。これは先だつてもそうい うことについて一部お答えもあつたようでありますが、その点について特にこれは大臣からお答えを頂きたい。 |
○国務大臣(草葉隆圓君) | 実はお話のように一月の十七、八日でございましたか、日比谷公園で犬が二匹であつたと思いますが亡くなつて、そ れが今お話のような状態であつた。ちようどたまたま狂犬病予防法が出ておつて、そこに薬殺というのがありますために、大変大きくお話のように響いて参つて 来たのであります。これをだんだん調べて参りますると、実は現行では薬殺するということについては私ども適当でないと思つております。さような方法が東京 都でとられたと存じまして、東京都に対しましては厳重に注意を与えておいたのであります。これがたまたま外国人のちようど厚生省の前あたりにありますとこ ろの犬であつて、従つてこのことががいろいろと私どものほうへ直接申して来られ、或いは世界動物虐待防止会長等の来訪の機会にも本人等にもそのことが申さ れたということに相成つたのであります。お話のようにもともと動物虐待防止というのは、殊に外国等では相当早くから発達しまして、私がニューヨークヘ参り ましたときにも、むしろ児童虐待防止は動物虐待防止から、どうしても最初親から子供を虐待している取締りがない。当時は動物虐待防止があるからそれによつ てやつたという工合に思想的にも発達しておつたと思うんです。そういう関係から殊に最近犬がお互いの生活の中に飼犬として柔らかく……、そしてなければな らないような状態で飼われておりまする関係から、一層その感を深くして参つたと存じます。従来は虐殺というようなことはむしろ捕獲というものに中心を置い ておつたと存じます。私も実は犬を曾つて飼つておりました。捕獲をされ、而もそれが虐殺をされ、誠に悲痛な思いをいたしたことがあります。そういう関係も 殊に私自身といたしましても深く注意をし、今側の狂犬病の予防処置としてとります場合におきまして、万止むを得ない時期及び止むを得ない期間並びに止むを 得ない地域に限つてその処置をし、而もその処置による薬等は、お話のように大変悲惨なような状態を現出することのないような方法をとり得ないか。現在薬等 におきましても、それぞれ専門の方で研究をいたしておる次第であります。そういう意味におきまして、人心に与えまする影響、又動物愛護の思想に与えまする影響がこの取扱い如何によりましては、強く響いて参るのであります。この点は慎重に取り扱いをいたしまして、そのような悪影響の起らないようにいたしたい と存じます。 |
○有馬英二君 | ただ、現在におきまして、やはり都の一部分においてストリヒニンの入つたものを用いて犬を捕獲するようなことが現に行われつ つあるのであります。これは今年の一月に日比谷公園で起つたということが非常に響いたのでありますけれども、その後もやはり行われているらしい。私どもう ちの犬がときどき濫から出まして、そうして夜暫らく家の廻りを廻つて歩いて、それから帰つて来るというようなことがあると思うのですが、その近辺の犬がや はり毒物の入つたものを食べて死んだというような例を、やはり私どもの家族が見ておりますというと、現に行われておると思うのです。それですから、やはり 薬殺をしなければならんという場合におきましては、やはり都の衛生課におきましても十分そういう点に注意をして、犬を余り苦しめないで、一つ捕獲をする。 或いは薬殺をするというようなことに、現在注意が払われておらないということを、一つよく厚生省のほうから注意をされて、実際において、これを一日も早く 他の方法に変えられるようにして頂きたいと思うのでありますが、それについても、一つこれは都のほうのことでありましようけれども、やはり厚生大臣から何 分の指令があればいいのではないかと思うのですが、厚生大臣から一つ……。 |
○国務大臣(草葉隆圓君) | 実は、あの一月の日比谷公園で二匹、殊に外国人の則つておりました犬が薬殺の状態ということは、私どもはその状 態を知りまして、早速都のほうへ厳重に忠告をいたしておいたのであります。従いまして、その後はさような話を、この本法案の審議中でありますし、まだ通過 もいたしておりませんし、通過いたしました際におきましても、この薬殺の場合には、それぞれ十分注意してやるようになつておりますし、私どもはむしろさよ うなやり方をする場合には、飼主の人たちに十分に徹底するように注意をし、時間、場所等も十分知らして、正しい飼犬に対して、不慮の災難にかかることのな いように万全の注意をすべきものだと考えておるのであります。従いましてその後は東京都におきましてはないと存じておりましたが、只今のお話を承わります と、なおさようなことがあつたように考えられますので、早速この点は東京都のほうへ連絡いたしまして、十分な注意を喚起いたしておきたいと存じます。 |
○委員長(上條愛一君) |
本法案の本日の質疑はこの程度にいたしまして、次に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕 |
○委員長(上條愛一君) | 御異議ないものと認めます。 |
▲▼
第19回国会 参議院 厚生委員会 30号(昭和29年04月19日)原典8
○委員長(上條愛一君) |
只今より厚生委員会を開会いたします。 狂犬病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。 |
---|---|
○湯山勇君 | この前にお尋ねしておつたときの御答弁について、なお疑義がございますのでお尋ね申上げたいと思います。それは例の狩獵法の「ノイヌ」、「ノネコ」ですね、これはどういうふうになつているか、もう一度御説明頂きたいと思います。 |
○政府委員(楠本正康君) | この「ノイヌ」「ノネコ」いずれも野犬その他の犬を意味いたしておりませんし、又猫とも全然別なもので、種類の違うことを意味しております。従つて狩猟法は犬及び猫には適用がないものと考えなければなりません。 |
○湯山勇君 | ところがこれは林野庁長官から各府県知事に出ております通牒によりますとそういうふうにはなつていないのです。これは愛知県知 事からの問合せに対して昭和二十五年十二月二十八日林野第一万六千九百九十九号を以て回答したのには、そういうふうにはなつていない。でこの「第一条のノ イヌとは山野に常棲する犬をいう市街地村落に棲息する所謂野良犬はこの範疇には入らないものと解せられたい」と、こういうふうになつておりまして、結局こ の畜犬が山に入つたもの、種類としては同じものを指しているわけです。林野庁のほうの見解としては……。そうすると種類が違うというのじやなくて、ただそ の棲息の場所が違つただけであるのです。そうなりますと薬殺の場合に非常に問題になつて来るのじやないか、こういうふうに考えるのですが。 |
○政府委員(楠本正康君) | 私この「ノイヌ」の見解を、動物園の古賀園長に実は尋ねたわけであります。古賀園長はこれは全然もう種類が違う ものである。そしてすでに日本には現在はこの「ノイヌ」というものは残念ながらいなくなつたということを伺つておりますが、なお併し只今御指摘のような林 野庁の見解等については、更にその点を質してみたい考えでございますが、なお実際に薬殺するというような場合に、山野の、人里離れた山野等において薬殺す ることはこれは考えられませんので、実際に人畜に傷害を与える犬を、つまり薬殺する意味であります。殊に現に狂犬が出て、真に緊急上止むを得ない場合に限 つておりますので、さような観点からいたしましても山野に適用されることはあるまいと、かように考えておる次第であります。 |
○湯山勇君 |
今の見解は動物園長のお話だつたということですけれども、これは園長も恐らく若干勘違いしておられると思います。と思しますの は、学名じやなくて和名ですね、日本の名前というのは、いろいろな文献見たのですけれども、やはり「ノイヌ」という名前はありません。「山の犬」となつて いるのはあります。「山犬」若しくは「山の犬」、まあですから「ノイヌ」というのは、やはり林野庁の言う見解に立つたほうが、この法の適用上から言つても 間違いないと思います。そうでなければ今部長の言われた処置もできなくなると思いますので……。 なお都市の中には、都市の真ん中に山がある、例えば私の郷里の松山なんかは市の真中に山があります。そうしてその山の中に相当多数の畜犬の野性化したも のがいるのです。そうしていわゆる野良犬がそれに入り込むということもたくさんございまして、このことは、やはり林野庁との間にはつきりした見解統一をな さるのと、そうして今のように山に入ることはないというけれども、事実そういうこともあるということも併せて一つ事施上においては御検討頂きたいと思います。 それからもう一点ですね、この狂犬病予防法によれば「第四条等四項」、二十二条のこの登録料の問題で、この前に何か登録料を他へ廻す。東京、神奈川のよ うな所では足りないが、ほかの所では他へ流用するというような意味の御答弁があつたかと思うのですが、これは三百円以内の登録料というものは、すべてこの 目的達成のために用いなければならないと法律にはなつていると思うのです。そうすると狂犬病の予防以外にはこの費用は使えないのではないかと思うのですが、これは如何でしようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | この点は全く御指摘のように登録手数料の収入というものは、挙げて狂犬病予防法のために使いまするのが法の建前 でございます。但し先日、狂犬が殆んど出ていない地方におきましては、ときたま地方も経費に困る点もありますものですから、さようなときにおきましては、 場合によつて他のほうに流用されることもあるという意味のことを申上げたわけでございます。 |
○湯山勇君 | それは他のほうへ振向けるということを厚生省としては認めておられるわけですか。或いはそういうことをしちやいけないというように指示しておられるか。 |
○政府委員(楠本正康君) | これは法律の示しますように、私どもといたしましては極力地方に対しましてこれらの経費は挙げて狂犬病予防のために使うように指導をいたしております。 |
○湯山勇君 | そういたしますと、狂犬病の発生の虞れのない地区等におきましては、これはそういう予防の措置を講ずる必要のない地区において は登録料というものを取らなくていい、実際にそのために要する手数料は別として、それ以外のものは法律によつても三百円以内ということですから、実際の実 費として最低額で以て現在取つておる。大体どこも三百円取つておると思うんですが、そういうことはどうも不都合ではないかと思うんですが、如何でしようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | この点は誠に御指摘の通りでございまして、私どもはかねがね他に仮にも転用するような余裕があるならば、当然御指摘のようにこれは登録手数料を減額すべきものでありまして、この点も府県に強く要望いたしておる次第であります。 |
○湯山勇君 | 最後に今の御趣旨が御答弁では非常にはつきりしておりますけれども、実際はもう殆んど違反しておるのが大部分の県であると思うので、重ねてこれをよく守るように御措置を願いたいと思います。 |
○廣瀬久忠君 | 今の登録料というものは全国でどのくらい取つておりますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現在全国で登録犬は最近逐次登録が徹底いたしておりますので、最近は約二百万頭と概算をいたしております。なお手数料は約三百円でございますので、おおむね五、六億ほどの経費が狂犬病予防のために使われておるわけでございます。 |
○廣瀬久忠君 | その狂犬病予防のためにということの内訳は大体予防注射の経費ということですかね、如何ですか。 |
○政府委員(楠本正康君) | これは狂犬病予防事業、広く考えた狂犬病予防事業という意味でございますが、ただすでに関東地方のように狂犬病 の発生いたしておりまする県におきましてはこれは極めて経費が足りませんので、かような場合には極めて厳格に解釈しておるようであります。ところが逆に狂 犬病が殆んど出ていない地方等におきましては、比較的幅を以て解釈をいたしておるようであります。 |
○廣瀬久忠君 | 私が一つ伺いたいのは、人間が狂犬に噛まれた場合の治療の注射ですね、これはいつか説明を伺つたのですが、大体非常によくなつてはいるようですが、まだ完全ではないというように聞いておりますが、どんな実情なんでしようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 現在私どもが国の基準として決定いたしておりまするのはカルボールワクチンであります。これは先日も証人が申さ れましたように、約百五、六十名について一名の被害者が出ております。又一方私どもはすでに各国の例にならいまして、逐次ワクチンの改正を図つております が、なかなか思うに任せません。これは何も日本だけの例でなく、世界各国もなかなかこれは困難な問題のように聞いております。なお最近カルボールを使いま する代りに紫外線照射ワクチンができております。このほうは若干被害が、副作用は少いようでありますが、併しこのほうはまだ試験した数字も極めて少うござ いますし、先日これ又証人のお話になりましたように、必ずしも最後的な決定はし得られないという実情でございます。なお世界各国におきましてもこの紫外線 照射ワクチンについてはまだ議論が残つているわけでございます。そこで私どもといたしましては、やはり国で定めた基準といたしましては、現在のところ若干 その副作用はありますが、止むを得ずカルボールワクチンを使用いたしているわけであります。 |
○廣瀬久忠君 | このワクチンなり或いは治療薬なりについて政府自身が研究をいたしているのですか。或いは全然これは民間の任意に任してあるものなのでしようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | 政府の予防衛生研究所におきましては、公衆衛生研究の立場からこの問題をかねて研究をいたしております。なお伝染病研究所その他各地の研究機関でもこの問題は研究されているわけであります。 |
○廣瀬久忠君 | それからもう一つお伺いしたいのです。現在狂犬病予防のために働いている職員等の犠牲者というようなものは相当数あるものでしようか。 |
○政府委員(楠本正康君) | これも御指摘のように東京都の例をとりましても、東京都の狂犬病予防員が狂犬を命を的に捕ろうとしたために、つ い狂犬に咬まれまして、その結果注射をしてそのうち二名が副作用のために気が違つて参りまして、目下松沢病院に入院をいたしております。かように狂犬病病 予防作業は都民のためにも命を的にして闘つていると言うても過言ではなかろうかと存じます。 |
○廣瀬久忠君 | 私は質問ではありませんがやはりこの狂犬に咬まれた一般人並びにその職員等に対する被害の実情を見ますると、如何にもお気の 毒なことであり、これが非常にやはり公安を書する、若しも薬が非常に発達して必ずなおる。副作用がないのだということになると、非常に安定すると思うので すが、政府においてこの治療方策についてなお一段と一つ御研究を願つて、一つとして副作用によつて事故のおきないように最善の努力をいたして頂きたいと思います。 |
○高野一夫君 | これは私欠席したときにすでに質問が出たかも知れませんが、この追跡中の犬を捕獲しようとして人の家に入るには、「合理的に必要と判断される限度において」というのは大体どういうことになりますか。 |
○政府委員(楠本正康君) | これは家族に頼みまして入つた屋敷内から追い出してもらうとか、或いは棒でも持つて行つて塀の外へ追い出せるというような場合には、入つてならんことに考えております。どうしても入らなければならん場合を合理的だと考えたわけであります。 |
○高野一夫君 | これは私は実際にこういうときにたびたびぶつかつておるのでお伺いするのですが、人の家へ逃込むのですね。ところがそれは石 の塀でもありまして取囲まれるのならいいんだけれども、どこからでも、こつちから入つて向うのほうの庭の隅から逃げられるというような場合に、その屋敷に 入る、人の家へ入る場合に協力してくれないとなかなか捕らないのです。そういうような場合に一々家人に尋ねて、そして何とかして出してくれと言つている間 に犬はいなくなつてしまう。だから一々家人に言わなくても事後承認でどんどんそこに入つて差支えないという解釈にはできませんか。 |
○政府委員(楠本正康君) | この点は私ども実務にたずさわつておりますものには誠に有難いお言葉なんですが、併しながら実際に国民生活の立 場から考えますと、やはり正しい仕事とはいえ、犬取り、まあ捕獲のための予防員に立入られるようなことは余りいいことでもありませんので、私どもといたし ましてはやはりさような点を考慮いたしまして、真に止むを得ない場合に限つて、而も承諾を求めて立入るというふうに絞つて考えておるわけでございます。併 しまあこれはいろいろ行過ぎその他を防ぐ必要もありますので、かような措置をとつておる次第であります。 |
○高野一夫君 | これはまあそういうような御配慮は誠に結構だと思うけれども、これではなかなか捕りません、実際問題として……。だからこれ をもう少し厳格に考えて、皆が協力してくれるようなふうに仕向ける何か啓蒙運動でもやつて頂かなければ、やはり一々遠慮して入れないというので、逃げちや うというようなことでは、これは実際問題としてむずかしいと思うのですがね。どうせ人の家へ逃込むのですから、この点は十分一つ何とか御配慮を願いたいと 思います。 |
○委員長(上條愛一君) |
他に御発言もないようでございますから質疑は尽きたものと認めて差支えございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○委員長(上條愛一君) |
御異議ないと認めます。 それではこれより討論に入ります。御意見をお述べ願います。 |
○大谷瑩潤君 |
私は繋留されていない大で薬で殺すということに対しまして、随分世間でも輿論になつておりますし、この委員会でもいろいろ御 意見あつたようでありますが、時によりますと、繋留されなかつた犬でも飼犬であつて非常にその家では大事にしておられた犬が絞殺されたというようなこと、 又薬殺のために死亡いたしますときに、非常に残酷な有様で息を引取るというような事情も、我々人間として見るに忍びないというようなことがたびたびあつた ようであります。つきましては、本案に左の附帯決議を附する動議を提出いたしたいと存じます。 狂犬病予防法の一部を改正する法律案に関する附帯決議案 野犬の薬殺については、狂犬病予防のため緊急止むを得ず、且つ他に代るべき捕獲方法のない場合に限り、これを実施するものとする。而してこれが薬殺の実 施については、場所及び日時を指定し、他に不測の災害を及ぼさざるよう周知徹底せしめると共に、犠牲動物の苦痛を軽減し、社会人心に与える影響を顧慮して 慎重に措置すべきことを要望する。以上の通りであります。 |
○湯山勇君 | 私は只今の大谷委員の御提案に賛成をいたします。なお、この附帯決議案の中の周知徹底という項目につきましては、これの対象に なるものは犬でございますから、そういう点、並びにこれに対しては子供のいたずらもあるだらうし、又子供が誤つてそういうものをどうこうするという問題も ありますので、従来のような周知徹底という概念と違つて、実質的に周知徹底するということを特に御確認願つておきたいということをも要望いたしたいと思います。 |
○委員長(上條愛一君) |
大谷委員の附帯決議は成立いたしました。 他に御発言はございませんか……。別に御発言もないようでございますから、討論は終局したものと認めて差支えございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○委員長(上條愛一君) |
御異議ないと認めます。 それではこれより採決いたします。衆議院送付の案について御賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕 |
○委員長(上條愛一君) |
全会一致でございます。 次に、大谷委員提出の附帯決議に御賛成の方は挙手を願います。 〔賛成者挙手〕 |
○委員長(上條愛一君) |
全会一致でございます。よつて本案は附帯決議を附して可決いたすことにいたします。 それから委員長から議院に提出する報告書には、多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。 多数意見者署名 大谷 瑩潤 高野 一夫 谷口弥三郎 廣瀬久忠 湯山 勇 有馬 英二 竹中 勝男 横山 フク |
○委員長(上條愛一君) |
署名洩れはございませんか……。署名洩れないと認めます。 なお、本会議における委員長の口頭報告については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔(異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
○委員長(上條愛一君) | 御異議ないと認めます。 |
▲
第19回国会 参議院 本会議 37号(昭和29年04月22日)原典9
○議長(河井彌八君) |
日程第五、狂犬病予防法の一部を改正する法律案 日程第六、消費生活協同組合法の一部を改正する法律案 日程第七、らい予防法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付) 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 |
---|---|
○議長(河井彌八君) |
御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長上條愛一君。 〔上條愛一君登壇、拍手〕 |
○上條愛一君 |
只今上程せられました狂犬病予防法の一部を改正する法律案外二法案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。 先ず狂犬病予防法の一部を改正する法律案について申上げます。 狂犬病予防法の施行以来、狂犬病の発生は逐次減少して参りましたが、なお根絶に至らず、年々相当数の発生を見る現状であります。本法律案は更に一層狂犬病予防措置の強化に努め、その根絶を図ろうとするものであります。 政府提案による主な改正点を申上げますれば、第一は、野犬化防止のため、狂犬病予防員が犬の所有者からその不用となつた犬の引取りを求められたときは、 これを引取つて処分しなければならないようにしたのであります。第二は、狂犬病予防員が捕獲しようとして追跡中の犬が、土地、建物等に入つた場合、捕獲す るためやむを得ないと認める場合は、必要な制限の下に予防員がその場所に立入ることができるようにしたのであります。第三は、都道府県知事が、緊急の必要 があり、且つ抑留を行うことが著しく困難な事情があると認められるときは、他に被害を及ぼさないような必要な措置の下に、狂犬病予防員をして繋留されてい ない犬を薬殺させることができるようにしたのであります。衆議院におきましては、犬を捕獲するためやむを得ないと認めるときは土地、建物内に立入ることが できるという規定を、都道府県知事が特に必要と認めて指定した期間及び区域に限りこれを適用することに修正されたのであります。 厚生委員会におきましては、政府原案並びに衆議院修正点について慎重審議を続け、殊に登録料の用途、登録犬と野犬の区別、野犬捕獲人の住居立入り、野犬 の薬殺等に関する諸問題については熱心なる質疑が行われたのでありまするが、右のうち、特に野犬の薬殺については、野犬以外の犬、又は他の動物に累を及ぼ す等の事件の発生もあり、なお動物愛護の見地から国際的の批判等も生れつつある実情に鑑み、「薬殺に当つては、その実施方法につき慎重なる配慮をする必要 があり、又薬殺等の場合にできる限り苦痛を伴わぬように考慮が払わるべきであると思うが、この点に対する政府当局の所見はどうか」との質疑に対し、政府当 局から、「薬殺に関しては本法第十八条において詳細なる規定が設けられているが、なおこれが実施に当つては一層慎重なる対策をなして、万全を期する覚悟で ある」との答弁がありました。 なお、問題となつております狂犬病予防ワクチンの効果については伝染病研究所附属病院長北本治氏を、動物愛護の立場よりは日本動物愛護協会理事長斎藤弘 吉氏をそれぞれ参考人としてその意見を聴取して、本案審議の参考といたしました。その詳細につきましては、速記録を御覧願いたいと存じます。 かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、大谷委員より、本案に関する附帯決議を附すべき旨の動議が提出されました。その案は、次の通りであります。 繋留しない犬の薬殺については、狂犬病予防のため緊急止むを得ず、且つ他に代るべき捕獲方法のない場合に限り、これを実施するものとする。 而してこれが薬殺の実施については、場所及び日時を指定し、他に不測の災害を及ぼさざるよう周知徹底せしめると共に、犠牲動物の苦痛を軽減し、社会人心に与える影響を顧慮して慎重に措置すべきことを要望する。 以上が附帯決議案であります。 討論を終了し、採決に入りましたが、先ず衆議院送付案について、全会一致を以て可決すべきものと決定いたし、次いで大谷委員提出の附帯決議につきましても、又全会一致を以て決定いたしました。 |
原典 | 国会回次 | 院名 | 会議名 | 号数 | 開会日付 | リンク |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 第19回 | 衆議院 | 厚生委員会 | 6号 | 昭和29年02月16日 | テキスト |
2 | 第19回 | 参議院 | 厚生委員会 | 10号 | 昭和29年02月23日 | テキスト |
3 | 第19回 | 参議院 | 厚生委員会 | 11号 | 昭和29年02月25日 | テキスト |
4 | 第19回 | 衆議院 | 厚生委員会 | 10号 | 昭和29年03月02日 | テキスト |
5 | 第19回 | 衆議院 | 本会議 | 16号 | 昭和29年03月06日 | テキスト |
6 | 第19回 | 参議院 | 厚生委員会 | 20号 | 昭和29年03月29日 | テキスト |
7 | 第19回 | 参議院 | 厚生委員会 | 29号 | 昭和29年04月16日 | テキスト |
8 | 第19回 | 参議院 | 厚生委員会 | 30号 | 昭和29年04月19日 | テキスト |
9 | 第19回 | 参議院 | 本会議 | 37号 | 昭和29年04月22日 | テキスト |